MG-ADL の使い方|条件固定で経過を読む
MG-ADL は、重症筋無力症( MG )の日常生活上の困りごとを追跡するための評価尺度です。ただし、MG は日内変動や疲労の影響を受けやすいため、点数だけを見ても「病勢の変化」なのか「評価条件の違い」なのか判断しにくい場面があります。
本記事では、MG-ADL の採点表そのものではなく、外来フォロー・病棟経過・申し送りで使えるように、時間帯・内服との関係・活動直後かどうかを揃える方法に絞って整理します。読後に、次回も比較できる記録条件と 1 行申し送りの型が決まる構成です。
結論:MG-ADL は「同じ条件で繰り返す」ほど比較しやすい
MG-ADL は “点数をつけること” で終わらせず、同じ条件で繰り返して、困りごとの増減を共有するために使うと価値が上がります。毎回の条件が違うと、点数の上下が症状変化なのか、時間帯・内服・疲労の影響なのか分かりにくくなります。
実務では、すべてを完全に揃える必要はありません。まずは、①時間帯、②内服との関係、③活動直後の有無を “分かる範囲で固定” し、揃わない場合は条件差を 1 行で残します。これだけで、外来・病棟・カンファレンスでの解釈が大きく崩れにくくなります。
| 固定したい条件 | なぜ必要? | 現場メモ例 | 詰まりどころ |
|---|---|---|---|
| 時間帯 | 日内変動の影響を揃える | 「午前で統一」 | 外来時間が毎回ずれる |
| 内服との関係 | 薬効の波で症状が動く | 「内服後 1 時間」 | 服薬時刻が不明 |
| 活動直後の有無 | 疲労の上乗せで点数が高く出やすい | 「歩行練習直後のため条件差あり」 | 病棟は介入直後にしか取れない |
| 補助メモ | 比較の解像度が上がる | 「食事中のむせ増/会話の息継ぎ増」 | 点数だけで終わる |
MG-ADL 条件固定・経過記録シート(A4)
MG-ADL をフォローアップで使うときは、点数だけでなく、時間帯・内服との関係・活動直後かどうかを残しておくと、前回との比較がしやすくなります。下の A4 記録シートは、外来・病棟どちらでも使えるように、条件固定、前回との差分、変化領域、次回の評価条件を書き込める形にしています。
なお、このシートは MG-ADL の項目文を転載するものではなく、評価条件と経過比較を記録するための補助シートです。実際の採点は、施設で使用している評価様式や公式資料に沿って実施してください。
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5 分フロー:MG-ADL を比較できる記録にする
MG-ADL は、手順を増やすよりも、条件確認 → 点数 → 変化領域 → 次回条件の順で短く揃える方が実装しやすいです。特に病棟では、毎回同じ時間に評価できないことも多いため、条件差を隠さず残すことが重要です。
外来と病棟をまたいで比較する場合は、完全に同じ条件で比べようとしすぎない方が安全です。外来は外来、病棟は病棟で “同場面の型” を固定し、場面をまたぐときだけ「条件差あり」と書き添えます。
| ステップ | やること | コツ | 記録の型(例) |
|---|---|---|---|
| ① 条件を確認 | 時間帯・内服・活動直後 | 全部揃わなくても分かる範囲で書く | 「午前・内服後」 |
| ② 点数を取る | MG-ADL 合計 | 点数は比較のためのラベル | 「MG-ADL 8」 |
| ③ 変化領域を一言 | 困りごとが増えた領域 | 介入・観察の優先順位が決まる | 「嚥下・発話の訴えが増」 |
| ④ 次回条件を決める | 次回も同条件で追う | 比較可能性を保つ | 「次回も午前・内服後で統一」 |
カルテ記載は「点数+条件+一言」でそろえる
MG-ADL の記録で最も避けたいのは、点数だけが残っている状態です。点数に評価条件と変化領域が添えてあると、次のスタッフが同じ枠で見直しやすくなります。
特に、嚥下・発話・呼吸の訴えが絡む場合は、食事や会話での変化を短く添えると、安全管理の申し送りにもつながります。長い文章にせず、1 行で比較できる形を優先してください。
| 場面 | テンプレ文(コピペ用) | 使うときの意図 |
|---|---|---|
| 外来① | 「MG-ADL {今回}(午前・内服後 {時間}・活動後なし)。前回 {前回} 比 {増減}、主変化 {領域}。」 | 同条件での経時比較を共有する |
| 外来② | 「MG-ADL {今回}(午前・内服後 {時間})。会話 {所見}/食事 {所見}、次回も同条件で再評価。」 | 球症状・呼吸関連の安全情報を添える |
| 病棟① | 「MG-ADL {今回}(介入前・{時間帯}・内服条件 {情報})。前回比 {増減}、主変化 {領域}。」 | 病棟内で比較可能性を担保する |
| 病棟② | 「MG-ADL {今回}({時間帯})。{介入内容} 直後のため条件差あり、{領域} 中心に解釈。」 | 悪化と条件差の混同を防ぐ |
| 超短文① | 「MG-ADL {今回}、午前・内服後、{領域} 増悪なし。」 | 申し送り欄が狭いとき |
| 超短文② | 「MG-ADL {今回}、歩行直後で条件差あり、再評価予定。」 | 条件差の明記を最優先したいとき |
| 場面 | 記載例 | ポイント |
|---|---|---|
| 外来フォロー | 「MG-ADL 8 → 6(午前・内服後)。発話疲労が軽減」 | 同条件で比較する |
| 病棟経過 | 「MG-ADL 7(介入前・午後)。歩行練習直後のため条件差あり」 | 条件差を明記する |
| 申し送り | 「MG-ADL 6(午前・内服後)。食事でむせは増悪なし」 | 安全情報を一言添える |
点数変化の読み方:まず条件差を確認する
MG-ADL の点数が変わったときは、すぐに「改善/悪化」と決めず、まず評価条件が前回と同じかを確認します。時間帯、内服後の時間、活動直後の有無が違う場合は、点数変化の一部に条件差が含まれている可能性があります。
研究上は、MG-ADL の 2 点以上の改善が臨床的改善の目安として報告されています。ただし、リハ場面では点数だけで判断せず、発話・嚥下・易疲労・歩行など、どの領域が変わったのかを併記して、次の観察や介入につなげます。
| 状況 | まず確認すること | 記録の書き方 |
|---|---|---|
| 点数が改善 | 同じ時間帯・内服条件か | 「同条件で MG-ADL 8 → 6、発話疲労が軽減」 |
| 点数が悪化 | 活動直後・疲労蓄積がないか | 「歩行練習直後で条件差あり、嚥下訴え増」 |
| 球・呼吸の訴えが増える | 食事・会話・息継ぎの変化 | 「会話時の息継ぎ増、食事中のむせ増は要確認」 |
現場の詰まりどころ:条件が揃わないときほど 1 行メモを残す
実装時に最も詰まりやすいのは、条件が揃わないまま前回と比較してしまうことです。まずは点数の精密さより、比較可能性を優先します。迷ったら、よくある失敗と5 分フローの順で戻ると立て直しやすくなります。
- まず「条件 1 行(時間帯・内服・活動後)」を残す
- 次に「変化領域 1 行(嚥下/発話/易疲労)」を追記する
- 評価設計全体はMG 評価まとめで確認する
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、書き方だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。
よくある失敗:MG-ADL が使えない点数になる原因
MG-ADL が使いにくくなる原因は、ほぼ 2 つです。ひとつは条件が毎回違うこと、もうひとつは点数だけで終わることです。前者は “条件 1 行” で解決し、後者は “変化領域を一言” で補えます。
忙しい現場ほど、点数を取ることだけを優先しがちです。しかし、次回の比較に残るのは「何点か」だけではなく、「どの条件で、何が変わったか」です。
| 失敗パターン | 何が困る? | 対策(最小) |
|---|---|---|
| 点数だけ記録 | 何が変わったのか分からない | 変化領域を 1 行で残す(例:嚥下/発話/易疲労) |
| 条件が不明 | 病勢か条件差か判定できない | 時間帯・内服・活動直後を分かる範囲で書く |
| 比較対象がバラバラ | 前回と同じ意味で比べられない | 外来は外来、病棟は病棟で同場面の型を固定する |
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. MG-ADL は毎回いつ取るのが良いですか?
A. “毎回同じ条件” が最優先です。外来なら「午前・内服後」、病棟なら「介入前」など、場面ごとに型を決めると比較しやすくなります。
Q2. 内服時刻が分からないときはどうしますか?
A. 分からないこと自体を短く残します(例:「内服時刻不明」)。その上で、次回は服薬時刻を確認して同条件化を目指します。
Q3. 点数が変わったとき、何を一言で残すべきですか?
A. 困りごとが増えた領域を一言で残します。例として、嚥下、発話、易疲労、歩行などです。点数+条件+一言が揃うと、介入や観察の方向が決まりやすくなります。
Q4. 活動直後にしか取れない場合は使えませんか?
A. 使えます。ただし、前回と同じ条件で比較できない場合は「歩行練習直後」「介入後」などの条件差を必ず添えます。条件差を書けば、点数の解釈が崩れにくくなります。
Q5. MGFA と MG-ADL はどう使い分けますか?
A. MGFA は重症度分類や共通言語として使い、MG-ADL は日々の困りごとの変化を追う用途で使います。最重症時の分類と、経時変化の点数を混ぜないことがポイントです。
次の一手
- 全体像を整える:重症筋無力症の重症度評価まとめ
- 球・呼吸優位を見逃さない:MGFA a/b の見分け方
参考文献
- Wolfe GI, Herbelin L, Nations SP, Foster B, Bryan WW, Barohn RJ. Myasthenia gravis activities of daily living profile. Neurology. 1999;52(7):1487-1489. doi: 10.1212/WNL.52.7.1487 / PubMed: 10227640
- Muppidi S, Wolfe GI, Conaway M, Burns TM; MG Composite and MG-QOL15 Study Group. MG-ADL: still a relevant outcome measure. Muscle Nerve. 2011;44(5):727-731. doi: 10.1002/mus.22140 / PubMed: 22006686
- Narayanaswami P, Sanders DB, Wolfe G, et al. International Consensus Guidance for Management of Myasthenia Gravis: 2020 Update. Neurology. 2021;96(3):114-122. doi: 10.1212/WNL.0000000000011124 / PubMed: 33144515
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


