BOS・COM・LOSの違い|まず結論
BOS(支持基底面)は身体を支える「土台」、COM(身体質量中心)は身体全体の質量が集中するとみなす「点」、LOS(安定性限界)はBOSを変えずに姿勢を保ちながらCOMを移動できる「範囲」です。3つはバランス評価で頻出しますが、同じ意味ではありません。
臨床では「足幅が狭いから不安定」とだけ考えず、BOSの条件が合わないのか、COMを狙った方向へ動かせないのか、COMを動かせても本人が実際に使えるLOSが狭いのかを分けて観察します。本記事では、3つの違いからLOSの見方、機器がある場合の指標、機器がない場合の観察、評価へのつなげ方まで整理します。

BOS・COM・LOSを1枚で見分ける
3つを見分けるポイントは、「何が土台で、何が動き、どこが限界なのか」です。BOSは支持条件、COMは身体質量中心の位置、LOSはその条件下で実際に利用できる移動範囲を表します。
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| 用語 | 意味 | 臨床で確認すること | 問題があるときの例 |
|---|---|---|---|
| BOS | 身体と支持面の接触によって形成される支持基底面 | 足幅、足部位置、接触面、支持物の有無 | 開始姿勢の時点で支持条件が合わず不安定 |
| COM | 身体全体の質量が集中しているとみなす三次元上の点 | どの方向へ、どの程度、どのように身体質量中心を移動できるか | 目標方向へ十分に移動できない、移動が小さい、偏りがある |
| LOS | BOSを変えずに姿勢を保ちながらCOMを移動できる機能的な範囲 | どの方向まで到達できるか、そこで制御できるか、開始位置へ戻れるか | 足部位置には余裕があっても途中で止まる、ステップや支持が必要になる |
静止立位では、COMの床面への投影位置とBOSの関係が姿勢安定性を考える手掛かりになります。ただし、歩行やステップのようにBOS自体が変化する課題では、この関係だけで動的バランスを説明することはできません。
LOSはBOSの端と同じではない
BOSの境界とLOSの境界は同じではありません。BOSは接触面によって決まる物理的な範囲ですが、LOSはその人が支持基底面を変えずに実際に身体を制御できる機能的な範囲です。
たとえば足部の外縁までBOSが存在していても、その位置まで安全にCOMを移動できるとは限りません。関節可動域、筋力、疼痛、感覚情報、運動制御、転倒への恐怖などによって、実際に利用できる範囲は変化します。
したがって、臨床では「COMがBOS内にあるから問題なし」と判断するのではなく、どの方向まで随意的に移動でき、その位置を制御し、必要に応じて開始位置へ戻れるかを確認します。
安定性限界(LOS)はどう評価する?
機器を用いたLOSテストと、ベッドサイドで行う臨床観察は区別して扱います。専用機器を用いるLOSテストでは、随意的な重心移動を複数の指標で数値化できます。一方、機器がない場合は標準化されたLOSテストの代替とはせず、開始条件を固定した臨床観察として記録します。
LOSテストの5指標|RT・MVL・EPE・MXE・DCL
LOSテストでは、使用する機器やプロトコルによって表記・算出方法に違いがありますが、代表的にはRT、MVL、EPE、MXE、DCLなどが用いられます。重要なのは、1つの指標から障害の原因を直接断定しないことです。
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| 指標 | 主に表すこと | 値から確認すること | 追加で確認すること |
|---|---|---|---|
| RT | 合図から移動開始までの時間 | 随意運動を開始するまでの遅れ | 指示理解、注意、運動開始、恐怖、疼痛など |
| MVL | 目標方向への移動速度 | どの程度の速度で移動できたか | 筋出力、可動域、慎重さ、運動制御など |
| EPE | 最初の運動で到達した位置 | 初回の随意移動でどこまで到達できたか | 予測した移動量、恐怖、可動域、筋力など |
| MXE | 試行中の最大到達位置 | 最終的にどこまで到達できたか | EPEとの差、修正運動の有無、到達までの過程 |
| DCL | 目標方向に対する移動の正確性 | 目標外方向への余分な移動がどの程度あったか | 方向特異的な運動制御、左右差、代償運動など |
「RTが遅いから恐怖」「EPEが小さいから筋力低下」のように、指標と原因を1対1で結びつけないことが重要です。LOSテストは問題の特徴を数値化する材料であり、その背景は身体機能、感覚、認知、疼痛、課題条件などと組み合わせて判断します。
機器がない場合は固定条件で観察する
機器がない場合も、支持基底面を変えずにどこまで身体を移動できるかを観察できますが、これは標準化されたLOSテストそのものではありません。再評価に使う場合は、条件をそろえて比較できる形で残します。
- 開始条件を記録する
足幅、足先の向き、視線、履物、支持物、介助の有無をそろえます。 - 方向を決めて移動する
前・後・右・左など、確認する方向を決めて、支持基底面を変えずに身体を移動します。 - 到達だけでなく制御を見る
どこまで移動できたか、停止できたか、開始位置へ戻れたかを確認します。 - 代償を記録する
体幹回旋、過度な股関節運動、足趾の過緊張、支持物への接触、ステップなどを残します。 - 再評価では同じ条件を使う
条件を変更した場合は、何を変えたかが分かるように記録します。
たとえば「右方向への移動が小さい」とだけ記録するより、「足幅20cm・開眼・上肢支持なし。右方移動で体幹左側屈が増え、支持基底面を変えずに保持できる範囲が左より小さい」のように、条件と観察した現象を分けて残すと再評価しやすくなります。
BOS・COM・LOSを評価へどうつなげる?
尺度を先に選ぶのではなく、「何を確かめたいか」を決めてから評価を選びます。BOS・COM・LOSだけですべてのバランス障害を説明しようとせず、感覚統合、予測的姿勢制御、反応的姿勢制御、歩行など別の問題が疑われる場合は評価軸を切り替えます。
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| 確認したいこと | 評価候補 | 考え方 |
|---|---|---|
| 前方へどこまで到達できるか | FRT | 固定した支持基底面で前方到達距離を数値化する |
| 随意的な多方向重心移動 | 機器を用いたLOSテスト | 方向別の到達や移動制御を複数指標で確認する |
| 複数の姿勢制御システム | Mini-BESTestなど | LOSだけでなく、予測的・反応的制御や歩行を含めて評価する |
| 歩行中のバランス | FGAなど | 支持基底面が変化する歩行課題として評価する |
特に、外乱を受けてからステップが出ない問題はLOSだけで説明せず、反応的姿勢制御として評価する必要があります。歩行中のふらつきも同様に、静止立位でのBOSとCOMの関係だけで判断しません。
臨床では4ステップで見分ける
実際の評価では「条件 → 方向 → 破綻点 → 再評価」の順で見ると、BOS・COM・LOSを混同しにくくなります。
-
1.BOSの条件をそろえる
足幅、足部位置、支持面、上肢支持、履物などを確認します。 -
2.COMをどの方向へ動かすか決める
前・後・右・左など、問題となる方向を明確にします。 -
3.どこで破綻するかを見る
動き出せない、移動量が小さい、方向がずれる、途中でステップする、戻れないなどに分けます。 -
4.1条件だけ変更して再確認する
足幅、視覚、支持面、速度などを一度に複数変えず、反応の違いから原因仮説を絞ります。
記録では「LOS低下」とまとめるより、どの条件・方向で、どの現象が起きたかを残します。再評価でも同じ条件を使うことで、変化を説明しやすくなります。
BOS・COM・LOSで迷いやすい4つの場面
迷いやすいのは、BOSとLOSを同じものとして扱うこと、COMの移動不足をすぐ筋力低下と判断すること、静的立位だけで動的バランスまで判断することです。結果だけでなく、課題条件と破綻した場面をセットで確認します。
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| 迷いやすい場面 | 避けたい判断 | 確認すること | 記録例 |
|---|---|---|---|
| 足幅を広げると安定した | LOSも改善したと判断する | BOS条件の変更と、実際の随意移動範囲を分けて確認する | 「足幅拡大で立位保持改善。右方到達範囲は変化なし」 |
| 一方向へ届かない | 筋力不足だけで説明する | 疼痛、ROM、恐怖、感覚、運動制御を追加確認する | 「右方移動で疼痛出現後に移動停止」 |
| 最終的には大きく動ける | 問題なしと判断する | 初回到達、方向性、修正運動、到達までの時間も確認する | 「最大到達は確保するが初回移動が小さく修正を要す」 |
| 静止立位は安定している | 歩行・方向転換も安全と判断する | BOSが変化する実際の動作を別に評価する | 「静止立位は自立、方向転換時に左側へステップ修正あり」 |
BOS・COM・LOSに関するよくある質問
特に混同しやすいBOSとLOS、COMとCOP、FRTとの関係を簡潔に整理します。
LOSはBOSの端までの距離という意味ですか?
同じではありません。BOSは身体と支持面の接触によって決まる物理的な範囲です。一方、LOSはBOSを変えずに姿勢を保ちながら実際にCOMを移動できる機能的な範囲です。同じ足幅でも、疼痛、可動域、筋力、感覚、恐怖などによってLOSは変化します。
COMとCOPは同じですか?
同じではありません。COMは身体全体の質量が集中しているとみなす点で、COPは支持面に作用する床反力の合力の作用点です。静止立位の評価では関連して扱われますが、概念として置き換えることはできません。機器を用いて測定するときは、その機器がどの変数を算出・表示しているかも確認します。
FRTだけでLOS全体を評価できますか?
FRTは固定した支持基底面で前方到達距離を評価する臨床的な方法ですが、前方以外の方向、移動速度、方向制御、反応的姿勢制御、歩行中のバランスまで1つの値で表すものではありません。目的に応じて他の観察や評価を組み合わせます。
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参考文献
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著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

