新人PTの記録・報連相の基本|SOAP記載例・申し送り・相談

キャリア
記事内に広告が含まれています。

新人PTの記録・報連相|SOAPと申し送りの基本

新人PTが記録・報連相で最初に押さえたいのは、「カルテに何を残すか」「病棟へ何を伝えるか」「いつ先輩や他職種へ相談するか」の違いです。記録では観察した事実・評価・次回方針をつなぎ、申し送りでは次のケアに必要な条件を共有します。安全に関わる迷いがあれば、記録の完成を待たずに相談することが重要です。

この記事では、歩行中にふらつきがみられた架空症例を使い、SOAPの記載例、病棟への申し送り例、相談のタイミングを一続きで整理します。特に「リハビリ中に歩けたこと」と「病棟でも安全に移動できること」の違いを確認し、患者さんの状態を次の担当者へ正しく伝えられるようにします。

まず確認|記録・申し送り・相談の使い分け

記録・申し送り・相談は、同じ情報を扱っていても目的が異なります。新人PTは、情報をすべて同じ方法で伝えるのではなく、誰が次に何を判断するかによって共有方法を選びます。

新人PTの記録・申し送り・相談の使い分け
区分 主な内容 タイミング
記録 実施内容、観察事実、介助量、評価、次回方針 院内ルールに従い、介入後速やかに記録する
申し送り 病棟ケアに影響する状態変化、危険場面、介助条件、未確認事項 次のケアや対応が行われる前に伝える
相談 状態の急変、転倒リスク、介助方法や介入継続の判断に関する迷い 緊急性に応じて直ちに、または判断・実施前に確認する

例えば、歩行器で20m歩行できたものの、方向転換時に右側へふらつきがみられた場合を考えます。「20m歩行できた」という結果だけでは、病棟での介助方法を変更してよいか判断できません。

重要なのは、「カルテに書いたこと」と「相手に伝わったこと」を区別することです。病棟の介助方法や安全判断に影響する情報は、必要な相手へ直接共有し、次の対応を確認します。

図解|同じ所見をSOAP・申し送り・相談へつなぐ

次の図は、1つの観察所見を記録・申し送り・相談へつなげる流れを示しています。今回の症例では、方向転換時のふらつきと、病棟トイレ移動が未評価である点が判断の分かれ目です。

新人PTの記録・報連相フロー。歩行器で20m歩行した症例について、観察した事実からSOAP記録、病棟への申し送り、相談判断、再評価までの流れを示した図解
新人PTの記録・報連相フロー。観察した事実をSOAPへ記録し、病棟への申し送り、相談判断、再評価へつなげます。リハビリで歩けたことと、病棟ADLで安全に移動できることは分けて判断します。

この図は、情報整理の順番を示したものであり、緊急時にすべての手順を順番どおり実施するものではありません。患者さんの急変時は、安全確保と院内の緊急対応を優先してください。

SOAP記録の書き方|同じ症例でS・O・A・Pをつなぐ

SOAPでは、Sに主観的情報、Oに客観的情報、Aに評価・解釈、Pに計画を記載します。新人PTが特に意識したいのは、OとAを混同しないこと、Pを「継続」だけで終わらせないことです。

以下は、歩行器を使用した歩行練習中に、方向転換でふらつきがみられた架空症例の記載例です。実際の診療録では、患者さんの状態、施設の様式、必要な実施情報に合わせて記録してください。

SOAP記載例|方向転換時にふらついた症例
項目 記載例
S:主観的情報 本人より「曲がるときが少し怖いです」と発言あり。
O:客観的情報 歩行器を使用し、平坦な廊下で20m歩行。直線歩行は見守り下で実施。方向転換時に右側への側方動揺を認め、姿勢保持に介助を要した。病棟トイレ移動は未評価。
A:評価・解釈 直線歩行は見守り下で可能だが、方向転換時の姿勢安定性に課題がある。今回の結果のみでは、病棟トイレ移動の安全性は判断できない。
P:計画 方向転換時の姿勢制御と必要介助量を再評価する。病棟の動線と現在の移動方法を確認し、必要に応じて病棟スタッフと共同評価を行う。

これはSOAPの書き分けを示すための記載例です。実際の診療録では、実施時刻、実施内容、必要なバイタルサインなど、施設の記録規程や算定上必要な事項を別途確認してください。

判断の境界|20m歩けても病棟トイレ移動が安全とは限らない

この症例で区別したいのは、「リハビリ中に確認した歩行能力」と「生活場面で必要な移動能力」です。

廊下で20m歩行できても、病棟トイレでは狭い動線、方向転換、便器前での位置調整、移乗などが必要になります。これらを評価していない場合、単回の歩行結果だけで病棟の介助量や移動方法を変更できるとは判断しません。

また、「軽介助」「接触介助」「見守り」などの表現は施設によって運用が異なる場合があります。介助量の名称だけでなく、どの動作で、どのような介助を要したかを具体的に残すことが重要です。

AとPは「問題の解釈」と「次の行動」に分ける

Aには、観察事実から考えられる問題やリスクを記載します。Pには、その問題に対して次に何を評価・実施するかを記載します。

SOAPのA・Pで避けたい表現と改善例
項目 不十分な例 改善例
A 方向転換時にふらつきあり 方向転換時の姿勢安定性に課題があり、病棟移動の安全性は未確認
P 歩行練習を継続 方向転換時の介助量を再評価し、病棟の移動条件を確認する

SOAP各欄の詳しい書き分けや疾患別の記載例は、SOAPカルテの書き方と記載例で確認できます。

病棟への申し送り|結論・危険場面・未確認事項・依頼を伝える

病棟への申し送りでは、患者さんの状態を長く説明するより、次のケアに必要な情報を優先します。現在の状態、危険場面、未確認事項、依頼内容を分けて伝えると、相手が次に何を確認すべきか明確になります。

同じ症例の申し送り例

病棟スタッフへの申し送り例

「本日、リハビリでは歩行器を使用して20m歩行しました。直線では見守りで実施できましたが、方向転換時に右側へふらつき、姿勢を支える介助が必要でした。

病棟トイレでの移動はまだ評価できていません。今回の歩行結果だけでは、病棟の介助方法を変更できるとは判断していません。

現在の病棟での移動方法を確認し、必要であれば共同で評価したいと考えています。評価できるタイミングを相談させてください。」

この申し送りでは、歩行距離だけでなく、方向転換時に介助を要したことと、病棟トイレ移動が未評価であることを伝えています。

未評価の場面について、具体的な介助位置や介助量を推測して指示していない点も重要です。実際の介助方法は、病棟での評価と担当者間の確認を経て判断します。

申し送りで確認したい4項目

病棟への申し送りで最低限そろえたい内容
項目 伝える内容
現在の状態 どの環境・補助具・介助条件で実施できたか
危険場面 どの動作で、どのような不安定さが生じたか
未確認事項 まだ評価できていない生活場面や動作条件
依頼内容 誰と何を確認し、次にどう対応したいか

申し送り後は相手の理解と対応も確認する

申し送りは、話し終えた時点で完了とは限りません。特に介助方法や安全条件の変更に関わる場合は、受け手が内容を理解できたか、誰が次の確認を行うかを確かめます。

介助方法の変更は、PTの単回評価だけで決めず、患者さんの状態、施設の手順、他職種の観察結果、担当者間の合意を踏まえて判断します。口頭共有と診療録の情報が食い違わないようにすることも重要です。

報連相のタイミング|すぐ相談する場面と後で確認する場面

新人PTが相談のタイミングを判断するときは、質問の難しさよりも、患者さんの安全性と次の行動への影響を優先します。状態の急変や介入継続の判断に迷う場合は、記録よりも安全確保と連絡を先に行います。

新人PTの報連相タイミング早見表
場面 優先する対応 相談タイミング
急な意識状態の変化、強い胸痛、著しい呼吸困難など 介入を中止し、安全確保と院内の緊急対応を行う 直ちに院内の緊急連絡手順に従う
新たなふらつき、介助量の増大、転倒リスクへの懸念 無理に進めず、安全な状態を確保して評価・相談する 介入継続や次の移動方法を決める前
病棟での介助方法を変更したい リハ場面と病棟場面の条件を照合する 変更・実施前に関係者と確認する
病棟スタッフの対応に影響する変化があった 現在の状態、危険場面、必要な対応を共有する 次のケアが行われる前に伝える
SOAPのA・Pや記録表現に迷う 観察事実と自分の解釈を整理する 緊急性がなければ通常の指導・確認機会で相談する

先輩への相談例|事実・考え・迷いを分ける

緊急性が低い相談では、「確認できた事実」「自分の考え」「判断に迷っている点」を分けて伝えると、指導者も判断過程を確認しやすくなります。

先輩PTへの相談例

「歩行器で20m歩行できましたが、方向転換時に右側へのふらつきがあり、介助が必要でした。

病棟トイレ移動については、同じ条件で安全とは判断できないと考えています。

病棟スタッフと共同評価する前に、追加で確認すべき動作や介助条件について相談したいです。」

このような相談では、最初から正しい解釈を完成させる必要はありません。どこまで確認できていて、どの判断で迷っているかが分かることが大切です。

ただし、緊急性が高い場合は、自分の考えを整理するために連絡を遅らせてはいけません。まず現在の状態とすでに行った対応を伝え、院内の手順に従ってください。

離床中止時など、状態変化をSBAR形式で報告する具体的な方法は、離床中止時のSBAR報告・記録で確認できます。

よくある失敗|曖昧な記録と伝え漏れを防ぐ

新人PTの記録・報連相で見直したいのは、文章の長さよりも、次の担当者が判断できる情報になっているかどうかです。特に、曖昧な所見、根拠のない判断、未確認事項の伝え漏れに注意します。

新人PTの記録・報連相でよくある失敗と修正例
避けたい例 問題点 修正の方向
「歩行良好」 環境や介助量が不明 補助具、距離、介助条件、反応を具体化する
「ふらつきあり」 発生場面が不明 方向転換時など、具体的な動作条件を示す
「次回も継続」 再評価する内容が不明 次回確認する動作や条件を記載する
「リハでは歩けました」 病棟での安全条件が伝わらない 確認できた能力と未評価の生活場面を分ける
「カルテを見てください」 次のケアに必要な情報の伝達が遅れる可能性 必要な相手へ直接共有し、対応を確認する

相談した内容は必要に応じて記録へ残す

患者さんの安全管理や介入方針に影響する相談では、誰に何を伝え、どのような指示・合意が得られたかを、院内の記録ルールに従って残します。

例えば「看護師へ報告済み」だけでは、何を報告し、次に誰が対応するのか分からない場合があります。共有した情報、相手から得た回答、実施した対応が追える記録を心がけます。

新人PTが最初に身につけたい習慣

入職直後は、毎回きれいな文章を書くことより、必要な事実を残し、未確認事項を明確にし、安全に関わる情報を適切な相手へ伝えることを優先します。

先輩の記録や申し送りを参考にするときも、言い回しをそのまま覚えるのではなく、「何を先に伝えているか」「どの所見を根拠に判断しているか」「次の担当者が何を確認できるか」に注目してください。

よくある質問

SOAP以外の記録様式でも同じ考え方を使えますか?

使えます。施設で定められた記録様式を優先し、その中で観察事実、評価・判断、今後の方針が分かるように整理します。SOAPは情報を整理する方法の1つであり、すべての施設で使用する必要があるという意味ではありません。

申し送りたい相手が不在の場合はどうすればよいですか?

緊急性と次のケアへの影響を確認し、院内で定められた代替連絡先や責任者へ共有します。安全に関わる情報は、相手が不在という理由で必要な連絡を先送りしないようにします。

口頭で申し送れば、カルテには書かなくてもよいですか?

口頭での申し送りは、必要な診療記録の代わりにはなりません。施設の記録ルールに従って、実施内容、状態変化、評価、必要な共有・対応事項を記録します。口頭共有と記録が食い違わないようにしてください。

次の一手|安全管理と新人PTの学習へつなげる

新人PTの記録・報連相は、「何を確認したか」「何を判断したか」「何が未確認か」「誰へ伝えるか」を一続きで整理することが基本です。

まずは所属施設の記録・連絡ルールを確認し、介入後の所見をSOAPへ落とし込み、病棟へ必要な内容を共有できるか振り返ってみてください。

参考文献

日本理学療法士協会の新人理学療法士職員研修ガイドラインでは、報告・連絡・相談を適切に行うことが到達目標として示されています。また、施設の研修事例として、SOAPに沿ったカルテ記載や、他職種にも理解できる記録の作成が紹介されています。[1]

AHRQのTeamSTEPPSでは、医療者間で情報を構造化して伝えるSBARや、相手の理解を確認するコミュニケーション方法が紹介されています。[2,3]

本記事の「記録・申し送り・相談の使い分け」、架空症例、図解は、公式に定められた統一基準ではなく、これらの考え方を参考にした実務上の整理です。実際の運用では所属施設のルールと担当者の指示を優先してください。

  1. 公益社団法人日本理学療法士協会. 新人理学療法士職員研修ガイドライン(初版)[Internet]. Available from: https://www.japanpt.or.jp/assets/pdf/pt/lifelonglearning/introeduprogram/education_training/training_guidelines_201111.pdf(2026年10月8日閲覧).
  2. Agency for Healthcare Research and Quality. TeamSTEPPS Additional Video: SBAR in Inpatient Medical Teams [Internet]. 2023. Available from: https://www.ahrq.gov/teamstepps-program/resources/additional/sbar.html(2026年10月8日閲覧).
  3. Agency for Healthcare Research and Quality. TeamSTEPPS Tools [Internet]. 2024. Available from: https://www.ahrq.gov/teamstepps-program/resources/modules/index.html(2026年10月8日閲覧).

著者情報

rehabilikun のアイコン

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

運営者プロフィール / 編集・引用ポリシー / お問い合わせ