骨粗鬆症の栄養指導:PT 実務ガイド【2025】

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リハ栄養
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骨粗鬆症の栄養は「 4 本柱 」で考える

骨強度は「骨密度 × 骨質」で決まり、食事は両者に影響します。PT が患者指導でまず押さえるのは、① カルシウム( Ca )② たんぱく質 ③ ビタミン D ④ ビタミン K の 4 本柱です。とくに日本では Ca とビタミン D が不足しがちで、日光曝露の減少や魚食の低下が背景にあります。基礎疾患や服薬状況(例:ワルファリン)により個別化が必要な点も臨床の要点です。日本骨粗鬆症学会 GL食事摂取基準 2025 を基礎に整理します。

数値目標は患者の年齢・体格・疾患で調整しますが、一般的には Ca は成人で 650–750 mg/日、ビタミン D は 9.0 μg/日(成人の目安量)、高齢者のたんぱく質は少なくとも 1.0 g/kg/日を確保する方針が現実的です。ビタミン D の血中指標である 25(OH)D は 30 ng/mL 以上を充足とする国内指針が広く用いられます。Ca 目標(2025)D 目標(2025)ESPENJBMR D 判定

栄養目標と食品の置き換え目安( 2025 版)

食事摂取基準 2025 を起点に、患者が「何をどれくらい食べればよいか」を即答できる形に落とします。下表は一般成人の目安です( CKD・ワルファリン等は後述の注意を優先)。数値は 1 日量の目安で、体格や活動量で増減します。

栄養素 目標量の目安 主な食品例 1 日の置き換え目安
カルシウム 男性 750 mg / 女性 650 mg 牛乳・ヨーグルト、干しエビ、小松菜、木綿豆腐 不足 200 mg → 牛乳 180 g 又は ヨーグルト 170 g 又は 木綿豆腐 230 g
ビタミン D 9.0 μg(成人の目安量) 鮭・サバ・イワシ、きくらげ、干し椎茸 鮭 切身 1 切(約 100 g)で 10 μg 前後
ビタミン K 十分摂取(定量目標なし) 納豆、ほうれん草、ブロッコリー 納豆 1 パック(約 45 g)/日 をまず習慣化
たんぱく質 高齢者は ≥ 1.0 g/kg/日 魚、肉、卵、乳、大豆 毎食 25–30 g のたんぱく質食品(例:魚 100 g+納豆 1/2)

Ca と D は相補関係にあり、D が不足すると Ca 吸収が低下します。血清 25(OH)D は 20 ng/mL 未満で欠乏、20–30 ng/mL 不足、30 ng/mL 以上で充足とする国内判定が広く用いられます。D 目安量(2025)判定基準

患者説明に使えるシンプルな 1 日例です。Ca・D・K・たんぱく質の同時確保と咀嚼・嚥下の配慮(刻み/とろみ等)をあわせて指導します。

  • 朝:納豆ご飯+小松菜の味噌汁+ヨーグルト( Ca・K・たんぱく質)
  • 昼:鮭の塩焼き 100 g+ひじき煮+豆腐の小鉢( D・たんぱく質・ Ca )
  • 間:牛乳 200 mL( Ca 補填)
  • 夜:鶏むね 100 g の生姜焼き+ブロッコリー胡麻和え+きのこ汁( K・たんぱく質)

OK / NG 早見表(摂り方のコツ)

テーマ OK(推奨) NG(控える) 理由・補足
Ca × D 魚+乳製品の組合せ/屋外の短時間日光 D 不足のまま Ca だけ増やす D 不足は Ca 吸収低下と PTH 上昇に繋がる
ビタミン K 納豆 1 パック/日+青菜 ワルファリン中は摂取量の大幅な日差 K 変動は INR 不安定化。一定量で“安定”を目指す
リン 未加工の魚・肉・乳で確保 加工食品・清涼飲料の過剰 無機リン添加は吸収率が高く Ca 代謝に悪影響
塩分 減塩の醤油・味噌を活用 カップ麺・漬物の常用 高 Na は Ca 排泄↑/生活習慣病悪化

病態・薬剤別の注意(必ず個別化)

CKD:リン・カリウム制限や活性型 D の管理が必要。食品添加由来のリンは吸収率が高く血管石灰化のリスクも考慮します。GFR・リン・ Ca・PTH を見ながら栄養士と協働してください。CKD×骨粗鬆症レビュー

GIOP(ステロイド):骨折リスクが高く、Ca・ D の確保は必須。薬物療法の適応判断と並行し、栄養・運動を標準化します。GIOP 2023/ワルファリン:ビタミン K は「ゼロ」ではなく「毎日ほぼ一定量」を徹底(納豆を完全禁止ではなく主治医の方針に沿って安定摂取)。

PT の患者指導 3 ステップ(外来・病棟 10 分)

① 食行動スクリーニング:乳製品・魚・納豆・加工食品の頻度、日光曝露、体重変化を 1 分で確認。② 目標設定:Ca 650–750 mg/ D 9 μg/たんぱく質 ≥ 1.0 g/kg/K は“安定摂取”。③ 置き換え処方:不足 200 mg Ca を“牛乳 180 g”など具体的に置き換え、次回フォローで達成度と体重・便通・血液データを確認。

納豆と骨折リスク:日本のコホート

日本の大規模コホートでは、納豆の習慣的摂取が閉経後女性の骨粗鬆症性骨折リスク低下と関連しました(交絡因子調整後)。“豆腐など他の大豆”では同様の関連が見られず、MK-7( K2 )の関与が示唆されます。日常で取り入れやすい 1 食材として推奨しやすい知見です。Kojima 2020

同コホートでは牛乳摂取増と骨折リスク低下の関連も報告があり、Ca 供給源として“牛乳 or ヨーグルトを 1 回/日”の提案は実務的です。Kojima 2023

参考文献

  1. 日本骨粗鬆症学会. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2023. 出版物ページ: https://www.josteo.com/publications/guideline/
  2. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準( 2025 年版 )策定ポイント. 2024. PDF
  3. 健康長寿ネット. ビタミン D の働きと 1 日の摂取量( 2025 版 ). 2025. 記事
  4. 食事摂取基準( 2025 )カルシウム目安(要約). 2025. 記事
  5. 日本骨代謝学会. ビタミン D 不足・欠乏の判定指針. 2017. PDF
  6. Volkert D, et al. ESPEN practical guideline: Clinical nutrition and hydration in geriatrics. Clin Nutr. 2022;41:958–989. PDF
  7. Kojima A, et al. Natto Intake is Inversely Associated with Osteoporotic Fracture Risk in Postmenopausal Japanese Women. J Nutr. 2020. PubMed
  8. Kojima A, et al. Dairy intake and osteoporotic fracture risk in Japanese women. 2023. ScienceDirect
  9. 今西康雄. 慢性腎臓病における骨粗鬆症の診断と治療. Therapeutic Research. 2023. PDF
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