AWGS 2019の握力・歩行速度|まず測り方とカットオフを確認
AWGS 2019で握力・歩行速度を評価するときは、カットオフだけでなく、何回測るか・どの値を採用するか・6 mをどう計測するかまでそろえることが重要です。結論として、握力は少なくとも2回測定して最大値を採用し、歩行速度は6 mの通常歩行をmoving startで少なくとも2回測定して平均値を用います。この記事では、AWGS 2019を参照する医療従事者向けに、測定方法、カットオフ、条件固定、記録例を1ページで整理します。
AWGS 2019の診断フローから確認する
このページで詳しく扱うのは、AWGS 2019における握力と6 m歩行速度の測定・採用値・記録です。possible sarcopeniaの判定フロー、筋量評価、サルコペニア診断全体、AWGS 2025の変更点は親記事側へ役割を分けます。
まずここだけ|AWGS 2019の要点
- 握力:少なくとも2回測定し、最大値を採用します。両手または利き手で評価できます。
- 歩行速度:6 m通常歩行をmoving startで測定し、減速相を含めません。少なくとも2回測定し、平均値を用います。
- カットオフ:握力は男性 < 28 kg、女性 < 18 kg、6 m歩行速度は < 1.0 m/s です。
- 再評価:測定側、姿勢、握力計、補助具、靴、歩行路など、結果へ影響する条件を記録してそろえます。
→ AWGS 2019 握力・6 m歩行速度 記録シートPDFへ

AWGS 2019の握力・歩行速度カットオフ
AWGS 2019では、低筋力の指標として握力、低身体機能の指標の一つとして6 m歩行速度を用います。まずカットオフを確認し、そのうえで測定方法と採用値をそろえることが重要です。
| 項目 | カットオフ | 測定・採用値 |
|---|---|---|
| 握力 | 男性 < 28 kg 女性 < 18 kg |
少なくとも2回測定し、最大値を採用 |
| 6 m歩行速度 | < 1.0 m/s | 通常歩行・moving startで少なくとも2回測定し、平均値を採用 |
握力や歩行速度がカットオフを下回ったことだけで、サルコペニアの確定診断になるわけではありません。筋量を含む診断フロー全体は、親記事で確認してください。
握力は少なくとも2回測定し、最大値を採用する
AWGS 2019の握力評価では、最大努力による握力を少なくとも2回測定し、その最大値を採用します。両手または利き手で評価できるため、再評価では測定側と採用方法が分かるように記録しておくことが重要です。
握力は、使用する機器や測定姿勢、握り幅などの条件によって数値が変わる可能性があります。経時変化をみる場合は、同じ握力計・同じ姿勢・同じ測定側・同じ機器設定をできるだけそろえます。条件を変更した場合は、前回値との差を患者さん自身の変化だけで説明しないようにします。
AWGSの基準と施設内ルールを分ける:「3秒間握る」「左右交互に測る」「休憩時間を何秒にする」といった細かな運用を施設内で固定することはできますが、それらをAWGS 2019の必須条件そのものとして扱わないようにします。
疼痛、術後制限、麻痺、関節変形などによって十分な把持が難しい場合は、数値だけを残さず、測定できた条件や測定困難となった理由も記録します。
歩行速度は6 m通常歩行をmoving startで測る
AWGS 2019の6 m歩行速度では、通常の速さで歩いてもらい、moving startで6 m区間を測定します。減速相は計測に含めず、少なくとも2回実施した平均値を用います。
歩行速度は、歩行距離だけでなく開始方法によっても結果が変わります。静止立位からスタートして加速相まで計測する方法と、moving startによるAWGS 2019の測定値を同じ条件として比較しないことが重要です。
臨床では4 mや10 mの歩行速度を使うこともあります。これらの方法自体が不適切という意味ではありませんが、AWGS 2019の6 m通常歩行と測定条件が異なる場合は、距離・開始方法・採用値を記録して別条件として扱います。距離による違いは、歩行速度4 m・6 m・10 mの違いで詳しく確認できます。
握力・歩行速度で起きやすい測定条件のズレ
再評価で避けたいのは、患者さんの変化ではなく、測定条件の違いを改善・悪化として読んでしまうことです。初回から測定条件を記録しておくと、縦比較の解釈がしやすくなります。
| 場面 | 避けたい状態 | そろえる・記録すること |
|---|---|---|
| 握力の測定回数 | 初回は複数回、次回は1回だけなど測定方法が変わる | 少なくとも2回測定し、最大値を採用する |
| 握力の測定側 | 両手評価と利き手評価を説明なく混在させる | 右・左・利き手など測定側を明記する |
| 握力の測定条件 | 姿勢や握力計の設定が変わっても記録しない | 姿勢、握力計、握り幅・設定を残す |
| 歩行の開始方法 | 静止スタートとmoving startを混在させる | 開始方法をそろえて記録する |
| 歩行距離 | 4 m、6 m、10 mを同じ測定系列として単純比較する | 計測距離と歩行路を明記する |
| 補助具・装具 | 使用条件が変わっても速度だけを比較する | 杖、歩行器、装具、靴、介助・見守り条件を残す |
カットオフと年代別参考値は別物として読む
AWGS 2019のカットオフは判定に使う境界であり、年代別平均値は同年代集団の中での位置を考えるための参考値です。同じ握力や歩行速度の数値でも、役割を混同しないようにします。
厚生労働省の年齢別体力基準値資料では、地域在住高齢者のデータをもとに握力と快適歩行速度の年代別参考値が示されています。ここに示す快適歩行速度は、AWGS 2019の6 m通常歩行カットオフを年代別に置き換える値ではありません。
| 年齢 | 握力 男性 | 握力 女性 | 快適歩行速度 |
|---|---|---|---|
| 65〜69歳 | 38.7 ± 5.9 kg | 23.8 ± 4.0 kg | 1.38 ± 0.23 m/s |
| 70〜74歳 | 35.3 ± 6.0 kg | 22.6 ± 3.9 kg | 1.33 ± 0.23 m/s |
| 75〜79歳 | 34.3 ± 6.1 kg | 21.5 ± 3.7 kg | 1.24 ± 0.23 m/s |
| 80歳以上 | 29.7 ± 5.3 kg | 19.6 ± 3.5 kg | 1.13 ± 0.25 m/s |
たとえば年代別平均値に近い数値であっても、AWGS 2019のカットオフを下回ればAWGS上の判定は別に考える必要があります。反対に、カットオフを上回っていても、年代別平均値との差や経時変化をみることには別の意味があります。
AWGS 2019 握力・6 m歩行速度 記録シートPDF
握力と6 m歩行速度の測定値だけでなく、測定側、姿勢、握力計、補助具、歩行路、介助条件などをA4 1枚で記録できるシートを用意しました。AWGS 2019のカットオフも同じ用紙で確認できるため、初回評価と再評価の条件をそろえたいときに使えます。
PDF v2の記録項目:握力の各試行・最大値、6 m歩行の時間・速度・平均値、AWGS判定、補助具・装具、歩行路、時間帯、握力計、握り幅・設定、介助・見守り、疼痛・息切れなどを記録できます。
PDFをこのページ内でプレビューする
コピペ用記録例:「2026-08-10 握力:右21 kg・左18 kg。両手を各2回測定し最大値21 kgを採用。6 m通常歩行:moving start、2回測定、平均1.03 m/s。条件=補助具なし、運動靴、同一廊下コース。次回も同一条件で再評価予定。」
測定条件が前回と異なる場合は、「補助具変更」「座位で測定」「歩行路変更」などを残し、数値差を単純に身体機能の変化だけで解釈しないようにします。
よくある質問
AWGS 2019の握力・歩行速度で、測定時に迷いやすい点をまとめます。
握力は何回測ればよいですか?
AWGS 2019では、少なくとも2回測定して最大値を採用します。両手または利き手で評価できるため、再評価では測定側と採用方法をそろえて記録します。
握力は3秒間握らないとAWGS 2019の測定になりませんか?
固定した3秒間の収縮は、AWGS 2019の必須条件として示されているものではありません。施設内で掛け声や持続時間をそろえる場合は、AWGSの必須条件ではなく施設内の標準化ルールとして区別します。
歩行速度は最速値と平均値のどちらを使いますか?
AWGS 2019の6 m通常歩行では、少なくとも2回測定した平均値を用います。最速歩行や最速値を使う別の歩行評価と混同しないようにします。
4 mや10 mの歩行速度をAWGS 2019の1.0 m/sと比較してよいですか?
AWGS 2019では6 m通常歩行が示されています。4 mや10 mを施設内評価として使う場合は、距離や開始方法が異なることを記録し、AWGS 2019の6 m測定と同一条件の値として扱わない方が安全です。
歩行が安全に実施できない場合はどうしますか?
安全性を優先し、無理に6 m歩行速度を測定しません。測定不能であることと理由を記録し、AWGSの診断全体を確認しながら、実施可能な評価や再評価の時期を検討します。
AWGS 2025が公開されていてもAWGS 2019を確認する意味はありますか?
AWGS 2025では、サルコペニアだけでなくmuscle healthへ焦点を広げる更新が示されています。一方、AWGS 2019を基準にした既存研究、院内書式、過去データとの比較などではAWGS 2019を確認する必要があります。本記事は、AWGS 2019の握力・6 m歩行速度を確認する各論ページとして使用してください。
次の一手
- A(全体像):老年症候群ハブでフレイル・サルコペニア周辺を整理する
- B(歩行を深掘り):歩行速度評価の測り方・解釈・記録を確認する
参考文献
- Chen LK, Woo J, Assantachai P, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment. J Am Med Dir Assoc. 2020;21(3):300-307.e2. doi: 10.1016/j.jamda.2019.12.012
- Chen LK, Hsiao FY, Akishita M, et al. A focus shift from sarcopenia to muscle health in the Asian Working Group for Sarcopenia 2025 Consensus Update. Nat Aging. 2025;5(11):2164-2175. doi: 10.1038/s43587-025-01004-y
- Kamide N, Kamiya K, Nakazono T, Ando M. Reference values for hand grip strength in Japanese community-dwelling elderly: a meta-analysis. Environ Health Prev Med. 2015;20(6):441-446. doi: 10.1007/s12199-015-0485-z
- 厚生労働省. 高齢者の体力測定に関する年代別基準値資料. PDF
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

