PEF(ピークフロー)とは?
PEF(Peak Expiratory Flow:ピークフロー)とは、息を最大限に吸い込んだあと、できるだけ強く速く吐き出したときの最大呼気流量を示す指標です。
簡単にいうと、PEFは「息を吐き出す瞬間の勢い」を見る数値です。
呼吸機能検査では、肺活量や1秒率だけでなく、空気をどれくらい速く吐き出せるかも重要です。PEFは、特に気道が狭くなっていないか、呼気の勢いが落ちていないかを確認するうえで役立ちます。
PEFは、喘息の状態把握や、閉塞性換気障害の評価、フローボリューム曲線の読み取りなどで出てくることがあります。
この記事では、PEFの意味、基準値の考え方、低下する原因、喘息・COPDでの見方、リハビリ場面で確認したいポイントを整理します。
PEFで何がわかる?
PEFで主にわかるのは、呼気初期にどれくらい勢いよく息を吐き出せるかです。
気道が狭くなっていたり、十分に強く吐き出せなかったりすると、PEFは低下しやすくなります。
| 視点 | 意味 | 考え方 |
|---|---|---|
| 呼気の勢い | 吐き出し始めの最大流量 | 強く速く吐けているかを見る |
| 気道の通りやすさ | 空気がスムーズに通るか | 気道狭窄があると低下しやすい |
| 検査時の努力 | 十分に吸って強く吐けたか | 努力不足でも低く出る |
| 経時的変化 | 日内変動や治療反応 | 喘息管理で参考になる |
PEFは、単独で診断を決める数値ではありません。症状、1秒率、フローボリューム曲線、SpO2、呼吸数などと合わせて確認することが大切です。
PEFの基準値の考え方
PEFは、年齢、性別、身長、体格などの影響を受けます。そのため、全員に共通する「この数値なら正常」と単純に判断するのは難しい指標です。
臨床では、予測値に対してどれくらい出ているか、または本人のベスト値からどれくらい低下しているかを確認します。
| 見方 | 内容 | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| 予測値との比較 | 年齢・性別・身長などから推定した値と比べる | 健診や呼吸機能検査 |
| 自己ベストとの比較 | その人の安定時の値と比べる | 喘息の自己管理 |
| 経時的変化 | 日ごとの変動や治療後の変化を見る | 症状変動の把握 |
特に喘息では、本人の自己ベスト値を基準にして、現在のPEFがどの程度低下しているかを見ることがあります。
数値を1回だけ見るよりも、同じ条件で測定した値を継続して見るほうが、状態変化を捉えやすくなります。
PEFが低下する原因
PEFが低下する原因は、気道狭窄だけではありません。
代表的には、次のような要因があります。

| 原因 | 起こること | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 気道狭窄 | 空気が通りにくくなる | 喘息、COPD、喘鳴、呼気延長 |
| 呼気筋力低下 | 強く吐き出しにくくなる | 筋力低下、疲労、神経筋疾患 |
| 努力不足 | 最大努力で吐けていない | 理解不足、疲労、測定手技 |
| 吸気不足 | 十分に吸えていない | 測定前の吸気量、胸郭可動性 |
| 咳・漏れ | 波形や値が不安定になる | マウスピース、咳込み、再現性 |
PEFが低い場合は、「気道が狭い」とすぐに決めつけず、測定条件や努力量も確認します。
喘息でPEFを見る理由
喘息では、気道が狭くなったり広がったりしながら症状が変動します。
そのため、PEFを継続して測定すると、気道狭窄の変化や症状の悪化傾向を把握しやすくなります。
| 視点 | 見方 | 意味 |
|---|---|---|
| 日内変動 | 朝と夜で差があるか | 症状の変動を把握しやすい |
| 自己ベスト比 | 安定時の値からどれくらい下がったか | 悪化の目安になる |
| 治療反応 | 吸入後に改善するか | 可逆性の参考になる |
| 症状との関係 | 咳・喘鳴・息苦しさと一致するか | 数値と症状をつなげて見る |
喘息では、症状が軽く見えてもPEFが低下していることがあります。一方で、測定手技が不十分でも低く出るため、値だけで判断しないことも大切です。
COPDではPEFをどう見る?
COPDでは、気道の慢性的な炎症や肺気腫性変化によって、息を吐き出しにくくなります。
PEFは呼気初期の勢いを反映するため、COPDでも低下することがあります。ただし、COPDの評価ではPEFだけでなく、1秒率や%1秒量、フローボリューム曲線などを合わせて確認します。
| 項目 | 見方 | 注意点 |
|---|---|---|
| PEF | 呼気初期の勢い | 低下することがある |
| 1秒率 | 閉塞性換気障害の有無 | 診断・評価で重要 |
| %1秒量 | 気流制限の程度 | 重症度の参考になる |
| 波形 | 呼気側のえぐれ | 閉塞性パターンを確認する |
閉塞性換気障害の基本は、閉塞性換気障害の評価方法で整理しています。
PEFとスパイロメトリーの関係
PEFは、スパイロメトリーで得られる指標のひとつです。
スパイロメトリーでは、FVC、FEV1、FEV1/FVC、PEF、フローボリューム曲線などを合わせて確認します。
| 指標 | 意味 | 主な見方 |
|---|---|---|
| FVC | 努力性肺活量 | 最後まで吐けた空気量 |
| FEV1 | 1秒量 | 最初の1秒で吐けた量 |
| FEV1/FVC | 1秒率 | 閉塞性換気障害の確認 |
| PEF | 最大呼気流量 | 吐き出し始めの勢い |
| フローボリューム曲線 | 流量と肺気量の関係 | 波形から特徴を見る |
スパイロメトリー全体の読み方を確認したい方は、スパイロメトリーの評価方法と解釈も参考になります。
PEFと1秒率の違い
PEFと1秒率は、どちらも呼気に関係する指標ですが、見ているものは異なります。
| 項目 | 意味 | 主な使い方 |
|---|---|---|
| PEF | 最大呼気流量 | 吐き出し始めの最大の勢いを見る |
| 1秒率 | FEV1/FVC | 閉塞性換気障害の有無を判断しやすい |
PEFは瞬間的な呼気の勢い、1秒率は1秒間でどれくらい吐けたかを示します。
1秒率の基本は、1秒率(FEV1/FVC)の見方で詳しく解説しています。
PEFとフローボリューム曲線の関係
フローボリューム曲線では、呼気の開始直後に最も高い流量が出ます。この最大流量がPEFに相当します。
その後、肺気量が減るにつれて流量は徐々に低下します。
閉塞性換気障害では、呼気側の波形が下にえぐれるような形になり、PEFが低下することもあります。
| 所見 | 意味 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| PEFが高い | 呼気初期の勢いがある | 努力が十分か、波形が自然か |
| PEFが低い | 呼気初期の流量が低い | 気道狭窄、努力不足、筋力低下 |
| 呼気側のえぐれ | 閉塞性換気障害を疑う | COPD、喘息、検査の質 |
| 波形が不安定 | 検査手技の影響を疑う | 咳、漏れ、吸気不足 |
波形の読み方を確認したい方は、フローボリューム曲線の見方もあわせて確認してください。
リハビリ場面でPEFを見るポイント
リハビリ場面では、PEFの数値だけで運動可否を判断するのではなく、症状や動作中の反応と合わせて考えます。
- 労作時息切れがあるか
- 呼気延長があるか
- 口すぼめ呼吸をしているか
- SpO2が低下しやすいか
- 呼吸数が増えやすいか
- 咳や痰が増えていないか
- 休息後に回復するか
PEFが低い場合、呼気初期の勢いが落ちている可能性があります。歩行、階段、更衣、入浴などで息切れが強い場合は、負荷量や休息の入れ方を調整します。
| 場面 | 確認すること | 考え方 |
|---|---|---|
| 歩行練習 | 息切れ、SpO2、回復時間 | 距離や速度を調整する |
| 階段練習 | 呼吸数、下肢疲労、息切れ | 段数や休息を調整する |
| ADL練習 | 更衣・入浴時の息切れ | 動作を分ける、座位で行う |
| 呼吸練習 | 呼気のしやすさ | 呼吸リズムや口すぼめ呼吸を確認する |
PEFは、検査室の数値として見るだけでなく、生活動作での息切れや活動量の調整につなげると臨床で使いやすくなります。
PEFでよくある誤解
PEFを見るときは、次のような誤解に注意します。
| 誤解 | 実際の考え方 |
|---|---|
| PEFが低い=喘息 | 気道狭窄以外に、努力不足や呼気筋力低下でも低下する |
| 1回の値だけで判断する | 自己ベストや経時的変化と比べることが重要 |
| PEFだけで重症度を決める | 症状、SpO2、1秒率、波形なども合わせて見る |
| 低値ならリハビリ禁忌 | 症状や動作中の反応を見ながら負荷量を調整する |
PEFは便利な指標ですが、単独で判断するよりも、他の呼吸機能検査や臨床症状と合わせて見ることが大切です。
まとめ
PEF(ピークフロー)は、最大努力で息を吐き出したときの最大呼気流量を示す指標です。
- PEFは「吐き出し始めの勢い」を見る指標
- 喘息では日内変動や自己ベスト比が重要
- COPDでも低下することがある
- PEF低下は気道狭窄だけでなく、努力不足や筋力低下でも起こる
- 1秒率やフローボリューム曲線と合わせて見る
- リハでは息切れ、SpO2、回復時間と合わせて判断する
PEFを見るポイントは、「どれくらい勢いよく吐き出せているか」を確認することです。
数値だけで判断せず、症状、測定条件、波形、動作中の反応と合わせることで、呼吸機能検査を臨床に結びつけやすくなります。
よくある質問
PEFとは何ですか?
PEFとは、最大限に息を吸ったあと、できるだけ強く速く吐き出したときの最大呼気流量です。吐き出し始めの勢いを見る指標です。
PEFが低いと何を疑いますか?
気道狭窄、喘息、COPD、呼気筋力低下、努力不足、吸気不足、測定手技の問題などを考えます。PEFだけで原因を決めず、症状や他の検査と合わせて判断します。
PEFと1秒率は同じですか?
同じではありません。PEFは最大呼気流量で、吐き出し始めの最大の勢いを示します。1秒率は、努力性肺活量のうち最初の1秒でどれくらい吐けたかを示す割合です。
喘息ではなぜPEFを測るのですか?
喘息では気道狭窄が変動しやすいため、PEFを継続して測ることで、日内変動や悪化傾向、治療反応を把握しやすくなります。
PEFが低いとリハビリは危険ですか?
PEFが低いだけでリハビリが禁忌になるわけではありません。息切れ、SpO2、呼吸数、疲労感、回復時間などを確認しながら、負荷量を調整することが重要です。
参考文献
- Global Initiative for Asthma. Global Strategy for Asthma Management and Prevention.
- Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease. Global Strategy for the Diagnosis, Management, and Prevention of COPD.
- 日本呼吸器学会肺生理専門委員会. 日本人のスパイログラム基準値に関するステートメント.
- 湯澤基, 山口泰弘. 呼吸機能検査の理解と臨床応用. 日本内科学会雑誌.
