TCTの歩行予後|カットオフを外さない4ステップ

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TCTの歩行予後は「点数だけ」で決めない

Trunk Control Test(TCT)は、脳卒中後の体幹機能を短時間で評価でき、歩行予後との関連も報告されている尺度です。ただし、「40点なら歩ける」「50点以下なら歩けない」のように、研究で示された点数だけを目の前の症例へ当てはめる使い方はできません。

この記事では、TCTを歩行予後へ使うときに確認したい評価時点・予測したアウトカム・TCT以外の予測因子を整理します。採点方法そのものではなく、TCTの結果をどう読めば予後の読み違いを減らせるかに絞って解説します。

0・12・25点の採点方法や評価条件を確認したい方へ

TCTの採点・記録を確認する

結論:TCTは歩行予後の材料ですが、単独の判定値ではありません

TCTは歩行予後を考えるうえで有用な評価ですが、TCT単独で「歩ける・歩けない」を確定する尺度ではありません。研究値を臨床へ当てはめる前に、少なくとも次の3点を確認します。

  • いつ測定したTCTか:発症1週、2週、回復期入院時など評価時点を確認する
  • 何を予測した研究か:6週以内の独立歩行、6か月後のFAC、退院時FIM歩行などを区別する
  • 何と組み合わせたか:下肢筋力、バランス、ADL、身体機能など他の予測因子を確認する

たとえば2017年の探索的TWISTでは発症1週のTCTが歩行獲得時期の予測に使われましたが、2022年に開発・内部検証されたTWISTでは、年齢・膝伸展筋力・Berg Balance Scale(BBS)が予測因子となりました。さらに2026年の回復期リハビリテーション病棟196例の研究ではTCTが退院時歩行自立の予測因子として選択されましたが、TCT単独ではなくm-FIMや非麻痺側SIAS機能などを含むモデルとして検討されています。

「TCTが歩行予後に使えるか」ではなく、「どの条件で得られたTCTの結果を、何と組み合わせて読むか」が重要です。

TCTを歩行予後に使うときの4ステップ。点数、評価時点、予測したアウトカム、TCT以外の予測因子を確認する流れ
TCTの点数だけで歩行可否を判断せず、評価時点・アウトカム・他の予測因子をセットで確認します。

TCTのカットオフは「いつ・何を予測したか」とセットで読む

TCTと歩行予後の研究では、40点、50点など複数の数値が報告されています。しかし、すべての脳卒中患者へ共通して使える「歩行自立のカットオフ」が1つあるわけではありません。

評価時点、対象、予測期間、歩行自立の定義が違えば、同じTCTの点数でも意味が変わります。代表的な研究を並べると違いが分かりやすくなります。

スマホでは表を横スクロールできます。

TCTと歩行予後に関する主な研究の読み分け
研究 評価時点 主な結果 臨床での注意
Duarteら
2009
発症後1週・2週 2週時TCT<37では、6か月後のバランスや歩行特性が不良な群と関連 「37点」を歩行自立・非自立の共通カットオフとして使わない
Duarteら
2010
発症14日 TCT≦50は、6か月後の非自立歩行(FAC<4)を予測。感度83.3%、特異度85.7% 「14日評価」「6か月後FAC」という条件とセットで読む
Smithら
2017
発症1週 TCT>40の患者は6週以内に独立歩行。TCT<40では股関節伸展筋力も予測に使用 41例の探索的研究であり、TCT単独の一般的カットオフではない
Smithら
2022
発症1週 FAC≧4までの時期を、年齢・膝伸展筋力・BBSから予測 新しいTWISTではTCTが最終予測因子に含まれていない
Murakamiら
2026
回復期病棟入院時 TCTを含むモデルで退院時歩行自立(FIM歩行≧6)を予測 m-FIMや非麻痺側SIAS機能などを含む多変量モデルとして解釈する

ここで重要なのは、数字の大小だけを並べて「40点と50点のどちらが正しいか」と考えないことです。研究によって測定時点もアウトカムも異なるため、それぞれ別の問いに答えていると考えます。

TCTを歩行予後に使うときの4ステップ

研究値を確認したら、目の前の症例へ当てはめる前に「点数→評価時点→アウトカム→他の予測因子」の順で整理します。この4ステップを通すと、カットオフだけを横滑りさせる読み方を避けやすくなります。

1.TCTの点数と各項目を確認する

最初に合計点を確認しますが、合計点だけで終わらせず、どの項目で得点が下がっているかも確認します。同じ合計点でも、寝返り、起き上がり、座位保持など、低得点になった項目が違えば臨床上の課題も異なります。

採点そのものに迷う場合は、歩行予後を考える前に採点条件と記録をそろえることが優先です。

2.「いつ測ったTCTか」を確認する

発症1週のTCTと、発症14日、回復期病棟入院時のTCTは同じ条件ではありません。回復過程にある脳卒中患者では、評価時点が違えば点数の意味も変わります。

研究値を参照するときは、「TCT○点」だけでなく「発症○日・○週時点」とセットで確認します。

3.「何を予測した研究か」を確認する

「歩行予後」という言葉だけでは不十分です。研究によって、6週以内の独立歩行、6か月後のFAC、退院時FIM歩行など、予測しているアウトカムが異なります。

自分が知りたいアウトカムと、研究が予測したアウトカムが一致しているかを確認してから数値を使います。

4.TCT以外の予測因子を確認する

歩行自立は体幹機能だけで決まりません。近年の予後予測研究でも、下肢筋力、バランス、ADL、非麻痺側機能などがTCTとは別に重要な情報として扱われています。

TCTが高くても歩行が難しい場合、あるいはTCTが低くても改善が見込める場合は、「TCT以外で現在の歩行を制限しているものは何か」を整理します。

TCTを歩行予後へ使うときの落とし穴4つ

TCTの予後予測で外しやすいのは、点数そのものよりも点数をどこまで一般化したかです。特に次の4つを避けます。

スマホでは表を横スクロールできます。

TCTを歩行予後へ使うときの主な落とし穴
落とし穴 何がずれるか 回避ポイント
カットオフだけを見る 評価時点やアウトカムが違う研究値を同じ意味で扱ってしまう 点数より先に「いつ・何を予測した研究か」を確認する
合計点だけを見る 同じ合計点でも、低得点になった項目や残された課題が分からない 各項目の得点と採点根拠も確認する
TCT単独で完結させる 下肢筋力やバランスなど、歩行に関係する他の要因を見落とす TCT以外の予測因子と歩行を制限する要因を確認する
高得点=問題なしと考える TCTで捉えられる範囲を超えた体幹機能の課題を見落とす可能性がある 評価目的に応じて、より詳細な体幹評価を追加する

高得点でも歩けない/低得点でも伸びるときはどう読むか

TCTと実際の歩行能力が一致しないときは、「TCTが外れた」と考える前に、TCTが評価している体幹機能と、歩行自立を決める要因は同じではないことを確認します。

TCTは高いのに歩けない場合

TCTが高得点でも、下肢筋力やバランス、感覚、注意、疼痛、持久力、装具など別の要因が歩行を制限していれば、歩行自立にはつながりません。

この場合はTCTを繰り返すより、「今の歩行を最も制限している要因は何か」を整理し、必要な評価へ進みます。

TCTが低くても改善が見込める場合

発症早期の低得点だけで、その後の歩行獲得を否定することもできません。2017年のTWISTでは、発症1週のTCTが40点未満でも、股関節伸展筋力を追加することで歩行獲得時期を分類していました。

低得点を長期予後の確定値にせず、評価時点、経時変化、下肢機能やバランスなど他の予測因子と合わせて読むことが重要です。

TCTだけでは足りないときは別の体幹評価を追加する

TCTは短時間で体幹機能を捉えやすい一方、評価したい内容によっては別の尺度が適することがあります。特に、TCTが高得点でも体幹機能の問題が残っていると考えられる場合や、動的な体幹制御をより詳しく確認したい場合は、FACTやTISなどを検討します。

どの尺度を追加するかは、単に「より詳しい尺度」を選ぶのではなく、寝返り・起き上がりを含めて見たいのか、座位での動的制御を詳しく見たいのかなど評価目的から決めます。

FACT・TCT・TISの違いと使い分けはこちらで整理しています。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップすると回答が開きます。

Q1.TCTは何点なら歩行自立できますか?

すべての脳卒中患者へ一律に使える点数はありません。発症14日のTCT≦50、発症1週のTCT>40などの研究値がありますが、評価時点、予測期間、歩行自立の定義が異なります。点数だけでなく、研究条件が現在の症例に近いかを確認してください。

Q2.TCTが高得点なら歩行予後は良いと考えてよいですか?

TCTが高いことは良好な機能・歩行予後と関連しますが、高得点だけで歩行自立を保証するものではありません。下肢筋力やバランス、ADLなど、歩行を左右する他の要因も確認します。

Q3.TCTが低得点なら歩行獲得は難しいですか?

低得点だけで長期予後を固定することはできません。評価時期が早ければその後に変化する可能性があり、研究でも下肢筋力など別の予測因子が組み合わせられています。経時変化と他の評価を合わせて判断します。

次の一手

TCTの点数を歩行予後へ使うときは、点数→評価時点→アウトカム→他の予測因子の順で確認してください。研究のカットオフと症例の条件が一致しない場合は、判定値ではなく参考情報として扱います。


参考文献

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  3. Duarte E, Morales A, Pou M, Aguirrezábal A, Aguilar JJ, Escalada F. Trunk control test: early predictor of gait balance and capacity at 6 months of the stroke. Neurologia. 2009;24(5):297-303. PubMed: 19642031
  4. Duarte E, Marco E, Muniesa JM, Belmonte R, Aguilar JJ, Escalada F. Early detection of non-ambulatory survivors six months after stroke. NeuroRehabilitation. 2010;26(4):317-323. doi: 10.3233/NRE-2010-0568
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著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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