脳卒中の体幹評価|静的座位・基本動作から尺度を選ぶ

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脳卒中の体幹評価は「どの課題で難しくなるか」から整理します

脳卒中の体幹評価では、最初からFACT・TCT・TISのどれを使うか決めるより、静的な座位保持、寝返り・起き上がりなどの基本動作、座位での重心移動や回旋といった動的課題のどこで難しくなるかを整理すると、必要な評価尺度を選びやすくなります。

この記事では、PT・OTが脳卒中患者の体幹機能を評価するときに、何から確認し、どの尺度へ進み、何を記録・再評価するかを整理します。FACT・TCT・TISの細かな採点ではなく、体幹評価全体の組み立て方に焦点を当てます。

先に結論

まず「静的座位」「基本動作」「動的座位」など、どの種類の課題で体幹制御が難しくなるかを確認します。そのうえで、評価したい課題を含む尺度を選び、再評価では同じ尺度・版・実施条件をそろえて比較します。

体幹機能は静的座位・基本動作・動的座位などに分けて考えます

体幹評価の入口では、尺度名よりも患者さんがどの種類の課題まで遂行でき、どこから難しくなるかを見ると整理しやすくなります。

脳卒中の体幹評価を静的座位、基本動作、動的座位の4つの課題群から整理し、TCT・FACT・TISの尺度選択につなげる概念図
脳卒中の体幹機能を4つの課題群から整理する概念図。正式な評価順序や回復順序を示すものではありません。

2026年に報告された急性期脳卒中患者200例の研究では、Verheyden版・Fujiwara版TIS、FACT、TCTの計38項目を統合して解析した結果、体幹機能に関する項目は、静的座位、基本動作、比較的低難度の動的座位課題、より高難度の動的座位課題という4因子に整理されました。

脳卒中の体幹機能を整理するときの4つの視点
課題群 確認したいこと 観察のポイント
静的座位 安定した座位を保てるか 支持の必要性、姿勢の崩れ、安全性
基本動作 臥位から座位までの動作を行えるか 寝返り、起き上がり、介助、代償
動的座位
比較的低難度
座位を保ちながら身体を動かせるか 重心移動、到達、支持の増加、姿勢の戻し
動的座位
高難度
より複雑な体幹運動を行えるか 回旋、選択的な運動、協調性、代償

ただし、この4分類を「全患者が必ずこの順番で回復する」「この順番で検査する」と解釈するものではありません。研究対象は発症後早期に離床可能だった急性期脳卒中患者であり、著者らも臨床利用を高めるためには短縮版の開発など、さらなる検討が必要としています。

そのため本記事では、4分類を体幹機能を見落としなく整理するための視点として用います。

まず「どの課題で難しくなるか」を確認します

体幹機能を評価するときは、すべての課題を機械的に行うより、どこから身体介助・上肢支持・代償が増えるかを確認すると、次に必要な評価が見えやすくなります。

体幹評価の入口を決める考え方
患者さんの状態 先に確認すること 次に考える評価
端座位そのものが不安定 必要な支持、安全性、崩れる方向 静的座位を含む評価
座位は保てるが寝返り・起き上がりに介助が必要 基本動作のどこで介助・代償が生じるか 基本動作を含む評価
座位保持は可能だが重心移動で崩れる 左右・前後への重心移動、支持、姿勢の戻し 動的座位課題を含む評価
簡単な座位課題は可能だが回旋などで崩れる より複雑な体幹運動、協調性、代償 体幹機能を細かく分けてみる評価

たとえば、端座位を保持するために継続的な支持を必要とする患者さんでは、まず静的座位と基本動作の状態を整理します。一方、端座位が安定している患者さんでは、重心移動や到達、回旋などへ課題を広げることで、基本的な座位保持だけでは分からない体幹機能を確認できます。

FACT・TCT・TISは「何を評価したいか」から選びます

FACT・TCT・TISには一部重なる課題がありますが、評価する範囲は同じではありません。したがって、「どの尺度が一番よいか」ではなく、今回知りたい体幹機能をどの尺度が捉えやすいかで選びます。

FACT・TCT・TISを選ぶときの大まかな違い
尺度 主に捉える課題 選択を考えやすい場面
TCT 寝返り、起き上がり、座位バランスなど 臥位から座位までの基本動作を含めて簡潔に確認したい
FACT 座位を中心とした体幹課題の遂行 座位でどの課題まで可能かを確認したい
TIS 静的座位、動的座位、体幹の協調性 座位での体幹機能を複数の側面から確認したい

TCTは、麻痺側・非麻痺側への寝返り、臥位からの起き上がり、座位バランスという4つの動作から構成されます。Verheydenらが開発したTISは、静的座位バランス、動的座位バランス、体幹協調性を評価します。

FACTについても、脳卒中患者の体幹機能評価として妥当性が検討されており、2023年の亜急性期脳卒中患者を対象とした多施設研究では、TISとの高い相関が報告されています。

ここでは3尺度の入口だけを整理しています。項目構成、採点、各尺度を選ぶ具体的な境界は、記事末のFACT・TCT・TISの比較記事で確認してください。

標準化尺度は独自の条件より「尺度固有の実施条件」を優先します

再評価では条件をそろえることが大切ですが、標準化された尺度を使う場合、最初に優先するのはその尺度で規定されている実施方法・開始姿勢・支持条件・採点基準です。

たとえばTCTには寝返りや起き上がりが含まれるため、「座面高を一定にする」「両足底を接地する」といった座位条件だけで全項目を統一することはできません。TISにも固有の実施条件と採点基準があります。

そのうえで再評価時には、可能な範囲で次の条件をそろえます。

  • 使用した尺度と版
  • 尺度で定められた開始姿勢・支持条件
  • 介助や補助具の使用状況
  • 実施できなかった項目と理由
  • 疼痛、疲労、覚醒など結果に影響し得る状態

前回と条件が異なる場合は、無理に「同条件」とみなさず、違いを記録します。点数の変化と評価条件の変化を分けて残すことで、再評価の意味を判断しやすくなります。

尺度の点数と臨床観察は分けて考えます

標準化尺度の点数と、PT・OTが観察した運動の特徴は、どちらも重要ですが役割が異なります。尺度は正式な基準に従って採点し、点数とは別に、どこで崩れたか、何を使って代償したかを所見として残します。

臨床観察では、骨盤や胸郭、頭部の位置、左右への荷重、上肢支持、過剰な側屈・回旋などを確認できます。ただし、「骨盤帯→胸郭→頭部」のような独自の観察順序をFACT・TCT・TIS共通の正式な評価手順として扱わないことが重要です。

体幹評価で点数と一緒に残したい情報
項目 記録する内容 記録例
尺度 尺度名、版、得点 「TIS Verheyden版:○/23点」
困難な課題 どこから遂行が難しくなったか 「静的座位は可能、動的座位で支持増加」
代償・所見 課題遂行時の特徴 「麻痺側への重心移動で体幹側屈が増加」
条件差 前回と異なる介助・患者状態など 「前回より疲労強く、途中休憩あり」
次回確認 再評価する具体的な課題 「麻痺側への動的重心移動を再確認」

再評価は「合計点」と「どの課題が変わったか」を確認します

再評価では、可能な限り同じ尺度・同じ版・同じ実施条件を使用します。そのうえで、合計点だけでなく、以前は難しかった課題が可能になったか、支持や介助、代償がどう変わったかを確認します。

たとえば合計点が同じでも、動的座位課題で必要だった上肢支持が減ったなど、臨床観察上の変化がみられることがあります。一方、点数が変化していても、使用した尺度の版や実施条件、介助条件が異なれば単純な比較はできません。

再評価のポイント:「何点変わったか」と「どの課題が、どのように変わったか」を分けて確認すると、次に何を評価・介入するか決めやすくなります。

体幹評価は「課題を整理→尺度で測定→所見を残す」でつなげます

脳卒中患者の体幹機能を評価するときに、毎回すべての尺度を実施する必要はありません。まず現在の患者さんについて、静的座位、基本動作、動的座位など、どの種類の課題で困難が目立つかを整理します。

次に、その問いに合う尺度を選び、正式な方法で評価します。評価後は点数だけで終わらせず、困難だった課題、介助、代償、前回との条件差を残します。再評価では同じ尺度・版・条件をそろえ、得点と課題遂行の両方から変化を確認します。

この流れにすると、「体幹機能低下」という抽象的な評価から、どの体幹課題が問題で、次に何を確認するかが分かる評価へつなげやすくなります。

次に確認する記事

評価尺度全体から探したい場合

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FACT・TCT・TISのどれを使うか迷った場合

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参考文献

  1. Tagami Y, Fujii S, Inui Y, et al. Integrated Structural Analysis of Trunk Function Assessment After Stroke-New Evaluation Model Based on Multiscale Factor Analysis and Rasch Analysis. Arch Phys Med Rehabil. 2026;107(6):1298-1307. DOI: 10.1016/j.apmr.2026.01.027 / PubMed: PMID: 41654005
  2. Franchignoni FP, Tesio L, Ricupero C, Martino MT. Trunk Control Test as an Early Predictor of Stroke Rehabilitation Outcome. Stroke. 1997;28(7):1382-1385. DOI: 10.1161/01.STR.28.7.1382 / PubMed: PMID: 9227687
  3. Verheyden G, Nieuwboer A, Mertin J, Preger R, Kiekens C, De Weerdt W. The Trunk Impairment Scale: a new tool to measure motor impairment of the trunk after stroke. Clin Rehabil. 2004;18(3):326-334. DOI: 10.1191/0269215504cr733oa / PubMed: PMID: 15137564
  4. Sato K, Maeda K, Ogawa T, et al. The functional assessment for control of trunk (FACT): An assessment tool for trunk function in stroke patients. NeuroRehabilitation. 2021;48(1):59-66. DOI: 10.3233/NRE-201533 / PubMed: PMID: 33386820
  5. Okuda Y, Owari G, Harada S, et al. Validity of functional assessment for control of trunk in patients with subacute stroke: a multicenter, cross-sectional study. J Phys Ther Sci. 2023;35(7):520-527. DOI: 10.1589/jpts.35.520 / PubMed: PMID: 37405187

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、リハビリテーション専門職の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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