【PG-SGA】がん患者の栄養アセスメントと介入|PT実装ガイド

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栄養・嚥下
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PG-SGA とは?( SGA との違い)

PG-SGA( Patient-Generated Subjective Global Assessment )は、SGA をがん領域向けに拡張した評価法で、患者が自己記入する病歴セクション(体重・摂取・症状)と、医療者が行う身体評価セクションを組み合わせて、栄養状態と介入の優先度を同時に示します。栄養影響症状(悪心・口内炎・味覚異常・便秘/下痢・痛み・倦怠感 など)を点数化でき、日々の変化をとらえやすいのが特長です。

総論の SGA 記事が “主観的総合判定( A / B / C )” を扱うのに対し、本稿は PG-SGA のスコアとトリアージ( A–D )に特化して実装ポイントを解説します。スクリーニング(例:NRS-2002)→ PG-SGA → GLIM 診断の流れを前提に、PT が関わる場面を明確にします。

臨床と並走するキャリア設計のコツ

採点とトリアージ( A–D )

PG-SGA は体重変化、摂取量、症状群、活動性などから合計点を算出し、介入の優先度を A(教育中心)~ D(緊急介入)で示します。点数の閾値は施設版や導入手順に依存するため、“スコア=絶対値”ではなく “優先度=チームの次アクション” を決める信号として扱うのが安全です(一次研究と導入マニュアルは末尾参考文献)。

PG-SGA トリアージ( A–D )早見表(一般的な解釈の例)
トリアージ 概要 PT の優先対応
A 教育・セルフモニタリング中心。症状は軽微。 食事姿勢・活動量のセルフ管理、体重と症状の記録法を指導。
B 計画的な栄養介入が望ましい。症状の管理が必要。 運動強度を症状に合わせて微調整、補食タイミング提案、NST へ共有。
C 速やかな多職種介入が必要。摂取障害が顕著。 疲労・悪心ピークを避けたスケジューリング、嚥下/口腔と連携、頻回フォロー。
D 緊急的介入を要する。症状コントロール優先。 運動は安全域内の可動・呼吸中心に縮小、栄養/疼痛/制吐の調整が主。

栄養影響症状( Nutrition Impact Symptoms )

悪心・嘔吐、口内炎、味覚/嗅覚異常、嚥下困難、早期飽満、便秘/下痢、痛み、倦怠感、抑うつなどは、摂取と活動性を同時に下げます。症状は単独より “束” で現れるため、食形態・温度・タイミング・鎮痛/制吐・口腔ケアをまとめて調整すると効果的です。

症状群と実務対応( PT × NST )の例
症状群 摂取への影響 主な対応(例)
悪心・嘔吐 量・頻度低下、食事回避 ピーク日を避けた運動、分割食・冷温、制吐薬タイミング共有
口内炎・味覚異常 摂取痛・嗜好変化 刺激の少ない形態、温度調整、口腔ケア、亜鉛補充の検討は医師と
嚥下困難 窒息/誤嚥リスクで摂取低下 食事姿勢・一口量・粘度。必要時は MWST/WST 記事 参照
便秘・下痢 食欲低下・腹部不快 水分・活動量・薬剤調整の連携、腹部不快時は強度を下げる

運用フロー( PT × NST )

① スクリーニング陽性 → ② PG-SGA 記入と身体所見 → ③ 合計点と A–D を NST で共有 → ④ 運動・栄養・口腔の統合プラン → ⑤ 週次で再評価。PG-SGA は “今日の症状” をよく反映するため、RPE と会話テストを併用して運動強度を日々微調整します。外来では 2–4 週間のフォローが目安です。

再評価は同時刻・同条件で固定化し、症状ピーク(化学療法サイクルなど)では臨時評価を追加。退院/在宅移行時は 在宅スクリーニング運用 に接続し、自己記録の継続を支援します。

判定の落とし穴と対策

(1)症状の重複カウント(痛み→倦怠→摂取低下)に注意。(2)浮腫・腹水で体重評価が歪むため、周囲長や利尿薬歴を併記。(3)口腔/嚥下機能低下がボトルネックのときは、食事姿勢と粘度で先に “食べられる条件” を作る。(4)PG-SGA は観察者の熟練度が影響するため、導入初期はロールプレイで擦り合わせ、Kappa を意識した相互チェック体制を。

参考文献

  1. Isenring E, et al. The scored PG-SGA identifies malnutrition in ambulatory oncology patients. Eur J Clin Nutr. 2003;57:779-785. PMID
  2. Ottery FD. Definition of standardized nutritional assessment and interventional pathways in oncology. Nutrition. 1996;12(1 Suppl):S15-S19.
  3. Cederholm T, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. PMID
  4. Jensen GL, et al. GLIM consensus approach: 5-year update. JPEN. 2025. DOI
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