PG-SGA の使い方(結論:点数と A / B / C を分けて運用する)
PG-SGA(Patient-Generated Subjective Global Assessment)は、がん患者の栄養評価で広く使われるツールです。ただ、臨床では「合計点でみる介入優先度」と「A / B / C でみる全体判定」が混ざりやすく、ここで運用がブレやすくなります。この記事では、PT が何を拾い、NST へ何を渡し、運動負荷をどう調整するかに絞って整理します。
答えることは、① 点数の読み方 ② 栄養影響症状(NIS)の拾い方 ③ PT × NST の運用フロー ④ 記録シートの使い方です。答えないことは、SGA 総論や低栄養診断そのものの深掘りです。総論は SGA 記事、診断と重症度は GLIM 総論へ分けて読むと役割が混ざりません。
PG-SGA 記録シート PDF
現場でそのまま使えるように、赤旗確認 → 症状整理 → 最小評価 → 方針 / 再評価の流れで書ける A4 記録シートを用意しました。点数だけを残すのではなく、観察事実・判断・次の一手まで 1 枚でつなぐ用途を想定しています。
記録者を変えても見方がぶれにくいよう、共有欄と再評価欄を広めに取った構成です。
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点数トリアージと A / B / C 判定の違い
まず固定したいのは、PG-SGA には2 つの見方があることです。1 つは合計点で介入優先度をみる「数値スコア」、もう 1 つは全体像をみる「A / B / C の総合判定」です。ここが混ざると、記録もチーム内共有も崩れやすくなります。
PT 実務では、数値スコアは「いま急ぐか」、A / B / C は「全体としてどの程度の栄養障害か」と分けて読むと安定します。つまり、スコアは今日の優先順位、A / B / C は症例全体の重さをそろえる軸として使うイメージです。
| 判定軸 | 何を見るか | PT の読み方 |
|---|---|---|
| 数値スコア | 体重変化、摂取量、症状、活動性、代謝ストレス、身体所見を点数化し、介入優先度をみる | 「今日どこまで負荷をかけるか」「誰へいつ共有するか」を決める合図として使う |
| A / B / C 総合判定 | 全体像として、栄養状態良好 / 中等度の栄養障害・疑い / 高度の栄養障害をみる | 症例全体の重さをチームでそろえ、経過比較の土台にする |
| スコア | 優先度のめやす | PT の次アクション |
|---|---|---|
| 0–1 | 現時点で介入不要、定期再評価 | 体重・摂取量・活動性を同条件で追い、変化時の再評価条件を決める |
| 2–3 | 教育と症状対応を含む早めの介入 | 食事タイミング、疲労の出方、運動後の摂取低下の有無を共有する |
| 4–8 | 栄養士介入が必要 | 運動量を固定せず、その日の症状に応じて時間・内容・休憩を調整する |
| 9 以上 | 症状マネジメントや栄養介入の緊急性が高い | 負荷増量を急がず、安全域の活動へ縮小しつつ、同日共有の優先度を上げる |
栄養影響症状(NIS)で PT が拾うべき点
がん患者では、悪心、早期飽満、口内炎、味覚異常、嚥下困難、便秘 / 下痢、疼痛、倦怠感、抑うつなどの栄養影響症状(NIS)が、摂取量と活動性を同時に下げます。体重だけを見ていると変化が遅れて見えるため、PT は「食べられない理由」を症状単位で拾う方が実務に直結します。
ポイントは、症状を 1 つずつ並べるより、主因と運動への影響をセットで残すことです。たとえば「悪心で朝食が入らず、午前の運動後にさらに摂取が落ちる」「口内炎で常食が進まず、食後疲労が強い」と書けると、NST 側が次の打ち手を決めやすくなります。
| 症状 | 運動への影響 | 共有すると役立つ情報 |
|---|---|---|
| 悪心・早期飽満 | 摂取量が落ち、運動後にさらに食欲が下がりやすい | 悪心ピークの時間、食前 / 食後どちらで動きやすいか、分割なら動けるか |
| 口内炎・味覚異常 | 食事量の低下に加え、口腔ケアでも疲れやすい | 刺激物で悪化するか、温度差で食べやすさが変わるか、口腔内痛の程度 |
| 嚥下困難 | 食事場面の安全確保が優先となり、運動量の設定も慎重になる | 姿勢、食形態、一口量、咳込み、食後の湿性嗄声や疲労の有無 |
| 疼痛・倦怠感 | 活動性が下がり、ベッド上時間が延びやすい | 鎮痛後に動ける時間帯、短時間介入への反応、翌日へ疲労を持ち越すか |
運用フロー(PG-SGA SF → フル版 → NST 共有)
現場で回しやすい流れは、① 入口で PG-SGA SF の情報を拾う ② 必要時に身体所見を含めてフル版へ進む ③ 数値スコアと A / B / C を分けて共有する ④ 運動・栄養・口腔 / 嚥下の調整を同時にかける ⑤ 同条件で再評価する、の 5 段階です。入口と詳細化を分けると、外来や病棟でも止まりにくくなります。
再評価では、同じ時間帯・同じ条件をそろえることが重要です。食前 / 食後、点滴や制吐薬のタイミング、化学療法サイクル、鎮痛の効き方が変わると、同じ点数でも意味が変わります。記録シートでも、点数そのものだけでなく「その点数になった条件」を残す運用が大切です。
| ステップ | やること | カルテに残す最小項目 |
|---|---|---|
| 1. 入口 | 体重変化、摂取量、症状、活動性を確認する | 使用票、記入者、実施日、主症状、活動性の変化 |
| 2. 詳細化 | 必要時に身体所見や代謝ストレスを加えてフル版へ進む | 身体所見の有無、浮腫 / 補液 / 発熱 / ステロイドの条件 |
| 3. 判定 | 数値スコアと A / B / C を分けて解釈する | スコア、総合判定、今日の優先度 |
| 4. 介入 | 運動負荷、時間帯、休憩、食事条件を調整して共有する | 負荷調整内容、食前後の反応、NST へ渡した論点 |
| 5. 再評価 | 同条件で症状・摂取・活動性を追い、必要時は前倒しする | 再評価日、固定条件、悪化時の連絡先 / 変更ルール |
現場の詰まりどころ(よくある失敗)
詰まりやすいのは、「点数と A / B / C が混ざる」「症状を羅列して終わる」「体重だけで安心する」「評価が負荷調整へつながらない」の 4 点です。先に戻り先を置いておくと、読み手も実装者も迷いにくくなります。
記録は、点数だけでなく観察事実 → 解釈 → 判断 → 方針の順で残すと再現性が上がります。特に、補液・浮腫・食事タイミング・制吐 / 鎮痛の条件を書いていないと、次回の点数比較がずれやすくなります。
| よくある失敗 | 起きやすい理由 | 対策(最小構成) | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 点数と A / B / C を同じ意味で扱う | 「高得点 = そのまま高度栄養障害」と短絡しやすい | 数値スコアは優先度、A / B / C は全体判定と役割を分ける | スコアと総合判定を別欄で残す |
| 症状を並べるだけで終わる | NIS が多く、主因がぼやける | 主因 1 つ + 運動への影響 1 つに絞って共有する | 「悪心で朝食 3 割、午前負荷でさらに低下」など時間軸を入れる |
| 体重だけで判断する | 浮腫、腹水、補液で見かけ上の変化がぶれる | 体重に加え、摂取量・症状・活動性をセットでみる | 補液、利尿、浮腫の有無を条件として残す |
| 評価が負荷調整へつながらない | 評価と介入が別々に記録される | その日の負荷変更ルールまで同じ欄で決める | 時間、内容、休憩、食前後どちらが適切かを書く |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
PG-SGA と PG-SGA SF の違いは何ですか?
PG-SGA SF は、患者が記入する体重変化・摂取量・症状・活動性を中心にした入口です。フル版の PG-SGA は、これに代謝ストレスや身体所見を加えて、より詳細に評価します。外来や病棟では「まず SF で拾う → 必要時にフル版へ進む」とすると止まりにくくなります。
スコアが 9 以上なら、そのまま高度栄養障害と考えてよいですか?
そのままとは言えません。9 以上は、症状マネジメントや栄養介入の緊急性が高いことを示すスコアトリアージです。一方、A / B / C は症例全体の栄養状態をみる総合判定です。両者は分けて判断した方が実務では安全です。
PT は PG-SGA のどの情報を特に重視すべきですか?
体重変化だけでなく、NIS と活動性の変化を重視すると運動処方に直結します。悪心、早期飽満、疼痛、倦怠感、嚥下の問題がいつ強く出るかを把握すると、時間帯や内容の微調整がしやすくなります。
記録シートはどんな場面で使うとよいですか?
初回評価、化学療法サイクルの節目、症状が急に変わった日、NST 共有前の情報整理に向いています。点数だけを残すのではなく、「観察事実」「今日の判断」「次回の条件固定」まで 1 枚でつなぎたい場面で使いやすいです。
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参考文献
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著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


