在宅の栄養スクリーニング|採血なしで始める5分フロー【PDF付き】

栄養・嚥下
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在宅の栄養スクリーニングは採血なしでも始められる

結論:在宅・訪問リハでは、採血結果がそろっていなくても低栄養リスクのスクリーニングは始められます。ポイントは、MST・MUST・MNA-SFをすべて順番に行うのではなく、対象者と場面に合う検証済みツールを選ぶことです。

本記事では、採血がない初回訪問で「何を使うか」「何を最低限記録するか」「リスクがあれば次に何を見るか」「いつ再確認するか」までを整理します。尺度ごとの設問全文や詳細な採点方法、GLIMの診断基準そのものではなく、在宅で栄養評価を止めないための入口に絞って解説します。

在宅では対象に合う栄養スクリーニング尺度を選ぶ

在宅栄養スクリーニングでは、MST・MUST・MNA-SFの3尺度を全例に重ねる前提ではありません。対象者の年齢、評価環境、施設内の運用を確認し、継続して同じ条件で使いやすい尺度を選ぶことが基本です。

在宅・訪問リハでの栄養スクリーニング尺度の選び方
場面 候補 特徴 在宅での注意点
高齢者を評価する MNA-SF 65歳以上の高齢者を対象とした栄養スクリーニングとして利用されている BMIを得られない場合は、公式手順に沿ってCC(下腿周囲長)へ置き換えられる
成人の低栄養リスクを層別する MUST BMI、意図しない体重減少、急性疾患の影響から低栄養リスクを整理する 身長・体重が得られない場合は、BAPENが示す代替測定・主観的基準を確認する
短時間の問診でリスクを拾う MST 体重減少と食事摂取状況を中心に短時間で確認できる もともとは成人急性期入院患者で開発されたため、在宅で使用する場合は対象者や施設方針との適合を確認する

「MSTで拾う → MUSTで層別する → 高齢者ならMNA-SFを追加する」という順番を、全例の必須プロトコルにはしません。複数尺度を追加するときは、最初の尺度だけでは解決できない具体的な目的がある場合に限定します。

採血なしで始める初回5分フロー

初回5分の目的は、すべての栄養評価を完結させることではありません。低栄養リスクを確認する入口を作り、次に何を評価・共有するか決めることです。

在宅栄養スクリーニングを情報収集、尺度選択、スクリーニング、結果判定、次のアクションの5段階で示した図版
図:在宅栄養スクリーニング5分フロー。MST・MUST・MNA-SFを全例に順番に行うのではなく、対象に合う尺度を選び、結果に応じて詳細評価や支援へつなげます。
在宅・訪問リハの初回栄養スクリーニング5分フロー
ステップ 確認すること 次の判断
① 急変・背景を確認 発熱・感染、摂取量の急減、脱水・浮腫、嚥下・口腔、受診・入院など 急変や摂取困難があれば、スクリーニングより医療的な確認・連携を優先する
② 尺度を選ぶ MNA-SF、MUST、MSTなどから対象者と運用に合うものを選ぶ 継続して同じ尺度・条件で確認できるようにする
③ スクリーニングを実施する 選択した尺度を公式手順に沿って実施し、スコアと判定を確認する スコアだけでなく、判定の根拠となった変化も記録する
④ 結果を判定する 低栄養リスクの有無と、追加で確認すべき情報を整理する リスクがあれば詳細な栄養アセスメントや多職種連携へ進む
⑤ 次のアクションを決める 次に確認する項目、共有先、再確認する条件・時期を決める 訪問ごとのモニタリングと尺度の再スクリーニングを分けて設定する

採血は、この入口を始めるための必須条件ではありません。必要な検査は、疾患、栄養状態、炎症の評価、治療方針などに応じて追加します。

在宅栄養スクリーニング5分フロー記録シート(PDF)

初回スクリーニングから詳細評価・連携、再確認までを1枚で整理できるA4記録シート v2を用意しました。MST・MUST・MNA-SFを順番に固定せず、今回使用する尺度を選び、その判定根拠と次の対応を残す構成です。

初回訪問の記録だけでなく、担当者間の申し送りや「次回何を見るか」の共有にも使えます。PDFを開いて保存・印刷してください。

A4記録シート v2 を開く(PDF)

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PDFが表示されない場合は、こちらからPDFを開いてください

在宅で「採血がそろうまで待つ」必要はない

在宅・訪問リハでは、初回訪問の時点で最新の採血結果を確認できないことがあります。しかし、低栄養リスクのスクリーニングは、採血値だけを使って行うものではありません。

体重変化、BMI、食事摂取量、食欲、疾患や急性イベントなど、訪問時に確認できる情報からスクリーニングを開始できます。重要なのは、採血がないことを理由に栄養評価全体を止めないことです。

一方で、「採血は不要」という意味ではありません。貧血、炎症、腎機能、脱水など、病態や介入判断に検査値が必要な場合は、主治医や看護師、管理栄養士などと連携して必要な情報を確認します。

スクリーニングでリスクがあればGLIMなどの詳細評価へ進む

栄養スクリーニングの結果だけで、低栄養を確定診断するわけではありません。リスクが確認された場合は、体重減少・低BMI・筋量低下などの表現型と、食事摂取・吸収低下、疾患負荷・炎症などの病因を確認し、必要に応じてGLIMによる診断評価へつなげます。

GLIMでは、少なくとも1つの表現型基準と1つの病因基準を満たすことが、低栄養診断の基本です。2025年の5年更新でも、この基本構造は維持されています。

また、炎症・疾患負荷の病因基準については、状況によって臨床判断で評価できることも示されています。つまり、GLIMは「採血値がすべてそろってから始める診断手順」ではありません。必要な検査は、個々の病態と判断目的に応じて追加します。

体重・身長が測れなくても評価を止めない

在宅では、立位保持が難しい、車椅子から移乗できない、適切な体重計がないなど、身長・体重を毎回測定できない場面があります。その場合も、測れなかった値を推測で埋めるのではなく、測定できなかった理由と、何を代わりに確認したかを記録することが重要です。

MNA-SFでは、BMIが得られない場合に公式手順に沿ってCC(下腿周囲長)を使用できます。一方、MUSTでは身長・体重が得られない場合の代替測定や主観的基準が示されていますが、MUAC(上腕周囲長)など1つの指標だけから正式なMUSTスコアを作るものではありません。

体重・身長が測れないときに残しておきたい情報
項目 記録のポイント
測定できなかった理由 立位困難、移乗困難、体重計なし、安全面などを具体的に残す
過去の体重 測定時期と、実測値・本人申告・家族申告のどれかを区別する
摂取量・食欲 「少ない」だけでなく、普段との比較と変化した期間を確認する
CC・MUACなど 使用目的を明確にし、同じ部位・姿勢・条件で追跡する
浮腫・脱水 体重や周囲長の変化を解釈する条件として一緒に記録する

身長・体重そのものの測定方法に迷う場合は、記事末の関連記事から具体的な測定手順を確認できます。

訪問ごとのモニタリングと再スクリーニングを分ける

訪問リハが週1回だからといって、MST・MUST・MNA-SFなどの尺度を毎週すべて再実施する必要はありません。訪問ごとに確認する変化と、尺度そのものを再実施する時期を分けて考えます。

訪問時には、体重、食事摂取量、食欲、浮腫、嚥下、活動状況、疾患・服薬の変化など、その人の栄養状態を判断するために必要な情報をモニタリングします。

一方、再スクリーニングの間隔は、使用する尺度の公式運用、現在の栄養リスク、状態変化、施設ルールに合わせます。たとえばBAPENのMUSTでは、communityにおける再スクリーニングの目安として、低リスクの特定集団では年1回、中リスクでは少なくとも2〜3か月ごと、高リスクでは月1回が示されています。

このため、「訪問のたびに状態をみること」と「尺度を毎回採点し直すこと」は同じではありません。状態が悪化した場合やケア環境が変わった場合は、予定した時期を待たずに再評価・連携を検討します。

コピペで使える在宅栄養スクリーニング記録

記録では複数尺度の点数を並べることより、何を使い、なぜその判定になり、次に何を確認するかがチームに伝わる形を優先します。

氏名/年齢:
評価日:
評価者:

■ 本日の急変・背景
発熱・感染:
食事・水分摂取の急な変化:
脱水/浮腫:
嚥下・口腔:
受診・入院・治療変更:
その他:

■ 今回使用したスクリーニング
尺度:MNA-SF / MUST / MST / その他(    )
選択理由:
スコア・判定:

■ 判定の根拠
意図しない体重変化:
食事・水分摂取の変化:
体重:__ kg
身長:__ cm
BMI:
浮腫/脱水:
嚥下・口腔:
発熱・感染・疾患変化:
その他:

■ 身長・体重を測定できない場合
測定できない理由:
代替した情報・測定:
測定条件:

■ 次の対応
□ 経過観察
□ 詳細な栄養アセスメント
□ GLIMの要素確認
□ 管理栄養士へ共有・相談
□ 主治医・看護師などへ共有・相談
□ 嚥下・口腔の追加評価
□ その他:

■ 再確認
次回確認日:
訪問ごとに確認する項目:
尺度を再実施する条件・時期:
同じ条件で測定する項目:
共有先:

在宅栄養スクリーニングで避けたい4つの運用

在宅では、情報がそろわないことより、情報がそろうまで評価そのものが止まることが問題になります。一方、止めないことを優先して複数尺度や介入目標を機械的に追加するのも避けます。

在宅栄養スクリーニングのNG/OK
NG 理由 OK
採血がないので栄養スクリーニングを延期する 低栄養リスクの確認や連携開始が遅れる 採血なしで使える尺度からリスク確認を始め、必要な追加情報を後から確認する
MST・MUST・MNA-SFを全例で順番に行う 評価目的が重複し、運用負担が増える 対象と場面に合う尺度を選び、追加尺度は具体的な目的がある場合に使う
スクリーニング結果だけで低栄養を確定する スクリーニングと診断・詳細評価の役割が混在する リスクがあれば詳細評価を行い、必要に応じてGLIMなどの診断枠組みへ進む
訪問のたびに尺度をすべて再実施する モニタリングと再スクリーニングの目的が混ざる 訪問時に見る項目と、尺度を再実施する条件・時期を分けて設定する

よくある質問(FAQ)

MST・MUST・MNA-SFは3つとも実施したほうがいいですか?

原則として、3尺度すべてを全例に連続して実施する必要はありません。対象者と評価環境に適した尺度を選び、最初の評価だけでは判断できない具体的な理由がある場合に追加評価を検討します。

採血がなくても栄養スクリーニングを始められますか?

始められます。体重変化、BMI、摂取量、食欲など、採血なしで確認できる情報を用いる尺度があります。ただし、病態や治療方針を判断するために検査値が必要な場合は、別途確認します。

採血がなくてもGLIMによる評価へ進めますか?

採血がないことだけを理由に止める必要はありません。GLIMでは、体重減少、低BMI、筋量低下などの表現型と、摂取・吸収低下、疾患負荷・炎症などの病因を確認します。必要な検査は患者の病態や判断目的に応じて追加します。

体重が測れなければスクリーニングできませんか?

使用する尺度によって対応が異なります。MNA-SFではBMIの代わりにCCを使用でき、MUSTにも身長・体重が得られない場合の代替方法や主観的基準が示されています。測れない値を推測せず、公式手順に沿った方法と測定できなかった理由を記録してください。

訪問リハでは毎週スクリーニングしたほうがいいですか?

訪問ごとの状態モニタリングと、尺度そのものの再スクリーニングは分けて考えます。体重、摂取量、食欲、浮腫、嚥下などは必要な頻度で確認し、尺度の再実施は使用するツール、栄養リスク、状態変化、施設ルールに合わせます。

次の一手


参考文献

  1. Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. The GLIM consensus approach to diagnosis of malnutrition: A 5-year update. Clin Nutr. 2025;49:11-20. doi:10.1016/j.clnu.2025.03.018. PubMed
  2. Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition: A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. doi:10.1016/j.clnu.2018.08.002. PubMed
  3. Kaiser MJ, Bauer JM, Ramsch C, et al. Validation of the Mini Nutritional Assessment short-form (MNA-SF): A practical tool for identification of nutritional status. J Nutr Health Aging. 2009;13(9):782-788. doi:10.1007/s12603-009-0214-7. PubMed
  4. Ferguson M, Capra S, Bauer J, Banks M. Development of a valid and reliable malnutrition screening tool for adult acute hospital patients. Nutrition. 1999;15(6):458-464. doi:10.1016/S0899-9007(99)00084-2. PubMed
  5. Elia M. The ‘MUST’ Report: Nutritional screening of adults: a multidisciplinary responsibility. Redditch: BAPEN; 2003. BAPEN PDF

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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