PRPS:ピッツバーグリハビリテーション参加スケールの評価と活用

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PRPS(Pittsburgh Rehabilitation Participation Scale)とは

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PRPS( Pittsburgh Rehabilitation Participation Scale/ピッツバーグリハビリテーション参加スケール)は、リハビリセッションへの参加態度を 1(拒否)〜 6(能動)でセラピストが観察評価する 1 項目のスケールです。意欲やモチベーションそのものではなく、「どれだけ能動的にリハに関わっているか」を簡便に見える化できる点が特徴で、回復期リハや高齢者リハの予後予測にも用いられています。

同じ「意欲評価」の枠組みの中で、自己記入式スケール(やる気スコアなど)では拾いにくい「その日の参加行動」を定量化できるため、ADL 評価やうつ評価と組み合わせて使うと解釈しやすくなります。

実施手順(評定基準の共有)

  • 各セッション( PT/OT/ST など)ごとに、開始〜終了までの態度・関与度を総合して 1–6 に評定します。
  • 1=拒否、2=低い参加、3=限定的、4=概ね参加、5=積極、6=能動といった形で、施設内で日本語の定義文をあらかじめ作成しておきます。
  • できれば職種横断のケースカンファレンスで実例を持ち寄り、「この場面なら 3」「ここまで取り組めていれば 5」などのすり合わせを定期的に行うと、評価者間のぶれを減らせます。

判定と推移の追い方

PRPS の読み方と記録のコツ
評定目安記録上の注意
1–2 拒否〜受身 疼痛・眠気・体調・環境要因など、その日の状態を併記し、拒否の背景を具体的に記録する
3–4 促しで参加〜概ね参加 どのような声かけや課題設定(難易度・介助量)で参加が高まったかを書き残す
5–6 積極〜能動 自発的な提案・課題の自己調整・追加練習など、ポジティブな具体行動を残す

6 段階アンカー(言い換え要約)

  1. 1:拒否… ほぼ参加なし。セッションを受けない、あるいは開始直後に中止となる。
  2. 2:低い参加… 参加はするが、多くの場面で拒否・中断が見られ、課題継続が難しい。
  3. 3:限定的… ほとんどの課題は実施するが努力が弱く、強い促しや再三の説明が必要。
  4. 4:概ね参加… 大半の課題をこなし、時々の声かけで最後まで継続できる。
  5. 5:積極… 促しは最小限で、ほぼ最大努力に近い強度で課題に取り組む。
  6. 6:能動… 自発的に挑戦・自己調整しながら継続的に参加し、新しい課題にも前向き。

運用上の“閾値”とアラート(施設ルール例)

  • PRPS には公式なカットオフ値はありません。基本は 1–6 の推移で参加度を解釈します。
  • 運用例:
    • 日次平均が≦ 3の日が 2 日続いたら、疼痛・睡眠・薬剤・せん妄などの要因をチームで再評価する。
    • 週平均が< 4で推移する場合は、リハ介入の強度・声かけ方法・目標設定・課題難易度を見直す。
    • 担当交代時には前週の PRPS 推移(折れ線グラフ)を必ず申し送りし、「参加しやすかった条件」も共有する。

※上記は一例です。実情に合わせて数値や運用条件を調整し、施設の基準書・クリニカルパスに明記してください。

現場の詰まりどころ(PRPS の“あるある”)

  • 「やる気がない」の一言で終わってしまう
    PRPS は「意欲が低い」ことをラベリングするためではなく、参加を高めるための手がかりを言語化するツールです。低スコアのときほど、背景要因(疼痛・不安・家族関係・情報不足など)を書き分けると、次の一手が見えやすくなります。
  • セラピストごとにスコアがバラつく
    特に 3〜5 の判定は評価者間差が出やすいゾーンです。動画や具体事例を用いたミニ勉強会を開き、「このケースなら 4 で統一」といった校正作業をすると、チームでの使いやすさが一気に上がります。
  • ADL 能力や FIM スコアと混同してしまう
    PRPS は「どれだけ参加したか」の指標であり、できる・できない(能力)の評価ではありません。ADL 評価や FIM と組み合わせ、「能力は高いが参加度が低い」「能力は低いが参加度は高い」といったパターンで解釈するのがポイントです。

よくある質問(FAQ)

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Q1.認知機能低下や失語がある方にも PRPS は使えますか?

はい、PRPS はセラピスト観察に基づくスケールなので、自己記入が難しい方にも使用できます。ただし「指示理解が不十分で参加できない」のか「意欲が乏しく参加しない」のかを慎重に切り分ける必要があります。理解面の問題が主であれば、PRPS の低スコアというより「課題設定やコミュニケーションの調整が必要なケース」として扱う方が妥当です。

Q2.痛みや倦怠感が強い日は、スコアをどう解釈すればよいですか?

その日の PRPS スコアだけで「意欲が低い」と判断するのは危険です。疼痛や倦怠感が強い日には、「痛みをこらえながらどこまで参加しようとしていたか」に着目し、状態要因を必ず記録します。翌日以降に疼痛コントロールやスケジュール調整を行い、PRPS が改善していれば「参加したいが症状が邪魔していた」ケースと解釈できます。

Q3.PT・OT・ST でスコアが全然違うことがあります。どう扱えばよいですか?

職種ごとに課題内容や難易度、関係性が異なるため、PRPS が揃わないこと自体は不自然ではありません。むしろ「どの場面なら参加しやすいか」を比較することで、参加を引き出す条件(時間帯・疲労度・課題の意味づけ・家族同席の有無など)が見つかります。定例カンファレンスで PRPS とセッション内容をセットで共有する運用がおすすめです。

Q4.PRPS の日本語アンカーを独自に作っても大丈夫ですか?

臨床運用のために、日本語でわかりやすいアンカー文を作成すること自体は一般的に行われています。ただし原著の趣旨を大きく変えたり、スケール本文をそのまま配布したりする場合は、出版社や著者のライセンスを事前に確認することが望ましいです。院内用マニュアルでは「原著論文を参照して作成した簡略版」であることを明記し、外部配布は控えるのが安全です。

配布:記録・集計用シート

本文を含まない記録・集計用の配布です。回診・カンファレンス・家族説明などでの共有にご活用ください。

共通ツール

おわりに

リハビリテーションのプロセスを「安全の確保 → 参加度の観察 → 背景要因の整理 → 介入・目標の調整 → 再評価」というリズムで回すうえで、PRPS は「参加」という見えにくい側面を共有するための心強いツールです。単なるスコア付けで終わらせず、「なぜこのスコアなのか」「どうすれば 1 段階上げられるか」をチームで言語化することで、患者さんとスタッフ双方のストレスを減らし、リハの手応えを高めやすくなります。

また、こうした評価やチーム連携を継続していくには、職場の体制や教育環境も重要です。転職や職場選びの際に、面談で確認したいポイントやチェックシートは、マイナビコメディカルの面談準備・職場比較シートを活用すると整理しやすくなります。

参考文献(外部・新規タブ)

  • Lenze EJ, Munin MC, Quear T, Dew MA, Rogers JC, Begley AE, et al. The Pittsburgh Rehabilitation Participation Scale: Reliability and validity of a clinician-rated measure of participation in acute rehabilitation. Arch Phys Med Rehabil. 2004;85(3):380–384. https://doi.org/10.1016/j.apmr.2003.06.001
  • Iosa M, Galeoto G, De Bartolo D, et al. Italian Version of the Pittsburgh Rehabilitation Participation Scale: Psychometric Analysis of Validity and Reliability. Brain Sci. 2021;11(5):626. https://doi.org/10.3390/brainsci11050626
  • SRAlab. Pittsburgh Rehabilitation Participation Scale(PRPS). Rehabilitation Measures Database. 解説ページ

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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