RRS / RRT は「急変対応の遅れ」を減らすために、呼ぶ基準を標準化する仕組みです
急性期で一番怖いのは、悪化に気づいても「どこまで様子見でよいか」「誰に、どう呼ぶか」で迷い、初動が遅れることです。結論として、呼ぶ基準(起動基準)と SBAR の型を先に固定すると、離床や訓練の可否判断が早くなり、チーム内のコミュニケーションも安定します。
日本集中治療医学会の Rapid Response System( RRS )運用指針( 2025 )でも、起動基準の周知やバイタルサインの適切な測定、迅速な対応、データ収集とフィードバックなど、運用の標準化が強調されています。
※臨床記事ですが、標準化・教育体制・人員は安全性に直結します。
RRS / RRT で何が変わる?「迷い」を減らす 3 つの固定
RRS / RRT の本質は「専門チームが来る」ことよりも、①呼ぶ基準、②呼び方、③呼んだ後の流れを揃えて、院内の対応を早くすることです。リハ場面では、とくに「離床中の違和感」「介入後の悪化」「酸素や循環が不安定」など、グレーな状況で力を発揮します。
まずは施設の院内ルール( RRS の稼働時間、起動先、到着までの役割分担)を確認し、“自分が迷う手前” で呼べるトリガーを持っておきましょう。
5 分で回る標準フロー:測る → 判定 → 呼ぶ → 初期対応 → 記録
急変対応は、手技よりも 順番を固定すると回ります。おすすめは、①安全確保 → ②測定(呼吸・循環・意識) → ③判定(起動基準) → ④ SBAR で連絡 → ⑤初期対応 → ⑥記録です。
呼吸数・ SpO2 ・血圧・脈拍・意識の “最低限セット” を揃えると、相談が通りやすくなります。NEWS2 を運用している施設では、NEWS2 / MEWS の離床前スクリーニングと同じ数字で会話できるので、連携がさらに楽になります。
| 状態 | よくあるサイン(例) | 行動(型) | SBAR で必ず伝えること | 記録の最小セット |
|---|---|---|---|---|
| 即起動(強く推奨) | 意識低下/呼吸困難の増悪/胸痛・冷汗/チアノーゼ/けいれん/明らかな出血 など | 離床は中止。安全確保→測定→RRS 起動。必要なら院内手順で酸素・体位・吸引など。 | 「いつから」「何が」「どれだけ変化」「いまの数値」「こちらの対応(何をしたか)」 | 時刻、呼吸数、 SpO2(酸素条件含む)、血圧、脈拍、意識、症状、介入後の反応 |
| 準緊急(早めに相談) | 息切れ増悪、会話量低下、顔色不良、起立でふらつき強い、 SpO2 低下が戻りにくい など | 負荷を落として再評価(端座位まで等)。変化量を添えて主治医/当直へ相談。院内ルールで RRS。 | 「前回との差」「安静→刺激での変化」「酸素・薬剤・疼痛など背景」 | 前回と今回の比較(変化量がわかる形) |
| “懸念” でも呼ぶ | 「なんとなく変」「いつもと違う」「不安」など、数値だけでは説明しづらい違和感 | 数値が軽くても、懸念を優先して相談。RRS の “懸念起動” が許容される運用が多い。 | 「いつもと違うポイント」を 1 行で(例:会話量、眠気、顔色、歩容の急変) | 主観所見(会話量/傾眠/発汗など)+直近の推移 |
NEWS2 を “コール判断” に橋渡しする(使える施設だけ)
NEWS2 を運用している施設では、スコアをそのまま「行動」に変換できます。一般的な整理として、単一項目 3は “低〜中リスクでも要レビュー”、合計 5–6は “緊急レビュー”、合計 7 以上は “救急対応” の目安になります(施設の院内手順を優先)。
| NEWS2 | 離床の扱い(型) | 相談(型) | 記録の最小セット |
|---|---|---|---|
| 0–4 | 計画どおり。違和感があれば “変化量” を確認。 | 通常共有で OK。 | スコア、酸素条件、離床レベル、介助量 |
| 単一 3(赤) | 負荷を落として再評価(端座位まで等)。 | “赤の項目” と “変化量” を添えて早めに相談。 | 赤項目+前回との差 |
| 5–6 | 原則:中止〜延期(目的を 1 つに絞る場合のみ最小介入)。 | 緊急レビュー相当としてエスカレーション(院内ルールで RRS)。 | 症状+酸素条件+推移 |
| 7+ | 離床は中止。急変対応優先。 | 救急対応として即連絡(上位チーム介入前提)。 | 直近の推移+介入後反応 |
SBAR は「1 行」で言える形にしておくと遅れません
急変の連絡は、長い説明より 結論(いま何が起きて、何をしてほしいか)が重要です。SBAR に固定すると、相手が変わっても通ります。詳しい型は 離床中止の SBAR テンプレを使えます。
1 行テンプレ(コピペ用)
「(状況)離床中に呼吸が苦しくなり、 SpO2 が (◯%)まで低下し戻りにくいです。(背景)酸素は (室内気 / ◯ L / HFNC ◯ L ◯%)です。(評価)呼吸数 ◯、血圧 ◯/◯、脈拍 ◯、意識は (JCS / GCS)。(提案)離床は中止し安静で再評価しました。 RRS(または当直)で確認をお願いします。」
よくある失敗:コールが遅れるパターンを先に潰す
急変対応で多い失敗は、①呼ぶのが遅れる、②数字が揃っていない、③酸素条件が抜けるの 3 つです。迷う理由の多くは「根拠が弱い」ではなく、伝える材料がバラバラで自信が持てないことです。材料(最低限セット)を先に固定しましょう。
| 失敗 | なぜ起きる? | 対策(型) | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 「もう少し様子見」になる | 基準が曖昧で、呼ぶ根拠が言語化できない。 | “即起動/準緊急/懸念” の 3 段階でルール化。懸念でも相談する。 | 「いつから」「何が変わった」を必ず残す。 |
| 数字が揃わない | 呼吸数や意識が抜ける。前回との差が不明。 | 最低限セット(呼吸数/ SpO2 /血圧/脈拍/意識)+変化量を固定。 | 前回と今回を並べて書く(変化量)。 |
| 酸素条件が抜ける | SpO2 だけで判断し、負荷や支援量を見落とす。 | 「室内気/酸素 ◯ L/ HFNC ◯ L ◯%」までセットで口頭・記録。 | 酸素デバイスと設定値を必ず残す。 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
RRS / RRT は「数値が悪いとき」だけ呼ぶものですか?
いいえ。多くの運用では「何らかの懸念」でも相談できる設計になっています。数値が軽くても、会話量低下、傾眠、顔色不良、歩容の急変など “いつもと違う” があれば、早めに相談した方が安全です。
離床中に迷ったら、まず何を測ればいい?
最低限は 呼吸数、 SpO2(酸素条件含む)、血圧、脈拍、意識です。ここが揃うと、主治医や当直に話が通りやすくなります。
NEWS2 が無い施設でも記事の内容は使えますか?
使えます。NEWS2 は “便利な共通言語” ですが、核は「呼ぶ基準」「SBAR」「最低限セット」「変化量」です。院内の EWS( MEWS など)や独自基準に置き換えて運用してください。
呼んだ後、 PT は何をして待つ?
まず安全確保(転倒予防、体位調整)をして、数値を再確認し、推移を残します。可能なら “何をしたらどう変わったか” を 1 行で言える形にしておくと、到着したチームが判断しやすくなります。
次の一手:数字(NEWS2)→ コール(RRS)→ 機器の型まで揃える
- NEWS2 / MEWS の離床前スクリーニング(数値で共有)
- 離床中止の SBAR テンプレ(そのまま使える)
- リハ職が関わる医療機器ガイド(開始条件・中止基準・記録)
- 運用を整える → 共有の型を作る → 環境の詰まりも点検(無料チェックシート):マイナビコメディカルの無料チェックシートを開く
※記事内の運用(基準/連絡/記録)と合わせて、体制面も点検すると事故が減ります。
参考文献
- 日本集中治療医学会 RRS 運用指針作成ワーキンググループ.委員会報告 Rapid Response System 運用指針.日本集中治療医学会雑誌.2025;32:R15.PDF
- Royal College of Physicians.National Early Warning Score( NEWS )2:Standardising the assessment of acute-illness severity in the NHS.2017.PDF
- NICE.National Early Warning Score systems that alert to deterioration in adult patients in hospital( MIB205 ).2020.Web
- Maharaj R, Raffaele I, Wendon J.Rapid response systems: a systematic review and meta-analysis.Crit Care.2015;19:254.doi:10.1186/s13054-015-0973-y / PubMed
- Hillman K, Chen J, Cretikos M, et al.Introduction of the medical emergency team( MET )system: a cluster-randomised controlled trial.Lancet.2005;365(9477):2091-2097.doi:10.1016/S0140-6736(05)66733-5 / PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


