離床中止時のSBAR記録|PT・OT・ST向け報告例とテンプレ

臨床手技・プロトコル
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離床中止時のSBARは「何が起きたか・どう評価したか・何を求めるか」を伝える

離床を中止したあとの報告では、「気分不良があった」「血圧が下がった」と事実だけを残すのではなく、どの場面で何が起き、どのような変化を確認し、何を相談・依頼するのかまで共有することが重要です。SBARを使うと、離床中止後の情報を一定の順序で整理できます。

この記事では、PT・OT・STが離床中止後の報告・記録にSBARをどう当てはめるかを、コピペ用テンプレ、症例別の記録例、NG→OK例まで整理します。SBARそのものの公式な意味と、離床場面で使いやすくするためのrehabilikunblog独自の実務整理は分けて解説します。

離床中止時にまず整理する4点

  • S:今、何が起きたのか
  • B:判断に必要な背景は何か
  • A:観察結果からどう評価しているか
  • R:何を相談・依頼・提案するのか

離床中止時のSBAR記録テンプレ|まずはこの型で整理する

離床中止時には、SBARを「中止理由を書くための様式」ではなく、中止後の情報を次の判断につなげるためのコミュニケーションの型として使います。AHRQのTeamSTEPPSでは、SBARはSituation、Background、Assessment、RecommendationまたはRequestからなる構造化コミュニケーションとして示されています。1)

離床中止時にSBARへ整理する内容
項目 SBARの基本的な意味 離床中止時に整理する内容
S
Situation
現在起きている状況 中止した場面、症状・所見、発生時刻、実施していた動作や体位
B
Background
判断に必要な臨床的背景 離床前の状態、酸素条件、デバイス、当日の経過、直前までの活動状況など
A
Assessment
観察情報を踏まえた評価 症状・バイタル・身体所見の変化、対応後の経過、自分が懸念している点
R
Recommendation / Request
必要な対応の提案・依頼 診察や確認の依頼、離床継続可否の相談、再評価の提案、次に確認してほしい事項

コピペ用|離床中止時のSBAR

S:「○時○分、○○実施中に○○が出現したため離床を中止しました。」
B:「離床前は○○で、○○の条件下で実施していました。中止前は○○まで実施しています。」
A:「○○は○○から○○へ変化し、○○の対応後は○○です。○○を懸念しています。」
R:「○○について確認・診察をお願いします。今後の離床について○○を相談したいです。」

このテンプレは、SBARの公式文言をそのまま転載したものではありません。SBARの基本構造を、離床を中止した場面で使いやすいようrehabilikunblogが実務向けに整理したものです。施設の報告手順、診療録の様式、職種ごとの役割に合わせて調整してください。

図解|離床を中止したら何をSBARで伝えるか

離床中止後は、S→B→A→Rの順に情報を整理すると、単なる「中止報告」ではなく、次の対応を相談するための情報へ変換しやすくなります。特にRは「次回はこの負荷で行う」と決める欄ではなく、現在必要な診察・追加評価・離床継続可否などを相談・依頼する部分として考えます。

離床を中止したらSBARで何を伝えるかをSituation、Background、Assessment、RecommendationまたはRequestの4項目で整理した図
図:離床中止後のSBAR報告・記録の整理例。SBARは報告を整理する型であり、中止基準・再開基準そのものではありません。

S・B・A・Rには何を書く?公式の意味と離床場面への当てはめ

SBARを使うときに注意したいのは、「B=どこまで離床できた」「R=次回の負荷」と決まっているわけではないことです。AHRQでは、Backgroundは現在の状況を判断するために必要な臨床的背景、Assessmentは報告者による評価、Recommendation / Requestは必要な対応や依頼として整理されています。1)

S|何が起きたのかを最初に伝える

Sでは、報告相手が最初の数文で現在の問題を把握できるようにします。離床中止時であれば、症状だけでなく、「いつ・どの体位や動作で・何が起きたか」まで具体化すると状況を共有しやすくなります。

たとえば「気分不良あり」ではなく、「10時20分、立位保持中にめまいと冷汗が出現したため中止」のように、観察できた事実を中心に記録します。

B|今回の判断に必要な背景だけを選ぶ

Bには、患者のすべての既往や経過を書く必要はありません。現在の状況を理解するために必要な背景を選びます。

  • 離床前の症状・バイタル
  • 酸素投与などの治療条件
  • ライン・ドレーン・カテーテルなどのデバイス
  • 当日の安静度や活動状況
  • 中止までに実施した体位・動作
  • 今回の変化と関連する既往や治療内容

「端座位までできた」「立位練習まで実施した」といった到達段階も、今回の状況を理解するうえで必要であればBへ含められます。ただし、到達段階そのものがBackgroundの公式定義ではありません。

A|測定値だけでなく「どう評価したか」を伝える

Aでは、血圧・心拍数・SpO2などの数値を並べるだけでなく、症状や身体所見、対応後の経過を合わせて整理します。AHRQのSBARでは、Assessmentは報告者が背景情報や観察結果などを踏まえて、問題をどう捉えているかを伝える部分です。1)

ただし、原因が確定していない段階で診断を断定する必要はありません。「体位変化に伴って症状と血圧低下を認めた」「休息後も呼吸苦が持続している」など、観察した事実と自分の評価を区別して伝えることが重要です。

R|「次の負荷」ではなく、今必要な対応を具体化する

Rは、離床を再開するための負荷設定だけを書く欄ではありません。診察、再測定、治療条件の確認、離床継続可否の相談など、現在必要な行動を相手へ具体的に依頼・提案する部分です。

AHRQのTeamSTEPPSでは、Recommendation / Requestについて、何が必要で、いつ必要なのかを伝え、相手から得た回答をrepeat-backして認識を確認する考え方も示されています。1)

離床中止時のSBAR記録例|3つの場面で確認する

記録例では、数値そのものよりも、発生状況→関連する背景→変化と評価→必要な対応がつながっているかを確認します。以下は書き方を示す例であり、記載した内容を離床中止・再開の一律の基準として示すものではありません。

離床中止時のSBAR記録例
場面 記録例
立位中のめまい・冷汗 S:立位保持中にめまいと冷汗が出現したため中止。
B:離床前は自覚症状なく、端座位保持後に立位へ移行した。
A:立位後に血圧低下を認め、臥位へ戻した後に症状は軽減した。体位変化に伴う循環動態の変化を認めている。
R:現在の状態を共有し、以降の離床継続可否と再評価時の確認項目について相談する。
歩行中の呼吸苦・SpO2低下 S:歩行練習中に呼吸苦が増強し、SpO2低下を認めたため中止。
B:酸素投与条件は離床開始前から変更なく、座位・立位では著明な症状を認めなかった。
A:歩行負荷に伴って呼吸苦と酸素化の変化を認め、休息後の回復経過を観察している。
R:現在の酸素条件と呼吸状態を共有し、追加評価や今後の活動範囲について相談する。
立位中の胸部不快感・動悸 S:立位練習中に胸部不快感と動悸を訴えたため、離床を中止した。
B:本日の離床前には同症状を認めていなかった。
A:症状出現時に循環動態の変化を認めており、離床継続の判断より医学的評価を優先する必要があると考える。
R:症状と観察所見を速やかに共有し、診察・対応を依頼する。

症例によって必要な背景や報告先は異なります。テンプレへ情報を無理に当てはめるのではなく、相手が次の判断をするために必要な情報を選ぶことがSBARの目的です。

NG→OK|離床中止後に伝わりにくい記録を修正する

離床中止後の記録では、曖昧な表現そのものより、次の担当者が「何が起きたか」を再現できないことが問題になります。症状・場面・変化・対応を具体化すると、短い記録でも情報を共有しやすくなります。

離床中止時のNG記録と改善例
NG例 不足している情報 改善例
気分不良あり、離床終了 症状、発生した体位・動作、経過が分からない 立位保持中にめまいと冷汗が出現したため中止。臥位へ戻し、症状とバイタルの経過を確認した。
血圧低下のため中止 いつ、どの程度変化し、症状を伴ったか分からない 端座位から立位へ移行後に血圧低下とめまいを認めたため中止。臥位へ戻した後の値と症状を再確認した。
様子を見る 誰が何を確認し、何を判断するのか不明 中止後の症状・バイタルを再確認し、状態を看護師へ共有。離床継続可否について必要時に医師へ相談する。
次回は負荷を下げて実施 今回の中止原因を確認せず再開方針だけが決まっている 中止原因となった症状・所見の経過を確認し、必要な医学的評価とチームの判断を踏まえて次回の方法を検討する。

記録より先に対応・報告を優先すべき場面がある

SBARは報告を整理するためのツールであり、緊急対応を遅らせてまで記録を完成させるものではありません。急激な状態変化や重篤な症状を認めた場合は、安全確保と院内ルールに沿った報告・対応を優先します。

日本版重症患者リハビリテーション診療ガイドライン2023(J-ReCIP 2023)では、重症患者のリハビリテーション実施中の中止基準が検討されており、突然の呼吸困難、意識レベル低下、新たな治療を要する不整脈、心筋虚血が疑われる症状、デバイス抜去の危険などを含む中止基準案が示されています。基準値だけを機械的に適用するのではなく、患者の病態や生理学的変化を踏まえて判断することが重要です。2)

本記事では中止基準そのものを詳しく扱いません。どの所見で離床中止を検討し、中止後に何を再評価するかは、離床の中止基準と再開基準で確認してください。

また、状態悪化時に通常の報告でよいのか、RRS・RRTなどの緊急連絡が必要なのかを迷う場合は、RRS・RRTコール基準とリハ職の対応で、エスカレーションの考え方を確認できます。

離床中止時SBAR 報告・記録シート|PDF・Excel

離床中止時のSBARを病棟で共通化しやすいように、「離床中止時 SBAR 報告・記録シート A4 v2」を作成しました。新版では、「次回は1段階低い負荷」といった固定的な運用ではなく、発生状況、背景、開始前から中止後までの変化、対応、相談・依頼、相手からの回答、再評価までを1枚で整理できる構成にしています。

PDF版|印刷・病棟共有用

A4で印刷して記入したい場合はこちらを使用してください。

PDF版を開く・ダウンロードする

Excel版|院内で編集して使う場合

施設名、記録項目、運用方法などを院内ルールに合わせて調整したい場合はこちらを使用してください。

Excel版をダウンロードする

※本シートは、SBARを離床中止場面へ応用したrehabilikunblog独自の記録・再評価シートです。診療判断や院内の緊急連絡基準を置き換えるものではありません。使用時は各施設の指示・手順に合わせて調整してください。

SBARとSOAPは役割が違う|無理に1対1対応させない

SBARは主に情報を構造化して相手へ伝えるためのコミュニケーションツールです。一方、SOAPは診療録を整理する際に用いられる記録形式です。そのため、「SBARのSはSOAPのS」「SBARのRはSOAPのP」と機械的に1対1で対応させる必要はありません。

実務では、SBARで口頭共有した発生状況、客観的な変化、評価、相手へ相談した内容と回答を、各施設のカルテ様式に沿って記録します。特に、誰へ報告し、どのような回答・指示・合意が得られたかまで残しておくと、次の担当者が経過を追いやすくなります。

離床中止時のSBARでよくある質問

Q1. SBARは毎回S・B・A・Rを同じ量だけ書く必要がありますか?

A. いいえ。SBARは必要な情報を構造化するための枠組みであり、状況によって必要な情報量は異なります。AHRQもSBARはチームのニーズに合わせて使う項目や順序を調整できるツールとして説明しています。重要なのは4文字を埋めることではなく、相手が状況を理解して次の判断をできる情報がそろっていることです。1)

Q2. リハ職がRで医師や看護師へ提案してもよいですか?

A. RはRecommendation / Requestであり、必要な対応を提案・依頼する部分です。リハ職も観察した症状や身体所見を踏まえ、「診察をお願いしたい」「離床継続可否を相談したい」「この項目を再確認したい」と具体的に伝えられます。最終的な診療判断は、職種の役割、医師の指示、院内ルールに従います。

Q3. 症状が消失すれば、その日のうちに離床を再開できますか?

A. 症状が消えたことだけで一律に再開できるとは判断できません。中止した理由、患者の病態、対応後の症状・バイタル、治療内容、院内基準、医療チームの判断を踏まえて再開可否を検討します。中止・再開判断の詳細は、離床の中止基準と再開基準で確認してください。

次の一手|SBARの前後にある判断を別記事で確認する

このページで扱ったのは、離床を中止したあとの「報告・記録」です。SBARを整えても、中止するかどうか、いつ再開を検討するかという判断基準そのものが共有されていなければ、安全管理は完結しません。

参考文献

  1. Agency for Healthcare Research and Quality. TeamSTEPPS: Tool: SBAR. AHRQ. AHRQ公式ページ. Accessed September 23, 2026.
  2. 日本集中治療医学会集中治療早期リハビリテーション委員会. 重症患者リハビリテーション診療ガイドライン2023(J-ReCIP 2023). 日集中医誌. 2023;30(Suppl 2):S905-S972. 日本集中治療医学会 PDF. doi:10.3918/jsicm.30_S905.
  3. Unoki T, Hayashida K, Kawai Y, et al. Japanese Clinical Practice Guidelines for Rehabilitation in Critically Ill Patients 2023 (J-ReCIP 2023). J Intensive Care. 2023;11(1):47. doi:10.1186/s40560-023-00697-w / PubMed
  4. Haig KM, Sutton S, Whittington J. SBAR: a shared mental model for improving communication between clinicians. Jt Comm J Qual Patient Saf. 2006;32(3):167-175. doi:10.1016/S1553-7250(06)32022-3 / PubMed

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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