ST変化を見たときの介入判断|新人向け実務

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結論|ST 変化は「診断名を当てる」より「中止・相談のトリガーを先に固定する」と新人教育が安定します

ST 変化の場面で新人が止まりやすい理由は、波形の詳細判読に時間を使いすぎて、当日介入の可否が決まらないことです。PT・OT・ST の実務では、診断の断定よりも、危険サインを見逃さず安全側で判断し、速やかに相談につなげることが重要です。本記事は、臨床で再現しやすい初動の型を示します。

まずは「症状確認 → バイタル再測定 → ST 変化の有無確認 → 中止/軽負荷/通常の判断 → 記録と相談」の順を固定してください。心電図の基礎は 心電図総論、頻脈・徐脈の初動は こちら と合わせて運用すると、判断の再現性が高まります。

新人向け 5 分フロー|ST 変化を見たときの初動手順

ST 変化対応では「先に患者を見る」ことが基本です。波形だけを見て判断すると、症状の重さや循環動態の変化を見落とすリスクがあります。まず症状とバイタル、次に心電図の順で確認し、最終的に当日介入を区分してください。

以下の 5 手順をチームで共通化し、迷ったら中止または軽負荷に倒して相談する方針を徹底しましょう。

  1. 症状を確認する(胸痛、圧迫感、呼吸苦、冷汗、悪心、意識変化)
  2. バイタルを再測定する(心拍数、血圧、SpO2、呼吸数)
  3. ST 変化の有無と経時変化を確認する(新規・増悪か)
  4. 当日介入を「中止 / 軽負荷 / 通常」で判断する
  5. 所見・判断・対応を記録し、必要時ただちに相談する

ST 変化の早見表|PT がまず確認する点

新人教育では、ST 上昇/低下の教科書的な定義だけでなく、「実務で何を返すか」をセットにすると定着します。ここでは断定診断ではなく、介入判断に直結する観点で最小限に整理します。

施設基準や担当医の指示がある場合は、それを最優先にしてください。

新人向け|ST 変化を見たときの実務確認ポイント
確認項目 まず見る点 リスクの捉え方 当日介入への反映
症状の有無 胸痛・呼吸苦・冷汗・悪心・意識変化 症候性なら急性イベント疑いが高い 原則中止、速やかに相談
ST 変化の新規性 前回やベースラインとの差 新規変化は要注意 軽負荷〜中止を検討
バイタル整合 血圧低下、頻脈/徐脈、SpO2 低下 循環不安定の示唆 中止優先、相談
経時変化 安静で改善するか、悪化するか 持続・悪化はリスク上昇 中止または延期を検討
併存所見 不整脈、QRS 変化、症状再現性 複合所見は注意度上昇 単独判断せず相談優先

当日判断テンプレ|中止・軽負荷・通常の 3 区分

ST 変化対応を教育で定着させるには、判断区分を固定することが有効です。新人は「どこまでなら続けてよいか」を迷いやすいため、区分と記録様式を先に決めておくと運用しやすくなります。

特に症状を伴う場合は、中止して相談する方針を明確にしてください。

ST 変化時の介入判断テンプレ(実務用)
区分 判断の目安 実施の要点 記録例(要約)
中止 症候性 ST 変化、循環不安定、新規/増悪が明らか 介入を中止し、安静確保・速やかに相談 ST 変化と胸部症状あり、中止し報告
軽負荷 無症状だが注意所見あり、経過観察が必要 低強度・短時間、再測定を増やす 注意所見のため軽負荷で実施し再評価
通常 明らかな新規変化なく症状・バイタル安定 通常実施、経時変化を継続観察 症状なし・安定のため通常実施

中止基準の考え方|迷ったら安全側に倒す

ST 変化の中止判断は、単一指標ではなく全身状態との総合評価で行います。新人教育では「この条件なら必ず中止・相談」という具体的トリガーを示すと、判断のばらつきが減ります。判断に迷うケースは、継続より中止を選ぶほうが安全です。

  • 胸痛、強い呼吸苦、冷汗、意識変化を伴う
  • 再測定で ST 変化が持続または悪化する
  • 血圧低下、SpO2 低下、著明な脈拍異常を伴う
  • 新規不整脈や他の異常所見を併発している
  • 担当者が継続可否を判断できない(迷いがある)

よくある失敗|教育現場で起きやすい NG

ST 変化教育の失敗は、波形説明に偏り、行動判断が残らないことです。実務では「見た所見をどう行動に変えるか」が最重要です。以下の NG を避けるだけで、初動対応の質は大きく上がります。

ST 変化対応のよくある失敗と改善策
NG パターン 起きる理由 改善策 記録ポイント
波形だけで続行判断 症状・バイタル照合不足 症状→バイタル→波形の順を固定 照合結果を明記
再測定なしで実施継続 経時変化の確認不足 軽負荷時は再測定をルール化 再測定時刻を記載
相談タイミングが遅い 中止トリガー不明確 中止・相談条件を事前共有 相談先と時刻を記録

ST 変化の判断は、心電図総論や頻脈・徐脈対応と連続して学ぶと定着します。新人教育では、総論→各論→比較の順で回遊を作ることで、判断の再現性が高まります。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. ST 変化があれば必ず中止ですか?

A. 症状や循環不安定を伴う場合は中止を優先します。無症状で軽微な変化でも、新規性や経時変化を確認し、迷う場合は軽負荷または中止で相談してください。

Q2. 新人は ST 上昇と ST 低下を厳密に鑑別すべきですか?

A. 初期教育では厳密鑑別より、危険サインの早期発見と適切なエスカレーションが重要です。診断断定ではなく、安全な行動選択を優先してください。

Q3. どのタイミングで再測定すればよいですか?

A. 注意所見がある場合は負荷調整後に短い間隔で再測定し、改善・悪化の方向を確認します。持続や悪化があれば中止して相談します。

Q4. 記録は何を最低限残せばよいですか?

A. 「症状・バイタル・ST 所見・当日判断・相談対応」を 1 セットで記録してください。申し送りで再利用しやすくなります。

次の一手|今日から運用に乗せる

まずは部署内で、ST 変化対応の 5 分フローと中止トリガーを共有してください。確認順と相談条件が揃うだけで、新人の見落としリスクは大きく減ります。

続けて、心電図全体の土台は 心電図総論、頻脈・徐脈の初動は 各論記事 で補強し、検査値との統合判断は 生化学検査値ガイド で確認してください。

運用を整える中で「教育体制・記録文化・人員配置」の詰まりがある場合は、環境面の点検も有効です。無料チェックシートは こちら から確認できます。


参考文献

  1. 日本循環器学会. 循環器診療ガイドライン(虚血性心疾患・不整脈関連). 最新版.
  2. 日本不整脈心電学会. 心電図判読と不整脈診療に関する指針. 最新版.
  3. 日本心臓リハビリテーション学会. 心臓リハビリテーション関連指針. 最新版.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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