- 結論|頻脈・徐脈は心拍数だけでリハ中止を決めません
- 頻脈・徐脈は何回から?定義とリハ中止基準を分けて考えます
- リハ開始前に頻脈・徐脈を認めたら6項目を確認します
- リハ中に心拍数が急に上がった・下がったら負荷を中断して再評価します
- 頻脈では心拍数の高さより循環不安定性と原因を確認します
- 徐脈では40・50回/分という数字だけでなく症状と血行動態を見ます
- 中止・相談を優先するのは心拍数より「不安定性」がある場合です
- 頻脈・徐脈を見つけた後は原因・背景を確認します
- 報告・記録は「数字」ではなく変化と判断根拠を残します
- よくある迷い|心拍数の数字をそのまま介入基準にしない
- よくある質問
- 次の一手|「何回だったか」から「何を伴っていたか」へ変えます
- 参考文献
- 著者情報
結論|頻脈・徐脈は心拍数だけでリハ中止を決めません
リハビリ前・リハビリ中に頻脈や徐脈を認めたときは、心拍数の数字だけで「実施できる」「中止する」と決めません。まず症状と循環動態を確認し、再測定したうえで、普段の心拍数との違い、新規の不整脈、心電図変化、発熱・低酸素・薬剤などの背景を確認します。特に低血圧、意識変化、ショックを疑う所見、虚血性胸部症状、急性心不全を疑う変化があれば、運動負荷を中断して速やかな報告・対応を優先します。
この記事では、「頻脈・徐脈は何回からか」と「何回ならリハを止めるか」を分けて考え、開始前と介入中それぞれの確認手順を整理します。心電図だけで診断を確定することではなく、PT・OT・STが異常を認めた直後に何を確認し、どの所見をそろえて相談するかが中心です。
最初に押さえるポイント
「頻脈・徐脈の定義」「急性不整脈対応で使われる心拍数」「リハビリを中止・相談する基準」は同じものではありません。心拍数は重要な入口ですが、最終判断は症状、血圧、酸素化、リズム、新規性、経時変化と合わせて行います。
頻脈・徐脈は何回から?定義とリハ中止基準を分けて考えます
一般的な説明では、心拍数がおおむね50回/分以下を徐脈、100回/分以上を頻脈とすることがあります。しかし、100回/分を超えたらリハ中止、50回/分を下回ったら必ず中止という意味ではありません。
| 区分 | 数値の例 | リハ場面での読み方 |
|---|---|---|
| 頻脈・徐脈の一般的な定義 | 徐脈:おおむね50回/分以下 頻脈:おおむね100回/分以上 |
脈が遅い・速いことを表す目安。介入中止を直接決める数値ではない |
| 急性不整脈への対応 | 徐脈性不整脈:典型的には50回/分未満 頻脈性不整脈:典型的には150回/分以上 |
AHAの急性対応アルゴリズム上の目安。一般病棟リハの一律中止基準ではない |
| 運動療法の安全管理 | 心拍数だけでなく症状、血圧、SpO2、新規不整脈などを確認 | 循環動態と症状を含めて中止・相談を判断する |
日本循環器学会・日本心臓リハビリテーション学会のガイドラインでは、血行動態異常の原因となるコントロール不良の不整脈は積極的運動療法の禁忌とされ、血行動態が保たれていても心拍数コントロール不良の頻脈性・徐脈性不整脈は相対的禁忌として整理されています。
また、心血管疾患に対する運動療法中の相対的中止基準には、心拍数40回/分以下の徐脈、新規不整脈、血圧低下、酸素化低下、症状悪化などが含まれています。ただし、同ガイドラインでは相対的中止基準について十分なコンセンサスが得られていないことも示されています。
注意:これらは心血管疾患に対する運動療法の安全管理を考えるうえで重要な基準ですが、一般病棟での離床、端座位、移乗、低負荷の基本動作練習すべてに数値だけを機械的に当てはめるものではありません。疾患、医師指示、施設基準、普段の心拍数、症状や循環動態と合わせて判断します。
リハ開始前に頻脈・徐脈を認めたら6項目を確認します
開始前に普段と異なる頻脈・徐脈を認めた場合は、すぐに運動負荷をかけず、症状→循環動態→再測定→ベースライン→心電図・リズム→背景の順で確認します。

| 確認 | 見ること | 判断につなげるポイント |
|---|---|---|
| 1. 症状 | 胸痛・胸部不快感、呼吸苦、めまい、失神前症状、冷汗、強い倦怠感 | 心拍数より先に循環不安定性を疑う症状がないか確認する |
| 2. 循環動態 | 血圧、SpO2、呼吸状態、意識状態、末梢循環 | 低血圧や酸素化悪化などを伴う場合は介入より報告・対応を優先する |
| 3. 再測定 | HRまたは脈拍、血圧、SpO2 | 測定誤差、一過性変化、安静による変化を確認する |
| 4. ベースライン | 直近値、普段の安静時心拍数、前回リハ時、医師指示 | その患者にとって新しい変化かを確認する |
| 5. リズム・心電図 | 規則性、新規不整脈、モニター変化、必要時12誘導心電図 | 単なる洞性の心拍変化か、不整脈を疑う変化かを分ける |
| 6. 背景 | 発熱、疼痛、低酸素、脱水、感染、貧血、薬剤、電解質異常など | 心拍数変化を生じさせた原因・誘因を確認する |
モニター表示の心拍数と橈骨動脈などで確認した脈拍数が合わない場合も、そのまま数字を採用しません。測定エラーだけでなく、不規則なリズムや脈拍欠損なども考えられるため、波形と実際の脈拍を照合します。
心電図全体の確認順は新人PTの心電図の読み方で詳しく整理しています。
リハ中に心拍数が急に上がった・下がったら負荷を中断して再評価します
介入中に想定を超えて心拍数が上昇・低下した場合は、数字を見ながらそのまま運動を続けるのではなく、いったん負荷を中断または軽減し、安全な状態を確保して症状と循環動態を再評価します。
- 運動・離床負荷を中断または軽減する:転倒などを防げる安全な状態を確保します。
- 症状を確認する:胸痛、呼吸苦、めまい、冷汗、意識変化などを確認します。
- バイタルを再測定する:HR・脈拍、血圧、SpO2、呼吸状態を確認します。
- リズムと新規性を確認する:モニター波形、開始前との差、普段のリズムと比較します。
- 回復過程を見る:負荷中断後に心拍数、症状、血圧がどう変化するかを確認します。
- 必要時は相談する:循環不安定性、新規不整脈、改善しない変化を認める場合は、介入再開より報告を優先します。
「休めば心拍数が戻った」という一点だけで再開を決めるのではなく、なぜ変化したのか、同じ負荷で再現する可能性があるかまで考えます。
頻脈では心拍数の高さより循環不安定性と原因を確認します
頻脈を認めたら、まずその心拍数が患者の状態に対して妥当かを考えます。運動直後、疼痛、発熱、不安などによる洞性頻脈と、安静時に突然出現した頻脈性不整脈では意味が異なります。
特に、頻脈とともに低血圧、急な意識変化、ショックを疑う所見、虚血性胸部症状、急性心不全を疑う呼吸循環動態の悪化を認める場合は、運動継続の判断ではなく速やかな報告・対応を優先します。
| 視点 | 確認例 |
|---|---|
| 新規性 | 普段から高いのか、今日初めて高くなったのか |
| 負荷との関係 | 運動に応じた上昇か、低負荷・安静でも高いのか |
| 症状・循環動態 | 胸部症状、呼吸苦、血圧低下、意識変化などを伴うか |
| リズム | 規則的か不規則か、突然始まったか、既知の心房細動などがあるか |
| 背景 | 発熱、感染、低酸素、疼痛、脱水、貧血、薬剤などがないか |
| 回復 | 負荷中断・安静後に心拍数と症状がどう変化するか |
AHAの成人頻脈性不整脈アルゴリズムでは、頻脈性不整脈として問題になる心拍数は典型的には150回/分以上とされています。ただし、これは救急・急性不整脈対応のアルゴリズムであり、「149回/分ならリハ可能、150回/分なら中止」という境界ではありません。
徐脈では40・50回/分という数字だけでなく症状と血行動態を見ます
徐脈も同様に、心拍数だけで危険性は決まりません。もともとの安静時心拍数が低い患者と、普段70回/分だった患者が新たに40回台へ低下した場合では意味が異なります。
AHAでは徐脈性不整脈を典型的には50回/分未満として扱い、低血圧、急性の意識変化、ショック徴候、虚血性胸部症状、急性心不全などを伴うかで緊急性を評価しています。
またJCS/JACRの心血管疾患に対する運動療法では、心拍数40回/分以下の徐脈は相対的中止基準の一つとして挙げられています。一方で、無症状で血行動態が安定している患者については、数字だけで原因や危険性を決めず、既往、伝導障害、薬剤、ベースラインなどを確認する必要があります。
| 視点 | 確認例 |
|---|---|
| 症状 | めまい、失神前症状、意識変化、胸部症状、強い倦怠感 |
| 循環動態 | 低血圧、末梢循環不良、呼吸状態悪化を伴うか |
| 新規性 | 普段から徐脈なのか、今回新たに低下したのか |
| 心電図 | 洞徐脈か、房室ブロックなどの伝導異常を疑う所見がないか |
| 薬剤 | β遮断薬、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬、ジギタリスなどの影響が考えられないか |
| その他の背景 | 心筋虚血、低酸素、電解質異常、迷走神経反射などを示唆する状況がないか |
中止・相談を優先するのは心拍数より「不安定性」がある場合です
頻脈・徐脈のどちらでも、次のような変化を認めた場合は運動継続より中止・相談を優先します。緊急性が高い場合は、施設の急変対応手順に従います。
| 所見 | 考え方 | PT・OT・STの初動 |
|---|---|---|
| 血圧低下・ショックを疑う所見 | 心拍異常に伴う循環不全の可能性を考える | 負荷を中止し、再測定と速やかな報告を行う |
| 急な意識変化・失神 | 脳灌流低下などを含む緊急性を評価する | 安全確保と急変対応を優先する |
| 胸痛・虚血を疑う胸部症状 | 心筋虚血との関連を除外できない | 運動を中止し、症状・バイタル・心電図を確認して報告する |
| 急な呼吸苦・心不全を疑う変化 | 頻脈・徐脈に伴う血行動態悪化の可能性を考える | 負荷を中止し、呼吸循環状態を確認する |
| 新規の不整脈・致死的不整脈を疑う波形 | 心拍数だけでは安全性を判断できない | モニターを確認し、必要な急変対応・報告へつなぐ |
| 負荷を下げても症状・バイタルが改善しない | 一過性の運動反応だけでは説明できない可能性がある | 再開せず、原因確認と相談を優先する |
ST変化を同時に認めた場合の確認手順は、ST変化でリハビリは中止?PTの確認手順と相談ポイントで詳しく整理しています。
頻脈・徐脈を見つけた後は原因・背景を確認します
安全確認を優先したあとで、その心拍数になった背景を確認します。頻脈・徐脈そのものが診断名ではなく、全身状態や治療の変化を反映していることがあるためです。
| 背景 | 頻脈との関連 | 徐脈との関連 |
|---|---|---|
| 低酸素・呼吸状態 | 代償性の心拍増加につながることがある | 重度の低酸素では徐脈を伴うこともある |
| 発熱・感染 | 洞性頻脈の背景となり得る | 病態や薬剤など他要因との組み合わせを確認する |
| 疼痛・不安 | 交感神経活動亢進により心拍数が上昇し得る | 主因としては考えにくく、別の原因も確認する |
| 脱水・循環血液量 | 頻脈や血圧変化の背景となり得る | 血行動態全体を確認する |
| 貧血 | 代償性頻脈を伴うことがある | 心拍数単独ではなく全身状態と照合する |
| 薬剤 | 交感神経刺激薬などの影響を確認する | β遮断薬など心拍数を低下させる薬剤を確認する |
| 心疾患・電解質異常 | 不整脈の原因・増悪因子となることがあるため、診療情報や検査結果と照合する | |
PTが原因を確定診断する必要はありません。重要なのは、「いつから」「何と一緒に変わったか」「何を確認したか」を整理して医師・看護師などへ共有することです。
報告・記録は「数字」ではなく変化と判断根拠を残します
記録では「HR 120」だけでは、そのとき何が起きていたのか分かりません。心拍数、症状、他のバイタル、新規性、介入との時間関係、負荷中断後の反応まで残すと、次回介入の判断にも使いやすくなります。
| 項目 | 記録内容 |
|---|---|
| 発生場面 | 開始前、端座位中、立位中、歩行中、終了後など |
| 心拍・脈拍 | 値、規則性、モニター表示と触診との差、前回値との比較 |
| 症状 | 胸部症状、呼吸苦、めまい、冷汗、意識状態など |
| 循環・呼吸 | 血圧、SpO2、呼吸状態など |
| 経時変化 | 負荷中断・休息後にどう変化したか |
| 対応・共有 | 中断、再測定、心電図確認、相談先、指示内容など |
記録例:歩行開始後にHR 118→146 bpmへ上昇。動悸あり、胸痛なし。歩行を中断し座位で再評価。BP 108/64 mmHg、SpO2 96%、意識清明。休息3分後HR 118 bpmまで低下。開始前HR 92 bpmと比べ上昇大きく、担当看護師へ経過共有し本日の歩行負荷は再開せず。
この例で重要なのは146 bpmという数字そのものではなく、どの負荷で変化し、何を伴い、負荷中断後にどう変化し、なぜ再開しなかったのかが追えることです。
よくある迷い|心拍数の数字をそのまま介入基準にしない
| 迷いやすい場面 | 考え方 |
|---|---|
| HR 105だから頻脈=中止? | 頻脈の定義に該当しても、それだけで中止とは決めない。安静時か運動後か、症状、血圧、新規性、原因を確認する |
| HR 48だが無症状なら問題ない? | 無症状だけで判断せず、普段の値、新規性、血圧、心電図、薬剤などを確認する |
| HR 120を超えたら必ず中止? | 一律の境界にはしない。疾患、安静時か運動中か、運動強度、症状、循環動態、施設基準を合わせて判断する |
| 休息で戻ればそのまま再開できる? | 回復したことは重要だが、急な変化の原因、新規性、症状、再現リスクを確認してから判断する |
| モニターのHRだけ見ればよい? | 波形、実際の脈拍、血圧、SpO2、症状と照合する。表示値だけで判断しない |
よくある質問
頻脈は何回/分からですか?
一般的には100回/分以上を頻脈とすることがあります。ただし、これはリハ中止の基準ではありません。AHAの急性頻脈性不整脈アルゴリズムでは、頻脈性不整脈として問題となる心拍数は典型的には150回/分以上とされていますが、これも一般病棟リハの一律中止値ではありません。
徐脈が50回/分未満ならリハは中止ですか?
50回/分未満という数字だけでは決めません。普段の心拍数、症状、血圧、新規性、心電図、薬剤などを確認します。一方、心血管疾患の運動療法ガイドラインでは40回/分以下の徐脈が相対的中止基準の一つとして示されています。
無症状の頻脈・徐脈ならリハを続けてよいですか?
無症状であっても、新規の変化、血圧やSpO2の変化、新規不整脈、心疾患、薬剤などを確認します。無症状であることだけを継続の根拠にはしません。
心拍数が異常なときは12誘導心電図が必要ですか?
PTが一律に必要性を決めるものではありませんが、新規の頻脈・徐脈や不整脈が疑われる場合、12誘導心電図が原因・リズム評価に必要となることがあります。モニター波形、症状、循環動態をそろえて医師・看護師へ相談します。
次の一手|「何回だったか」から「何を伴っていたか」へ変えます
頻脈・徐脈を見つけたときは、「HRが何回だったか」だけで介入可否を決めず、症状、血圧・SpO2、新規性、リズム、負荷との関係、休息後の変化をそろえて判断します。特に普段と異なる変化や循環不安定性を認める場合は、負荷の継続より報告・原因確認を優先します。
バイタル変化全体の初動を整理したい場合は、リハ前・リハ中のバイタル変化の初動もあわせて確認してください。
参考文献
- Wigginton JG, Agarwal S, Bartos JA, et al. Part 9: Advanced Life Support: 2025 American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care. Circulation. 2025;152(Suppl 2):S538-S577. doi:10.1161/CIR.0000000000001376.
- Makita S, Yasu T, Akashi YJ, et al. JCS/JACR 2021 Guideline on Rehabilitation in Patients With Cardiovascular Disease. Circ J. 2023;87(1):155-235. doi: 10.1253/circj.CJ-22-0234.
- Iwasaki Y, et al. JCS/JHRS 2024 Guideline Focused Update on Management of Cardiac Arrhythmias. Circ J. 2025;89(7). doi:10.1253/circj.CJ-24-0073.
- 日本循環器学会. 2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン.
- 国立循環器病研究センター. 不整脈|循環器病について知る.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、リハビリテーション実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

