結論|血液検査データは「異常値」より次に何を確認するかが重要です
新人PTがリハビリ前に血液検査データを見るときは、すべての基準値を暗記する必要はありません。まず採血日時と前回値を確認し、CRP・WBC、Hb・Hct、Alb・TP、BUN・Cr・eGFR、Na・K・Ca、血糖を「何を見る検査か」で整理します。そのうえで、気になる値があれば症状・バイタル・経時変化・治療状況を追加確認します。
重要なのは、検査値1項目だけで「リハビリ可能/中止」と決めないことです。本記事では、生化学検査だけでなく血算を含む血液検査データ全体について、何を見るか→異常なら次に何を見るか→どの各論へ進むかを新人PT向けに整理します。
新人PTが血液検査でまず確認したい6つのグループ
血液検査は項目数が多いため、結果を上から順番に暗記するより、リハビリ中の症状や全身状態と関連づけやすい項目をグループで把握すると整理しやすくなります。まずは炎症・感染、貧血、蛋白関連、腎機能、電解質、血糖の6つを入口にすると、その後の追加確認へつなげやすくなります。

この6グループは「この値なら実施、この値なら中止」という判定表ではありません。基準範囲や緊急連絡値は検査法や施設によって異なるため、自施設の基準、主治医の指示、現在の患者状態を優先します。
異常値を見つけたら「症状・推移・時刻・治療」を照合します
血液検査データを臨床へ返すときは、単回値だけでは情報が足りません。同じ数値でも、以前から同程度で安定している場合と、短期間で急に変化している場合では意味が異なります。
- 症状・バイタルを確認する:発熱、呼吸苦、胸部症状、動悸、めまい、冷汗、倦怠感、意識変化と、血圧・脈拍・SpO2・呼吸数などを確認します。
- 前回値との推移を見る:今回値だけではなく、改善・横ばい・悪化のどの方向へ動いているかを確認します。
- 採血時刻を確認する:現在の状態を反映した結果か、治療前後のどの時点で採血された値かを確認します。
- 治療状況を確認する:輸液、利尿薬、輸血、透析、インスリンなど、検査値や患者状態へ影響する治療を確認します。
新人PTが押さえたいポイント:
「異常値を見つけた」で終わらず、その患者に症状があるか、前回からどう変化したか、いつ採血されたか、どの治療が行われているかまで確認すると、リハビリ中の観察項目や相談内容へつなげやすくなります。
APTA Acute CareのLaboratory Values Interpretation Resourceも、検査値を臨床判断へ利用する際には患者の状態を含めて解釈し、医療チームとの連携につなげる考え方を示しています。検査値を単独のスイッチとして扱うのではなく、患者ごとの臨床状況と統合して判断することが重要です。
項目別|気になる値があったとき次に何を見るか
ここからは、6グループについて「何を見る検査か」と「気になったとき何を追加確認するか」を整理します。詳細な介入判断まで本記事で繰り返さず、CRP・WBC、腎機能、電解質は各論記事へ役割を分けます。
CRP・WBC|高値だけで感染や離床可否を決めません
CRPは炎症や組織障害に伴って変化し、WBCも感染・炎症を含むさまざまな要因で変動します。いずれも数値だけで原因やリハビリ実施可否を確定する検査ではありません。
CRP・WBCが気になった場合は、体温、悪寒、倦怠感、呼吸状態、痰、創部などの所見と前回値からの推移を確認します。検査値の悪化と発熱・呼吸状態悪化・循環不安定などが重なる場合は、予定した訓練をそのまま進めるのではなく、患者状態の確認とチームへの共有を優先します。
CRP・WBCを確認したあとの離床判断を詳しく整理したい場合は、CRP・WBCの離床判断で確認してください。
Hb・Hct|数値と運動時症状をセットで確認します
Hbは血液中のヘモグロビン濃度、Hctは血液中で赤血球が占める割合を示します。貧血がある患者では、息切れ、動悸、易疲労、めまいなどが運動時に現れ、負荷設定へ影響することがあります。
ただし、Hb低値だけを理由に一律のリハビリ可否を決めるのではなく、急な低下か慢性的な値か、症状があるか、安静時・活動時の循環応答はどうか、出血や輸血などの治療状況はどうかを照合します。
リハビリ場面では、「普段と同じ動作で息切れや頻脈が強くなっていないか」「休息によって回復するか」といった患者反応も重要な情報になります。
Alb・TP|Alb低値を「低栄養」と単純化しません
AlbやTPを見るときは、低値をそのまま低栄養と判断しないことが重要です。特にAlbは炎症、疾患の重症度、体液状態などの影響を受けます。
ASPENのポジションペーパーでは、アルブミンやプレアルブミンは蛋白エネルギー低栄養や総筋量を示す代理指標として使用すべきではなく、炎症との関連が強いことが示されています。
Albが低い場合は、CRPなどの炎症所見、浮腫、体重変化、食事摂取量、疾患経過などを追加確認します。リハビリ栄養を考える場合も、Alb単独ではなく、摂取状況・体重・筋量・身体機能・疾患背景を統合して評価します。
BUN・Cr・eGFR|腎機能は単回値より変化と患者背景を見ます
BUN、Cr、eGFRは腎機能を考える重要な項目ですが、1つの数値だけでは患者の状態を十分に説明できません。Crは筋肉量などの影響を受け、BUNも腎機能だけでなく体液状態や代謝など複数の影響を受けます。
KDIGO 2024では、CKD評価において血清クレアチニンを用いた推算GFRを基本とし、状況に応じて追加評価を組み合わせる考え方が示されています。リハビリ場面でもeGFRの数値だけを見るのではなく、前回値からの変化、尿量、血圧、浮腫、脱水を疑う所見、薬剤・治療状況を合わせて確認します。
腎機能低下時の運動負荷や確認事項を詳しく知りたい場合は、腎機能低下時の運動負荷調整で整理しています。
Na・K・Ca|症状や循環・神経筋所見を合わせて確認します
Na、K、Caなどの電解質は、意識、神経・筋機能、循環へ影響します。異常値を認めた場合は、その値だけでなく、急な変化か慢性的な異常か、症状を伴っているかを確認します。
Naの変動では意識状態や全身状態、KやCaの異常では筋力低下、動悸、不整脈を疑う所見などを確認します。腎機能、輸液、利尿薬など、電解質変動の背景になり得る情報も合わせて見ます。
Na・K・Caの具体的な確認順や介入時の考え方は、電解質異常の介入判断へ役割を分けています。
血糖|数値と食事・薬剤・運動の時系列をつなげます
血糖を見るときは、その瞬間の値だけでなく、食事、インスリンや血糖降下薬、運動開始時刻との関係を確認します。特にインスリンやインスリン分泌を促進する薬剤を使用している患者では、身体活動に伴う低血糖リスクを考慮する必要があります。
冷汗、振戦、動悸、空腹感、ふらつき、反応の鈍化など普段と異なる症状がみられた場合は、訓練を継続したまま原因を探すのではなく、安全を確保して患者状態と血糖を確認します。
ADA Standards of Care in Diabetes 2026でも、身体活動に伴う血糖反応には個人差があり、特にインスリンやインスリン分泌促進薬を使用する人では運動に伴う低血糖への個別対応が重要とされています。
検査値より先に中断・相談を考える患者状態があります
血液検査を確認する目的は、数字だけでリハビリの可否を決めることではなく、安全上見逃せない患者状態の変化を把握することです。検査値の程度にかかわらず、現在の患者状態が急変している場合は症状とバイタルを優先します。
| 患者状態の変化 | 追加確認 | 初期対応の考え方 |
|---|---|---|
| 意識状態の急な変化 | 血圧、SpO2、血糖、電解質、全身状態 | 予定した訓練を継続せず、原因確認と共有を優先する |
| 新規・増悪した胸痛や強い呼吸苦 | 血圧、脈拍、SpO2、呼吸数、症状の経過 | 検査値の確認より患者の安全確保と報告を優先する |
| 血圧低下や著しい循環変化 | 出血、脱水、感染、貧血などを含む背景 | 負荷を継続せず、患者状態を再評価して相談する |
| 冷汗、振戦、ふらつき、反応低下 | 血糖、食事、薬剤、身体活動との時系列 | 安全を確保し、低血糖を含む原因を確認する |
| 検査値の急激な変化と症状が重なる | 前回値、採血時刻、治療内容、現在のバイタル | 単回値として扱わず、急性変化としてチームへ共有する |
施設で緊急連絡値、中止基準、主治医指示などが定められている場合は、それらを優先します。本記事の表は、一律の介入可否基準ではなく「次に何を確認するか」を整理するためのものです。
記録は「値」だけでなく、何を照合してどう対応したか残します
血液検査データを確認したこと自体より、検査結果を患者状態とどう照合したかを残すと、次回の再評価や申し送りに役立ちます。「採血データ確認」の一文だけでは、次の担当者が判断過程を追えません。
| 残す情報 | 記録例 |
|---|---|
| 検査値と推移 | Hbは前回より低下。CRPは前回から改善傾向。 |
| 現在の患者状態 | 安静時呼吸苦なし。立位で息切れ増強、脈拍上昇あり。 |
| 照合した情報 | 採血時刻、前回値、当日のバイタル、治療内容を確認。 |
| 対応・共有 | 歩行量を調整し反応を再評価。所見を看護師へ共有。 |
記録例は一律の介入基準を示すものではありません。何を見て、何が気になり、何を追加確認し、患者がどう反応したかを追える記録にすることが目的です。
新人PTが避けたい4つの読み方
血液検査は項目数が多いため、数値の暗記へ意識が向きやすくなります。実務では、次の4つを避けると患者評価へつなげやすくなります。
- 基準範囲から外れたかだけを見る:前回値からの変化や患者の症状が抜けます。
- 1項目だけで介入可否を決める:CRP、Hb、eGFRなど単独で患者全体を判断しません。
- Alb低値をそのまま低栄養と判断する:炎症や体液状態など複数の影響を考えます。
- 採血日時を確認しない:治療前や以前の値を、現在の患者状態として扱わないようにします。
血液検査データのよくある質問
Q1. 新人PTは基準値をすべて暗記したほうがよいですか?
A. 最初からすべてを暗記する必要はありません。まずCRP・WBC、Hb・Hct、Alb・TP、BUN・Cr・eGFR、Na・K・Ca、血糖が何を見る検査なのかを整理し、自施設の基準範囲を確認できるようにしておくほうが実務へつなげやすくなります。単回値だけでなく、前回値と患者状態を照合する習慣を優先します。
Q2. Albが低ければ低栄養と判断してよいですか?
A. Alb低値だけで低栄養とは判断しません。Albは炎症や疾患の重症度、体液状態などの影響を受けます。CRP、食事摂取量、体重変化、浮腫、筋量・身体機能などを合わせて評価します。
Q3. 検査値が基準範囲外ならリハビリは中止ですか?
A. 基準範囲外という理由だけで一律に中止とはなりません。症状、バイタル、経時変化、疾患背景、治療状況を合わせて判断します。一方、急激な変化や患者状態の悪化を伴う場合は介入を中断し、必要なスタッフへ共有します。施設の緊急連絡値や主治医指示がある場合はそちらを優先します。
Q4. 朝の採血結果を見れば、その日のリハビリ判断には十分ですか?
A. 採血結果だけでは十分ではありません。採血後に治療や患者状態が変化している可能性があるため、採血時刻、現在の症状・バイタル、治療経過を合わせて確認します。特に状態変化が大きい患者では、「最新の数値か」だけでなく「現在の状態と一致しているか」を確認します。
次の一手|検査値を見たら「次に何を見るか」まで決めます
新人PTが血液検査データを読むときは、異常値を見つけること自体がゴールではありません。まず項目の意味を把握し、気になる値があれば症状・バイタル・前回値・採血時刻・治療状況を照合します。その結果から、追加評価、各論の確認、チームへの共有へつなげます。
検査値だけでなく、画像・心電図・バイタルなども含めてリハビリ前の確認事項を整理したい場合は新人PTの臨床確認ガイド、評価記事全体から必要な項目を探したい場合は評価ライブラリへ進んでください。
参考文献
- Academy of Acute Care Physical Therapy. Laboratory Values Interpretation Resources. Updated 2023. https://www.aptaacutecare.org/page/ResourceGuides. Accessed September 27, 2026.
- Evans DC, Corkins MR, Malone A, et al. The Use of Visceral Proteins as Nutrition Markers: An ASPEN Position Paper. Nutr Clin Pract. 2021;36(1):22-28. doi: 10.1002/ncp.10588. PubMed: 33125793.
- Levin A, Ahmed SB, Carrero JJ, et al. Executive summary of the KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease: known knowns and known unknowns. Kidney Int. 2024;105(4):684-701. doi: 10.1016/j.kint.2023.10.016. PubMed: 38519239.
- American Diabetes Association Professional Practice Committee for Diabetes. 5. Facilitating Positive Health Behaviors and Well-being to Improve Health Outcomes: Standards of Care in Diabetes—2026. Diabetes Care. 2026;49(Suppl 1):S89-S131. Standards of Care in Diabetes—2026.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

