テレリハビリとは?|オンラインで行うリハの基本と特徴
テレリハビリ(テレリハ)は、ビデオ通話や専用アプリを用いて、自宅などから理学療法士が運動指導やアドバイスを行うリハビリテーション手法です。院内リハと比べて「通院負担の軽減」「在宅環境での動作指導」「離島・遠方でも専門職にアクセスできる」といったメリットがあり、コロナ禍以降は慢性期疾患や高齢者を中心に活用が広がっています。
一方で、触診や徒手抵抗のような直接的な評価が難しいこと、通信環境・プライバシー・安全管理(転倒リスクなど)の課題もあります。テレリハを「対面リハの代用品」と考えるのではなく、対面と組み合わせたハイブリッドなケアモデルの中で、「どの場面をオンラインに置き換えると患者さんと自施設のメリットが大きいか」を設計する視点が重要です。
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テレリハビリが「アリ」なケースと避けたいケース
テレリハが検討しやすいのは、急性増悪が落ち着いた慢性期〜生活期で、「運動量の確保」「セルフエクササイズの継続」「環境調整のアドバイス」が中心となるケースです。具体的には、フレイル高齢者の転倒予防、慢性腰痛・膝痛など運動器慢性痛、心肺リハのフォロー期、術後数か月以降の自主トレ指導などが候補になります。在宅生活の中での歩行動線や家具配置など、実際の生活空間を画面越しに共有できる点も強みです。
一方で、急性期の不安定な患者、安静度が高い患者、転倒リスクが極めて高い患者、重度の心不全や不整脈など急変リスクが高いケースでは、基本的に対面リハを優先すべきです。また、認知機能低下・失語・せん妄などにより画面越しの指示理解が難しい場合や、自宅に介助者が不在で安全確保ができない場合も、慎重な適応判断が必要です。
オンライン評価と記録のポイント
画面越しの評価では、すべてを対面と同じ精度で行おうとするのではなく、「オンラインでも比較的安全に測定しやすい指標」を軸に組み立てるのが現実的です。例えば、立ち上がり動作や立位バランスの観察、簡易的な Timed Up and Go( TUG )や歩行速度、上肢の挙上範囲などは、カメラの位置と背景スペースを工夫すればある程度評価可能です。事前に「椅子の高さ」「カメラを置く位置」「転倒時に周囲の人が気づける環境」などを確認しておくと安全です。
記録では、通常の SOAP に加えて「通信方法・接続状況」「安全確認の内容」「画面越しで見えなかった点」を明記しておくと、後から振り返りやすくなります。特に、セッション開始時の状態確認(体調・血圧自己測定の有無・転倒リスク)と、終了時の変化・セルフモニタリングの指示内容は、次回のテレリハや対面リハとつなげるうえで重要な情報になります。
現場の詰まりどころと対策:ただの「オンライン雑談」にしない
テレリハ導入時のよくある悩みは、「ビデオ通話はできているが、ただの雑談や見守りになりがち」「対面よりも『やった感』を出しにくい」といった点です。これを防ぐには、セッションごとに 目的・指標・メニュー・振り返り の 4 点を事前にテンプレ化しておくのが有効です。例えば、「今日は TUG と椅子立ち上がりをベースラインとして測り、その上で下肢筋トレとバランス課題を 20 分行い、最後に再評価する」といった流れです。
また、テレリハでは家族や介護者が同席しやすい点も活かすべきポイントです。介助量の調整や環境設定(手すり・照明・トイレまでの動線など)を一緒に確認することで、「訓練だけでなく生活全体を整える場」としての価値が高まります。必要に応じて、次回は対面での再評価や装具チェックを予定に組み込み、「対面とオンラインの役割分担」を明示しておくと双方の納得感が得られやすくなります。
活動量計・アプリとの組み合わせ方
テレリハの効果を引き出す鍵のひとつが、活動量計やエクササイズアプリとの併用です。歩数計・加速度センサー付きウエアラブルデバイスを使えば、日々の歩数や中等度以上の活動時間を可視化でき、セッション時に「この 1 週間の活動ログ」を一緒に振り返ることが可能になります。痛みの変化や息切れ、疲労感などをアプリで簡易入力してもらえば、自己モニタリングとセルフマネジメントの支援にもつながります。
ただし、デバイスの装着・充電・アプリ操作に負荷がかかりすぎると、かえって継続の妨げになります。高齢者やデジタルツールが苦手な方には、紙のカレンダーとペンを併用し、「毎日 3 行以内で運動量と体調を書く」などアナログな方法も選択肢に含めてよいと思います。大切なのは、「患者さんが自分の状態を振り返る習慣」を作ることであり、ツールはあくまで手段に過ぎません。
よくある質問(FAQ)
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テレリハビリはどれくらいの頻度・期間で行うと効果が出やすいですか?
研究報告では、週 1〜3 回程度・1 回 20〜60 分の運動介入を 4〜12 週間継続したプログラムが多く、対面リハと同等か、運動量によってはそれ以上のアウトカム改善が示された例もあります。ただし、対象や目的によって最適な頻度は異なるため、心肺負荷・疲労・生活スケジュールを踏まえて個別に設定する必要があります。
転倒が心配な高齢者にオンラインで運動指導をしても安全でしょうか?
転倒リスクが高い場合は、テレリハ単独ではなく、対面評価でリスクを把握したうえで、家族・介護者の同席や手すり・椅子配置など環境調整を行った上で実施するのが望ましいです。立位・歩行課題は短時間から開始し、カメラ位置を工夫して全身と周囲環境が映るようにすると安全確認がしやすくなります。それでも不安が残る場合は、テレリハよりも対面リハを優先します。
オンラインだとモチベーションが続きにくい患者さんにはどう対応しますか?
ゴール設定を「回数」ではなく「できるようになりたい生活場面」に結びつけることが重要です。例えば、「玄関の段差を一人で上がれる」「週 3 回は近所のスーパーまで歩く」など具体的な目標を共有し、活動量計やチェックシートで達成度を見える化します。また、セッション冒頭に前回からの変化を一緒に振り返る時間を設けると、小さな進歩を実感しやすくなります。
おわりに:テレリハを「働き方」と「強みづくり」にどう活かすか
テレリハビリは、対面リハを置き換える魔法のツールではありませんが、「通えない」「続けられない」を減らすための選択肢として、今後も重要性が増していくと考えられます。評価と安全管理の軸を押さえながら、対面とオンラインをどう組み合わせるかを設計できる PT ・ OT は、在宅・訪問・通所リハなどさまざまなフィールドで価値を発揮しやすくなります。
一方で、テレリハを活かせるかどうかは、所属先の体制や教育環境にも左右されます。「今の職場ではオンラインの仕組みが整っていない」「在宅・ハイブリッドリハに強い職場も検討したい」と感じたら、面談準備チェックリストや職場比較シートが無料でダウンロードできるマイナビコメディカル活用ガイドを使って、情報収集とキャリアの棚卸しから始めてみるのも一案です。
参考文献
- Lee AC, Deutsch JE, Holdsworth L, et al. Telerehabilitation in Physical Therapist Practice: A Clinical Practice Guideline From the American Physical Therapy Association. Phys Ther. 2024;104(5):pzae045. doi:10.1093/ptj/pzae045.
- Alwadai B, Lazem H, Almoajil H, Hall AJ, Mansoubi M, Dawes H. Telerehabilitation and Its Impact Following Stroke: An Umbrella Review of Systematic Reviews. J Clin Med. 2025;14(1):50. doi:10.3390/jcm14010050.
- Wicks M, Dennett AM, Peiris CL. Physiotherapist-led, exercise-based telerehabilitation for older adults improves patient and health service outcomes: a systematic review and meta-analysis. Age Ageing. 2023;52(11):afad207. doi:10.1093/ageing/afad207.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

