3 療法士の賃上げと 365 日リハ体制|現場への影響を整理
2026 年 3 月 3 日、日本理学療法士協会は日本作業療法士協会、日本言語聴覚士協会とともに、全日本病院協会と日本病院会へ意見交換を行い、「現場で働く 3 療法士の賃上げの確実な実施」と「 365 日リハ提供の実現に向けた専門職配置の推進」を要望したと公表しました。理学療法士にとっては、給与だけでなく、休日リハ体制、急性期・包括期での配置、部門運営にもつながる話題です。
ただし、今回の公表は「制度が最終決定した」という意味ではありません。要望内容と改定の流れを切り分けて読むことが重要です。この記事では、何が公表されたのか、なぜ今この話が出たのか、現場にどこまで影響しそうかを、誤解しやすい点も含めて整理します。
今回、何が公表されたのか
今回のニュースは、3 団体が病院団体に対して正式に要望し、意見交換を行ったという内容です。日本理学療法士協会の公表では、2026 年 2 月 19 日に全日本病院協会、2 月 27 日に日本病院会を訪問し、2 つの要望について意見交換を実施したとされています。
要望の柱は、① 令和 7 年度補正予算および令和 8 年度診療報酬改定による 3 療法士の処遇改善、② 急性期および包括期における 365 日リハ提供体制の実現に向けた専門職配置の推進、の 2 点です。公表内容では、両病院団体の会長はいずれも賛同的な姿勢を示したとされています。
要望された 2 つのポイント
3 療法士の処遇改善
1 つ目は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の処遇改善です。現場感覚では「専門性に見合う評価を、賃金や人員確保にどうつなげるか」という論点に近く、若手の定着、中堅の離職防止、採用競争への対応とも関わります。
特に、病院側で人員確保が難しくなっている施設では、単に求人を出すだけでなく、処遇改善や配属の魅力づけまで含めて考える必要があります。今回の要望は、その議論を進める材料として見ておきたい内容です。
365 日リハ提供体制に向けた配置推進
2 つ目は、急性期および包括期における 365 日リハ提供体制の実現に向けた専門職配置の推進です。ここでいう論点は、単純に「土日も出勤者を増やす」という話ではなく、必要な患者へ早期にリハビリテーションを届けるために、病棟配置や曜日配置をどう組み直すかにあります。
急性期では早期離床や廃用予防、包括期では在院中の機能維持と退院支援が重要です。そのため、平日中心の運用では詰まりやすい場面があり、休日介入をどう位置づけるかは今後も大きなテーマになりそうです。
なぜ今この話が出たのか
背景には、令和 8 年度診療報酬改定があります。日本理学療法士協会は 2026 年 2 月 13 日に、中央社会保険医療協議会総会で令和 8 年度診療報酬改定の答申が提示されたことを案内しました。さらに、厚生労働省は 3 月 5 日に改定内容の説明資料や説明動画を公開しています。
今回の要望は単独の協会ニュースではなく、改定内容を現場で実装していく流れの中で読む方が理解しやすいテーマです。改定全体の整理は 令和 8 年度診療報酬改定リハハブ にまとめると回遊しやすくなります。
理学療法士の現場には何が影響しそうか
給与や手当の議論
今回の公表だけで全国一律の賃上げが確定したわけではありませんが、3 団体が正式に処遇改善を要望し、病院団体側も賛同的な反応を示していることは、院内での説明や議論の材料になります。特に、採用難や離職防止が課題の施設では、賃金だけでなく休日体制や教育体制も含めて再設計が進む可能性があります。
休日リハ・全日型体制の議論
急性期や包括期では、土日や祝日に介入が空くことで、離床、ADL 練習、退院調整が遅れやすくなる場面があります。今回の話題は、休日リハの必要性を単なる現場の希望ではなく、体制整備の論点として扱いやすくした点に意味があります。
管理者・主任が見るべき視点
管理者目線では、人員数だけでなく、休日介入の対象基準、病棟横断の運用、データの示し方が重要です。どの患者に休日介入が必要なのか、どういう配置なら安全に回るのか、介入の有無で何が変わったのかを数字で説明できるかが、今後の説得力を左右します。
現場の詰まりどころ
このテーマで現場が詰まりやすいのは、「何が決まった話で、何がまだ運用未確定なのか」が混ざりやすい点です。ニュースをそのまま読むと期待が先行しやすいため、現時点での整理を表にまとめます。
| 論点 | 現時点で言えること | まだ言い切れないこと | 現場の確認ポイント |
|---|---|---|---|
| 賃上げ | 3 団体が処遇改善を正式に要望した | すべての施設で一律に賃上げが決まったわけではない | 院内説明、採用計画、離職防止策の有無 |
| 365 日リハ体制 | 急性期・包括期で配置推進が論点になっている | 全国一律の義務化が確定したわけではない | 休日介入の対象基準、病棟配置、勤務設計 |
| 改定実務 | 厚労省の説明資料・説明動画は公開済み | 施設基準や届出の細部は確認が必要な部分がある | 通知、届出時期、院内で読む担当者の明確化 |
| 部門運営 | 配置とデータの示し方が重要になる流れ | どの指標が最も評価されるかは施設ごとに差がある | 休日介入率、早期介入率、在院日数、ADL 変化 |
今、現場で確認しておきたいこと
まず確認したいのは、自院で休日リハや急性期介入がどの程度まで組めているかです。すでに土日介入の仕組みがあるのか、病棟横断で調整できるのか、担当者依存の運用になっていないかで、今後の対応は大きく変わります。
次に、処遇改善に関する院内説明があるか、改定資料を誰が読み解くか、効果指標をどのように集めるかも整理したいところです。今回のテーマは、給与の話だけでなく、配置・運用・アウトカムをどう結びつけるかという実務テーマとして捉えると動きやすくなります。
よくある質問
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今回のニュースで、理学療法士の給料はすぐ上がりますか?
そこまでは言えません。今回公表されたのは、3 団体が病院団体へ処遇改善を要望したという内容です。方向性を示す材料にはなりますが、各施設での反映時期や反映方法は、院内方針や経営判断も含めて確認が必要です。
365 日リハ体制は、すべての病院で義務になりますか?
現時点では、そのように断定できません。今回の公表内容は、急性期・包括期での 365 日リハ提供体制に向けた配置推進を要望した段階です。今後は通知や運用ルール、施設基準の扱いも含めて確認していく必要があります。
現場で最初に見るべき数字は何ですか?
休日介入率、早期介入率、ADL の変化、在院日数、退院調整の進み具合などが見やすい指標です。いきなり多くを追うより、まずは「休日に介入が空くことで何が遅れるのか」を見える化すると、院内で説明しやすくなります。
若手 PT はこの話題をどう受け止めればいいですか?
給与だけでなく、教育体制、休日の勤務設計、急性期での役割拡大がセットで動く可能性があるテーマとして見るのがおすすめです。就職や転職を考えるときも、給与額だけでなく、体制整備の進み具合まで確認すると判断しやすくなります。
次の一手
制度改定の話題は、個別ニュースだけでなく「全体像 → 各論」で追うと理解しやすくなります。続けて読むなら、まずは改定全体の整理、そのうえで個別の加算や退院時情報提供の変更点まで押さえる流れがおすすめです。
参考文献
- 公益社団法人日本理学療法士協会. 全日本病院協会、日本病院会との意見交換を実施 -「現場で働く 3 療法士賃上げの確実な実施」・「365 日リハ提供の実現に向けた専門職配置の推進」にむけて. 2026 年 3 月 3 日. https://www.japanpt.or.jp/info/20260303_851.html(2026 年 3 月 8 日アクセス)
- 公益社団法人日本理学療法士協会. 速報!令和 8 年度診療報酬改定 答申/〖重要〗「看護・多職種協働加算」に関する実践指針〖暫定版〗(本会作成)の発出. 2026 年 2 月 13 日. https://www.japanpt.or.jp/info/20260213_814.html(2026 年 3 月 8 日アクセス)
- 厚生労働省. 令和 8 年度診療報酬改定説明資料等について. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_71068.html(2026 年 3 月 8 日アクセス)
- 公益社団法人日本理学療法士協会. 令和 8 年度診療報酬改定情報. https://www.japanpt.or.jp/pt/function/insurance/medical_2026/(2026 年 3 月 8 日アクセス)
- 関東信越厚生局. 令和 8 年度診療報酬改定について. https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/iryo_shido/r08kaitei_00001.html(2026 年 3 月 8 日アクセス)


