上田式 12 段階とブルンストロームステージ( BRS )の違い|結論は「目的」で使い分け
結論:ブルンストロームステージ( BRS )は回復の大枠( 6 段階)共有に強く、上田式 12 段階片麻痺機能テストは微差を拾う経過追跡に強い評価です。どちらが優れているかではなく、いま何を決めたいかで選ぶと運用が速くなります。
本記事は、違いを比較表 → 使い分け → 換算の考え方( NG )→ 現場でズレるポイントの順で整理します。設問文の全文掲示ではなく、臨床で再現しやすい判断軸に絞って解説します。
まずは 30 秒:違い早見(比較表)
最初に「何を表す尺度か」を揃えると、評価の議論が短時間でまとまります。両者は同じ回復過程を段階化しますが、粒度と運用目的が異なります。
申し送りでは、下表のどの列を共有するかを先に決めるだけで、評価のズレを減らせます。
| 観点 | ブルンストローム( BRS ) | 上田式 12 段階(片麻痺回復グレード法) | 臨床での向き |
|---|---|---|---|
| 段階(粒度) | 6 段階( I 〜 VI ) | 12 段階(細かな変化を拾いやすい) | 短期間の微変化は 12 段階が有利 |
| 主な役割 | 回復の大枠を共有 | 回復の細かな差を追跡 | 多職種共有= BRS /経過追跡= 12 段階 |
| 評価の考え方 | 共同運動から分離運動へ | BRS の枠組みを土台に細分化 | 回復段階は共通、運用目的が異なる |
| 評価所要時間(目安) | 短時間で大枠を共有しやすい | やや時間はかかるが微差を捉えやすい | 申し送りは BRS、経過追跡は 12 段階 |
| 判定のコツ | 境界は絶対ではない | 微差を段階として拾う | 条件固定で判定の揺れを減らす |
| おすすめ場面 | 初期評価、申し送り、共通語化 | 介入反応、研究、短期追跡 | 目的を分けて併用すると最短 |
使い分けのコツ:迷ったら「決めたいこと」で選ぶ
尺度選びは正しさの競争ではなく、意思決定を速くするための選択です。病棟で今の段階を即共有したいなら BRS、先週との差を拾って課題を調整したいなら 12 段階が向きます。
運用を安定させるには、尺度そのものよりも評価条件の統一が重要です。体位、開始肢位、指示文、促通の有無、疲労の記載をそろえると再現性が上がります。
ケース 1:申し送り・カンファで「今の段階」を即共有したい
短時間で合意形成したい場面は、BRS で大枠を合わせると議論が進みやすくなります。大枠が揃うと、介入内容や環境調整の話に移りやすくなります。
ケース 2:介入反応を追って「次の一手」を決めたい
上田式 12 段階は、微差を段階として拾いやすい構成で、1 〜 2 週間単位の変化把握に向きます。小さな変化を捉えられると、課題難易度の調整や目標設定が具体化しやすくなります。
「換算」はできる?:ざっくり対応は語れても機械的換算は NG
結論:「上田式 ○ なら BRS は必ず △」のような 1 対 1 の自動換算は避けるのが安全です。粒度と判定手続きが異なるため、同一患者でも結果は揺れます。
必要なのは換算表より、どの条件でどう見たかを固定することです。体位、開始肢位、口頭指示、促通、疲労をそろえて再評価すると、同一尺度内の比較精度が上がります。
チーム共有の最短セット
- ① BRS:大枠(共同運動優位か、分離が出ているか)
- ② 上田式 12 段階:介入反応の微差(短期追跡)
- ③ 補足メモ:評価条件(体位・促通・疲労・痛み)
現場の詰まりどころ:ズレやすい 3 パターンと対策
評価の不一致は、患者変動より評価条件の差で起こることが多いです。まずは失敗パターンを共通化し、再評価時の固定項目を決めると一致率が上がります。
| よくあるズレ | 起きやすい理由 | 対策(固定する項目) | 記録の一言例 |
|---|---|---|---|
| 上肢は上がるが手指が追いつかない | 近位優位の回復/課題特性の違い | 上肢と手指を分けて評価・目標設定 | 「上肢優位。手指は別課題で追跡」 |
| 同日でも評価者で段階が違う | 開始肢位・指示文・促通の差 | 体位、開始肢位、指示文、促通の有無を統一 | 「座位・促通なし・指示文固定で判定」 |
| 週末に下がって見える | 疲労、疼痛、不安、注意低下 | 時間帯、疼痛、疲労( Borg など)を併記 | 「疼痛 NRS 3、疲労あり。条件付きで再評価」 |
よくある失敗
- 段階だけを記録して、条件を残していない
- 上肢と手指の差を 1 つの数字で無理に表す
- 換算表を先に作って運用し、判定根拠が曖昧になる
回避のチェック(再評価前)
- 体位・開始肢位・指示文・促通を前回と一致させたか
- 疼痛・疲労・注意状態を記録したか
- 上肢と手指を分けて判断したか
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 結局、どっちを使えばいいですか?
A. 目的で選びます。申し送りやチーム共通語なら BRS、短期の微差追跡なら上田式 12 段階が便利です。迷ったら「 BRS で大枠 → 12 段階で微差」の順で併用すると運用しやすくなります。
Q2. 上田式と BRS は換算できますか?
A. 1 対 1 の機械的換算は推奨しません。粒度と判定手続きが異なるため、同一患者でも揺れます。換算より、評価条件の固定で再現性を上げる方が安全です。
Q3. 日によって段階が上下するときはどう記録しますか?
A. 段階に加えて条件を 1 行で残します。例:体位、促通、疼痛、疲労、時間帯。次回に同条件で再評価しやすくなります。
Q4. 上肢と手指で段階がズレたら、どちらを優先しますか?
A. 改善したい活動で優先を決めます。更衣・移乗など近位制御が主課題なら上肢、食事・巧緻動作が主課題なら手指を優先して目標設定します。
次の一手
- 運用を整える:評価ハブで全体像を確認する(全体像)
- 共有の型を作る:BRS の評価手順を実装する(すぐ実装)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Brunnstrom S. Motor Testing Procedures in Hemiplegia: Based on Sequential Recovery Stages. Physical Therapy. 1966;46(4):357-375. DOI:10.1093/ptj/46.4.357
- 上田 敏, 福屋 靖子, 間 得之, 他. 片麻痺機能テストの標準化―12 段階「片麻痺回復グレード」法. 総合リハビリテーション. 1977;5(10):749-766. DOI:10.11477/mf.1552103862
- Akiyama N, et al. Occupational Therapy with the Screw Block® Kit for Improving Upper Limb Function in Stroke Patients: A Quasi-randomized Controlled Trial. Progress in Rehabilitation Medicine. 2021. J-STAGE
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


