SPPBとTUGの違い|使い分けと結果がズレるときの見方

評価
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SPPBとTUGの違いは「3課題を分ける」か「一連の移動を見る」かです

SPPBとTUGは、どちらも高齢者の身体機能や移動能力を確認するときに使われますが、評価の切り取り方が異なります。SPPBは立位バランス・歩行速度・5回立ち上がりを3課題に分けて評価し、TUGは起立→3m歩行→方向転換→歩行→着座という一連の移動課題に要した時間を測ります。

そのため、「下肢身体機能のどこが低いかを分けて確認したい」のか、「一連の基本的な移動がどの程度で成立するかを確認したい」のかで選び方が変わります。この記事では、SPPBとTUGの使い分け、併用する場面、結果がズレたときの読み方、再評価でそろえる条件まで整理します。

歩行・バランス評価全体から選びたい方へ


歩行・バランス評価の選び方を確認する

SPPBとTUGの違いを、SPPBの3課題とTUGの一連の移動課題で比較した図
SPPBは3課題を分けて確認し、TUGは一連の移動課題として確認します。どちらが優れているかではなく、何を知りたいかで選びます。

SPPBとTUGの違い|最初に見るのは評価の構造です

SPPBは3課題を分けて採点する評価、TUGは一連の移動課題を1つの所要時間として測る評価です。どちらが優れているかではなく、今回の評価で知りたい情報に合うほうを選びます。

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

SPPBとTUGの違いと使い分け
観点 SPPB TUG 選び方
評価の構造 立位バランス・歩行速度・5回立ち上がりの3課題 起立・歩行・方向転換・歩行・着座を含む一連の移動課題 課題を分けたいならSPPB、一連の移動を見たいならTUG
主な結果 各項目0〜4点、合計0〜12点。実測値も確認する 課題全体の所要時間。必要に応じて動作所見も記録する 点数・秒数だけでなく、その内訳や動作も合わせて見る
分かりやすいこと 3課題のうち、どの項目が相対的に低いか 一連の基本的な移動にどの程度の時間を要するか 身体機能を分けるか、移動課題としてまとめて見るかで決める
注意点 合計点だけでは低下している項目が分からない 所要時間だけでは遅延した理由を特定できない 結果だけから原因を決めつけず、必要な追加評価へつなげる

どちらを選ぶ?SPPB・TUGの使い分けは3パターンです

選択基準は「今回の評価で何を知りたいか」です。検査名から決めるのではなく、知りたい情報から逆算します。

SPPBを選ぶ:3課題を分けて確認したい

立位バランス、歩行速度、5回立ち上がりを分けて確認したい場合はSPPBが候補になります。合計点だけでなく、3項目の得点と実測値を分けて見ることで、「どの課題で低下しているか」を整理できます。

TUGを選ぶ:一連の基本的な移動を確認したい

椅子からの起立、歩行、方向転換、着座までを連続した移動課題として確認したい場合はTUGが候補になります。主な結果は所要時間ですが、再評価や追加評価へつなげる場合は、方向転換で減速した、着座前に不安定さがみられたなどの所見も補助的に残すと解釈しやすくなります。

併用する:1つの評価だけでは結果を説明しにくい

SPPBとTUGは、必ず両方実施する評価ではありません。一方だけでは現在の状態を説明しにくい場合に、もう一方を追加します。SPPBの3項目とTUGの一連の移動課題を対応させることで、「分けてみた身体機能」と「移動課題全体」の関係を確認できます。

SPPBとTUGの結果がズレるときは「どちらが正しいか」で考えません

SPPBとTUGは評価している構造が異なるため、結果が同じ方向に変化しないことがあります。ズレたときは、一方を否定するのではなく、SPPBでは3項目の内訳、TUGでは一連の移動中の所見へ戻って確認します。

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SPPBとTUGの結果がズレたときの確認順序
結果の組み合わせ まず確認すること 次の一手
SPPBは改善、TUGは大きく変わらない SPPBのどの項目が改善したか。TUGでは方向転換や着座などで減速や不安定さが残っていないか TUGの一連動作を観察し、必要な追加評価を決める
SPPBは低め、TUGは大きく遅くない 立位バランス・歩行速度・5回立ち上がりのどの項目が低いか SPPBの下位項目と実測値へ戻り、低下している課題を詳しく確認する
前回と逆方向の変化が出た 補助具、履物、椅子、歩行指示、試行方法などの測定条件が前回と同じか 身体機能の変化と判断する前に、測定条件の違いを確認する

ここで重要なのは、SPPBの合計点だけ、TUGの秒数だけから原因を決めないことです。結果のズレは、追加で何を確認するかを決める材料として使います。

TUGが遅いだけで「転倒リスクが高い」と決めない

TUGは基本的な移動能力を確認する有用な評価ですが、所要時間だけで転倒リスクを単独判定するものではありません。地域在住高齢者を対象としたシステマティックレビューでは、TUG単独による将来の転倒予測能力には限界があり、単独で高リスク者を同定することには注意が必要とされています。

転倒について判断する場合は、TUGの結果だけで結論を出さず、転倒歴、歩行・バランス、認知機能、薬剤、視覚、環境など、対象者に応じて必要な情報を組み合わせます。

再評価では「SPPBとTUGを同じ条件」にせず、それぞれの検査条件を再現します

SPPBとTUGは実施方法が異なるため、2つの検査を同じ椅子や同じ上肢条件へそろえる必要はありません。重要なのは、それぞれの検査で採用した方法を記録し、次回も同じ条件をできるだけ再現することです。

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SPPB・TUGの再評価で確認したい条件
確認項目 SPPB TUG
距離 使用した歩行距離と、それに対応する採点方法を確認する 3mの歩行距離を再現する
歩行の指示 採用した歩行速度の指示をそろえる 採用した歩行速度の指示をそろえる
補助具・履物 使用条件を記録し、再評価時に確認する 使用した歩行補助具や履物の条件を記録する
椅子・上肢 立ち上がり課題の椅子条件と上肢使用条件を再現する TUGで使用した椅子条件を再現する
計測方法 試行回数、採用値、開始・終了方法をそろえる 開始・停止、練習・試行方法をそろえる

条件を変更した場合は、変更前後の数値を単純に同じ条件として比較せず、何が変わったかを記録します。身体介助や安全確保の方法が変わった場合も、その内容を結果とあわせて残します。

カルテ記録は「結果+内訳・所見+条件」で残します

SPPBは合計点だけ、TUGは時間だけを記録するより、結果を解釈するための情報を1行追加すると再評価につなげやすくなります。

記録例

SPPB:8/12点。3項目では5回立ち上がりが低値。TUG:12.4秒、方向転換時に減速あり。前回と同一の補助具・履物・測定条件で実施。次回は反復立ち上がりと方向転換時の安定性を再確認する。

SPPBでは「合計点→3項目の内訳→実測値」、TUGでは「所要時間→一連動作で気になった所見」の順に確認すると、2つの評価を混同せず記録できます。

SPPBとTUGに関するよくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。

Q1.SPPBとTUG、どちらか1つだけ選ぶなら?

A.知りたい情報で決めます。立位バランス・歩行速度・5回立ち上がりを分けて確認したいならSPPB、一連の基本的な移動課題を確認したいならTUGが候補です。1つの評価だけでは説明しにくい場合に、もう一方の追加を検討します。

Q2.TUGが遅ければ転倒リスクが高いと判断できますか?

A.TUGの所要時間だけでは判断できません。TUGは移動能力を確認する評価ですが、転倒には複数の要因が関与します。転倒歴や歩行・バランス、認知機能、薬剤、環境なども含めて評価します。

Q3.SPPBとTUGの結果が一致しない場合はどうしますか?

A.どちらが正しいかを決めるのではなく、SPPBは3項目の内訳、TUGは一連動作の所見へ戻ります。その前に、補助具、履物、椅子、歩行指示などの測定条件が前回と同じかも確認します。

次の一手:選んだ評価の標準手順を確認する

SPPBとTUGの役割を決めたら、実施する評価の手順と測定条件を確認します。比較記事では個別の採点基準や細かな実施方法まで広げず、それぞれの詳細記事へ役割を分けます。


参考文献

  • Guralnik JM, Simonsick EM, Ferrucci L, Glynn RJ, Berkman LF, Blazer DG, et al. A short physical performance battery assessing lower extremity function: association with self-reported disability and prediction of mortality and nursing home admission. J Gerontol. 1994;49(2):M85-M94. PubMed
  • Podsiadlo D, Richardson S. The Timed “Up & Go”: a test of basic functional mobility for frail elderly persons. J Am Geriatr Soc. 1991;39(2):142-148. doi:10.1111/j.1532-5415.1991.tb01616.x. DOI
  • Barry E, Galvin R, Keogh C, Horgan F, Fahey T. Is the Timed Up and Go test a useful predictor of risk of falls in community dwelling older adults: a systematic review and meta-analysis. BMC Geriatr. 2014;14:14. doi:10.1186/1471-2318-14-14. DOI

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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