DGI の評価方法と自動計算ツール|採点・解釈

評価
記事内に広告が含まれています。
B_InArticle_Body

動的歩行指数( DGI )とは?評価方法・採点・解釈を臨床で迷わない形に整理

歩行・バランス評価の全体像から確認したい方へ

このページは DGI の「実施・採点・解釈」に絞った各論です。評価の全体像や使い分けは、下記の親導線から先に確認できます。

歩行・バランス評価の全体像を見る

歩行アウトカム評価の使い分けFGA の評価手順

動的歩行指数( Dynamic Gait Index: DGI )は、歩行中に「速度変更」「頭部運動」「障害物」「方向転換」「階段」などの課題を加え、動的バランスと転倒リスクをまとめて把握する評価です。平地歩行だけでは見えにくい“条件が変わったときの不安定さ”を捉えやすく、回復期から生活期まで広く使いやすいのが強みです。

この記事では、 DGI の実施手順・採点・解釈・記録の型に絞って整理します。採点ミスを減らしたい方向けに自動計算ツール、記録を残したい方向けにA4 記録シート PDFも掲載しています。逆に、 FGA や Mini-BESTest との詳しい比較や介入プログラムの組み立ては深掘りしません。

この記事の位置づけ(ハブ/親記事/小記事)

ハブ:運動機能評価まとめ(歩行・バランス)

親記事:歩行アウトカム評価の使い分け(まとめ)

小記事(このページ):動的歩行指数( DGI )

DGI を使う場面

DGI は「平地は歩けるが、条件が変わると不安定になる」ケースで特に使いやすい評価です。たとえば、脳卒中、パーキンソニズム、前庭障害、転倒既往のある高齢者などで、課題歩行の弱点を短時間で見たいときに向いています。

一方で、高機能例では頭打ちになりやすい場面があります。高得点でも不安定さが残る、より難しい歩行課題まで見たい、というときは DGI を無理に引っ張らず、上位版の評価へつなぐ考え方が実践的です。

DGI の 8 項目で何を見るか

DGI は合計点だけでなく、どの課題で失点したかが臨床推論の中心になります。先に 8 項目の“観察ポイント”を頭に入れておくと、採点と介入のつながりが一気に良くなります。

特に見落としやすいのは、速度変更や頭部運動のときの歩幅低下、障害物前でのためらい、方向転換時の減速です。単なる「できた/できない」ではなく、どこで質が落ちたかを拾う意識が大切です。

DGI の 8 項目と観察ポイント
項目 主に見ること 失点しやすい場面
1. 平地歩行 基礎的な歩行安定性、歩隔、ふらつき 偏倚、歩幅のばらつき、過度な慎重歩行
2. 速度変更 指示に応じて速度を上げ下げできるか 速度差が小さい、減速で止まりそうになる
3. 水平の頭部運動 視線・頭部を動かしても歩行が崩れないか 頭部運動が小さい、進路がぶれる
4. 垂直の頭部運動 上下視線での安定性、歩行継続性 速度低下、歩幅短縮、停止
5. 方向転換( pivot turn ) 回旋時の減速、足の入れ替え、ふらつき 小刻み歩行、余分な歩数、回転後の不安定
6. 障害物またぎ 足の振り出し、つまずき回避、クリアランス ためらい、接触、過度な回り込み
7. 障害物回り込み 進路修正とバランス保持の両立 大きな減速、膨らみすぎ、接触不安
8. 階段 昇降時の連続性、安全性、手すり依存 一段ごとの停止、手すり依存、足順の崩れ

評価前の準備(環境・道具)

再現性を上げるコツは、環境を固定することです。歩行路、障害物、階段、見守り位置、補助具の有無を毎回そろえるだけで、得点の解釈がかなり安定します。特に再評価では「場所が違う」「道具の置き方が違う」だけで難易度が変わります。

転倒リスクが高い場合は、安全確保が最優先です。評価は challenge をかける場面ですが、無理に難しくすることが目的ではありません。見守りか最小介助かを事前に決め、カルテにも条件として残しておきます。

5 分で回す DGI 実施フロー

DGI は手順を固定するとブレが減ります。おすすめは「説明 → デモ最小限 → 実施 → 課題ごとに短く観察メモ」の流れです。採点を後から迷わないように、その場で“失点理由の一言”を残しておくと便利です。

以下の流れを毎回同じ順で回すと、評価者が変わってもズレにくくなります。動画を残せる環境なら、方向転換と障害物課題だけでも撮っておくと再評価で役立ちます。

DGI を短時間で安定して回す流れ
手順 評価者がすること 見るポイント
1. 条件確認 靴、補助具、見守り方法、歩行路をそろえる 前回と条件差がないか
2. 説明 課題内容を短く伝え、過剰な練習はしない 理解不足による失点が起きないか
3. 実施 8 項目を一定順で進める 減速、停止、偏倚、接触、ためらい
4. 即時メモ 合計点より先に失点理由を一言残す どの課題で何が崩れたか
5. 再評価準備 環境条件も一緒に記録する 次回比較できる情報がそろっているか

採点の考え方( 0〜24 点 )

DGI は 8 項目を各 0〜3 点で採点し、合計 24 点満点です。得点が高いほど、課題歩行中の動的バランスが良好と解釈します。ただし、臨床で本当に使えるのは総得点そのものよりも「どの課題で落ちたか」です。

総得点だけを見て終わると介入につながりません。方向転換で落ちたのか、頭部運動で落ちたのか、階段で落ちたのかまで分けて残すと、次の介入仮説が立てやすくなります。

DGI の点数イメージと記録のコツ
点数 状態の目安 記録のコツ
3 課題を安全かつ滑らかに遂行できる 安定していた条件も残す
2 軽度の不安定さや代償はあるが遂行できる どの瞬間に崩れたかを具体化する
1 中等度の不安定さがあり、歩行の質が明らかに落ちる 停止、減速、接触回避の失敗などを言語化する
0 安全に課題を成立させるのが難しい 実施困難の理由を条件つきで残す

解釈のポイント(カットオフは“目安”)

DGI では、総得点が低いほど転倒リスクや課題歩行の不安定さが高い方向に傾く、と捉えると使いやすいです。文献では 19 点未満 が一つの目安として扱われますが、対象集団や研究条件に依存します。したがって、 19 点だけで結論を出さないことが大切です。

実務では、(1)総得点 (2)失点した項目 (3)失点理由 (4)評価条件を 1 セットで見ると解釈しやすくなります。高機能例で頭打ちが疑われる場合は、 DGI の結果を否定するのではなく、「この人にはより難しい歩行評価が必要」と判断する視点が実践的です。

よくある失敗(現場の詰まりどころ)

DGI は、課題歩行の“負荷のかけ方”が曖昧だと点数がブレます。採点が難しいと感じるときは、まず採点基準より先に、説明と環境を固定できているかを見直すのが近道です。

先に見返す場所:よくあるミスカルテ記載例 / 関連:FGA の評価手順

よくあるミスと対策

DGI で起きやすいミスと対策
よくあるミス 起きる理由 対策
速度変更の差が小さい 安全配慮で無意識に課題を軽くしてしまう 「速く」「遅く」の幅を事前に統一する
頭部運動が小さすぎる 頷く程度でも進めてしまう 可動域とリズムを先に確認してから本番に入る
障害物の高さや位置が毎回違う その場で適当に設置している 床の目印を決め、配置条件も記録する
見守りと介助の線引きが曖昧 評価者ごとに安全判断が違う 見守り、接触介助、最小介助を先に定義する

よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. DGI と FGA はどう使い分けますか?

DGI は課題歩行の基本セット、 FGA はそこに難しい項目を加えた拡張版、と考えると整理しやすいです。 DGI で高得点でも不安定さが残る、高機能例で天井効果が気になる、というときは FGA の方が向いていることがあります。

Q2. 補助具を使っていても実施してよいですか?

安全が確保できるなら実施できます。ただし、補助具の有無で点数の意味が変わるため、再評価では条件をそろえ、カルテにも補助具と介助量を必ず残します。

Q3. 19 点未満なら必ず転倒高リスクですか?

そこまで単純ではありません。 19 点前後はよく使われる目安ですが、対象集団や研究条件で意味合いは変わります。臨床では、総得点だけでなく、どの課題で失点したか、補助具や環境条件がどうだったかをあわせて判断します。

Q4. 再評価で何点変われば意味がありますか?

対象によって幅がありますが、 DGI は数点単位の変化を「誤差を超えた変化」として考える研究があります。大切なのは、同じ条件で測り、点数差だけでなく、失点した課題や歩行の質がどう変わったかまで一緒に見ることです。

DGI 自動計算ツール

採点の入力漏れや合計ミスを減らしたいときは、自動計算ツールが便利です。 8 項目を順に選ぶと合計点が自動で反映され、未入力がある場合は結果を確定表示しない仕様にしてあります。

記事内でそのまま試したい方はプレビューを開き、別タブで使いたい方は単独表示版を開いてください。臨床判断は総得点だけで決めず、失点項目と評価条件もあわせて確認する前提で使うのが安全です。

DGI 自動計算ツールを開く

記事内でプレビューを見る

記録シート PDF ダウンロード

DGI を総得点だけで終わらせず、失点項目・失点理由・評価条件までまとめて残したい方向けに、 A4 1 枚の記録シートを用意しました。再評価時に条件差も見返しやすい構成にしてあります。

院内共有や自己学習に使うときは、評価日、補助具、見守り方法、障害物配置なども一緒に記入しておくと、次回比較がしやすくなります。

DGI 記録シート PDF を開く

記事内でプレビューを見る

PDF を表示できない場合は、こちらから開いてください

記録のコツ(カルテに残す最小セット)

DGI は総得点だけでは次の介入につながりにくい評価です。おすすめは、総得点、失点項目、失点理由、評価条件の 4 点セットで残すことです。これだけで再評価時の比較がかなりしやすくなります。

特に、補助具、見守り位置、障害物配置、階段条件は省略しない方が安全です。評価者が変わる現場ほど、環境条件も含めて言語化しておく意味があります。

カルテ記載例

DGI のカルテ記載例
項目 記載例
総得点 DGI 18 / 24
失点項目 速度変更、水平頭部運動、方向転換、階段で失点
失点理由 速度変更で歩幅短縮、方向転換で減速と追加歩数あり、階段は手すり依存
評価条件 T 字杖使用、見守り、院内廊下 8 m、コーン使用、手すりあり階段で実施

次の一手

DGI を単独で終わらせず、親記事で位置づけを確認し、必要に応じて上位版の歩行評価へつなぐと判断が安定します。


参考文献

  1. Shumway-Cook A, Baldwin M, Polissar NL, Gruber W. Predicting the probability for falls in community-dwelling older adults. Phys Ther. 1997;77(8):812-819. DOI: 10.1093/ptj/77.8.812 / PubMed: PMID: 9256869
  2. Whitney SL, Hudak MT, Marchetti GF. The dynamic gait index relates to self-reported fall history in individuals with vestibular dysfunction. J Vestib Res. 2000;10(2):99-105. PubMed: PMID: 10939685
  3. Whitney SL, Marchetti GF, Schade A, Wrisley DM. The sensitivity and specificity of the Timed “Up & Go” and the Dynamic Gait Index for self-reported falls in persons with vestibular disorders. J Vestib Res. 2004;14(5):397-409. PubMed: PMID: 15598995
  4. Jonsdottir J, Cattaneo D. Reliability and validity of the dynamic gait index in persons with chronic stroke. Arch Phys Med Rehabil. 2007;88(11):1410-1415. DOI: 10.1016/j.apmr.2007.08.109 / PubMed: PMID: 17964880
  5. Lin JH, Hsu MJ, Hsu HW, Wu HC, Hsieh CL. Psychometric comparisons of 3 functional ambulation measures for patients with stroke. Stroke. 2010;41(9):2021-2025. DOI: 10.1161/STROKEAHA.110.589739 / PubMed: PMID: 20671244
  6. Marchetti GF, Lin CC, Alghadir A, Whitney SL. Responsiveness and minimal detectable change of the dynamic gait index and functional gait assessment in persons with balance and vestibular disorders. J Neurol Phys Ther. 2014;38(2):119-124. DOI: 10.1097/NPT.0000000000000015 / PubMed: PMID: 24637931
  7. Wrisley DM, Kumar NA. Functional gait assessment: concurrent, discriminative, and predictive validity in community-dwelling older adults. Phys Ther. 2010;90(5):761-773. DOI: 10.2522/ptj.20090069 / PubMed: PMID: 20360052

著者情報

rehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

運営者について編集・引用ポリシーお問い合わせ

タイトルとURLをコピーしました