動的歩行指数(DGI)とは?評価方法・採点・点数の見方を解説

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動的歩行指数(DGI)とは?評価方法・採点・点数の見方

歩行・バランス評価の全体像から確認したい方へ。

このページは、DGIの実施、採点、失点項目の解釈、記録方法に絞った各論記事です。

歩行・バランス評価の全体像を見る

歩行アウトカム評価の使い分け

FGAの評価手順

動的歩行指数(Dynamic Gait Index:DGI)は、通常歩行に速度変更、頭部運動、方向転換、障害物、階段などの課題を加え、歩行中の動的バランスを8項目・24点満点で評価する尺度です。平地を一定速度で歩く評価だけでは捉えにくい、環境や課題が変化したときの不安定さを確認できます。

この記事では、DGIの8項目、評価前の準備、実施手順、0〜3点の採点、総得点と失点項目の解釈、再評価で比較できる記録方法を整理します。後半には、8項目の得点を集計できる自動計算ツールと、評価条件や失点理由を残せるA4記録シートPDFも掲載しています。

DGIは総得点だけで転倒リスクや介入内容を決める評価ではありません。どの課題で、どのように歩行の質が低下したかを、補助具、介助量、歩行路などの評価条件と合わせて解釈することが重要です。

この記事の位置づけ

本記事は、DGIを実際に評価・採点し、結果を介入や再評価へつなげるための小記事です。

DGI記事と関連ページの役割
記事の役割 ページ 確認できること
ハブ 運動機能評価まとめ 歩行・バランス評価の全体像
親記事 歩行アウトカム評価の使い分け DGI、FGA、TUGなどの選択方法
小記事 このページ DGIの実施、採点、解釈、記録方法

DGIを使う場面

DGIは、平地歩行が可能でも、速度変更、頭部運動、方向転換、障害物などの追加課題によって不安定になるケースに適しています。

脳卒中、パーキンソニズム、前庭障害、転倒既往のある高齢者などで、日常生活に近い課題歩行の弱点を短時間で整理したい場面に使いやすい評価です。

  • 平地では歩けるが、人や物を避けるとふらつく
  • 歩行中に周囲を見ると進路がずれる
  • 速度を変えると歩幅やリズムが崩れる
  • 方向転換で小刻み歩行や追加歩数がみられる
  • 障害物の前で停止やためらいが生じる
  • 階段で手すり依存や一段ごとの停止がみられる

一方、高機能者では24点付近に得点が集中し、天井効果が問題になる場合があります。DGIで高得点でも歩行中の不安定さが残る場合は、より難しい項目を含むFunctional Gait Assessment(FGA)への移行を検討します。

DGIの8項目と観察ポイント

DGIは8項目を各0〜3点で採点します。総得点だけでなく、どの課題で失点し、歩行のどの要素が崩れたかを確認します。

DGIの8項目と臨床で見るポイント
項目 主に見る機能 失点につながりやすい所見 記録ポイント
1.平地歩行 基本的な歩行安定性、歩行速度、歩隔 進路偏倚、歩幅のばらつき、過度な慎重歩行 補助具、見守り、歩行路、速度
2.速度変更 指示に応じた加速・減速と歩行継続 速度差が小さい、減速時の停止、歩幅短縮 速歩と遅歩の差、停止の有無
3.水平頭部運動 左右への頭部運動中の歩行安定性 頭部運動が小さい、速度低下、進路偏倚 頭部運動の大きさと歩行への影響
4.垂直頭部運動 上下への頭部運動中の姿勢・歩行制御 歩幅短縮、停止、体幹動揺 上方・下方での差と症状
5.方向転換 回旋、減速、足の踏み替え、停止制御 小刻み歩行、追加歩数、回転後のふらつき 歩数、所要時間、支持物の有無
6.障害物またぎ 足部クリアランスとつまずき回避 接触、ためらい、停止、過度な回り込み 接触の有無、歩幅、速度変化
7.障害物回り込み 進路変更とバランス保持の両立 大きな減速、軌道の膨らみ、接触 回り込む方向、経路、減速
8.階段 昇降の連続性、安全性、手すり依存 一段ごとの停止、足順の乱れ、介助・手すり依存 段数、手すり、足順、介助量

DGI評価前の準備

再評価で得点を比較するには、歩行路、補助具、障害物、階段、見守り方法をできるだけ統一します。

評価場所や障害物の配置が変わると、対象者の機能ではなく環境の難易度によって得点が変化する可能性があります。初回評価時に使用した条件を記録し、再評価でも同じ条件を再現してください。

DGI評価前に固定する条件
確認項目 確認する内容 記録例
履物 靴、装具、裸足などの条件 運動靴、右短下肢装具
補助具 杖、歩行器などの種類 T字杖使用
見守り・介助 近接見守り、接触介助、最小介助 右後方から近接見守り
歩行路 距離、幅、床面、方向転換位置 院内廊下8m、平地
障害物 高さ、幅、位置、間隔 コーン2個、床上の目印位置に設置
階段 段数、段差、手すり、昇降方向 4段、右手すりあり

転倒リスクが高い場合は、安全確保を優先します。課題を成立させるために身体介助が必要になった場合は、介助した事実と介助量を記録し、無理に評価を継続しないでください。

DGIを5分で実施する手順

評価条件の確認、課題説明、8項目の実施、失点理由の記録、再評価条件の設定までを一連の流れで行います。

  1. 評価条件を確認する:履物、補助具、歩行路、障害物、階段、見守り方法を確認します。
  2. 課題を簡潔に説明する:理解不足による失点を避けるため、必要な指示を統一します。
  3. 8項目を同じ順番で実施する:減速、停止、進路偏倚、接触、追加歩数、ためらいを観察します。
  4. 各項目を0〜3点で採点する:正式な採点基準は使用する評価票に従います。
  5. 失点理由を短く記録する:合計点を出す前に、歩行の質が低下した場面を残します。
  6. 再評価条件を決める:次回も同じ補助具、歩行路、障害物、階段条件で比較します。
採点後に迷わないための一言メモ

「水平頭部運動で右へ偏倚」「方向転換で追加3歩」「障害物前に停止」のように、項目ごとに失点理由を一言残すと、介入と再評価へつなげやすくなります。

DGIの採点方法|0〜24点

DGIは8項目を各0〜3点で採点し、合計24点満点です。点数が高いほど、課題歩行中の動的バランスが保たれていることを示します。

正式な文章による採点基準は、施設で採用している評価票や原典に従ってください。以下は、点数を解釈するときの大まかな考え方です。

DGI各項目の点数と観察の考え方
点数 状態の考え方 記録する内容
3点 課題を安全かつ滑らかに遂行できる 補助具や環境を含め、成立した条件を記録する
2点 軽度の不安定さや代償を伴うが遂行できる 軽度の減速、偏倚、歩幅変化などを記録する
1点 中等度の不安定さがあり、歩行の質が明らかに低下する 停止、著明な減速、追加歩数、接触などを記録する
0点 安全に課題を成立させることが難しい 実施困難の理由、介助量、中止理由を記録する

DGIの点数をどう解釈するか

DGIは、総得点、失点項目、失点理由、評価条件の4点をセットで解釈します。

総得点を見る

合計点は0〜24点で、低いほど課題歩行中の不安定さが大きい方向にあると解釈します。ただし、得点だけで転倒の有無や介入内容を確定するものではありません。

19点未満という目安を見る

地域在住高齢者などを対象とした研究では、19点未満が転倒リスクを示す目安として用いられることがあります。ただし、対象集団、疾患、補助具、評価環境によって診断特性は異なります。

そのため、19点未満であれば必ず転倒する、19点以上なら安全という判断はできません。転倒歴、歩行速度、筋力、感覚、認知、薬剤、環境なども合わせて確認します。

失点した項目を見る

同じ18点でも、頭部運動で失点したケースと、方向転換や階段で失点したケースでは課題が異なります。

  • 速度変更:推進力、制動、歩行リズム、予測的姿勢制御
  • 頭部運動:前庭・視覚情報と歩行制御の統合
  • 方向転換:回旋、足の踏み替え、減速、姿勢変換
  • 障害物:足部クリアランス、視覚情報、進路調整
  • 階段:下肢筋力、片脚支持、手すり依存、持久性

前回との差を見る

再評価では、前回得点との差だけでなく、補助具、見守り方法、歩行路、障害物、階段条件が同じか確認します。条件が変わった場合は、点数差をそのまま機能変化として解釈しないようにします。

高得点でも不安定さが残る場合

DGIで高得点となっても、より複雑な歩行課題で不安定さが残る場合があります。DGIには後ろ向き歩行、閉眼歩行、狭い支持基底面などの高難度課題は含まれていません。

高機能例、スポーツ復帰、屋外での複雑な移動、前庭障害などで天井効果が疑われる場合は、DGIを繰り返すだけでなく、より難しい課題を含むFGAを検討します。

DGIからFGAへ進む目安

  • DGIが高得点でも転倒やふらつきが残る
  • 屋外や人混みでの不安定さを評価したい
  • 後ろ向き歩行や閉眼歩行を確認したい
  • 前庭障害などでより高い課題負荷が必要

FGAの評価手順を確認する

DGIでよくある失敗

DGIでは、課題の説明、頭部運動の大きさ、障害物の配置、見守りと介助の扱いが統一されていないと、得点が評価者ごとに変わりやすくなります。

DGIで起きやすい失敗と対策
よくある失敗 起こる問題 対策 記録ポイント
速度変更の差が小さい 課題負荷が不足し、不安定さを捉えにくい 速歩と遅歩の指示を評価者間で統一する 速度差、歩幅、停止の有無
頭部運動が小さい 通常歩行と難易度が変わらない 頭部運動の方向と大きさを事前に確認する 可動域、リズム、進路偏倚
障害物の位置が毎回異なる 環境差が得点差として表れる 床に目印を設置して条件を固定する 高さ、位置、間隔
見守りと介助を混同する 介助量の判断が評価者によって変わる 身体接触の有無と支援内容を記録する 接触介助、最小介助、見守り
総得点だけを記録する 失点理由と介入課題が分からない 失点項目と歩行の崩れ方を併記する 減速、偏倚、追加歩数、ためらい
再評価条件が異なる 介入効果と条件差を区別できない 補助具、歩行路、障害物、階段を固定する 前回から変更した条件

DGI自動計算ツール

使用する評価票に沿って採点した8項目の得点を入力すると、合計0〜24点、前回差、失点項目数、最低得点項目を確認できます。

評価日、補助具、見守り・介助、歩行路、障害物、階段条件に加えて、速度変更、頭部運動、方向転換、障害物、階段でみられた所見も入力できます。結果画面には、カルテへ転記しやすい記録文が表示されます。

自動計算ツールの使い方
  1. DGI評価票に従って8項目を0〜3点で採点します。
  2. 各項目の得点を自動計算ツールへ入力します。
  3. 合計点、前回差、失点項目を確認します。
  4. 補助具、介助量、歩行路、障害物、階段条件を入力します。
  5. 失点理由と再評価予定を記録します。
DGI自動計算ツールを別画面で開く

スマートフォンで入力欄を大きく表示したい場合や、ベッドサイド・カンファレンスでツールだけを使用したい場合に利用してください。

自動計算結果だけで転倒リスクを決めない

DGI自動計算ツールは、得点集計と記録を補助するものです。転倒歴、歩行速度、筋力、感覚、認知、薬剤、生活環境、失点項目、評価条件を合わせて臨床判断してください。

DGI記録シートPDF

DGIの8項目、総得点、失点理由、補助具、介助量、歩行路、障害物、階段条件をA4用紙1枚に記録できます。再評価時に条件差を確認しやすくするため、点数だけでなく評価環境も記入してください。

DGI記録シート(A4・PDF)

初回評価、定期再評価、カンファレンス前の情報整理に使用できる記録用紙です。

DGI記録シートPDFを開く

DGI記録シートをプレビューする

PDFを表示できない場合は、こちらから開いてください

DGIの記録方法

DGIは、総得点、失点項目、失点理由、評価条件をセットで記録します。この4点を残すことで、次回評価で機能変化と環境条件の違いを区別しやすくなります。

【DGI記録例】
DGI__/24点、前回__点、前回差__点
失点項目:____
失点理由:減速__/偏倚__/停止__/追加歩数__/接触__
補助具:____
見守り・介助:____
歩行路・距離:____
障害物条件:____
階段条件:____
介入・次の対応:____
再評価日・固定条件:____

カルテ記載例

DGIのカルテ記載例
記録項目 記載例
総得点 DGI 18/24点
失点項目 速度変更、水平頭部運動、方向転換、階段
失点理由 減速時に歩幅短縮、水平頭部運動で右へ偏倚、方向転換で追加3歩、階段は手すりを使用
評価条件 T字杖使用、右後方から近接見守り、院内廊下8m、コーン2個、右手すりあり4段
次の対応 速度変更と方向転換練習を実施し、2週間後に同条件で再評価する

DGIのよくある質問

各質問をタップすると回答が開きます。もう一度タップすると閉じます。

DGIは何項目・何点満点ですか?

DGIは8項目を各0〜3点で採点し、合計24点満点です。点数が高いほど、課題歩行中の動的バランスが保たれていることを示します。

DGIとFGAはどう使い分けますか?

DGIは8項目で課題歩行の基本的な安定性を評価します。FGAはDGIをもとに、より難しい歩行課題を追加した評価です。DGIが高得点でも不安定さが残る高機能例では、FGAが適する場合があります。

補助具を使用していても評価できますか?

安全を確保できる範囲で実施できます。ただし、補助具の有無や種類は得点の意味に影響するため、必ず記録し、再評価でも同じ条件をそろえてください。

19点未満なら転倒高リスクと判断できますか?

19点未満は研究で用いられる目安の一つですが、対象集団や評価条件によって診断特性は異なります。転倒歴、歩行速度、筋力、感覚、認知、薬剤、環境などを合わせて判断してください。

再評価では何をそろえますか?

履物、装具、補助具、見守り・介助、歩行路、距離、障害物の高さと位置、階段の段数と手すり条件をそろえます。変更した条件がある場合は、点数と一緒に記録してください。

総得点が同じなら歩行状態も同じですか?

同じとは限りません。総得点が同じでも、頭部運動、方向転換、障害物、階段など、失点した項目が異なる場合があります。失点項目と失点理由をセットで確認してください。

自動計算ツールだけでDGIを評価できますか?

自動計算ツールは、評価票で決定した各項目の得点を集計する補助ツールです。正式な採点基準、実際の歩行観察、安全管理、臨床判断を置き換えるものではありません。

次に確認する記事

DGIの結果を単独で終わらせず、歩行アウトカム評価全体の中で位置づけ、高機能例ではFGAへの移行を検討すると評価選択が安定します。


参考文献

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著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門分野

脳卒中、褥瘡・創傷ケア、呼吸リハビリテーション、リハビリテーション栄養、シーティング、摂食・嚥下

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