HADS 高値で進まないときの PT 対応|図解・ 5 分フロー・記録シート

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HADS 高値で進まない日は、点数より「今日の詰まり」をほどくと前に進みます

HADS( Hospital Anxiety and Depression Scale )が高い日に止まりやすいのは、「高値だった」という事実そのものより、何が介入を止めているかが整理されないまま始めてしまうことです。実際の現場では、不安や抑うつだけでなく、痛み、息苦しさ、不眠、説明不足、失敗体験などが重なって、離床や運動が進みにくくなります。

このページで答えるのは、HADS が高かった日に PT が何を変えるかです。採点の細かい手順や尺度の比較ではなく、① 状態整理 → ② 負荷設計 → ③ 共有の固定の 3 手と、現場でそのまま使える 5 分フロー3 行記録までに絞って整理します。

同ジャンル回遊:全体像 → 採点・判定 → 高値対応の順で読むと、役割がブレにくくなります。

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現場の詰まりどころ|まず「症状・怖さ・設計」のどこで止まっているかを分けます

HADS 高値で進まないときは、“気持ちの問題” に決め打ちしないことが最初の一歩です。止まりやすいのは、① 痛みや息苦しさなどの主症状、② 動くと悪くなるかもしれないという怖さ、③ 何をどこまでやるかが曖昧なセッション設計の 3 つです。

先にこの 3 つを分けておくと、「説明を増やすべきか」「負荷を下げるべきか」「共有を急ぐべきか」が見えやすくなります。迷ったら、下の 3 本だけ先に確認します。

同じところで毎回詰まるときは、手順だけでなく環境側の影響も見直す余地があります。

教育体制、共有フォーマット、相談しやすさが弱いと、評価や記録の型が定着しにくくなります。評価・記録・報告の型をまとめて整理したい方は、固定ページも参考になります。

PT キャリアガイドを見る

HADS 高値の読み方|ここで決めるのは「診断」ではなく「今日の方針」です

HADS は、不安( A )と抑うつ( D )をそれぞれ 7 項目ずつでみるスクリーニング尺度です。高値でも、それだけで原因や診断を断定するものではありません。ここで決めたいのは、「今日は通常通り進めるか」ではなく、介入の入り方を変える必要があるかです。

このページでは、採点の詳細ではなく、当日の方針分岐に必要な最小限だけを残します。点数は “結論” ではなく “設計変更の合図” として使うと、現場でブレにくくなります。

※スマホでは表を横にスクロールできます。

HADS 高値の読み方(成人・臨床一般の目安):点数で断定せず、当日の方針分岐に使う
区分 目安 その日に起きやすいこと PT の次の一手
0–7 点 概ね正常 心理面の影響は相対的に小さい 通常の説明と目標設定で開始する
8–10 点 境界域 痛み、不眠、息苦しさ、環境変化で反応が揺れやすい 増悪因子を 1 つに絞って整理し、条件をそろえる
11–21 点 高値 回避、過覚醒、意欲低下で合意形成が崩れやすい 小刻み介入、終了条件の共有、早めの連携へ切り替える

PT が変える 3 手|状態整理 → 負荷設計 → 共有の固定

① 状態整理|不安か、抑うつか、その前に増悪因子かを分けます

最初に見るのは、不安(怖くて止まる)なのか、抑うつ(動く意味が持てない)なのか、それともその前に痛み・息苦しさ・不眠・めまいなどの増悪因子があるのかです。ここを分けないまま始めると、説明も負荷調整も外れやすくなります。

  • 今日いちばんつらいのは何ですか
  • 止まる原因は「症状」か「怖さ」か、どちらが先ですか
  • 今日の OK と、まだ難しい NG を一緒に線引きします

② 負荷設計|強度より「予測可能性」を上げます

HADS 高値の日は、運動強度を上げるよりも、何をどこまでやるかを短く固定したほうが進みやすくなります。先に終了条件を共有し、最小単位で達成できる量に切ると、回避とやり過ぎの両方を減らせます。

※スマホでは表を横にスクロールできます。

高値の日のセッション設計:小刻み・合意・可視化で進める
設計ポイント 具体 ねらい
最小ゴール 「端座位 2 分」「立位 1 回」「歩行 10 m 」など最小単位で約束する 始めるハードルを下げる
終了条件 痛み増悪、息苦しさ増悪、めまい、過換気などを先に共有する 安心して試せるようにする
休み方 「やる → 休む」を固定する(例: 2 分 → 1 分 ) やり過ぎと反動を防ぐ
可視化 時間、回数、距離のうち 1 つだけ残して見せる “できた” を事実に変える

③ 共有の固定|長文ではなく 3 行で伝えます

高値の日ほど、PT が単独で抱え込むより、主症状・反応・対応を同じ型で共有した方が次の調整につながります。鎮痛、呼吸、睡眠、環境調整が上流にあるときは、負荷の工夫だけでは前に進みにくいからです。

※スマホでは表を横にスクロールできます。

共有の目安:介入を止める要因があるときは早めに相談する
場面 PT で先にやること 共有先の例
痛みや息苦しさで介入が成立しない 負荷を下げ、終了条件を明確化し、増悪因子を整理する 医師、看護
過換気や強い恐怖で中断が続く 休息を優先し、最小単位で再開できる形に切り替える 医師、看護、心理
意欲低下が強く、活動量が上がらない 最小成功体験を可視化し、目標を小さく再設定する 多職種、家族

進まない日の 5 分フロー|その場で変える順番を固定します

迷ったときは、判断を増やすより順番を固定した方が外れにくくなります。高値の日は、「主症状 → 見通し → 終了条件 → 1 指標だけ残す」の順にそろえるだけでも、介入の質が安定します。

HADS 高値で進まない日の PT 対応 3 手と 5 分フローを整理した図版
3 手(状態整理・負荷設計・共有の固定)と、進まない日の 5 分フローを 1 枚で整理した図です。

※スマホでは表を横にスクロールできます。

HADS 高値で進まない日の 5 分フロー:当日対応をぶらさない順番
順番 見ること その場の一言 次の行動
1 主症状を 1 つに絞る 「今日は何がいちばんつらいですか」 痛み、息苦しさ、不眠、めまいのどれが上流かを決める
2 最小ゴールを決める 「今日はここまでで大丈夫です」 端座位、立位、歩行の最小単位に分ける
3 終了条件を先に共有する 「増えたらすぐ止めます」 痛み増悪、息苦しさ、めまい、過換気を確認する
4 やる → 休むを固定する 「 2 分やって 1 分休みます」 反動が出ない量で進める
5 1 指標だけ残す 「今日できた 1 つを残します」 時間、回数、距離のどれか 1 つで記録する

記録シート PDF|5 分フローをそのまま印刷して使えます

「その場で何を見て、どう残すか」を 1 枚にまとめた A4 配布物です。本文の 5 分フロー3 行記録 をそのまま現場で使いやすい形にしているので、病棟や外来での共有用シートとして使えます。

HADS 高値時の PT 対応シート PDF を開く

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症例で見る|高値の日に何を変えるかは 2 パターンで整理できます

現場で多いのは、急性期の “怖くて止まる” パターンと、慢性疼痛の “回避と反動” パターンです。どちらも点数そのものより、止まる理由に合わせて設計を変えることがポイントです。

※スマホでは表を横にスクロールできます。

高値の日の典型 2 パターン:急性期と慢性疼痛で変えるポイント
項目 急性期(術後・呼吸苦・痛み) 慢性疼痛(回避・反動)
止まりやすい理由 息苦しさや痛みが悪化しそうで怖い やると悪くなる思い込み、やり過ぎ後の反動
最小ゴール 端座位 2 分、立位 1 回など 5 分以内で終える 2 分歩行、椅子立ち 5 回など自宅でも続けられる量にする
声かけ 「今日は 5 分だけ。苦しくなったら止めます」 「痛みを 0 にせず、安全にできる量を決めます」
設計のコツ 終了条件を先に共有し、やる → 休むを固定する 増やす指標を 1 つに限定し、増やさない日も決める
共有ポイント 鎮痛、呼吸、睡眠など上流因子の調整を相談する 回避、自己効力感低下、継続条件を多職種でそろえる

共有がぶれない記録の型|3 行で残すと次の手が決まりやすくなります

長文の記録よりも、同じ型で 3 行に揃えた方が、看護・医師・チームに伝わりやすくなります。迷ったら、主症状 1 つ、最小ゴール 1 つ、終了条件 1 つだけでも十分です。

  • 状況:HADS( A / D )高め。今日の主症状は(痛み/息苦しさ/不眠)。
  • 反応:離床・歩行前に(恐怖/回避/意欲低下)が先行し、(どこまで)で中止。
  • 対応:(小刻み・終了条件共有・ペーシング)で(ここまで)可能。必要時、増悪因子の調整を相談。

よくある失敗|点数の説明を増やすほど、逆に進まなくなることがあります

高値の日に外しやすいのは、「もっと説明すれば進む」「頑張れば慣れる」と考えてしまうことです。実際には、情報量や目標設定が大きすぎると、回避や固まりが強くなりやすいです。

※スマホでは表を横にスクロールできます。

HADS 高値の日の OK / NG:外しやすいところを先に潰す
場面 NG OK
説明 情報を増やしすぎる 今日やることを 1 つに絞る
目標 歩行自立など大目標だけを置く 端座位 2 分、立位 1 回など最小単位を決める
負荷 強度で押して成功体験を作ろうとする 予測可能性と終了条件を先に共有する
共有 PT だけで抱える 鎮痛、呼吸、睡眠、環境因子を早めに相談する

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

HADS が高い日は、 PT を控えた方がいいですか?

一律に中止ではありません。高値は “方針を変える合図” と捉え、主症状、最小ゴール、終了条件を先にそろえてから小刻みに始める方が安全で進みやすいです。

不安( A )と抑うつ( D )で、PT の入り方は変わりますか?

変わります。不安が前景なら、見通しと終了条件を増やし、抑うつが前景なら、最小達成と可視化を優先します。両方高いときは、PT 単独で抱えず共有を早めます。

患者さんへの最初の一言は、何が使いやすいですか?

「今日は 5 分だけ」「増えたら止めます」「できた 1 つを残します」の 3 つは使いやすいです。情報量を増やすより、安心して始められる言い方を優先します。

いつ医師や心理職に相談した方がいいですか?

痛みや息苦しさで介入が成立しないとき、過換気や強い恐怖で中断が続くとき、意欲低下が強く活動量が上がらないときは、早めの共有が安全です。

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参考文献

  1. Zigmond AS, Snaith RP. The hospital anxiety and depression scale. Acta Psychiatr Scand. 1983;67(6):361-370. doi:10.1111/j.1600-0447.1983.tb09716.x. PubMed
  2. Hatta H, Higashi A, Yashiro H, et al. Hospital Anxiety and Depression Scale 日本語版の信頼性と妥当性の検討 : 女性を対象とした成績. 心身医学. 1998;38(5):309-315. doi:10.15064/jjpm.38.5_309. DOI
  3. Sakamoto M, Suematsu Y, Yano Y, et al. Depression and Anxiety Are Associated with Physical Performance in Patients Undergoing Cardiac Rehabilitation: A Retrospective Observational Study. J Cardiovasc Dev Dis. 2022;9(1):21. doi:10.3390/jcdd9010021. PubMed
  4. Gill JR, Brown CA. A structured review of the evidence for pacing as a chronic pain intervention. Eur J Pain. 2009;13(2):214-216. doi:10.1016/j.ejpain.2008.03.011. PubMed
  5. Wang L, Sun Y, Zhan J, et al. Effects of Exercise Therapy on Anxiety and Depression in Patients With Coronary Heart Disease: A Meta-Analysis of a Randomized Controlled Study. Front Cardiovasc Med. 2021;8:730155. doi:10.3389/fcvm.2021.730155. DOI

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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