【MST:栄養スクリーニング】1分で判定・合計≥2でリスク

栄養・嚥下
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MST(Malnutrition Screening Tool)とは?

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MST は “最近の非意図的体重減少” と “食欲低下による摂取量低下” の 2 項目で低栄養リスクを 1 分程度で抽出できるスクリーニングです。成人の入院・外来で広く用いられ、合計スコアが 2 点以上で「低栄養リスク」 と判定し、詳細な栄養評価へ進みます。

本記事では、MST の評価手順・配点・判定基準を簡潔に整理し、すぐ使える A4 記録シート(印刷可・自作様式)を提供します。著作権に配慮し、原著の趣旨を踏まえた 独自レイアウトで作成しています(出典は本文末に明記)。

要点(最初に知っておきたいこと)

  • 対象:成人(入院・外来・在宅)/所要時間 約1分
  • 設問:①過去6か月の非意図的体重減少(減少量別に加点・不明は2点)/②最近の食欲低下(はい=1点・いいえ=0点)
  • 判定:合計 0–1点=非リスク2点以上=低栄養リスク → 栄養評価へ
  • 再スクリーニング:入院は入院時+週1回(施設基準に準拠)/外来・在宅は体重変動や食欲低下の自覚時

評価手順(やり方)

  1. 体重減少の確認:過去6か月で意図せず体重が減ったかを聴取。「はい」の場合は減少量を 1–5kg/6–10kg/11–15kg/15kg超/不明 から選択(配点は下表)。「わからない」を選んだ場合は 2 点を加点します。
  2. 食欲低下の確認:最近、食欲低下などで食事量が少ないかを聴取(はい=1点/いいえ=0点)。
  3. 合計スコアの算出:体重減少スコア+食欲低下スコアを合計し、判定に沿って次アクションへ。

配点・判定早見表

MST の配点と判定(成人)
項目 選択肢 スコア
体重減少(6か月) 1–5 kg/6–10 kg/11–15 kg/15 kg超/不明 1/2/3/4/2
食欲低下 はい/いいえ 1/0
判定 合計 0–1点=非リスク2点以上=低栄養リスク → 詳細な栄養評価へ

運用フロー(再スクリーニングの考え方)

入院患者は入院時に実施し、その後は週 1 回(または施設のプロトコル)で再スクリーニングが実用的です。外来・在宅では、体重変動(例:1–2 kg 以上)や食欲低下の自覚があれば再評価します。評価から介入・再評価までの基本的な進め方は、当ブログの 臨床での進め方フローも参考にしてください。

他ツールとの使い分け(MUST/MNA-SF/GLIM)

栄養スクリーニング・判定の役割と使い分け
名称 位置づけ 特徴 使いどころ
MST スクリーニング 2 項目・1分・合計≥2でリスク 迅速抽出(入院時・外来トリアージ)
MUST スクリーニング BMI・体重減少率・急性疾患影響を点数化 BMI が取得できる場面、欧州系プロトコル
MNA-SF スクリーニング 高齢者向け 6 項目(食事量・体重・歩行など) 高齢者包括評価(CGAs)との併用に適する
GLIM 診断基準 表現型(体重・筋量・BMI)+病因の 2 つを満たす スクリーニング陽性後の「栄養障害の診断」に使用

評価表ダウンロード(A4・印刷可・自作様式)

以下から、当ブログ作成の A4 記録シート(印刷ボタン付きHTML) を同一タブで開けます。院内配布・記録にお使いください(再配布はご遠慮ください)。

MST 記録シート(A4・印刷ボタン付)を開く

よくあるミスと対策

MST 運用の「あるある」ミスと対策(成人)
ミス なぜ問題? 対策
体重減少の「不明」を未加点 「不明」は 2 点として扱う規定。過小評価になる。 聴取できない場合は 2 点加点し、後日体重履歴を確認。
食欲低下の期間を曖昧に把握 一過性の食欲低下と慢性低下を区別できない。 「最近」の具体例(ここ 1–2 週間など)を提示して聴取。
スコア 2 点以上でもフォローが遅い 介入が後ろ倒しになり、転帰に影響。 院内プロトコルに「2 点以上 ⇒ 栄養チーム依頼」を明記。

FAQ

MSTに著作権の制約はありますか?

MSTは学術論文に基づく手法で、特定団体の様式をそのまま複製しない自作ワークシートであれば実務利用に支障ありません(本記事のA4シートは独自レイアウト)。出典(原著論文)を明記し、他機関配布PDFの転載は避けてください。

体重減少が「不明」のときはどう採点しますか?

「不明」は2点として扱います。後日カルテや体重履歴で確認できたらスコアを見直してください。

BMIや採血データは必要ですか?

MSTはBMIや検査値は不要です。2項目の聴取のみで判定できるのが強みです(BMIや検査値は二次評価で活用)。

妊婦・小児・著明な浮腫がある場合は?

MSTは成人一般向けです。妊娠中や小児、浮腫・体液貯留で体重が変動する症例では、他の評価法や専門家の判断を併用してください。

再スクリーニングの頻度は?

入院は入院時+週1回(施設基準に準拠)。外来・在宅は体重変動や食欲低下の自覚時を目安に再評価します。

スコアが1点でも臨床的に気になるときの対応は?

スコアだけに依存せず、臨床判断で早めに栄養士へ相談・詳細評価へ進めてOKです(短期間の急激な体重変化、摂取量の急減、嚥下機能低下など)。

参考文献(原著・推奨リソース)

  1. Ferguson M, et al. Development of a valid and reliable malnutrition screening tool for adult acute hospital patients. Nutrition. 1999;15(6):458–464. https://doi.org/10.1016/S0899-9007(99)00084-2
  2. Rubenstein LZ, et al. Screening for undernutrition in geriatric practice: the MNA. Nutrition. 2001;17(6-7):422–428. PubMed
  3. Jensen GL, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition. Clin Nutr. 2019;38(1):1–9. https://doi.org/10.1016/j.clnu.2018.08.002
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