MSTの評価方法|配点・判定・PDF・自動計算

栄養・嚥下
記事内に広告が含まれています。

MSTとは?2項目で低栄養リスクを確認する方法

Malnutrition Screening Tool(MST)は、非意図的な体重減少と、食欲低下に伴う食事摂取不良の2項目から、成人の低栄養リスクを短時間で確認するスクリーニングツールです。合計スコアが2点以上の場合は栄養リスクありと判断し、詳細な栄養評価や管理栄養士への相談につなげます。

この記事では、MSTの質問方法、配点、判定後の対応を整理します。当ブログ作成のA4記録シートPDFと自動計算ツールも掲載しているため、採点確認や院内運用の補助として活用できます。

MSTの要点

MSTは、身体計測値や採血結果がそろっていない場面でも、2つの質問から実施できることが特徴です。

  • 確認項目:非意図的な体重減少、食欲低下による食事摂取不良
  • スコア範囲:0〜5点
  • 判定:0〜1点はMST上のリスク低値、2点以上は栄養リスクあり
  • 陽性後の対応:詳細な栄養評価、管理栄養士への相談、施設内プロトコルに沿った介入

MSTは低栄養を確定する診断基準ではありません。2点以上の場合は、栄養状態をさらに詳しく確認するための入口として使用します。

MSTの評価手順

MSTは、体重減少と食欲・摂取状況を順番に確認し、2項目のスコアを合計します。

  1. 非意図的な体重減少を確認する
    最近、体重を減らそうとしていないのに体重が減ったかを確認します。減っていない場合は0点です。減っている場合は、減少量に応じて1〜4点を加点します。減少量が分からない場合は2点です。
  2. 食欲低下による食事摂取不良を確認する
    食欲が低下し、普段より食事を十分に摂れていないかを確認します。該当する場合は1点、該当しない場合は0点です。
  3. 合計スコアを算出する
    2項目の点数を合計します。合計2点以上の場合は、施設の運用に沿って詳細な栄養評価や管理栄養士への相談につなげます。

MSTの配点・判定早見表

採点時は、体重減少の有無だけでなく、減少量または「不明」を区別することが重要です。

MSTの配点と判定
確認項目 回答 点数
非意図的な体重減少 体重減少なし 0点
1〜5kg減少 1点
6〜10kg減少 2点
11〜15kg減少 3点
15kgを超える減少 4点
減少量が不明 2点
食欲低下による食事摂取不良 あり 1点
なし 0点
判定 0〜1点:MST上のリスク低値
2点以上:栄養リスクあり。詳細な栄養評価へ進む
MSTの評価から判定、詳細な栄養評価へ進む流れを示した図
MSTの評価・判定フロー。具体的な体重減少量の配点は、直前の早見表を確認してください。

MSTスコアをどう解釈するか

2点以上は詳細評価へ進む目安ですが、0〜1点であっても、栄養上の問題がないと断定することはできません。

0〜1点の場合

MST上はリスク低値です。ただし、嚥下機能の低下、食事摂取量の急減、浮腫、脱水、病状変化など、MSTに含まれない懸念がある場合は、スコアだけで対応を終了しません。

2点以上の場合

栄養リスクありと判断し、管理栄養士への相談、摂取量・体重・身体組成の確認、原因の評価などへ進みます。施設で依頼基準が定められている場合は、その手順を優先してください。

体重減少量が不明の場合

減少量が不明であっても0点にはせず、2点として扱います。過去のカルテ、健診結果、家族からの情報などで体重履歴を確認できた場合は、記録を更新して再判定します。

MST実施後の運用フロー

MSTは採点して終わるのではなく、陽性後の評価・相談先まで院内で決めておくことで機能します。

  1. MSTの2項目を確認する
  2. 合計スコアを記録する
  3. 2点以上なら施設内の栄養評価・依頼手順へ進む
  4. 0〜1点でも臨床的な懸念があれば個別に相談する
  5. 病状や食事摂取状況が変化した場合は再スクリーニングする

再スクリーニングの頻度は、対象者の状態と施設プロトコルに合わせます。急性期では週単位の再評価を採用する運用例がありますが、すべての場面に共通する固定頻度ではありません。

MST運用で迷いやすい3つの場面

運用上は、体重履歴が不明な症例、0〜1点だが懸念がある症例、陽性後の流れが決まっていない場合に対応が止まりやすくなります。

  • 体重減少量を確認できない:不明として2点を加点し、後から体重履歴を確認します。
  • 0〜1点だが食事状況が気になる:MSTだけで判断を終了せず、摂取量、嚥下、病状などを追加確認します。
  • 2点以上でも依頼先が曖昧:管理栄養士への連絡方法、詳細評価の担当、記録場所を院内手順に明記します。

MST・MUST・MNA-SF・GLIMの違い

MST、MUST、MNA-SFは栄養リスクを抽出するスクリーニングツールであり、GLIMはスクリーニング陽性後に低栄養を診断するための枠組みです。

栄養スクリーニング・診断ツールの役割
名称 位置づけ 主な特徴
MST スクリーニング 体重減少と食欲・摂取低下の2項目で確認する
MUST スクリーニング BMI、体重減少率、急性疾患の影響を使用する
MNA-SF スクリーニング 高齢者を対象に、食事量、体重、移動能力などを確認する
GLIM 低栄養の診断 表現型基準と病因基準を組み合わせて判定する

各ツールの対象や選び方を整理したい場合は、低栄養スクリーニングツールの使い分けを確認してください。

MST記録シートPDF

以下は、MSTの回答と合計スコアを記録するために当ブログが作成したA4記録補助シートです。公式のMST原票ではないため、院内で使用する場合は施設の記録規程や運用方法を確認してください。

MST記録シートPDFを開く

PDFを記事内でプレビューする

PDFが表示されない場合は、こちらからMST記録シートPDFを開いてください

MST自動計算ツール

体重減少と食欲低下の回答を選択すると、合計点と判定を確認できます。最終的な対応は、自動計算結果だけでなく、患者の状態と施設プロトコルを踏まえて判断してください。

MST自動計算ツールを開く

自動計算ツールを記事内で開く

MSTでよくあるミスと対策

採点ミスを防ぐには、「体重減少なし」と「減少量不明」を区別し、陽性後の対応まで記録することが重要です。

MST運用でよくあるミスと対策
ミス 問題点 対策
減少量不明を0点にする 本来は2点であり、栄養リスクを過小評価する 「減少なし=0点」「減少量不明=2点」を区別する
意図的な減量も加点する MSTが確認する非意図的な体重減少と一致しない 減量の意思や目的を確認する
2点以上でも採点だけで終了する 詳細評価や栄養介入につながらない 相談先、依頼方法、記録場所を院内手順に定める
0〜1点なら問題なしと判断する MSTに含まれない嚥下障害や病状変化を見逃す可能性がある 臨床的な懸念があれば追加評価や専門職への相談を行う

MSTに関するよくある質問

各項目名をタップすると回答が開きます。

体重減少量が分からない場合は何点ですか?

体重が減ったことは分かるものの、減少量を確認できない場合は2点です。後から体重履歴を確認できた場合は、必要に応じて記録と判定を更新します。

体重が減っていない場合は何点ですか?

非意図的な体重減少がない場合は0点です。「減少なし」と「減少しているが量が不明」を混同しないようにしてください。

BMIや採血データは必要ですか?

MSTの採点自体にはBMIや採血データを使用しません。ただし、2点以上の場合や臨床的な懸念がある場合は、詳細な栄養評価の中で身体計測値、摂取量、身体組成、病状などを確認します。

MSTが2点以上なら低栄養と診断できますか?

診断はできません。MSTは低栄養リスクを抽出するスクリーニングツールです。2点以上の場合は詳細評価を行い、必要に応じてGLIM基準による低栄養診断へ進みます。

MSTの次に行うこと

MSTは低栄養リスクを見つける入口です。2点以上の場合は詳細な栄養評価へ進み、体重、食事摂取量、筋量、疾患や炎症、嚥下機能などを確認します。

栄養スクリーニング全体の選び方は低栄養スクリーニングツールの使い分け、スクリーニング陽性後の診断はGLIM基準の使い方で確認できます。

MSTの採点だけで終わらず、スクリーニング後の栄養評価や介入まで理解したい場合は、リハ栄養の全体像を学べる本と、GLIM基準を詳しく扱う本を使い分けると整理しやすくなります。

まず読むなら『リハビリテーション栄養ポケットマニュアル』

リハ栄養の基本的な考え方から、サルコペニア、摂食嚥下、栄養評価、病期・疾患別の対応まで幅広く確認できる書籍です。MSTを単独の評価として覚えるのではなく、リハビリテーション計画や栄養介入へどうつなげるかを学びたい方に向いています。

さらに深く学ぶなら『これですぐ始められる!GLIMで低栄養診断 徹底解説』

MSTなどのスクリーニングで栄養リスクを確認したあと、GLIM基準を使ってどのように低栄養を診断するかを学べる書籍です。体重減少、低BMI、筋肉量、食事摂取量、炎症など、MST陽性後に確認したい評価項目を具体的に整理したい方に向いています。


参考文献

  1. Ferguson M, Capra S, Bauer J, Banks M. Development of a valid and reliable malnutrition screening tool for adult acute hospital patients. Nutrition. 1999;15(6):458-464. doi:10.1016/S0899-9007(99)00084-2
  2. Ferguson ML, Bauer J, Gallagher B, Banks M, Capra S. Validation of a malnutrition screening tool for patients receiving radiotherapy. Australas Radiol. 1999;43(3):325-327. PubMed
  3. Rubenstein LZ, Harker JO, Salvà A, Guigoz Y, Vellas B. Screening for undernutrition in geriatric practice: developing the short-form Mini Nutritional Assessment. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2001;56(6):M366-M372. PubMed
  4. Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition: a consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. doi:10.1016/j.clnu.2018.08.002

著者情報

rehabilikunのプロフィール画像

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

運営者について編集・引用ポリシーお問い合わせ