咳テストのやり方|30秒法・1分法と記録シート

栄養・嚥下
記事内に広告が含まれています。

咳テストは不顕性誤嚥のリスクを調べるスクリーニングです

誤嚥性肺炎・嚥下評価の全体像から確認する

誤嚥性肺炎・嚥下のハブを見る

咳テスト(咳反射テスト)は、クエン酸などの刺激に対して咳が起こるかを確認し、不顕性誤嚥のリスクを調べるベッドサイドスクリーニングです。水や食物を飲み込ませずに実施でき、代表的な方法には、咳の回数を数える1分法と、初回の咳までの時間を測る簡易咳テストがあります。

ただし、咳テストだけで誤嚥の有無や食事の安全性を確定することはできません。結果は嚥下所見、呼吸状態、肺炎歴などと合わせて解釈し、必要に応じて嚥下内視鏡検査(VE)や嚥下造影検査(VFSS)につなげます。

本記事では、咳テストの目的、準備、代表的な手順、判定、観察項目、中止判断、記録方法を整理します。刺激液の調製方法、機器、実施回数、安全管理は、主治医の指示と施設プロトコルを優先してください。

咳テスト記録シート

記録シート(A4 PDF)

記録シート(PDF)のプレビューを開く

咳テストで評価するのは刺激に対する咳反射です

咳テストでは、吸入した刺激に対して咳反射が起こるかを確認します。咳反射が起こらない、または反応が基準より少ない場合には、気道へ異物が侵入しても咳が起こりにくい状態を疑います。

咳テストが対象とするのは、主に咳反射の感受性です。嚥下運動そのもの、誤嚥した量、食物の通過状態、咳によって異物を排出する能力のすべてを評価できるわけではありません。

咳テストで分かることと分からないこと
区分 内容
主に分かること 吸入刺激に対して咳反射が惹起されるか
単独では分からないこと 実際の誤嚥の有無、誤嚥量、食形態の安全性、咽頭残留の有無
組み合わせる情報 食事中のむせ、湿性嗄声、喀痰、発熱・肺炎歴、口腔内環境、他の嚥下スクリーニング、VE・VFSS

咳テスト陰性=誤嚥なしではありません。反対に、陽性だけで不顕性誤嚥を確定することもできません。結果は、精査や追加評価が必要かを考えるための情報として使用します。

代表的な方法は1分法と簡易咳テストです

咳テストには複数の実施方法があります。代表的なのは、一定時間内の咳回数を確認する方法と、初回の咳が起こるまでの時間を測る簡易咳テストです。

方法によって使用機器、刺激条件、判定指標が異なるため、異なる方法の基準を混在させないことが重要です。

咳テストの代表的な方法
方法 代表的な刺激条件 主な測定項目 原著で用いられた判定
1分法 1%クエン酸生理食塩水をネブライザで吸入 1分間に起こった咳の回数 4回以下を陽性、5回以上を陰性として扱う方法
簡易咳テスト 1%クエン酸生理食塩水をメッシュ式ネブライザで吸入 吸入開始から初回の咳までの時間 30秒以内に咳が起こらない場合を陽性として扱う方法

※上記は原著で報告された代表的な方法です。刺激液の調製、吸入方法、鼻閉の有無、使用機器、測定時間を独自に変更すると、同じ判定基準を適用できない可能性があります。実施時は施設の標準手順を確認してください。

咳テストの実施前確認から結果判定、次の対応までの流れ
咳テストは、実施条件を確認してから所定の方法で測定し、結果を臨床所見と組み合わせて次の評価につなげます。

実施前は方法・全身状態・中止条件を確認します

咳テストを始める前に、使用する方法と判定基準を決め、安静時の呼吸状態を確認します。実施者ごとに30秒法と1分法が混在すると、結果を比較できません。

必要物品

  • 施設で指定されたネブライザ
  • 施設の手順に従って調製した刺激液
  • マウスピースまたは指定された吸入器具
  • ストップウォッチ
  • ティッシュ、廃棄容器
  • 記録用紙
  • 必要な個人防護具
  • 対象者の状態に応じたモニタリング機器

実施前に記録する項目

  • 意識状態と説明への理解
  • 本人の同意と中止希望の伝達が可能か
  • 安静時の咳、呼吸困難、喘鳴の有無
  • 呼吸数、SpO₂など施設で必要とする基礎情報
  • 安静時の声質
  • 座位または半座位を安定して保てるか

安静時から呼吸状態が不安定な場合、検査の説明を理解できない場合、本人が拒否している場合、必要な観察環境を確保できない場合は、無理に実施せず、医師や言語聴覚士へ相談します。

咳テストは説明・刺激・計測・回復確認の順で行います

実施時は、使用する方法の手順から外れないことが重要です。ここでは、30秒法と1分法に共通する基本的な流れを示します。

  1. 目的と方法を説明する
    刺激を吸入すると咳が出る可能性があること、苦しい場合は中止できることを説明し、同意を確認します。
  2. 姿勢と基礎状態を確認する
    座位または半座位を整え、安静時の呼吸、咳、声質、必要なバイタルサインを記録します。
  3. 施設の標準手順で刺激する
    指定された刺激液、機器、吸入方法、測定時間を使用します。方法を途中で変更しません。
  4. 決められた指標を計測する
    1分法では咳回数、簡易咳テストでは初回咳までの時間を記録します。
  5. 検査後の回復を確認する
    咳、呼吸状態、自覚症状が落ち着き、安静時の状態へ戻ったことを確認します。

咳の強さ、連続性、喀出の様子、呼吸状態の変化などは、判定指標とは分けて補足所見として記録します。

判定結果は陰性・陽性・評価不能に分けて記録します

結果は、実施した方法、刺激条件、測定値とセットで記録します。「咳あり」「咳なし」だけでは、再評価や他職種との比較が困難です。

咳テスト結果の整理方法
結果 考え方 次の対応
陰性 採用した方法の陰性基準を満たした 他の嚥下所見と合わせて判断する。臨床的な疑いが残る場合は追加評価を検討する
陽性 咳回数または初回咳までの時間が、採用した方法の陽性基準に該当した 不顕性誤嚥の可能性を含めて医師・言語聴覚士と共有し、他の評価やVE・VFSSを検討する
評価不能・実施不可 吸入できない、手順を完遂できない、安全な実施条件を確保できないなど 陰性・陽性へ無理に分類せず、理由を記録して評価方法を再検討する

陰性であっても、食事中のむせ、食後の湿性嗄声、反復する肺炎、喀痰の増加などがある場合は、咳テストだけで安全と判断しません。陽性の場合も、咳反射の低下を示唆する結果として扱い、実際の誤嚥の有無は追加評価で確認します。

強い症状や回復しない変化があれば中止します

咳テスト中に強い呼吸苦、胸痛、著しい顔色不良、意識状態の変化などが生じた場合は、直ちに刺激を終了します。本人が中止を希望した場合も継続しません。

実施を中止して状態確認・相談が必要となる所見
確認する所見 対応
呼吸状態 強い呼吸苦、喘鳴の増悪、呼吸数の著しい増加、安静時からの変化が回復しない場合は中止する
循環・全身状態 胸痛、著しい顔面蒼白、冷汗、強いめまい、嘔気などがあれば中止する
意識・意思表示 意識状態の変化や本人からの中止希望があれば中止する
モニタリング値 施設が定める中止基準に該当する変化、または安静時からの変化が持続する場合は中止する

中止後は姿勢を整えて呼吸状態を確認し、必要に応じて医師へ報告します。具体的な数値基準、酸素投与、緊急対応は、対象者の病態、医師の指示、施設マニュアルに従ってください。

記録では実施条件・測定値・補足所見を分けます

再評価や多職種共有に使える記録にするには、結果だけでなく、どの条件で測定したかを残します。

  • 実施日時
  • 使用した方法:1分法または簡易咳テスト
  • 刺激液の種類と濃度
  • 使用した機器
  • 姿勢と吸入方法
  • 1分間の咳回数、または初回咳までの時間
  • 陰性・陽性・評価不能の判定
  • 咳の強さや連続性などの補足所見
  • 実施前後の呼吸状態と自覚症状
  • 中止の有無と理由
  • 医師・言語聴覚士への報告内容
  • 追加評価や再評価の予定

申し送り例

「簡易咳テストを施設手順で実施。吸入開始28秒で初回咳を認め、判定は陰性。咳は弱く単発で、実施後の呼吸状態は安静時まで回復した。食後の湿性嗄声があるため、咳テスト結果だけで安全とは判断せず、言語聴覚士へ追加評価を相談する。」

よくある失敗は方法と判定指標を混在させることです

咳テストで起こりやすい失敗と対策
失敗 問題点 対策
実施方法を記録しない 咳回数と潜時のどちらを判定したのか分からない 1分法・簡易咳テストの別を必ず記載する
機器や刺激条件を変更する 原著の判定基準をそのまま適用できなくなる可能性がある 施設内で刺激液、機器、吸入方法を標準化する
咳の強弱だけで陽性・陰性を決める 方法ごとに定められた回数・時間の基準と異なる 判定指標と補足観察所見を分ける
陰性を安全の証明として扱う 咳テストでは実際の誤嚥を完全に否定できない 嚥下所見、肺炎歴、他のスクリーニングと合わせる
評価不能を陽性または陰性に分類する 結果の意味が変わり、安全上の問題を見逃す 評価不能と理由を独立して記録する

陽性や疑わしい所見があれば追加評価につなげます

咳テストの役割は、不顕性誤嚥の可能性を早期に拾い、追加評価が必要な対象者を見つけることです。結果だけで食事形態や経口摂取の可否を決定せず、嚥下所見や全身状態と合わせて判断します。

  • 陽性:医師・言語聴覚士へ共有し、他の嚥下評価やVE・VFSSの必要性を検討する
  • 陰性だが臨床的疑いがある:食事場面の観察や他のスクリーニングを追加する
  • 評価不能:理由を記録し、安全に実施できる条件や別の評価方法を検討する
  • 状態変化がある:検査よりも状態確認と医師への報告を優先する

咳テストを含めたスクリーニング全体の進め方

不顕性誤嚥の10分スクリーニングを見る

咳テストに関するよくある質問

刺激濃度や実施回数はどのように決めますか?

原著で報告された方法と、施設の標準手順に従います。代表的な方法では1%クエン酸生理食塩水が用いられていますが、使用機器、吸入方法、測定時間を含めて一つの方法として扱う必要があります。刺激条件を独自に変更した場合に、原著と同じ判定基準を適用できるとは限りません。

咳テストが陰性なら、不顕性誤嚥を否定できますか?

否定できません。咳テストは咳反射の低下を調べるスクリーニングであり、実際の誤嚥の有無を直接確認する検査ではありません。陰性でも、肺炎歴、食後の湿性嗄声、喀痰などから疑いが残る場合は、他の嚥下評価やVE・VFSSを検討します。

咳が出ても弱い場合は陽性ですか?

陽性・陰性は、採用した方法で定められた咳回数または初回咳までの時間を基準に判定します。咳の弱さは重要な補足所見ですが、咳の強弱だけで咳テストの陽性・陰性を決めるものではありません。喀出能力を確認したい場合は、随意咳嗽や咳嗽力に関する別の評価も検討します。

評価不能はどのように記録しますか?

陰性や陽性に当てはめず、「評価不能」または「実施不可」と記録します。吸入ができない、説明を理解できない、呼吸状態が不安定、本人が拒否したなど、実施できなかった理由も記載し、別の評価方法や再評価の条件を共有します。

参考文献

  1. Wakasugi Y, Tohara H, Nakane A, et al. Usefulness of a handheld nebulizer in cough test to screen for silent aspiration. Odontology. 2014;102(1):76-80. doi:10.1007/s10266-012-0085-y. PubMed
  2. Sato M, Tohara H, Iida T, Wada S, Inoue M, Ueda K. Simplified cough test for screening silent aspiration. Arch Phys Med Rehabil. 2012;93(11):1982-1986. doi:10.1016/j.apmr.2012.06.001. PubMed
  3. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会. 摂食嚥下障害の評価2019. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会; 2019. PDF
  4. Guillén-Solà A, Messagi Sartor M, Bofill Soler N, et al. Usefulness of the citric cough test for screening of silent aspiration in subacute stroke patients: a prospective study. Arch Phys Med Rehabil. 2015;96(7):1277-1283. PubMed
  5. Sun WJ, et al. Diagnostic accuracy of screening tools for silent aspiration in dysphagia: a systematic review and meta-analysis. Front Neurol. 2025;16:1576869. doi:10.3389/fneur.2025.1576869. PubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)のアイコン

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

運営者について編集・引用ポリシーお問い合わせ