【咳テストのやり方とは】評価方法と評価の目的(不顕性誤嚥)を解説

摂食・嚥下
記事内に広告が含まれています。
リハビリくん
リハビリくん

いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

   

この記事は「咳テスト」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

    

咳テストは不顕性誤嚥のスクリーニングのために開発された検査法になります。現在までの研究で高い精度を示し、不顕性誤嚥のスクリーニングに有用であることが示されています。咳テストを用いることで、咳を誤嚥の徴候(指標)として使えるか否かを判断することが目的となります。

  

不顕性誤嚥を精査するにはVEやVFを実施することが望まれますが、環境や職種によっては実施が困難な場合もあるかと思います。そのような場合に、咳テストを用いることは有用となります。

   

咳テストで陽性の場合は咳の感受性が低下しているので、VE やVFを実施できる環境にフォローしてもらえるのであれば精査した方がいいと思います。もしくは咳テスト等のスクリーニングテストによる継続したフォローの必要性が高いと考えられます。咳テストで用いるネブライザーはポータブルであり簡易に実施できるので、病院だけでなく在宅でも活用することができます。

  

こちらの記事では、このような咳テストについて、より詳細に解説していきたいと思います!

リハビリくん
リハビリくん

【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。

  

療法士の働き方に対する記事の 1 つが右記になりますが、"理学療法士は生活できない?PTが転職を考えるべき7つのタイミング"こちらの記事は検索ランキングでも上位を獲得することができております。興味がある方は、こちらの記事も目を通してくれると幸いです☺

咳テストが開発された理由

これまで頻用されてきた誤嚥のスクリーニングテストは、咳の有無で誤嚥の有無を判定するもの(MWSTやWST)が多く、不顕性誤嚥があったとしても嚥下機能に低下なしと判断されている可能性がありました。

実際、ベッドサイドでは40%の不顕性誤嚥が見落とされているという報告があり、VFやVEで判断される不顕性誤嚥の有病率は約30%という報告と数値的には乖離していません。

この不顕性誤嚥をスクリーニングするために開発したのが咳テストとなります。

不顕性誤嚥とは

不顕性誤嚥が起こる場面は二つあります。一つ目は食事中、二つ目は寝ているときです。食事中は食べ物の飲み込みがうまくいかず、気管内に食べ物が入ってしまう誤嚥です。寝ているときに起こるのは口腔内の唾液が無意識に気管内に流れ込んでしまう誤嚥です。

不顕性誤嚥は寝たきりの方だけでなく健常者にも見られます。しかし、健常者の場合は口腔内がきれいに保たれているため気管内に唾液などが誤嚥されても細菌量が少なく免疫によって駆除されるため肺炎を発症することはありません。

しかし、衰弱した高齢者では免疫力が低く細菌を駆除することが出来ません。さらに自分で歯を磨けない、唾液量が少なく食べかすを洗い流せない、経管栄養の場合には口から食事をしないため食事による自浄作用が働かないなどの理由で口腔内をきれいに保つことが難しく、細菌が繁殖して肺炎になるリスクが大幅に上昇します。

咳の原因は色々ある

咳は咽頭や気道の侵害刺激に対する反射であり、急性咳嗽・慢性咳嗽・その他に分類されます。咳の原因は誤嚥だけでなく、多岐に及びます。

咳テストによる不顕性誤嚥のスクリーニング

咳テストは、霧化した咳誘発物質を吸入させて咳反射の有無を評価する検査になります。

検査方法

超音波式もしくはメッシュ式ネブライザーにクエン酸を入れて、ネブライザーから産生される霧を
口から吸入するよう指示をします。

口から霧を吸ってもらい、それで「むせる」かどうかのテストになります。吸わせ始めて30秒以内に1回でも咳が出たら不顕性誤嚥ではない可能性が高いと判定します。

カットオフ値

2008年に発表した論文では、1分間で5回以上咳反射が生じた場合を陰性とし、4回以下であれば陽性(不顕性誤嚥の疑い)としていました。

その後、2012年にSatoらがカットオフ値を30秒間で1回の咳が出ると陰性(正常)、30秒間で1回も咳が出なかったら陽性(不顕性誤嚥の疑い)とした論文を発表し高い精度を示しました。そのため、現在はそちらが一般的に用いられています。

また、ネブライザーは2008年で発表した論文では超音波式のものを用いましたが、2014年には携帯できるメッシュ式のネブライザーでの有用性を示し、より簡便に場所を選ばずに実施できるようになっております。

他のスクリーニングテストとの併用

咳テストは嚥下反射を評価することができないため、嚥下反射を評価するスクリーニングテストと併用することで信頼性が高まります。

例えば、改訂水飲みテスト(Modified water swallowing test :MWST)を併用するとします。

MWSTで嚥下反射をアセスメントし、咳テストで防御反射をアセスメントすることで、MWSTで正常と判断され、ふるい落とされる可能性のある不顕性誤嚥を見つけ出すことができます。つまり、咳を指標として訓練を続けて良いか否かの判断をすることができます。

このように、嚥下反射を評価するスクリーニングテストと咳反射を評価するスクリーニングテストを組み合わせることで、より精度の高い不顕性誤嚥のスクリーニングをすることができます。

このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【水飲みテストの種類と評価結果についての記事はこちらから

咳反射に影響を及ぼす因子

咳テストはスクリーニングテストであるため偽陽性と偽陰性が生じます。偽陽性では本当は不顕性誤嚥を呈しませんが、咳テストで咳が出ず不顕性誤嚥と判断されます。偽陰性は不顕性誤嚥であるのに咳テストで咳が出て正常と判断されます。

咳反射に影響を及ぼす因子には、以下の要素を挙げることができます。

  • 喫煙(喫煙者では咳閾値が上がる)
  • 性別(男性より女性のほうが咳閾値が低い)
  • 睡眠(就寝時は咳反射が減弱する)
  • 加齢(70歳までは有意に低下しないが、認知機能や活動性の低下により咳反射が低下する)
  • 脳血管疾患、パーキンソン病、意識障害、統合失調症(ドパミンの減少により咳反射が低下する)

このように咳反射に影響を及ぼす因子には多くのものがあるため、患者の中には誤嚥はしていなくても咳閾値が上昇している患者がいることが予測されます。偽陽性群については咳閾値がなんらかの理由で上昇していることが一つ考えられます。

誤嚥性肺炎の予防とケア 7つの多面的アプローチをはじめよう [ 前田 圭介 ]

価格:2,640円
(2023/2/6 22:24時点)
感想(2件)

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では咳テストについてまとめさせて頂きました!

不顕性誤嚥は非常に恐ろしい誤嚥だと思います。寝ているときに口腔内の唾液が無意識に気管内に流れ込んでしまって発生しますが、これを完全に防止するのは難しいのではないでしょうか?

筆者は慢性期機能を有する医療機関に勤めています。入院患者の特徴としてはFIMの運動項目が13点で、いわゆる寝たきりの状態である方がとても多くなっております。

歯磨きやうがいも自力では行えないため、口腔内はやはり汚れてしまいます。もちろん介護士や言語聴覚士が口腔ケアを行い不顕性誤嚥の予防を図っておりますが、常に口腔内を綺麗な状態で保つのは難しいと感じております。

咳テストの実施により、不顕性誤嚥の存在を早期発見し、肺炎の重症化を防止できるようにしていきましょう!

咳テスト以外にもスクリーニング検査は様々なものがあります。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【嚥下障害におけるスクリーニングテストについての記事はこちらから

参考文献

  1. 若杉葉子,戸原玄,中根綾子,後藤志乃,大内ゆかり,三尊伸哉,竹内周平,高島真穂,都島千明,千葉由美,植松宏.不顕性誤嚥のスクリーニング検査における咳テストの有用性に関する検討.日摂食嚥下リハ会誌.2008,12(2),p109-117.
  2. 水野幸太郎,川野理,深井一郎.摂食・嚥下サポートチームによる周術期嚥下機能評価の意義─不顕性誤嚥性肺炎の予防策─.日呼外会誌 .2011年,25巻,6号,p600-603.
タイトルとURLをコピーしました