【GDS15】老年期鬱の評価方法とカットオフ値【高齢者うつ尺度】

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この記事の内容
  1. この記事は「GDS15」をキーワードに内容を構成しています。
  2. GDS15(Geriatric Depression Scale 15 項目版)は、高齢者におけるうつ症状を簡便かつ信頼性高く評価できる心理尺度です。
  3. 認知機能の影響を受けにくく、短時間で実施できるため、臨床現場や地域包括ケアにおいて広く活用されています。
  4. 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士にとっても、高齢者の抑うつ状態を把握することは転倒予防やADL維持に直結し、リハビリの効果を最大化する上で不可欠です。本記事では、GDS 15 の評価方法とカットオフ値について専門的に解説します。
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理学療法士として以下の経験と実績を持つリハビリくんが解説します♪

リハビリくんの実績
  1. rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設
  2. 2025 年 8 月時点:185 記事公開(月間 3 万 PV)
  3. 実務経験(医療機関、介護福祉施設、訪問リハビリ等)
  4. 講師活動(脳卒中、褥瘡等をテーマに複数回講演)
  5. 脳卒中 認定理学療法士
  6. 褥瘡 創傷ケア 認定理学療法士
  7. 3 学会合同呼吸療法認定士
  8. 福祉住環境コーディネーター 2 級
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GDS-15とは

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GDS(Geriatric Depression Scale)は高齢者の抑うつ症状をスクリーニングする自記式質問紙で、15 項目短縮版(GDS-15)は「はい/いいえ」で簡便に評価できます。

身体症状に左右されにくい設計のため、内科・回復期・地域リハを含む幅広い場面で用いられます。位置づけはあくまでスクリーニングであり、診断は医師の総合判断に委ねます。

リハでは初期評価・退院支援・CGA(高齢者総合機能評価)の入口として活用し、拾い上げ後は詳細評価や専門医受診につなげる運用が推奨されます。 

同じスクリーニングとなるHADS(不安・抑うつ)との違いは〈こちら〉をご確認ください。

日本語版の妥当性・信頼性

日本語版 GDS-15-J は、DSM-IV-TR 診断を基準とした検証で AUC 0.96、内的一貫性 α=0.83 と良好でした。最適カットオフは 6/7(感度0.98、特異度0.86)、次点が 5/6で、目的に応じた閾値選択が可能です。

国内データに基づく標準化報告であり、プライマリケアからリハまで実装しやすいことが特徴です。研究用途ではプロトコル準拠、臨床スクリーニングでは感度優先(5/6)またはバランス重視(6/7)など、運用目的を明確にして選択することが肝要です。 

プラクティス・ポイント

  • 妥当性は日本語版で再検証済み(国内外で引用多数)
  • 閾値は拾い上げ目的か、連携判断かで使い分ける 

実施手順と採点

静かな環境で、過去 1 週間の気分を想起してはい/いいえで回答します。読み上げは可ですが誘導は不可となります。

採点は「抑うつを示す回答= 1 点、その他=0 点」の合計(0 ~ 15 点)を算出します。

逆転項目は 1, 5, 7, 11, 13 で、これらは「はい=0/いいえ=1」となります。再測時は同条件(時間帯、説明、読み上げ有無)を揃え、経時変化を評価します。視力・聴力へ配慮し、フォントサイズやコントラストを調整すると記入率が安定します。 

実施のコツ

  • 先に**目的(スクリーニング/追跡)**を共有
  • 逐語反復は OK、言い換えや解釈提示は NG
  • 記入困難には代行記入+逐語確認を徹底

評価記録は SOAP で統一するとチーム共有が円滑です(書き方は〈こちら〉)。

逆転項目の採点と注意点(1, 5, 7, 11, 13)

GDS-15 では一部の設問が逆転項目です。これらはポジティブ表現で、反応バイアス(同意傾向)を補正する目的があります。採点は「抑うつを示す回答=1点、その他=0点」ですが、逆転項目では配点が反転します。再評価の比較が崩れないよう、実施者間でルールを統一します。

印刷用スコアシートは〈こちら〉から利用できます。

よくあるミスと対策

  • 逆転項目を通常項目として採点 → チェック欄に「R」標記を付与
  • 読み上げ時の言い換えで意味が変わる → 逐語反復のみ、解釈提示は避ける
  • 再測で条件が違う → 実施手順(説明文/読み上げ有無/時間帯)を標準化

判定基準とカットオフ

実務上の目安として、0 ~ 4 点=正常、5 ~ 9 点=うつ傾向、10 ~ 15 点=うつが強く疑われるが広く用いられます(日本老年医学会ツール等)。初回スクリーニングでの見落とし回避を重視するなら 5/6、紹介や連携判断では 6/7 とする運用が合理的です。

スコア単独での判断は避け、ADL、服薬、睡眠、疼痛、最近のストレス要因など修飾因子を併記して解釈します。

施設として**閾値→対応フロー(情報提供・主治医共有・再測時期)**を定め、チーム内で標準化しましょう。 

臨床での活用:PT視点

PT は GDS を CGA の入口と位置づけ、身体機能・活動・参加の阻害因子としての抑うつを早期に可視化します。高スコア例では、運動参加度の低下、活動量減少、転倒恐怖、痛み自己効力の低下などに波及するため、行動活性化(外出・役割)と運動療法(有酸素+レジスタンス)の段階化を同時に設計します。

再測は 2 ~ 4 週を目安に介入反応性を確認し、必要時に主治医と連携して専門医受診や心理的支援につなげます。CGA7 やチェックリストと併用するとルート化が容易です。 

介入設計のヒント

  • 小目標 × 達成フィードバックで行動活性化
  • 睡眠・疼痛・薬剤副作用の同時マネジメント
  • 退院支援では家族教育と地域資源へ橋渡し

疼痛に伴う生活障害(PDAS)も並行評価すると介入設計に有用です(カットオフは〈こちら〉)

注意点:認知症・せん妄ほか

中等度以上の認知症・せん妄、重い聴覚/視覚障害では回答の妥当性が下がります。身体疾患に伴う倦怠や食欲低下(例:CNAQ-J)など身体症状と抑うつの重なりにも注意が必要です。

GDS は診断テストではないため、高スコア=うつ病確定ではありません。臨床では、他尺度(例:PHQ-9、Cornell)や医師診察と組み合わせ、**安全配慮(自傷念慮の確認、危険サインの即時共有)**を優先します。

運用ルールを明文化し、再測タイミング・紹介基準・緊急対応をチームで共有しましょう。 

印刷用:スコアシート

公式の**日本語版質問文(GDS-15-J)**は日本老年医学会の資料を参照し、本スコア台紙に転記してご使用ください。逆転項目:1, 5, 7, 11, 13。 

GDS-15 老年期うつ評価用 スコアシート(採点台紙)

氏名:
ID:
日付:

※質問文は「GDS-15-J(日本語版)」の正式項目を参照して転記してください。逆転項目:1, 5, 7, 11, 13

No.質問(GDS-15-Jを参照)はいいいえ
1(公式質問文を記載)_
2( 〃 )_
3( 〃 )_
4( 〃 )_
5( 〃 )_
6( 〃 )_
7( 〃 )_
8( 〃 )_
9( 〃 )_
10( 〃 )_
11( 〃 )_
12( 〃 )_
13( 〃 )_
14( 〃 )_
15( 〃 )_

配点:抑うつを示す回答=1点、その他=0点(合計0–15点)。逆転項目(1,5,7,11,13)は「はい=0・いいえ=1」。

目安:0–4 正常、5–9 うつ傾向、10以上 うつが強く疑われる。診断は医師の総合判断に委ねます。

**PDF 版(採点台紙)**も用意しています。※環境により日本語フォントが代替表示になる場合があります印刷は上記 HTML 版の使用を推奨します。

ダウンロードして使用したい方はこちらからどうぞ☺

記録例テンプレ

S:活動量低下と抑うつ気分を自覚。中途覚醒あり。

O:GDS-15=8点(5–9:うつ傾向)。BI=75、HDS-R=24/30。疼痛 NRS 3/10。

A:抑うつ傾向が運動参加度・外出頻度を低下させ、ADL 改善を阻害。

P:週 3 回の有酸素+下肢レジスタンスを小目標で段階化。行動活性化(短時間外出→買い物同行)。睡眠衛生教育。2 週後再測。必要時、主治医経由で精神科紹介・心理的支援を調整。

まとめ

GDS-15 は高齢者の抑うつを短時間で拾い上げるスクリーニングです。採点は「抑うつを示す回答=1 点、その他=0 点」で合計 0 ~ 15 点、逆転項目は 1,5,7,11,13 に注意します。

目安は 0 ~ 4 点:正常、5 ~ 9 点:うつ傾向、10 点以上:疑い強い。日本語版(GDS-15-J)は最適カットオフ 6/7 で感度 0.98・特異度 0.86と報告され、CGA や退院支援で有用です。

スコアは診断ではないため、臨床所見と専門医連携、再測の運用を前提に活用しましょう。 

関連記事

参考文献

  1. 伊藤絵梨子,田髙悦子.高齢者のうつ.日本地域看護学会誌.2018;21(2):75–78. https://www.jachn.net/journal/jcontents/jcontents21_2.html  (該当号目次) 
  2. 杉下守弘,朝田隆.高齢者用うつ尺度短縮版―日本版(GDS-S-J)の作成について.認知神経科学.2009;11(1):87–90. https://doi.org/10.11253/ninchishinkeikagaku.11.87  (J-STAGE本文あり) 
  3. 日本老年医学会:GDS-15(質問票PDF) https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/pdf/tool_11.pdf.[最終アクセス:2025-09-02] 
  4. 日本老年医学会:お役立ちツール(CGA等) https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/[最終アクセス:2025-09-02]
  5. CGA7(評価内容・解釈:PDF) https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/pdf/tool_04.pdf.[最終アクセス:2025-09-02]
  6. 国立長寿医療研究センター:高齢者のうつ(0–4/5–9/10+の目安) https://www.ncgg.go.jp/ri/labo/07.html.[最終アクセス:2025-09-02]
  7. Sugishita K, et al. Validity and Reliability of the Japanese GDS-15-J. Clin Gerontol. 2017;40(4):233–240. PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28452641/ https://doi.org/10.1080/07317115.2016.1199452
  8. AHRQ: Geriatric Depression Scale-15(英語版PDF)https://integrationacademy.ahrq.gov/sites/default/files/2020-07/Update_Geriatric_Depression_Scale-15.pdf 
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