認知検査|Mental Status Questionnaire

認知症
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リハビリくん
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こんにちは!リハビリくんです!

この記事では「 Mental Status Questionnaire(MSQ)」をキーワードに内容を整理していきます。

   

戦争が終了して以降、本邦の総人口は増加を続けましたが、2008年の1億2,808万人をピークに減少に転じております。少子化により人口は今後も減少していくことが予想されていますが、若年層が減少しているため、結果として高齢化率は今後も上昇していく見込みとなっております。

   

また、高齢者の中でも 75 歳以上の後期高齢者が今後ますます増加していきます。統計的にも 5 人に 1 人くらいの割合で認知症を発症するのではないかと考えられており、認知症に対するケアの質向上が本邦の課題となっております。

  

認知症施策におけるポイントのひとつに、認知症の早期発見が挙げられます。医療の発展により、認知症の原因となる病気によっては薬で進行を遅らせたり、症状を改善させることができます。治療は早ければ早いほど効果が期待できるため、早期発見と治療が重要となります。以上のことから、対象者にあわせて認知症の評価スケールを選択し、評価スケールを使いこなす必要があります。

   

認知機能障害の評価スケールというと、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)や Mini-Mental State Examinaton (MMSE)の方が知名度が高いと思いますが、この記事では僅か10項目と短時間で評価することができる Mental Status Questionnaire(MSQ)について紹介します。

  

今までに Mental Status Questionnaire(MSQ)を一度も実施したことがない人でも、この記事を読むことで明日からの臨床で活用することができるようになることを目標にします。特に、下記のポイントを理解できるようにします。

   

  • 認知症の定義と診断基準について
  • 認知機能の評価方法について
  • Mental Status Questionnaire(MSQ)

    

こちらの記事で Mental Status Questionnaire(MSQ) における理解を深め、認知症施策の一助として活用して頂けると幸いです。是非、最後までご覧になってください!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

近年は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の知識や技術の定着における手段も多様化しております。以前は職場内の勉強会であったり、外部の研修会に参加するなどが一般的でありましたが、現在では働き方改革、ライフワークバランスなどの用語が浸透したことも有り、昔ほど「勉強しなさい。」と言われることはなくなったと思います。

  

しかし、医療職として、患者様や利用者様の未来を預けられた療法士として、やはり知識のアップデートは必要だと思います。何より、新しい知識や技術を取り入れていった方が、自分自身が療法士として充実した日々を送ることに繋がるはずです。そこで、今の時代にあった勉強方法は何だろうか?という話になりますが、そんな人の味方になってくれるのが「リハノメ」です。

    

「リハノメ」は時間にとらわれず、電車などの通勤中、お昼休みの手が空いた時間、寝る前のちょっとした時間、つまり「隙間時間」で動画を閲覧し、知識や技術をアップデートすることができます。忙しい現代人に適した学習形態、気軽に始められる価格設定にもなっているため、是非一度ご利用してみてはいかがでしょうか?

    

認知症の定義と診断基準

WHOによる認知症の定義は以下の通りになります。

「通常、慢性あるいは進行性の脳疾患によって生じ、記憶・思考・見当識・理解・計算・学習・言語・判断など多数の高次脳機能障害からなる症候群」とされています。

これをもとにした診断基準は以下の通りになります。

  1. 記憶力の低下
  2. 認知能力の低下

上記 2 項目を原因として下記 4 項目を認める場合に認知症の診断基準を満たします。

  1. 日常生活動作や遂行機能に支障をきたす
  2. 6ヶ月以上存在している
  3. 意識混滑がない
  4. 情緒易変性、易刺激性、無感情、社会的行動の粗雑化のうち1項目以上を認める

認知機能検査:質問式と観察式

認知機能の評価方法は、直接対象者に質問する方法 (質問式)と行動を観察し評価する方法(観察式)に分類することができます。

質問式は対象者の負担を考慮し最小限の情報で可能な限り適正に評価できるように数種類のスケールが開発されてとります。テスト施行者によるばらつきが少ないこと、測定する場所が限定されないといった長所が挙げられます。

しかし、対象者本人がテストに協力的である必要があること、視聴覚障害がある場合にはそれらを考慮した工夫が必要になるなどの留意点があります。質問式による主な評価方法は以下の通りになります。

  • 改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
  • Mini-Mental State Examinaton (MMSE)
  • Mental Status Questionnaire(MSQ)

続いて観察式は、対象者の日常生活における行動や活動状況を観察したり、家族や介護を身近で行っている人からの情報をもとに対象者の認知機能を評価する評価尺度となります。

したがって、対象者本人の協力が得られない場合や視聴覚障害がある場合でも、本人の状態を十分に把握している家族や職員から情報収集ができれば評価することができます。しかし、この場合は評価者間で差異が生じないように十分なトレーニングが必要と考えられます。観察式による主な評価方法は以下の通りになります。

  • Functional Assessment Staging (FAST)
  • 臨床的認知症尺度:CDR
  • 認知症行動障害評価尺度:DBD

臨床的認知症尺度:CDR については、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【臨床的認知症尺度:CDR についての記事はこちらから

Mental Status Questionnaire(MSQ)

Mental Status Questionnaire(MSQ)は、認知症の重症度を判定するための質問法による評価尺度となります。

開発の経緯としては、施設入所高齢者の精神機能を把握する大規模調査のために開発されております。開発時には、指標の内容が単純で、測定や判定が簡単に行うことができることが求められていました。

このような背景から Mental Status Questionnaire(MSQ)は、見当識・記憶・計算・一般的知識を網羅しつつ、識別力が高く、必要最小限の 10 項目で構成された尺度となっております。

前半 5 問が急性の認知症の程度を見る見当識に関する問題であり、後半 5 問が慢性の認知症の程度をみる一般的知識問題となっております。

MSQ 評価項目

  1. ここはどこですか?(名称あるいは場所の種類でも可)※家、病院、施設etc
  2. ここの住所を言ってください(あるいは自宅の現住所、市区町村まで回答できればOK)
  3. 今日は何日ですか?(前後2日以内は正答とする)
  4. いまは何月ですか?
  5. 今年は何年ですか?
  6. いま何歳ですか?(2歳上、1歳下まで正答とする)
  7. 何月生まれですか?
  8. 何年生まれですか?
  9. いまの総理大臣は誰ですか?
  10. その前の総理大臣は誰ですか?

MSQ 評価用紙

Mental Status Questionnaire(MSQ)の評価表をダウンロードできるようにしておきました!評価表が必要な方はこちらからどうぞ☺

MSQ 判定方法

全10問のうち、回答を誤る項目が何問あるのかによって重症度を判定します。

  • 異常なし:誤回答 2 問以下
  • 中等度の認知症:誤回答 3 問以上 8 問以下
  • 重度の認知症:誤回答 9 問以上

その他の認知症評価スケール

Mental Status Questionnaire(MSQ)以外の認知症評価スケールにはどのようなものがあるでしょうか?代表的な評価スケールをご紹介します。

長谷川式認知症スケール(HDS-R)

こちらの評価尺度は、認知症診療の第一人者でおられた医師・長谷川和夫先生(1929-2021)が開発した認知機能検査になります。

評価スケールの歴史を辿ると、開発されたのは 1974 年であり、この時は長谷川式簡易知能評価スケール(HDS)という名称で発表されています。

長谷川式簡易知能評価スケール(HDS)は、動作性検査を排除した認知機能検査であるため、運動障害のある人でも施行できるものとして臨床場面で広く使われてきました。

しかし、長谷川式簡易知能評価スケール(HDS)の項目に時代にそぐわないものがあることなどから、質問項目や採点基準等の見直しが行われ、1991 年に改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)に改定されています。

長谷川式認知症スケール(HDS-R)については、他の記事で詳しくまとめています!《改訂長谷川式簡易知能評価スケール|HDS-Rとは?評価方法を解説》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️

臨床的認知症尺度(CDR)

認知症の重症度を判定するための評価指標のひとつに臨床的認知症尺度(Clinical Dementia Rating:CDR)があります。

CDR は 1982 年に Hughes らによって報告され、現在まで国際的に広く活用されています。CDR では検査上での認知機能のスコア化に基づく評価ではなく、趣味や社会活動、家事などの日常生活の状態から評価します。

下位項目には、記憶、見当識、判断力と問題解決、地域社会活動、家庭生活および趣味・関心、介護状況の 6 項目が含まれます。本人への問診のほか、家族を中心とした身近な周囲の人からの情報を基に評価します。

各項目について、「健康(CDR 0)」「認知症疑い(CDR 0.5)」「軽度認知症(CDR 1)」「中等度認知症(CDR 2)」「重度認知症(CDR 3)」といったように 5 段階で判別します。

また、定義されているわけではありませんが、ひとつの目安としてCDR 0.5 を軽度認知障害(MCI)、CDR 1 以降を認知症として捉える考え方もあります。

臨床的認知症尺度:CDR については、他の記事で詳しくまとめています!《【臨床的認知症尺度:CDR】評価用紙が無料でダウンロードできます》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「Mental Status Questionnaire(MSQ)」をキーワードに考えを述べさせていただきました。

こちらの記事で Mental Status Questionnaire(MSQ) における理解を深め、認知症施策の一助として活用して頂けると幸いです。

参考文献

  1. 百田由美子.認知症の人のケアの質向上に向けた研究に活用可能な評価指標の概観.日本地域看護学会誌.Vol.22,No.1,2019,p65-72.
  2. 杉下守弘.認知機能評価バッテリー.日本老年医学会雑誌.48巻, 5号,2011:9,p431-438.
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