CONUT(栄養状態スクリーニング)の要点
CONUT(Control of Nutritional Status)は、アルブミン(Alb)・総リンパ球数(TLC)・総コレステロール(TC)の 3 指標から算出されるCONUT スコア(0–12 点)で、低栄養リスクを迅速に把握する血液検査ベースのスクリーニング法です。0–1 正常/2–4 軽度/5–8 中等度/9–12 高度と区分が明快で、「CONUT 値とは何か」を初学者にも説明しやすく、病棟・外来での介入優先度づけに適しています。
一方で、炎症・肝疾患・ネフローゼ・透析・甲状腺機能異常・ステロイド投与など栄養以外の要因で指標が変動する点には留意が必要です。CONUT による栄養評価だけでなく、食事摂取量・体重変化・機能、必要に応じて GNRI や GLIM 判定を併用し、理学療法士を含むチームで「CONUT をリハビリにどう活かすか」を考えることが重要です。
CONUT スコアの計算式と採点早見表(0–12 点)
CONUT スコアは、Alb・TLC・TC をそれぞれスコア化して合計(0–12 点)することで算出します。以下の表が CONUT スコア計算式の実務的な早見表です。
| 指標 | 基準 | スコア |
|---|---|---|
| Alb (g/dL) | ≥ 3.5 / 3.0–3.49 / 2.5–2.99 / < 2.5 | 0 / 2 / 4 / 6 |
| TLC (/mm³) | ≥ 1600 / 1200–1599 / 800–1199 / < 800 | 0 / 1 / 2 / 3 |
| TC (mg/dL) | ≥ 180 / 140–179 / 100–139 / < 100 | 0 / 1 / 2 / 3 |
| 合計スコア | 判定 |
|---|---|
| 0–1 | 正常 |
| 2–4 | 低栄養の疑い(軽度) |
| 5–8 | 中等度 |
| 9–12 | 高度 |
CONUT 評価用紙ダウンロード
臨床ですぐ使える A4 印刷用(ブラウザで自動採点) を用意しました。病棟・外来での栄養スクリーニングと再評価サイクルにご活用ください(院内配布 OK/施設内マニュアルへの貼り付けも推奨)。
臨床での使い方(5 ステップ:CONUT × リハビリ)
- 最新の Alb・TLC・TC を確認します(同一入院中は採血日の整合性に注意し、急性期では炎症の影響も加味します)。
- 採点表から各指標のスコアを決定し、CONUT スコア(0–12 点)として合算します。
- 2 点以上をスクリーニング陽性の目安として、食事摂取量・体重変化・ADL/機能・炎症所見などを追加評価し、低栄養による筋力低下やフレイルがリハビリに与える影響を確認します。
- 必要に応じて GNRI/GLIM 判定で重症度や表現型を補強し、「栄養改善なくしてリハビリ効果が頭打ちになっていないか」をチームで検討します。
- 介入(経口支援、栄養補助、口腔ケア、リハ栄養カンファレンスなど)と再評価サイクルへつなげ、同じ採血条件で経時変化を追跡します。理学療法士は、歩行・筋力・持久力の変化と CONUT スコアの推移をペアで記録すると、退院時サマリーにも活かしやすくなります。
注意点・よくある落とし穴(CONUT 変法も含めて)
- 炎症反応(CRP 高値)で Alb が非栄養性に低下することがあり、単純に「栄養不良」とみなさないことが重要です。
- 肝疾患・ネフローゼ・甲状腺機能異常・透析では Alb/TC が疾患側因子で変動しやすく、「CONUT 基準値」どおりに解釈できないケースがあります。
- 利尿・脱水で Alb が見かけ上上昇することがあり、体液バランスの確認を怠ると低栄養を見逃します。
- ステロイド・免疫抑制剤などで TLC が変動するため、薬歴・基礎疾患の確認が欠かせません。
- 施設によっては、カットオフやスコア区分を調整したCONUT 変法を独自に採用している場合があります。その場合は、院内マニュアルの「CONUT カットオフ」を必ず確認し、外部文献との値を混在させないよう注意します。
FAQ(CONUT スコア運用のよくある疑問)
Q. 何点から要対応ですか?
一般的な CONUT カットオフは、2 点以上を「低栄養の疑いあり」とする運用です。急性期では炎症の影響も加味しつつ、5 点以上は中等度以上の栄養リスクとして優先度を上げて介入します。実務では「2 点でフラグ→5 点以上で最優先」という二段構えが使いやすいです。
Q. GNRI・GLIM との使い分けは?
CONUT は血液検査だけで行える迅速スクリーニング、GNRI・GLIM は体重・筋量・炎症等も含めた診断・重症度分類と考えると整理しやすいです。まず CONUT で拾い上げ、必要例を GNRI/GLIM で精査し、栄養サポートチームやリハビリテーション会議で共有すると、方針決定がスムーズになります。
Q. 再評価の頻度は?
急性期では 1–2 週ごと、回復期・外来では 2–4 週ごとを目安に、介入内容とセットで推移を確認します。栄養介入が強化されたタイミングやリハ処方の大きな変更時には、臨時で CONUT スコアを見直すと、栄養とリハビリの効果を合わせて評価できます。
まとめ(CONUT をリハ栄養サイクルに組み込む)
CONUT は、採血データから短時間で「低栄養リスクの有無と程度」を把握できる実務的なツールです。重要なのは、スコアを一度きりの判定で終わらせず、体重・摂取量・機能とセットで経時的に追うこと、そして炎症や基礎疾患による変動を見極めることです。
理学療法士にとっては、CONUT スコアの推移と筋力・持久力・歩行などの変化をリンクさせることで、「栄養状態とリハビリ効果のつながり」を具体的に説明しやすくなります。評価→共有→介入→再評価というリハ栄養サイクルの中に、CONUT を無理なく組み込み、チームの共通言語として活用していきましょう。
参考文献
- de Ulíbarri JI, González-Madroño A, de Villar NGP, González P, González B, Mancha A, et al. CONUT: a tool for controlling nutritional status. First validation in a hospital population. Nutr Hosp. 2005;20(1):38–45. PubMed: 15762418
- Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, Gonzalez MC, Fukushima R, Higashiguchi T, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition – A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1–9. DOI: 10.1016/j.clnu.2018.08.002 / PubMed: 30181091
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


