【褥瘡予防における体圧、接触圧の測定方法】基準は32mmHg以下

褥瘡対策
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リハビリくん
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こんにちは!リハビリくんです!

この記事では「体圧(接触圧)測定、32mmHg」をキーワードに内容を整理していきます。

  

「32mmHg」←こちらの数字をみて何を思い浮かべるでしょうか?実は毛細血管が閉塞するといわれる圧力となります。筆者はこの数字を学んでから、ポジショニングやシーティングを行ううえでは、32mmHg以下になることを目指して実践してきました。

   

しかし、実際には如何なる体位においても身体の全ての部位を 32 mmHg以下でコーディネートすることはかなり難しく、身体を支えることになるマットレスやクッションの機能に大きく左右されることがやっているうちに判明しました。

  

そこで、まずは何故 32 mmHg以下と言われているのか解説していきます。加えて体圧および接触圧を測定する方法について解説していきたいと思います。

今までに体圧測定を一度も行ったことがない人でも、この記事を読むことで明日からの臨床で活用することができるようになることを目標にします。特に、下記のポイントを理解できるようにします。

   

  • 毛細血管内圧 32 mmHgとは
  • 褥瘡発生機序と圧力、ずれや摩擦について
  • 体圧測定の方法

   

こちらの記事が臨床での褥瘡対策、褥瘡改善に向けたケアの実践に少しでもお力添えになれば幸いです。是非、最後までご覧になってください!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

現在、理学療法士として得意としている分野は「脳卒中」「褥瘡」「栄養」「呼吸」「摂食・嚥下」「フレイル・サルコペニア」についてです。そのため、これらのジャンルの記事が中心となっております。

  

主な取得資格は以下の通りです

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級


   

ここ近年は新型コロナウイルスの影響もあり、外部の研修会などに参加する機会も減少していると思います。また、職場内での勉強会も規模が縮小している施設が多いのではないでしょうか?

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毛細血管内圧 32 mmHgとは

褥瘡とは身体の一部に持続的な力が加わることで血管が変形され阻血が続き、その結果皮膚や皮下組織が壊死することを表します。

褥瘡は年齢や性別に関係なく誰にでも発生する可能性があります。そんな中、発生する可能性が高いのは発生機序である「持続的な力」を避けることが困難な人ということになります。つまり、寝たきりの人や意識障害、感覚障害を呈する人の発生する可能性が高くなります。

褥瘡発生機序に関する過去の研究としては、毛細血管内圧が 32 mmHgを超えると血管が閉塞して、組織の壊死を引き起こすことが Landis らによって報告されています。この値は日本褥瘡学会においても、同様に取り扱われており、現在においても褥瘡予防用のマットレスおよびクッションの判断材料として用いられています。

32mmHgとはどのくらいの圧力なのか

32mmHg という圧力は、350ml のペットボトルをさかさまにして、ふたの部分を下にして掌に置いたときに生じる圧力になります。

正直、32mmHgというボーダーがかなり厳しく感じた人もいるのではないかと思います。人がマットレスの上に寝た場合、骨突出部である後頭部、仙骨部、踵部等にはある程度の圧力がかかります。これらを全ての部位で 32 mmHg 以下に抑えようとすると、とても柔らかく厚みのあるマットレスを使用する必要があります。

また、この 32mmHg という数字は寝姿勢に限った話ではありません。座位姿勢での仙骨部や坐骨結節部に生じる圧力も同様に 32mmHg以下に抑える必要があります。座位では寝姿勢に比べて当然、臀部により高い圧力が集中するため、やはり柔らかく厚みのあるクッションを使用する必要があります。

散々、「32mmHg以下に〜」と話をさせて頂きましたが、実際には人間の身体は皮膚や皮下組織で毛細血管が保護されていますので、簡単には毛細血管は閉塞しないようになっています。そのため、最近では「40mmHg以下」を目指しましょう、という話もよく聞くようになってきています。

褥瘡発生機序においては、32mmHg や 40mmHgといった圧力も重要ですが、ずれや摩擦の存在が重要になります。

「人間の身体は皮膚や皮下組織で毛細血管が保護されているため、簡単には毛細血管は閉塞しない」と説明しましたが、これは圧力の向きが純粋な垂直方向の圧力のみの場合になります。ずれや摩擦の話は次項でさせて頂きます。

ずれや摩擦が加わると毛細血管は簡単に閉塞する

日本褥瘡学会は2005年に褥瘡について「身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる。」と定義しています。

つまり、皮膚への単なる圧迫だけではなく、様々な外力が加わって応力が発生し、褥瘡は生じるということになります。

生体工学的に考えると応力は圧縮応力、引張応力、剪断応力の3つに分けられ、それらが三次元的に皮膚や軟部組織に加わって血流を途絶させることになります。

例えば仰臥位の仙骨部では、垂直方向の圧縮応力に加え、ずれ力が及ぼされることで複雑に引張応力や剪断応力が生じてしまいます。その結果、骨に近い深部でより強く血管や軟部組織が変形し潰されるため、褥瘡は深部組織から生じる可能性があります。

褥瘡後発部位の仙骨部や大転子に32mmHg や 40mmHgの圧縮応力がかかったとしても、皮膚や皮下組織がクッションとなり、毛細血管の閉塞を防ぐことができる可能性がありますが、ここに引張応力や剪断応力が加わることで、いとも簡単に毛細血管内圧が 32 mmHgを超えて血管が閉塞します。

このようなメカニズムがあるため、褥瘡予防のためには圧力を減圧させることも重要ですが、それと同じくらい、ずれと摩擦を軽減および消失させることが重要になります。

体圧、接触圧を測定する方法

体圧分布を測定するための商品は各メーカーが様々なものを開発しております。これらの商品を大別すると、体圧分布システムが内蔵されたシートに寝たり座ったりして体圧分布を細かく確認することができる「パソコンに接続して使用するタイプ」のものと、身体の局所的な部分の体圧を縦横10cm程度のパッドを差し込んで確認することができる「携帯型のコンパクトなタイプ」の2種類に分類することができます。

パソコンに接続して使用するタイプ

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こちらは住友理工株式会社が開発したSRソフトビジョンやニッタ株式会社が開発した体圧分布測定システム(BPMSシステム)等が該当します。

これらは体圧分布システムが内蔵されたシートとパソコンを接続することで、体圧分布、圧力値、面圧中心点をリアルタイムに可視化することができます。 データの測定・管理も可能になっています。

ベッドに寝た状態の全身を測定するのに適した全身用、シーティングで活躍する座位用、立位で測定する足圧用と目的に応じて様々な形のシートがあることも特徴になります。

携帯型のコンパクトなタイプ

携帯型接触圧力測定器 パームQ<ケープ>

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こちらは株式会社ケープの携帯型接触圧力測定器:パームQが該当します。他のメーカーも類似した商品を開発しているかもしれませんが、実際に使用したことのあるパームQを紹介します。

パームQは操作が非常に簡単であり、測定までにかかる時間が数秒程度となっています。そのため、忙しい臨床の最中でも活用しやすいと思います。

センサーパッドを測定部位に設置し、スイッチを押すだけで、センサーパッド内の5箇所の体圧を測定することができます。また、測定方法はいくつかのモードから選択できるようになっており、体圧の経時的変化が追うことができるロングタームモードは便利な機能だと実感しております。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「体圧(接触圧)測定、32mmHg」をキーワードに考えを述べさせていただきました。

こちらの記事が臨床での褥瘡対策、褥瘡改善に向けたケアの実践に少しでもお力添えになれば幸いです。

記事内で解説した通り、体圧および接触圧の分散を図るためには、体圧分散能力の優れたマットレスやクッションを使用するのが効果的になります。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【体圧分散マットレスの種類と選び方についての記事はこちらから

参考文献

  1. 久我原朋子,大西智行.仰臥位時、仙骨部の体圧測定(実験研究)‐ベッド、段ボールベッド、フロアーマット、ブルーシートの比較‐.山陽論叢,第27巻,2020年,p17-31.
  2. 岡田克之.褥瘡のリスクアセスメントと予防対策.日本老年医学会雑誌.2013年,50巻,5号,p583-591.
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