ICU 栄養 GL 2024 はリハ連携を“運用フロー”に落とすと迷いません
ICU の栄養管理は、投与量だけでなく、離床の開始時期、負荷の上げ幅、中止・据え置きの判断に直結します。とくに開始〜 72 h は情報がそろいにくく、PT / OT / ST が「今日はどこまで進めてよいか」で迷いやすい場面です。
この記事では、日本版重症患者の栄養療法ガイドライン 2024( JCCNG 2024 )を、リハ職が使いやすいように「確認点の最小セット」「負荷調整」「再栄養リスクの見張り」「 5 行記録テンプレ」へ整理します。ガイドライン本文の転載ではなく、ICU の多職種連携で判断をそろえるための実務整理です。
JCCNG 2024 は多職種で“同じ判断”をするために読む
JCCNG 2024 は、ICU で治療を必要とする成人・小児を対象に、栄養療法を理解し提供するためのガイドラインです。利用者には、栄養療法に精通していない医療従事者も含まれるため、リハ職も「自分の職種に関係する判断点」を切り出して読む必要があります。
リハ職が深掘りすべきなのは、栄養処方そのものではなく、栄養経路、投与継続性、再栄養リスク、血糖、鎮静・せん妄などが、当日の離床負荷にどう影響するかです。栄養評価の拾い上げ全体は 栄養スクリーニングの運用 で整理し、本記事では ICU 内の負荷調整に絞ります。
開始〜 72 h は“栄養×負荷”の最小セットを確認する
開始〜 72 h の目的は、完璧な栄養評価ではなく、当日のリハを安全に進めるための判断材料をそろえることです。次の表を使うと、申し送りやカンファで確認すべき点を短時間で共有できます。
| 確認項目 | リハ側で見る理由 | 当日の判断 | 記録例 | 共有先 |
|---|---|---|---|---|
| 投与経路( EN / PN ) | 中断や不耐で当日の負荷が変わる | 達成率より継続性を確認 | EN 継続中/処置で中断予定あり | NS・NST |
| 腸管不耐のサイン | 嘔吐・腹部膨満で体位や離床可否が変わる | 腹部所見と体位変化を確認 | 腹部膨満あり/嘔吐なし | 医師・NS |
| 再栄養リスク | 電解質変動で負荷増量が危険になる | RPE と時間の上限を先に固定 | 再栄養リスク高/本日段階据え置き | 医師・NST |
| 鎮静・せん妄 | 自己抜去・拒否・嘔吐リスクが変わる | 実施時間帯と介助量を調整 | RASS −1/CAM-ICU 陽性 | NS・リハ科 |
| 血糖変動 | 負荷で低血糖・高血糖が顕在化しやすい | 開始前測定と休息を固定 | 投与変更後/開始前血糖確認 | NS・薬剤 |
入室から 1 週レビューまでを 4 段階で回す
ICU 栄養×リハ連携は、入室当日、開始〜 72 h、3〜 7 日、1 週レビューの 4 段階で整理すると運用しやすくなります。各段階で「何を確認し、何を決め、どこへ共有するか」を固定します。
| タイミング | 確認すること | 決めること | 記録テンプレ | 次の共有 |
|---|---|---|---|---|
| 入室当日 | 経路予定/不耐リスク/再栄養リスク | 当日の負荷上限 | 本日上限:RPE 3–4/ 10 分以内 | 医師・NS・NST |
| 開始〜 72 h | 中断理由/腹部所見/電解質推移 | 負荷の上げ幅 | 段階据え置き/採血後に再評価 | NS・栄養・薬剤 |
| 3〜 7 日 | 投与継続性/せん妄/血糖変動 | 時間延長・分割実施の可否 | 分割 5 分× 2 回/前測定あり | チームカンファ |
| 1 週レビュー | 体重変化/筋量の見立て/耐容性 | 歩行・ADL 目標との整合 | 離床回数増を優先/栄養継続性確認 | 主治医・リハ科 |
再栄養リスクでは“負荷を上げない理由”を記録に残す
再栄養リスクがある場面では、リハ職が治療方針を決めるのではなく、負荷設計に反映できる観察点を固定することが重要です。電解質、呼吸、循環、意識の変化を見て、上限を決めてから実施します。
| 見るもの | 注意する変化 | リハ側の対応 | 記録例 | 報告優先度 |
|---|---|---|---|---|
| P / K / Mg | 低下・補正量の増加 | 当日は負荷上限を固定 | P 低下傾向/本日負荷据え置き | 高 |
| 呼吸仕事量 | 呼吸数増加・努力呼吸 | 休息比率を増やす | RR 上昇あり/インターバル延長 | 中 |
| 循環 | 立位で HR / BP が破綻 | 端座位中心に再設計 | 立位困難→端座位練習へ変更 | 中 |
| 意識・せん妄 | 興奮・拒否・自己抜去リスク | 短時間×回数に分割 | 5 分× 2 回へ変更 | 中 |
栄養が不安定な日は“中止”ではなく代替メニューに変える
栄養や代謝が不安定な日は、リハを単純に中止するのではなく、同じ目標を別ルートで達成できないかを考えます。強度を下げる日は、姿勢、頻度、休息比率、呼吸介助で成果を作ります。
| 状況 | やりがち NG | OK の置き換え | 狙うアウトカム | 記録の要点 |
|---|---|---|---|---|
| 投与中断が続く | 強度を下げずに時間だけ短縮 | 低強度+分割実施 | 離床回数の確保 | 分割理由と合計時間 |
| 再栄養リスク高 | 当日いきなり段階を進める | 段階固定+観察点を明記 | 悪化の早期察知 | RPE 上限・採血後再評価 |
| 血糖が不安定 | 開始前測定なしで実施 | 開始前測定+途中休憩 | 低血糖回避 | 測定タイミング |
| 腸管不耐が疑われる | 腹部所見を見ずに離床 | 体位調整・呼吸介助中心 | 嘔吐・誤嚥回避 | 体位と症状変化 |
カルテは“ 5 行”で意思決定が追える形にする
ICU 栄養×リハの記録は、長く書くよりも、なぜその負荷にしたのかが追えることが重要です。次の 5 行にそろえると、申し送り、カンファ、翌日の再評価がしやすくなります。
| 行 | 書く内容 | 記録例 |
|---|---|---|
| 1 | 投与状況 | EN:連続投与中/本日中断 1 回予定(処置) |
| 2 | リスク | 再栄養リスク高/電解質フォロー中 |
| 3 | 当日の上限 | 上限:RPE 3–4/ 10 分以内/段階据え置き |
| 4 | 実施内容 | 端座位+立位練習/分割 5 分× 2 回 |
| 5 | 再評価条件 | 採血結果後に負荷再検討/中断予定は前日共有 |
現場の詰まりどころは“中断・再栄養・記録長文化”です
1. 栄養の中断理由が共有されず、離床と処置が重なる。
前日または当日朝に、中断予定、処置予定、投与再開予定を確認します。
2. 再栄養リスクが採血だけの話になり、負荷設計に反映されない。
RPE、時間、段階の上限を先に決め、採血後に再評価する形にします。
3. 記録が長文化して、翌日の判断に使えない。
投与状況、リスク、上限、実施内容、再評価条件の 5 行へ圧縮します。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 栄養が不安定な日はリハを中止すべきですか?
必ず中止ではなく、強度、時間、姿勢、休息比率を調整して実施できるかを検討します。再栄養リスク、血糖変動、腸管不耐、循環破綻が疑われる場合は、負荷を上げずに観察と記録を優先します。
Q2. PT / OT / ST は再栄養リスクをどこまで見ればよいですか?
診断や治療ではなく、負荷設計に関係する変化を見ます。P / K / Mg、呼吸仕事量、循環、意識・せん妄を確認し、当日の RPE、時間、段階の上限を決めて記録します。
Q3. 栄養情報が取りにくいとき、最初に聞くことは何ですか?
「今日、投与中断や処置の予定はありますか?」を最初に確認します。離床と処置の衝突が減り、実施時間、体位、負荷量を調整しやすくなります。
Q4. 1 週レビューでは何を見直しますか?
投与量だけでなく、投与が継続できているか、リハ負荷を上げられているか、歩行・ADL 目標とずれていないかを見直します。栄養の継続性と離床目標をセットで確認します。
次の一手
- 栄養・嚥下ハブ:関連テーマをまとめて確認する
- 再栄養リスク時の負荷設計:ICU で負荷上限を決める型を確認する
参考文献
- Nakamura K, Yamamoto R, Higashibeppu N, et al. The Japanese Critical Care Nutrition Guideline 2024. J Intensive Care. 2025;13(1):18. doi: 10.1186/s40560-025-00785-z
- 日本集中治療医学会.日本版重症患者の栄養療法ガイドライン 2024.PDF
- da Silva JSV, Seres DS, Sabino K, et al. ASPEN Consensus Recommendations for Refeeding Syndrome. Nutr Clin Pract. 2020;35(2):178-195. doi: 10.1002/ncp.10474
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。


