JCCNG2024の要点と変更点|リハ職が押さえるICU栄養

栄養・嚥下
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JCCNG2024は「公式推奨→変更点→リハ職の確認点」の順で読む

日本版重症患者の栄養療法ガイドライン2024(JCCNG2024)は、ICU入室または集中治療を要する成人・小児の栄養療法を扱うガイドラインです。成人では、治療開始後48時間以内の早期経腸栄養(EN)が強く推奨され、ENの優先、栄養プロトコル、高タンパク質投与、間接熱量測定なども整理されています。

PT・OT・STが押さえたいのは、栄養処方そのものを決めることではなく、「何が公式推奨か」「栄養療法がどの段階にあるか」「その情報を当日の離床・運動療法の判断へどうつなぐか」です。本記事では、JCCNG2024の成人主要推奨、2016年版からの変更点、リハ職が確認したい項目を整理します。

先に結論:JCCNG2024は「運動負荷を何分・RPEいくつにするか」を決めるガイドラインではありません。栄養療法の公式推奨を確認したうえで、循環・呼吸・意識・代謝・栄養経路などの情報と合わせて、その日のリハ実施可否や負荷を判断します。

JCCNG2024をリハ職が読むときの全体像。成人の主要推奨、2016年版からの変更点、PT・OT・STが確認するポイントを整理した図
図1|JCCNG2024の公式推奨・変更点・リハ職が確認する項目の全体像

JCCNG2024の成人主要推奨は早期ENだけではない

JCCNG2024は37のクリニカルクエスチョン(CQ)と24の推奨で構成され、GRADEシステムを用いて作成されています。成人では48時間以内の早期ENが強い推奨となり、栄養プロトコル、ENとPNの選択、タンパク質、投与方法、間接熱量測定などについても推奨が示されています。

表1|JCCNG2024でリハ職も押さえたい成人の主要項目
テーマ JCCNG2024の整理 推奨の位置づけ リハ職が押さえる意味
早期経腸栄養 治療開始後48時間以内のEN開始を推奨 強い推奨 「まだ栄養が始まっていない理由」と治療段階を確認する
栄養プロトコル 栄養プロトコルを用いた栄養療法を提案 弱い推奨 施設内で予定・中断・再開方針がどう共有されているかを見る
ENとPN PNよりENを優先することを提案 弱い推奨 経路だけで良否を判断せず、なぜその経路なのかを確認する
タンパク質 標準量を超えるタンパク質量(>1.2 g/kg/日)の投与を提案 弱い推奨
エビデンス確実性は非常に低い
「多いほどよい」と単純化せず、処方と実際の投与状況を確認する
間接熱量測定 エネルギー消費量推定への使用を提案 弱い推奨 利用可能な施設では栄養目標設定の根拠を確認できる
栄養アセスメント 栄養療法前の栄養アセスメントが必要 Good Practice Statement 体重や摂取量だけでなく、病態や治療前の情報も含めて共有する

推奨の強さとエビデンスの確実性は同じ意味ではありません。特にタンパク質投与は弱い推奨で、確実性も非常に低いため、「JCCNG2024だから全重症患者へ一律に同じ量を投与する」と読むのは適切ではありません。

2016年版からは作成方法と扱う範囲が大きく整理された

2016年版は、本邦で初めて作成された重症患者を対象とする栄養療法ガイドラインです。その後、2017年には病態別栄養療法が公表されました。JCCNG2024では、新たなエビデンスを踏まえ、GRADEによる推奨、Good Practice Statements、Future Research Question、Background Questionsなどを用いて体系的に再構成されています。

表2|2016年版とJCCNG2024を読むときの主な違い
確認点 2016年版を中心とした旧体系 JCCNG2024
位置づけ 本邦初の重症患者栄養療法ガイドライン 2016年版を改訂した現行ガイドライン
推奨作成 既存のシステマティックレビュー、メタ解析、国際ガイドライン等を参照し、必要に応じて新規レビューを実施 GRADEシステムに沿って作成
回答形式 推奨・解説を中心に構成 GRADE推奨、Good Practice Statements、Future Research Question、Background Questionsを整理
対象範囲 成人の一般的な重症患者栄養療法を中心に、後に病態別ガイドラインを公表 成人・小児、免疫調整療法、特殊病態などを含む
規模 旧版の構成に基づく 37 CQ・24推奨

そのため、過去の院内資料や研修資料を参照するときは、2016年版・2017年の病態別資料と、JCCNG2024の推奨を混在させないことが重要です。

48時間以内の早期ENは「全員にすぐ開始」という意味ではない

成人重症患者では、治療開始後48時間以内にENを開始することが強く推奨されています。ただし、「48時間以内」という数字だけを切り取って、全患者へ無条件にENを開始するという意味ではありません。

JCCNG2024では、血行動態が不安定な重症患者に対するENは行わないことが弱く推奨されています。循環動態、消化管の状態、治療経過などを踏まえて判断する必要があります。

リハ職が「48時間以内」から確認したいこと

  • ENが開始されているか、まだ開始されていないか
  • 開始できていない場合、その理由は何か
  • 循環動態や消化管の問題が残っていないか
  • 投与開始後に中断が続いていないか

早期ENの推奨を、離床開始時刻や運動開始時刻へ直接置き換えないことがポイントです。

ENとPNは「ENなら安全、PNなら問題」という比較ではない

JCCNG2024では、成人重症患者に対してPNよりENを用いることが弱く推奨されています。しかし、これはENであればリハを進めてよい、PNであれば運動を控えるという意味ではありません。

PT・OT・STが見るべきなのは、栄養経路そのものより「なぜその経路なのか」「現在どの程度安定して継続できているか」です。処置や検査で中断しているのか、消化管不耐があるのか、循環動態の問題で投与できないのかでは、同じ「投与量不足」でも背景が異なります。

また、ENのみで必要量に到達していない患者へ補助的PNをいつ追加するかも、単純に「不足しているからすぐ追加」とはなりません。栄養療法の経過と病態を含めて、多職種で確認する必要があります。

タンパク質とエネルギーの推奨を運動量へ直接変換しない

JCCNG2024では、成人重症患者に対して標準量を超えるタンパク質量(>1.2 g/kg/日)を投与することが弱く推奨されています。ただし、この推奨のエビデンス確実性は非常に低く、患者ごとの病態を無視して一律に適用するものではありません。

リハ職が確認したいのは「目標タンパク質量の数字」だけではなく、処方された栄養が実際にどの程度投与されているか、中断が続いていないか、病態や治療の変化がないかです。

エネルギー消費量の推定については、JCCNG2024では間接熱量測定の使用が弱く推奨されています。利用できない施設では他の方法で推定されるため、リハ職が独自に必要エネルギー量を決めるのではなく、医師・管理栄養士などが設定した目標と実際の投与状況を共有します。

再栄養リスクでは電解質と全身状態の変化をリハ判断へつなげる

JCCNG2024では、再栄養症候群について、リスク評価を行い、そのリスク、発症後の症状、電解質異常に応じてエネルギー制限や電解質のモニタリング・補正を考慮するという考え方が示されています。

リハ場面では、P(リン)、K(カリウム)、Mg(マグネシウム)の変動だけを見るのではなく、呼吸、循環、意識、浮腫、筋力低下などの変化と合わせます。重要なのは、電解質異常をリハ職だけで治療判断することではなく、負荷を上げてよい状態なのかを多職種で再確認する材料として使うことです。

再栄養リスクがある患者の観察項目やリハ負荷の考え方は、再栄養リスク時のリハ負荷設計で詳しく整理しています。

PT・OT・STは「投与量」より背景と継続性を確認する

JCCNG2024をリハ職が臨床へ落とすときは、栄養量の計算を代行するのではなく、栄養療法の状態を当日の全身状態と結びつけて確認します。最低限、次の項目を押さえると情報共有しやすくなります。

表3|PT・OT・STがリハ前に確認したい栄養関連情報
確認項目 確認する内容 リハ判断へつなげる視点
栄養経路 EN、PN、経口摂取など 経路の良し悪しではなく、その経路となった背景を見る
投与の継続性 中断、減量、再開、処置予定 予定量より「実際に継続できているか」を確認する
循環動態 昇圧薬、血圧、循環の変化 栄養開始と離床の双方に影響する全身状態として確認する
消化管不耐 嘔吐、腹部膨満、排便、腹部所見など 症状悪化時は体位や運動内容を再検討する
再栄養リスク リスク評価、P・K・Mgの推移、補正状況 負荷増量前に全身状態と合わせて再確認する
代謝変動 血糖、電解質など 単一値ではなく経時的な変化と症状を見る
栄養アセスメント 体重変化、摂取状況、病前情報、病態など 現在の機能低下を栄養だけで説明しない

「EN中だから離床可能」「栄養が不足しているから離床中止」のような一対一対応ではなく、栄養情報を呼吸・循環・意識・神経学的所見・運動時反応などと統合して判断します。

JCCNG2024だけではリハの具体的な負荷量は決められない

この記事で最も区別しておきたい点です。JCCNG2024は重症患者の栄養療法を扱うガイドラインであり、PT・OT・STが行う運動療法の具体的な強度・時間・進行段階を定めたリハガイドラインではありません。

表4|JCCNG2024から分かること・別途判断が必要なこと
JCCNG2024で確認できること JCCNG2024だけでは決められないこと
早期ENの推奨 離床を開始する時刻
ENとPNの位置づけ EN中の患者に実施できる運動内容
タンパク質投与の推奨 患者ごとの運動強度
再栄養症候群の栄養療法上の考え方 RPEの具体的な上限
栄養アセスメントの必要性 運動時間や離床時間の上限
間接熱量測定の位置づけ 端座位・立位・歩行へ進む具体的な段階

したがって、栄養情報を理由にリハ負荷を変更する場合も、固定されたRPEや時間を「JCCNG2024の基準」として使用するのではなく、施設の早期離床基準、患者個別の全身状態、医師・看護師・管理栄養士などとの情報共有を組み合わせて判断します。

臨床では「公式推奨→現在の状態→リハへの影響」の3段階で整理する

JCCNG2024を毎日のリハへ使うときは、ガイドライン全文を毎回確認する必要はありません。次の3段階に分けると、公式推奨と実務上の判断を混同しにくくなります。

  1. 公式推奨を確認する:早期EN、栄養経路、栄養アセスメント、タンパク質、再栄養リスクなど、今回の患者に関係するCQを確認します。
  2. 現在の状態を確認する:実際の投与状況、中断理由、循環・呼吸・消化管症状、電解質などを確認します。
  3. リハへの影響を判断する:栄養情報だけで決めず、全身状態と運動時反応を含めて開始・継続・負荷変更・中断を判断します。

この順序を保つことで、ガイドラインに書かれている推奨と、施設独自の運用や担当者の判断を分けて共有できます。

JCCNG2024でよく迷う質問

Q1. 48時間以内なら、循環が不安定でもENを始めるべきですか?

一律には開始しません。JCCNG2024では成人重症患者への48時間以内の早期ENを強く推奨する一方、血行動態が不安定な重症患者へのENは行わないことが弱く推奨されています。48時間という数字だけでなく、現在の循環状態を合わせて確認します。

Q2. JCCNG2024ではPNを使わない方がよいのですか?

「PNは禁止」という意味ではありません。成人重症患者ではPNよりENを用いることが弱く推奨されていますが、実際の栄養経路は消化管の状態、循環、病態、経過などを踏まえて選択されます。リハ職は経路だけで患者の安定性を判断しないことが重要です。

Q3. タンパク質は全員1.2 g/kg/日を超えればよいですか?

一律の目標として扱うべきではありません。JCCNG2024では標準量を超えるタンパク質投与(>1.2 g/kg/日)が弱く推奨されていますが、エビデンスの確実性は非常に低いとされています。病態や治療内容を踏まえた個別判断が必要です。

Q4. JCCNG2024にリハの運動強度や中止基準は載っていますか?

栄養療法ガイドラインのため、リハのRPE、運動時間、立位・歩行への進行段階などを一律に決める基準は示していません。栄養情報は重要な判断材料ですが、呼吸・循環・意識・運動時反応などと統合して判断します。

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参考文献

  1. Nakamura K, Yamamoto R, Higashibeppu N, et al. The Japanese Critical Care Nutrition Guideline 2024. J Intensive Care. 2025;13(1):18. doi:10.1186/s40560-025-00785-z.
  2. 日本版重症患者の栄養療法ガイドライン検討委員会.日本版重症患者の栄養療法ガイドライン2024.日本集中治療医学会雑誌. 2025;32(Suppl 3):32_S3. doi:10.3918/jsicm.32_S3.
  3. 日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会.日本版重症患者の栄養療法ガイドライン.日本集中治療医学会雑誌. 2016;23(2):185-281. doi:10.3918/jsicm.23.185.
  4. 日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会.日本版重症患者の栄養療法ガイドライン:病態別栄養療法.日本集中治療医学会雑誌. 2017;24(5):569-591. doi:10.3918/jsicm.24_569.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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