EQ-5D の使い方| 3L / 5L・EQ VAS・指数化

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EQ-5D(EuroQol/ユーロコール)を現場で運用するコツ

EQ-5D の現場導入フローを見る

EQ-5D は、 5 次元の健康状態と EQ VAS( 0–100 )を組み合わせて、本人の主観で QOL を把握する自己記入式ツールです。院内での説明・回収・記録をそろえると、経時変化やチーム共有が一気に楽になります。

本記事では、設問文そのものは扱わずに、実施手順・非誘導のコツ・スコアの読み方を “ 運用標準 ” としてまとめます。最終更新:2025 年 12 月 12 日

現場の詰まりどころ(まずここをそろえる)

EQ-5D はシンプルな分、運用のブレが結果に直結します。新人が迷うポイントを先に固定すると、集計のやり直しが減ります。

  • 自己記入か面接か:混在すると、経時比較の解釈が難しくなる(方法の記録が必須)。
  • 説明のしすぎ:例示・言い換えが増えるほど、回答が寄りやすい(短文テンプレで統一)。
  • 回収チェック不足:記入漏れと EQ VAS の未記入が多い(回収時に必ず確認)。
  • タイミングのズレ:リハ直後・痛み最悪時など “ 特殊な瞬間 ” で固定されやすい(目的に合わせて時点を固定)。
  • 記録の置き場:プロファイル( 5 桁 )と EQ VAS を同じ欄に残せていない(紙でも電子でも 1 か所に集約)。

EQ-5D-3L と EQ-5D-5L( 3 段階/ 5 段階 )の違い

検索では EQ-5D-3L( 3 段階 )と EQ-5D-5L( 5 段階 )が混同されがちです。院内で “ どちらを使うか ” を先に決めておくと、集計が崩れません。

EQ-5D-3L と EQ-5D-5L の整理(運用で迷わないための比較)
観点 EQ-5D-3L( 3 段階 ) EQ-5D-5L( 5 段階 )
回答の粒度 段階が少なく、ざっくり捉えやすい 段階が多く、変化を拾いやすい
経時変化 小さな改善が見えにくいことがある 軽症〜中等症の変化が見えやすい
運用の注意 版の混在を避ける(途中で変更しない) 版の混在を避ける(途中で変更しない)

実施手順(自己記入/面接の切替)

評価時点は 「本日の健康状態」で統一します。自己記入が難しい場合は面接に切り替え、逐語で読み上げる/誘導しない/第三者の影響を減らすを徹底します。

回収時は、記入漏れの確認と EQ VAS( 0–100 )の確認、さらに日時・方法(自己/面接)・担当者を記録します。同一患者の経時評価では、可能な範囲で同じ方法を維持します。

面接の “ 非誘導 ” テンプレ(短文で統一)

  • 「番号は、いま感じる困りごとの大きさに近いものを選びます。」
  • 「こちらから例え話や補足説明は足しません。」
  • 「迷ったら、よりふだんに近いほうを選んでください。」

各次元の “ ねらい ” とポイント(面接で迷わない整理)

各次元は、本人の主観(困りごと)を短時間で拾うための枠組みです。面接時は説明を増やしすぎず、本人の実感を優先します。

迷ったときは「最大能力」よりも、ふだんの生活での実感に寄せると、チームで共有しやすくなります。

Mobility(移動)

迷ったら:日常環境での移動のしにくさが強い方に寄せる。

  • 見たいもの:屋内/屋外、段差・階段、距離、補助具の有無が “ 困りごと ” にどう影響しているか。
  • 詰まりやすい所:リハ室の歩行だけで決めてしまう(生活の場に戻して考える)。

Self-care(セルフケア)

迷ったら:準備〜後片付けまでの一連で総合判断。

  • 見たいもの:更衣・洗面・入浴・排泄など、身の回りの整えの “ やりにくさ ”。
  • 詰まりやすい所:動作は可能でも、時間・疲労・見守りが必要な状態が拾いにくい。

Usual activities(日常活動)

迷ったら:部分的にできても、全体のやりにくさで選ぶ。

  • 見たいもの:その人の “ いつもの役割・活動 ”(仕事・家事・学業・余暇)の遂行感。
  • 詰まりやすい所:一部できることに引っ張られ、全体としての負担(中断・ペース低下)が反映されない。

Pain / Discomfort(痛み・不快)

迷ったら:最悪時だけでなく、いまの総合で判断。

  • 見たいもの:痛み・不快感の総合的な負担(強さ・頻度・持続・対処の効き・生活への影響)。
  • 詰まりやすい所:安静時のみ/運動時のみで決めてしまい、全体像が崩れる。

Anxiety / Depression(不安・ふさぎ込み)

迷ったら:診断名の有無ではなく、現在の実感で答える。

  • 見たいもの:緊張・不安感/気分の落ち込みの体験(持続性、日内変動、睡眠・食欲への影響、回避)。
  • 詰まりやすい所: “ 病名がない=問題なし ” と解釈してしまう(体験の有無で捉える)。

EQ-5D の計算方法(プロファイル → スコア換算の考え方)

運用の最小単位は 2 つです。プロファイル( 5 桁 ) EQ VAS をセットで残すと、数値だけで “ どこが良くなったか ” を話しやすくなります。

検索で多い「eq-5d 5l 計算方法」「EQ-5D スコア換算表」は、価値セット(国・集団の重みづけ)に基づく指数化を指すことが多いです。現場では、指数そのものよりも、どの次元が変化したか EQ VAS の変化をセットで共有するほうが、介入に結びつきやすくなります。

  1. ① 各次元のレベル(数字)を記録する。
  2. ② 5 桁のプロファイル(例:21345)に連結する。
  3. ③ 指数(スコア換算)は院内の手順・ツールで行い、指数+ EQ VASで報告する。
  • 群比較・研究:測定条件(時間帯・方法)をそろえるほど、結果の解釈が明確になる。
  • 経時評価:自己記入と面接が混在した場合は、その事実を記録して比較時に織り込む。

ケース例(数値だけで “ 介入の焦点 ” を言語化する)

ケース例:プロファイルと EQ VAS の変化から、チーム共有の要点をまとめる
場面 評価(例) 介入と再評価の視点
術後 3 日 Mob 2 / Self 2 / Usual 3 / Pain 3 / AnxDep 2 → 22332、EQ VAS 65 疼痛の最適化+セルフケア手順の整理 → 1 週後 21222、EQ VAS 75(痛みの改善が活動へ波及)
慢性腰痛 Mob 3 / Self 2 / Usual 3 / Pain 4 / AnxDep 2 → 32342、EQ VAS 55 疼痛教育+活動量の漸増 → 4 週後 22232、EQ VAS 68(痛みと活動を同時に改善)
気分の落ち込みが強い Mob 2 / Self 2 / Usual 3 / Pain 2 / AnxDep 4 → 22324、EQ VAS 48 心理面・睡眠・服薬の確認を含む連携 → 6 週後 22222、EQ VAS 70(心理面の改善で日常活動が持ち直す)

公式情報の確認先(日本語版の入手ガイド)

「EQ-5D 日本語版」「EuroQol Research Foundation」の検索意図は “ 公式情報の確認 ” に集約されやすいので、院内導入の窓口として 1 つ押さえておくと便利です。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

面接時、説明はどこまでして良い?

読み上げは質問票の文言どおりに行い、説明は「番号の選び方」など回答方法の確認にとどめます。例示や言い換えが増えるほど、回答が寄りやすくなるため、迷った場合は「ふだんに近いほう」を短く案内します。

EQ VAS はどう扱えばいい?

EQ VAS は、いまの総合的な自己評価( 0 = 最悪 〜 100 = 最良 )です。指数とは別軸なので、指数+ EQ VASをセットで見て、変化の方向性(痛み・活動・気分など)をチームで言語化します。

自己記入と面接が混在してしまいました

まずは方法(自己/面接)を記録して、比較時に織り込みます。次回以降は「どの条件なら自己記入が可能か」「どの条件で面接に切り替えるか」を決め、同一患者の経時評価ではできるだけ方法をそろえます。

スコア換算(指数化)だけ見れば十分?

指数は便利ですが、臨床ではどの次元が変化したか EQ VAS の変化をセットで追うほうが、介入の焦点が明確になります。数値を “ 行動に落とす ” ために、プロファイルの変化を必ず確認します。

おわりに

EQ-5D は、実施条件の統一 → 非誘導 → 記録(プロファイル+ EQ VAS ) → 再評価の順に整えると、チームで同じ言葉で変化を追えるようになります。面談準備のチェックや職場の評価シートもまとめて整えたい方は、マイナビコメディカルのチェックリストもあわせて活用してみてください。

参考文献

  1. Herdman M, et al. Development and preliminary testing of EQ-5D-5L. Quality of Life Research. 2011;20(10):1727-1736. doi:10.1007/s11136-011-9903-x
  2. Shiroiwa T, et al. Scoring for EQ-5D-5L Health States in Japan. Value in Health. 2016;19(5):648-654. doi:10.1016/j.jval.2016.02.009
  3. Shiroiwa T, et al. Japanese population norms of EQ-5D-5L. Value in Health. 2021;24(8):1177-1184. doi:10.1016/j.jval.2021.04.1826

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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