LSNS-6 とは?社会的孤立リスクの評価と使い方

評価
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LSNS-6 を初めて運用するための要点(設問本文は掲載しません)

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LSNS-6(Lubben Social Network Scale)は、家族・友人のつながりを 6 項目・30 点満点で可視化する「社会的孤立リスク」のスクリーニングです。本稿は著作権に配慮して設問本文を掲載せず、観点のパラフレーズ・問い方の例・採点早見表・記入例・面接スクリプトを用いて、初見でも迷わず運用できることをゴールにしています。

別名:Lubben Social Network Scale (LSNS-6)/ルブベン・ソーシャルネットワーク・スケール(日本語版の妥当性:Kurimoto 2011)。

60 秒でわかる実施手順(クイック版)

  1. 期間宣言:「直近 1 か月で答えてください」
  2. 定義を共有:家族=血縁・婚姻/友人=血縁以外の親しい人(実際に交流がある相手
  3. 人数を数える:家族・友人それぞれで「定期交流」「頼れる」「相談できる」の 3 観点で人数を数える
  4. 採点:下の採点早見表で人数→点(各 0〜5 点)に置換
  5. 合計と方針:合計 12 点未満は高リスクの旗印→多職種連携・参加先提案へ

面接スクリプト(90 秒で読み上げ)

  1. 「直近 1 か月の様子でお答えください。」
  2. 家族=血縁・婚姻友人=血縁以外の親しい人として伺います。」
  3. 「まず家族です。この 1 か月で会う・電話/LINE した家族は何人いましたか?」
  4. 「その家族のうち、急用や体調不良で実際に頼れるのは何人ですか?」
  5. 「健康やお金など個人的な相談を気軽にできる家族は何人ですか?」
  6. 「次に友人です。同様に、交流人数/頼れる人数/相談人数を伺います。」
  7. 「人数を表の基準0〜5 点に置き換え、合計します。12 点未満なら支援策を一緒に検討しましょう。」

観点と問い方の例(臨床用パラフレーズ)

原文の引用ではなく、内容的に確認すべき観点を「問い方の例」に落とし込みました。高齢者フレイルやうつ、独居支援などの場面で、そのまま面接スクリプトとして活用できます。

LSNS-6 の観点と問い方(本文なし・臨床用)
領域 観点(確認したい中身) 問い方の例 採点のコツ
家族 定期的な交流がある家族の人数(概ね 月 1 回 以上) 「この 1 か月で、会う・電話/LINE した家族は何人いましたか?」 形式より実態重視。別居の親族も交流があれば数える。
家族 困った時に実際に頼れる家族の人数 「急用や体調不良のとき、頼れる家族は何人ですか?」 “名目上の家族”は除外。動いてくれる相手に限定。
家族 気兼ねなく個人的な相談ができる家族の人数 「健康・お金・不安などを気軽に話せる家族は何人ですか?」 世間話の相手は除外。心理的な近さで判断。
友人 定期的な交流がある友人の人数(概ね 月 1 回 以上) 「この 1 か月で、会う・連絡を取り合った友人は何人いましたか?」 オンラインのみでも継続交流なら含める。
友人 困った時に頼れる友人の人数 「通院付き添いなど具体的に頼れる友人は何人ですか?」 支援の現実性(移動・金銭・見守り等)を基準に。
友人 気兼ねなく個人的な相談ができる友人の人数 「体や家の事情など、深い話をできる友人は何人ですか?」 知人・顔見知りは除外。内面を共有できる相手。

採点のやり方(人数→点の置き換え)

各観点で数えた人数を、下表の運用テンプレに沿って0〜5 点へ置き換え、合計 0〜30 点を算出します(施設内で微調整可)。

人数に応じた点数化(運用テンプレ)
人数 点数の目安 備考
0 人0 点該当者なし
1 人1 点
2 人2 点
3〜4 人3 点
5〜8 人4 点
9 人以上5 点十分に広いネットワーク

合計 12 点未満は社会的孤立リスクが高いサインです。LSNS-6 単独の数値だけでなく、フレイルや抑うつ、生活機能など他の評価とあわせて多面的に解釈します。

迷いやすいカウント基準

同一人物の重複やオンライン交流の扱いの基準
ケース含める?理由/メモ
同一人物を家族・友人の両方に数える×重複カウント不可(片方に統一)
月 1 回のビデオ通話のみの交流継続的交流があればカウント
年 1 回の年賀状のみ×交流頻度が閾値に満たない
形式上の家族(疎遠・援助不可)×「実際に動く支援者」のみ数える

記入例(合計の出し方)

スコア記入例(家族 3・友人 3 の合計)
領域交流頼れる相談小計
家族2 人→ 2 点1 人→ 1 点1 人→ 1 点4 点
友人0 人→ 0 点1 人→ 1 点0 人→ 0 点2 点
合計6 / 30 点(高リスク)

実施フローと“つまずき”回避

  1. 対象選定:独居・外出減・食欲低下・抑うつ徴候・転倒歴などがある場合は優先的に実施。
  2. 面接の要点:期間を区切る(直近 1 か月)。家族と友人を分けて数える。重複カウントを避ける
  3. 記録:施設で統一した LSNS-6 記録シート(A4 メモや Excel オートスコアなど)を用意し、点数とコメントを残す。
  4. 解釈:12 点未満ならケアマネ連携、通所やサロン紹介、見守り体制など具体策へつなげる。
  5. 再評価:介入後または 3〜6 か月ごとにフォローし、ネットワークの「質」と「量」の変化を確認する。

現場の詰まりどころ

  • ① 「顔見知り」と「友人」がごちゃ混ぜになる:本人が「知り合いはたくさんいる」と答えても、深い相談ができない相手はスコアを分けて確認します。
  • ② 同じ人を何度もカウントしてしまう:家族・友人の重複カウントを避けるだけでなく、「交流・頼れる・相談」の 3 観点で冷静に人数を整理することが重要です。
  • ③ 複雑な家族関係への聞き方に迷う:疎遠・虐待歴・経済的搾取などがある場合、「無理にカウントしない」姿勢をチームで共有しておくと安全です。
  • ④ 点数だけが一人歩きする:「12 点未満だからアウト」という扱いではなく、「誰とつながっているか」「どの関係が途切れそうか」を記録に残すと、その後のケア会議で活かしやすくなります。

併用が有効な評価

LSNS-6 は主に「社会的ネットワーク」の広がりを捉える尺度です。身体機能(歩行速度・筋力・転倒歴)や栄養状態(体重変化・食事量)、認知機能・抑うつ症状とあわせて評価すると、「なぜ外に出なくなっているのか」「どの支援から始めるとよいか」を立体的に整理できます。特にフレイル予防や地域包括ケアの場面では、LSNS-6 を「関係性の見取り図」として位置づけると、カンファレンスでの共有がスムーズになります。

よくある質問

各項目名や設問本文は記載しません。タップで開閉します。

Q. 12 点未満なら必ず介入しますか?

A. 「高リスクの旗印」です。LSNS-6 だけで介入の有無を決めるのではなく、他のスクリーニング(フレイル・抑うつ・生活機能)や本人の希望と併せて総合的に判断します。

Q. 家族がいない/友人がいない場合の聞き方は?

A. 「今の暮らしで連絡を取る人」「困った時に頼れる近所の方・支援者」など、実態に沿う言い換えで確認します。地域包括支援センター職員や訪問看護など「専門職」だけしか出てこない場合も、そのまま記録に残しておくとケア会議で役立ちます。

Q. 点数が上がりにくい方への支援例は?

A. 参加のハードルを下げる(送迎・付き添い・初回同行)、役割づくり(係・当番)、毎週の連絡の固定化など、負担が小さく続けやすい工夫が有効です。「どのつながりを増やしたいか」を本人と一緒に具体化すると、LSNS-6 の再評価とも結びつけやすくなります。

おわりに

LSNS-6 は、スクリーニング → ネットワークの質の言語化 → 具体策の提案 → 再評価という流れを支えるツールです。「誰と」「どれくらい」「どんな関係性で」つながっているかを丁寧に聞き取り、生活者としての物語と一緒に記録しておくことで、フレイル予防や生活支援の方向性が見えやすくなります。

一方で、支援者自身が「チームに恵まれているか」「社会的ネットワークを活かせる職場か」という視点も大切です。もし今の職場の人員体制や教育環境に不安がある場合は、面談準備チェックと職場評価シートをまとめたマイナビコメディカルの解説ページ(こちら)も参考にしながら、「どんなチームなら LSNS-6 を活かした支援ができるか」を考えてみてください。

参考文献

  1. Lubben J, et al. Shortened Lubben Social Network Scale (LSNS-6). The Gerontologist. 2006;46(4):503–513. Article
  2. Kurimoto A, et al. 日本語版 LSNS-6 の信頼性・妥当性. Nihon Ronen Igakkai Zasshi. 2011;48(2):149–157. DOI PubMed
  3. Chang Q, et al. Social network and mental health among Chinese older adults: A cross-sectional study. PLOS ONE. 2018;13(8):e0201612. Article

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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