【痛みの強さの評価方法】5つの評価スケール【疼痛の主観的評価】

ディスプレイ広告
スポンサーリンク
評価法
記事内に広告が含まれています。
リハビリくん
リハビリくん

   

いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めて訪問して下さった方はよろしくお願いします。サイト管理者のリハビリくんです!

   
この記事は「痛みの強さの評価方法」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

痛みの評価については、初回評価時から定期的に実施する必要があります。痛みの評価は主観的な感情となるため、評価にばらつきが出やすい特徴があります。

   

例えば痛みの評価で有名な NRS や VAS を測定するにしても、検査者の説明の仕方や振る舞い方次第で、患者の訴えが変わる可能性があります。検査者によって評価結果にばらつきが生じてしまうと、痛みの程度をうまく追えなくなり、鎮痛剤の調整にも支障を来します。

  

この記事では、患者様の痛みを正確に評価することができるように、痛みの評価スケールについて整理していきたいと思います!

リハビリくん
リハビリくん

【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

   

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級


【リハビリテーション専門職の転職サイト】

医療従事者となる理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリテーション専門職は超高齢社会を突き進む本邦において必要不可欠な職種になります。

実際に近年では、理学療法士は 10,000 ~ 11,000 人程度、作業療法士は 4,000 ~ 5,000 人程度、言語聴覚士は 1,600 ~ 1,800 人程度、国家試験に合格しており、順調に有資格者数が増え続けています。

このように世の中から必要とされている反面、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の給与は他業界と比較して恵まれてるとはいえません。「賃金構造基本統計調査」から他業界と比較してみても2022 年度のリハビリテーション専門職の初任給平均額は 239,100 円となっており、満足できるものではありません。

また、給与の問題もありながら、リハビリテーション専門職は業界特有の激しい人間関係という荒波に揉まれながら業務にあたることになります。この人間関係で辛い思いをする人はかなり多いと考えられます。

このように、給与や人間関係、また福利厚生などを含めた恵まれた労働環境で働くためには転職が必要になることもあります。1 年目、すなわち始めての職場が恵まれた環境であればいうことありませんが、必ずしもそう上手くはいきません。

最近では転職サイトにも様々な種類のものがあり、どの転職エージェントを選択するか迷うと思います。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士におすすめしたい転職サイトは、他の記事で詳しくまとめています!《【理学療法士転職サイトランキング】おすすめ5選|リハビリ職の転職》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 

ディスプレイ広告
スポンサーリンク

痛み、疼痛とは

痛みとは、多くの人が悩む症状の 1 つになります。

痛みは、「実際になんらかの組織損傷が起こったとき、あるいは組織損傷が起こりそうなとき、あるいはそのような損傷の際に表現されるような、不快な感覚体験および情動体験」と定義されています。

つまり、痛みは組織損傷にともなう神経生理学的な反応だけではなく、体験する痛みの感覚や存在によって襲いかかる不安や恐怖心、辛さや憤りなどの情動変化も一種の痛みとなります。

痛みは複雑なものになりますが、身体的要因、心理的要因、社会的要因、スピリチュアルな要因が相互に関連し合うことで、痛みは発生しているということを理解する必要があります。

痛みは医療や福祉に関連深く重要な症状になります。患者に適したケアや治療手段を決定するため、また実施したケアや治療の効果判定をするためにも、痛みを評価は欠かすことができません。

多側面から痛みを評価し、痛みに影響している要因を明らかにしながら、対象者の痛みを総合的に理解していくことが、「痛み」と向き合っていくうえで必要となります。

痛みの評価について

痛みの評価方法には、以下の 3 つに分類することができます。

  1. 痛みの主観的評価(尺度、質問紙、日記など)
  2. 痛みの客観的評価(行動、機能評価など)
  3. 生理的測定(心拍数、呼吸数、血圧など)

痛みは主観的な症状(個人的な体験)になります。そのため、「痛みの主観的評価」として痛みの強さ、痛みのパターン、痛みの性状・性質、生活支障度、生活の質(QOL)を評価することが、痛みの評価の土台となります。

この中でも「痛みの強さ」は痛みの評価の最も重要な部分になります。「痛みの強さ」を経時的に捉えることで治療方針の決定や効果判定に役立てることができます。

前述した通り、痛みの評価は主観的評価が中心となりますが、客観的評価を含めて多側面から評価を行うことで評価の精度は高くなります。

客観的評価方法の一例として、STAS(Support Team Assessment Schedule)という評価尺度があげられます。

STAS はホスピス・緩和ケアにおける評価尺度となり、以下の 9 つの項目で構成されています。

  1. 痛みのコントロール
  2. 症状が患者に及ぼす影響
  3. 患者の不安
  4. 家族の不安
  5. 患者の病状認識
  6. 家族の病状認識
  7. 患者と家族のコミュニケーション
  8. 医療専門職間のコミュニケーション
  9. 患者・家族に対する医療専門職とのコミュニケーション

上記 9 項目を医療従事者が 0 ~ 4 の 5 段階で客観的に評価を行います。痛みで辛い思いをしている患者本人に確認するのではなく、普段の生活をみている医療従事者が評価を行うため、対象者に負担を与えないというメリットがあります。

以上のように痛みの評価は「主観的評価」「客観的評価」「生理的測定」の 3 つに分類されます。3 種類の痛みの評価を組み合わせ、痛みを単なる身体的痛みと判断せず、多角的視点から評価していくことが重要になります。

痛みの評価の基盤となる「痛みの主観的評価」の具体的な方法について、次項で更に詳しく解説します。

痛みの主観的評価(痛みの強さ)

適切な疼痛評価、疼痛管理は対象者の QOL 向上のために必要不可欠となります。痛みの有無や痛みの強さは主観的な症状であり、患者自身の痛みの表現を尊重するべきですが、状況によっては表情や仕草、行動などから他者が評価することもあります。

しかし先行研究によると、他者による痛みの評価は、過小評価に繋がりやすいと報告されています。

したがって、多職種・ご家族様での情報共有や治療効果判定のためにも、主観的な感覚を客観的に表現する特定の指標を使用した評価が必要となります。

痛みの強さを評価するスケールとしては、NRS、VAS、FPS、VRS などがあり、いずれも自己報告型になります。

先行研究によると NRS は感度、簡便さ、コンプライアンスの高さなどから最も使用しやすいとされており、一般的に NRS が推奨されることが多いという特徴があります。

FPS は 3 歳以上の小児や言語能力に制限がある対象者において推奨されています。

また、NRS や VAS、FPS は視覚的なスケールであるのに対し、VRS は言語を用いたスケールというところが差別化としてあります。

認知機能が低下している対象者に対しては、NRS や VAS、VRS は MMSE(Mini-Mental State Examination)が 18 点以上(軽度の認知機能低下)であれば使用することが可能であることが示唆されています。

更に NRS と VRS については MMSE が 10 ~ 17 点(中等度の認知機能低下)でも使用が可能と示唆されていることから、認知機能が低下している対象者については NRS か VRS の使用を推奨することができます。

各評価方法の詳細な評価方法や注意事項について、わかりやすく解説していきます。

VAS(Visual Analogue Scale)

検査に必要なものは、紙に書いた 10 cm(100 mm)の直線になります。

この線の左端を「痛みが全くない」、右端を「最悪の痛み」とした場合に、現在の痛みがどの程度の痛みであるのかを指し示してもらう視覚的な評価スケールになります。

VAS を使用する際には、対象者に 10 cm の
直線を示し、その左端を「痛みがない」、右端を 「想像できる最大の痛み」とすることを説明しま す。

今の痛みが直線のどこに相当するのかを示してもらい、直線の左端から対象者が付けた印までの距離を測定します。

その測定値を痛みの強さとして 0 ~ 10.0 cm(0 ~ 100 mm)で記載します。

痛みの絶対値は人によって異なりますが、VAS は個々の患者さんの痛みの推移を評価することに優れています。

また、感度が良く、簡単で再現性があり、世界共通のものであることから、臨床でよく使用されている痛みの評価尺度になります。

NRS(Numerical Rating Scale)

0が痛みなし、10が想像できる最大の痛みとして、 0~10までの11段階に分けて、現在の痛みがどの程度かを指し示す段階的スケールになります。

NRS は、0 ~ 10 までの 11 段階の数字を用いて、現在の主観的な痛みのレベルを数字で示してもらう評価スケールになります。

数値の設定に規定はありませんが、例として「痛みが全くない」を 0 、「最悪の痛み」を 10 として、現在の痛みについて対象者に示してもらいます。

NRS は、がん、さまざまな神経痛、頭痛、腰痛など疾患を限定せず、痛みを訴えている患者すべてに使用することができます。現状の痛みの評価や、日内変動、治療効果を目的として使用することができます。

簡便でわかりやすく、治療効果判定に有用である反面、患者の性格や環境に影響されやすいこと、小児や意識レベルの低下が見られる患者では痛みの数値化が行えないこと、主観的な評価であるため数字に好みが表れ、他者と痛みの強さを比べることはできないといった短所があります。

VRS(Verbal Rating Scale)

VRS は痛みの強さを表す言葉を順に並べて、現在の痛みの程度を示してもらう評価スケールになります。

VAS や NRS が数値を使用した視覚的なスケールであるのに対し、言語を用いたスケールというところが VRS の特徴となります。

また、認知機能が低下した患者に対しても回答が得られやすいという利点を有しています。

FPS(Face Rating Scale)

笑顔から泣き顔までの数段階のイラストが用いられており、現在の痛みに一番合う顔を選んでもらうことで痛みを強さを視覚的に評価するスケールとなります。

FPS は 3 歳以上の小児の痛みの自己評価において有用性が報告されています。しかし、痛み以外の気分を反映する可能性や段階が少なく痛みを詳細に評価できない可能性があることなどが指摘されています。

VAS、NRS、VRS、FRS の評価用紙が必要な方はこちらからどうぞ☺

簡易疼痛質問票(BPI)

簡易疼痛質問票は英語では brief pain inventory と表現されます。略称で BPI とも呼ばれています。

簡易疼痛質問票(BPI)は、がん性疼痛の評価のために作成された指標になります。

がん以外の疾患や症状によって生じる痛みに対しても、評価の有用性が認められ、他の疾患でも使用されるようになっています。

簡易疼痛質問票(BPI)の評価用紙が必要な方はこちらからダウンロードできます☺

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「痛みの強さの評価方法」をキーワードに解説させて頂きました。

こちらの記事を読むことで、痛みの評価についての理解が深まり、臨床における診療やリハビリテーションの一助へとなれば幸いです。

参考文献

  1. 安藤正志.理学療法における痛みの評価.理学療法科学.2000年,第15巻,第3号,p63-72.
  2. 濱口眞輔.痛みの評価法.日臨麻会誌.2011,Vol.31,No.4,p560-569.
  3. 西村大輔,米川裕子,安部洋一郎.痛みの評価.診断と治療.104(11),p1369-1376,2016.
  4. 加藤涼子.疼痛管理に用いるスケール VAS,NRS,NPS,フェイススケール,オピオイド換算.月刊薬事.66(1),p38-42,2024.
タイトルとURLをコピーしました