MFESとは?転倒関連自己効力感を活動別に評価する尺度
転倒評価の全体像から確認する
MFES(Modified Falls Efficacy Scale)は、日常生活の各活動について「転倒せずに行える自信」を0〜10点で評価する14項目の質問尺度です。点数が高いほど転倒関連自己効力感が高く、低い活動ほど不安や自信低下が介入を妨げている可能性があります。
この記事では、MFESの評価方法、採点時の注意点、結果の読み方、記録方法を整理します。A4記録シートと自動計算ツールも掲載しているため、評価から低得点活動の抽出、介入課題の設定、再評価まで一連の流れで運用できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 評価するもの | 日常活動を転倒せずに行える自信 |
| 項目数 | 14項目 |
| 各項目 | 0〜10点 |
| 得点の向き | 高いほど転倒関連自己効力感が高い |
| 主な使い方 | 低得点活動の特定、介入課題の設定、個人内変化の確認 |
MFESは「能力」ではなく「転倒せずに行える自信」を評価する
MFESで評価するのは、実際に動作を遂行できるかどうかではなく、本人がその活動を転倒せずに行えると感じているかです。
歩行速度や立ち上がり能力が改善していても、「また転ぶかもしれない」という不安から外出や入浴を避けていることがあります。反対に、本人の自信が高くても、客観的なバランス能力や安全性が十分とは限りません。
そのため、MFESは身体機能検査の代わりではなく、客観的な能力と本人の認識のズレを確認するために併用します。
| 評価結果 | 考えられる状態 | 確認すること |
|---|---|---|
| 身体機能は高いがMFESが低い | 転倒経験、不安、回避行動、環境条件が影響している可能性 | 避けている活動、不安の理由、成功体験の不足 |
| 身体機能もMFESも低い | 遂行能力と自己効力感の両方が低下している可能性 | 安全条件、介助量、補助具、段階的な練習方法 |
| 身体機能は低いがMFESが高い | 本人の認識と実際の安全性が一致していない可能性 | 転倒歴、危険認識、見守り条件、環境上のリスク |
MFESの採点方法
各活動について、本人が感じている「転倒せずに行える自信」を0〜10点で回答してもらいます。評価前に質問の焦点と点数の意味を統一することが重要です。
- 0点:転倒せずに行える自信がまったくない
- 5点:ある程度の自信はあるが、迷いや不安がある
- 10点:転倒せずに行える自信が十分にある
評価者は「できるか、できないか」ではなく、「転倒せずに行える自信がどの程度あるか」と説明します。普段使用している杖、手すり、靴などがある場合は、原則として普段の生活条件を想定して回答してもらいます。
合計点と平均点の扱い
MFESの得点は、14項目を合計して0〜140点として示す方法と、回答項目の平均を0〜10点で示す方法があります。どちらも高得点ほど自己効力感が高い方向ですが、記録時には合計点か平均点かを明記してください。
| 表記方法 | 得点範囲 | 記録例 |
|---|---|---|
| 合計点 | 0〜140点 | MFES合計112/140点 |
| 平均点 | 0〜10点 | MFES平均8.0点 |
経時変化を比較する場合は、施設やチーム内で表記方法を統一します。合計点と平均点を途中で切り替えると、過去の結果と比較しにくくなります。
実施していない活動の扱い
最近行っていない活動がある場合は、行っていない理由を確認します。転倒への恐怖が理由で中止している場合と、身体的な問題や生活環境によって実施機会がない場合では、得点の意味が異なります。
採用している評価用紙の原法や運用ルールに従い、未回答を認める場合は、未回答の理由と回答項目数を記録してください。未回答項目がある状態で単純な合計点を140点満点として比較せず、回答項目数と平均点を併記します。
未回答項目がある場合の記録例
MFESは12項目に回答し、合計96点、平均8.0点。未回答2項目は最近の実施機会がなく、本人が具体的な場面を想定できなかったため除外した。
MFESで確認する活動の範囲
MFESは、屋内の日常生活活動だけでなく、買い物、公共交通、道路横断などの屋外活動を含む点が特徴です。14項目は、概ね屋内活動10項目と屋外活動4項目で構成されます。
面接では尺度の正式な項目文を用いながら、回答者が想定している場所、補助具、介助条件を必要に応じて確認します。ただし、評価者が独自に質問内容を別の活動へ変更すると、同じ尺度として比較しにくくなるため注意が必要です。
| 活動領域 | 確認する視点 | 記録しておきたい条件 |
|---|---|---|
| セルフケア | 更衣、入浴などで転倒せずに行える自信 | 手すり、椅子、介助者、床面 |
| 移乗・屋内移動 | 立ち座り、ベッド周辺、屋内歩行への自信 | 杖、歩行器、家具配置、見守り |
| 家事・物品操作 | 調理、物品へのリーチ、軽い家事への自信 | 立位時間、支持物、運搬物 |
| 屋外活動 | 買い物、交通機関、道路横断、屋外課題への自信 | 路面、段差、混雑、荷物、時間制限 |
MFESの実施手順
MFESは、説明条件をそろえたうえで14項目を聴取し、合計点だけでなく低得点活動まで確認します。

- 評価目的を説明する:日常生活動作ができるかではなく、転倒せずに行える自信を確認する尺度であると伝えます。
- 0・5・10点の意味を共有する:回答基準を最初に統一します。
- 普段の生活条件を確認する:補助具、手すり、靴、介助者などの条件を確認します。
- 14項目を聴取する:質問文を大きく変更せず、必要な場合のみ想定している環境を確認します。
- 得点を計算する:合計点または平均点を算出し、用いた方法を明記します。
- 低得点活動を抽出する:本人の生活目標と関係する活動を優先して確認します。
- 次の評価・介入を決める:低得点の原因、安全条件、練習内容、再評価条件を記録します。
MFESの結果は合計点と低得点活動を組み合わせて読む
MFESには、すべての対象者へ一律に適用できる確立したカットオフ値があるわけではありません。単独の得点で転倒リスクを判定せず、個人内の変化、低得点活動、転倒歴、身体機能、生活環境を組み合わせて解釈します。
合計点が同じでも、すべての活動が均等に低い人と、屋外活動だけが低い人では介入方針が異なります。最初に低得点活動を抽出し、その活動を避けている理由を確認することが重要です。
| 結果のパターン | 確認すること | 介入へのつなげ方 |
|---|---|---|
| 屋内活動だけが低い | 移乗、入浴、更衣、住環境、補助具条件 | 環境調整と基本動作練習を組み合わせる |
| 屋外活動だけが低い | 段差、路面、交通量、荷物、歩行速度、注意配分 | 実際の生活場面を分解し、段階的に練習する |
| 身体機能改善後も低い | 転倒経験、回避行動、成功体験、家族の過度な制止 | 安全条件を明確にして成功体験を積み重ねる |
| 得点は高いが転倒が続く | 危険認識、行動範囲、認知機能、実際の動作能力 | 客観的評価と環境評価を優先する |
客観的な歩行能力も確認する場合は、10m歩行テストの評価方法などを併用し、本人の自信と実際の移動能力にズレがないか確認します。
MFESの記録方法
記録では点数だけを残さず、低得点活動、回答条件、本人の発言、次の介入課題まで記載します。
MFESの記録例
MFESは合計98/140点。買い物と道路横断で自己効力感が低い。屋内は杖使用で自立しているが、屋外では転倒経験後から単独外出を避けている。次回は家族同伴下で店舗までの経路を確認し、同一の補助具条件で再評価する。
記録に残す項目は、次の5点に整理できます。
- 合計点または平均点
- 低得点だった活動
- 補助具、手すり、介助者などの回答条件
- 自信が低い理由や避けている行動
- 次回の介入課題と再評価条件
再評価では説明と実施条件をそろえる
MFESの変化を追うときは、評価間隔よりも、質問の説明、補助具、生活環境、計算方法をそろえることが重要です。
再評価時には、得点が変化した活動について、身体機能の改善、環境調整、成功体験、生活機会の変化のどれが影響したかを確認します。合計点が改善していても、本人が目標としている活動が変わっていなければ、介入内容の再検討が必要です。
| 確認項目 | 記録内容 |
|---|---|
| 説明方法 | 前回と同じ質問の焦点とアンカーを使用したか |
| 生活条件 | 補助具、手すり、介助者、生活環境に変更がないか |
| 計算方法 | 合計点または平均点のどちらを使用したか |
| 項目別変化 | どの活動が改善または低下したか |
| 実際の行動 | 活動範囲や実施頻度が変化したか |
FES-I・ABCとの使い分け
MFES、FES-I、ABCは、いずれも転倒に関連する主観的評価ですが、質問の焦点と得点の向きが異なります。
| 尺度 | 主に評価するもの | 得点の向き | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| FES-I | 活動中に転倒することへの懸念 | 高いほど懸念が強い | 転倒への心配や活動回避を確認したい |
| ABC | 活動場面ごとのバランスへの自信 | 高いほど自信が高い | 複雑な屋外環境を含めたバランス自信度を確認したい |
| MFES | 日常活動を転倒せずに行える自信 | 高いほど自己効力感が高い | 低得点活動を介入課題へつなげたい |
3尺度の質問内容、得点方向、記録方法を詳しく比較したい場合は、FES-I・ABC・MFESの比較をご確認ください。
MFESで起こりやすい失敗と対策
MFESは短時間で実施できますが、質問の焦点や未実施項目の扱いが統一されていないと、再評価時の比較が難しくなります。
| よくある失敗 | 問題点 | 対策 |
|---|---|---|
| 「できるか」と質問する | 身体能力と自己効力感が混ざる | 「転倒せずに行える自信」と説明する |
| 評価者ごとに説明が異なる | 得点変化の意味が分からなくなる | 質問の焦点と0・5・10点の説明を統一する |
| 合計点だけを記録する | 介入すべき活動が分からない | 低得点活動とその理由を併記する |
| 未実施項目を理由なく埋める | 得点が実生活を反映しにくい | 未実施理由と回答項目数を記録する |
| 低得点抽出をカットオフとして扱う | ツール上の設定値を転倒リスクの判定基準と誤解する | 介入候補を探すための抽出条件として使用する |
| MFESだけで転倒リスクを判断する | 身体機能や環境上の危険を見落とす | 転倒歴、歩行、バランス、認知、環境評価を併用する |
MFESを評価から介入へつなげる5分フロー
- 「転倒せずに行える自信」を評価すると説明する
- 0・5・10点の回答基準を共有する
- 14項目を普段の生活条件で聴取する
- 合計点または平均点と、低得点活動を確認する
- 低得点活動の理由、介入課題、再評価条件を記録する
最初からすべての低得点活動へ介入するのではなく、本人の生活目標に近い活動を1〜2項目選び、安全条件を整えて段階的に練習します。
MFES記録シートと自動計算ツール
紙面で評価・共有する場合はA4記録シート、入力しながら合計点や低得点活動を確認する場合は自動計算ツールを使用できます。
2.MFES自動計算ツール(HTML)
14項目の入力から合計点、平均点、屋外系の結果、低得点活動を確認できます。低得点として抽出する点数は、介入候補を見つけるためのツール内設定であり、転倒リスクを判定するカットオフ値ではありません。
使用前に確認してください
- 14項目すべてを入力した場合のみ、合計点を140点満点として扱います。
- 未回答がある場合は、回答項目数と平均点をあわせて確認します。
- 活動テーマは入力位置を確認するための要約表現です。正式な評価では、出典や使用条件を確認したMFES評価用紙の項目文に沿って聴取してください。
- MFES単独で転倒リスクを判定せず、転倒歴、身体機能、認知機能、生活環境などと組み合わせて解釈してください。
この場で自動計算ツールを表示する
MFESに関するよくある質問
MFESは転倒恐怖感を評価する尺度ですか?
MFESが直接評価するのは、日常活動を転倒せずに行えるという自己効力感です。転倒への恐怖や不安と関連しますが、恐怖の強さを直接質問する尺度とは区別して考えます。
MFESは何点以下なら転倒リスクが高いですか?
すべての対象者へ一律に適用できる確立したカットオフ値はありません。MFESだけで転倒リスクを判定せず、転倒歴、歩行・バランス能力、認知機能、服薬、生活環境などと組み合わせて解釈します。
自動計算ツールの低得点設定はカットオフ値ですか?
カットオフ値ではありません。低得点設定は、自信が低い活動を一覧から抽出し、問診や介入の候補を見つけやすくするための補助機能です。設定した点数だけで転倒リスクや介入適応を判断しないでください。
未回答項目がある場合も140点満点で記録しますか?
14項目すべてに回答していない場合は、単純に140点満点として比較しません。入力済み項目の合計点に加えて、回答項目数と平均点を記録し、未回答となった理由も残してください。
杖や手すりを使用している場合はどう評価しますか?
原則として、普段使用している杖や手すりなどを含めた生活条件で回答してもらいます。再評価時に同じ条件で比較できるよう、使用した補助具や介助条件を記録してください。
合計点と平均点のどちらを記録すればよいですか?
採用している評価用紙や施設内の運用方法に合わせます。重要なのは、合計点か平均点かを明記し、同じ方法で経時変化を比較することです。未回答項目がある場合は、平均点と回答項目数を併記すると結果を解釈しやすくなります。
実施していない活動は0点にしますか?
一律に0点とはしません。転倒への恐怖で活動を中止しているのか、身体的な理由や生活環境によって実施機会がないのかを確認し、採用している評価用紙のルールに従って処理します。未回答にする場合は理由を記録してください。
自動計算ツールとPDFはどう使い分けますか?
入力しながら合計点や低得点活動を確認する場合は自動計算ツール、紙面での記録や多職種共有にはPDFが向いています。どちらを使用する場合も、質問の説明、補助具、回答条件、得点の表記方法を統一してください。
次の一手
MFESを使用するか迷う場合は、転倒関連PROMの選び方で、評価したい内容が転倒への懸念なのか、活動への自信なのかを整理してください。
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著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門分野
脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーション、シーティング、摂食・嚥下

