NSI:高齢者の栄養スクリーニング完全ガイド

栄養・嚥下
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NSI(DETERMINE)とは?

NSI は高齢者の栄養リスクを短時間で把握する自己記入・面接併用のスクリーニングです。地域・外来・在宅など非入院の場面で「低栄養の気づき」と多職種連携の起点づくりに適しています。本記事では 10 項目版として運用し、配点と合計点からリスク帯を判定、次アクションに接続する実装ポイントをまとめました。なお、頭字語 “DETERMINE” の 9 領域を覚え書きに使いますが、実際のチェックリストは 10 項目です。

評価結果は単独で完結させず、体重・ BMI ・食事量・口腔/嚥下所見・服薬・社会的背景とあわせて判断します。陽性・疑義があれば、詳細評価( MNA-SF ・ MST ・ NRS-2002 など)へ速やかに接続する二段階運用が実務的です。

臨床導入フローを確認する(最短ルート)

ダウンロード(10 項目版テンプレート)

※設問本文は掲載していません。公式資料を参照し、各項目の配点に沿って入力してください。

対象者と実施タイミング

主な対象は 65 歳以上の地域・外来・在宅の方です。初回は「新規受診・介入開始時」や「最近 3 か月で体重・食事量の変化が疑われるとき」、以後は 3〜6 か月ごとの定期フォローを基本とします。病状・服薬・生活環境の変化(入退院、独居化、配食停止など)も臨時再評価の好機です。

施設・通所・訪問リハでも短時間で導入できます。陽性または疑義がある場合は、同日に MNA-SF ・ MST を追加、入院治療中なら NRS-2002 へ接続するなど、現場の標準フローを事前に決めておくと運用が安定します。

実施手順とスコア判定(10 項目)

  1. 自己記入または面接で 10 項目をチェック(家族同席可)。
  2. 各設問の配点を合計し、リスク帯を判定:
    0–2 点=低リスク(6 か月後に再)/3–5 点=中等度(3 か月後)/6 点以上=高リスク(専門職へ相談)
  3. 判定と根拠(体重・食事量・口腔所見・服薬など)をカルテへ記録、カンファに共有します。

判定がグレーな場合は MST NRS-2002 、高齢者では MNA-SF で二次評価を行います。

連携フロー(現場運用の型)

  1. 入口: NSI 実施+体重・ BMI ・食事量の確認(必要に応じて家族情報で裏取り)。
  2. 精査: 陽性/疑義 → MNA-SF ・ MST ・ NRS-2002 を追加。
  3. 連携: 管理栄養士へコンサルト(スコア内訳・体重経過・食事量・口腔/嚥下所見・服薬を共有)。歯科・嚥下チーム・地域包括へも適宜展開。
  4. 介入: エネルギー・たんぱく目標、間食強化、口腔・嚥下リハ、服薬調整、社会的支援をプラン化。
  5. フォロー: 低リスク= 6 か月、中等度= 3 か月、高リスク=短期に再評価。記録は上記テンプレで統一。

導入の全体像は こちらのフロー も参考に、院内・地域で標準手順として共有しましょう。

他ツールとの使い分け

主要栄養スクリーニングの比較(成人・高齢者:2025 年版)
ツール 主な場面 強み 所要 陽性目安
NSI(DETERMINE) 地域・外来・在宅 生活・社会要因も広く拾える。自己記入/面接可。 2–3 分 3–5=中等度/6+=高
MNA-SF 高齢者全般 高齢者特化の感度。詳細版 MNA へ接続しやすい。 3–5 分 カットオフで精査/介入
MST 外来・入院 迅速。体重/食欲に着目。 1–2 分 ≥ 2 で介入検討
NRS-2002 入院 疾患重症度 × 栄養状態 × 年齢で判定。院内標準。 3–5 分 基準にて要介入

よくあるミスと対策

  • 体重変化の過小評価: 自己申告だけでなく記録や家族情報で裏取りを行う。
  • 口腔・歯科要因の見落とし: 義歯不適合や疼痛は摂取低下の主因。歯科連携を早期に。
  • 多剤併用の影響: 食欲低下・口渇・便秘などを薬剤師と点検する。
  • 社会的孤立: 配食・見守り・地域包括の導線をセットで提示する。

FAQ

※各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

入院患者でも NSI を使ってよい?

入院では NRS-2002 が標準です。 NSI は生活要因の把握に役立ちますが、治療判断は入院向け指標を優先してください。

再評価の目安は?

低リスクは 6 か月後、中等度は 3 か月後、高リスクは専門職連携後に短期で再評価。体重・食事量・口腔所見の併記が有用です。

自己記入と面接、どちらが良い?

自己記入でも構いませんが、認知機能・視聴覚の問題や社会的事情の聴取を考えると、面接併用が精度的に安心です。

参考文献

  1. Posner BM, et al. Nutrition and Health Risks in the Elderly: The Nutrition Screening Initiative. J Am Diet Assoc. 1993;93(6):586–591. PubMed
  2. Administration for Community Living. Determine Your Nutritional Health Checklist(配布版). PDF
  3. Kaiser MJ, et al. Validation of the MNA-SF. J Nutr Health Aging. 2009;13(9):782–788. PubMed
  4. Ferguson M, et al. Development of a valid and reliable MST. Nutrition. 1999;15(6):458–464. PubMed
  5. Kondrup J, et al. Nutritional Risk Screening 2002 (NRS-2002). Clin Nutr. 2003;22(3):321–336. PubMed
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