【EAT-10とは】摂食嚥下障害の評価方法|簡易嚥下状態評価票

摂食・嚥下
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リハビリくん
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こんにちは!リハビリくんです!

   

この記事では「摂食嚥下障害スクリーニング質問紙票であるEAT-10」をキーワードに内容を整理していきます。

    

一般的に栄養管理で目標とする投与ルートは経口摂取になります。経口摂取を目指す上で、摂食・嚥下障害の存在は大きな問題点となります。

   

摂食・嚥下障害に対して適切な対応がなされない場合、誤嚥性肺炎や窒息、低栄養といった重篤な合併症を引き起こすだけではなく、食べる楽しみの喪失にも繋がります。予防と治療両方の観点からも、適切な摂食・嚥下機能の評価が重要になることは間違いありません。

   

EAT-10 について、名前を耳にしたことがある人も、既に使用している方もいらっしゃると思いますが、EAT-10 は比較的最近作成された評価法であるため、臨床では「まだ使用できてないよー!」という方も多いかと思います。そんな人のために、こちらの記事をまとめました!

    

今までに EAT-10 を一度も使用したことがない人でも、この記事を読むことで明日からの臨床で活用することができるようになることを目標にします。特に、下記のポイントを理解できるようにします。

   

  • EAT-10 が開発された経緯
  • 簡易嚥下状態評価票(EAT-10)について
  • 評価項目と採点方法
  • カットオフ値について

こちらの記事で EAT-10 における理解を深め、摂食・嚥下障害のアセスメント方法の引き出しを増やすことに繋がれば幸いです。是非、最後までご覧になってください!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

現在、理学療法士として得意としている分野は「脳卒中」「褥瘡」「栄養」「呼吸」「摂食・嚥下」「フレイル・サルコペニア」についてです。そのため、これらのジャンルの記事が中心となっております。

  

主な取得資格は以下の通りです

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級


   

ここ近年は新型コロナウイルスの影響もあり、外部の研修会などに参加する機会も減少していると思います。また、職場内での勉強会も規模が縮小している施設が多いのではないでしょうか?

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EAT-10とは、嚥下状態をセルフチェック

近年、高齢者における嚥下障害について多くの報告がなされており、以前と比べて世間の摂食・嚥下についての関心は高まってきていることが見受けられます。

地域包括ケアシステムが推進し「ときどき入院、ほぼ在宅」が掲げられる現在、特に在宅における嚥下機能評価は、嚥下機能低下を早期に発見し早期に介入を行うため、重要性が高いと考えられます。

嚥下機能評価方法のゴールドスタンダードは嚥下造影検査(VF)になりますが、特別な機器や技術が必要であり、高齢者施設や在宅での評価は困難である場合の方が多いかと思います。

嚥下造影検査(VF)を「実施したいけど、実施するのは難しい」このような背景から、質問紙法による嚥下評価の開発が行われ、その有用性が認められてきております。

様々な質問紙法の開発が進んでいる最中ではありますが、本邦では聖隷式嚥下質問紙や簡易嚥下状態評価票(Eating Assessment Tool:EAT-10)がよく使用されております。

簡易嚥下状態評価票(EAT-10)

簡易嚥下状態評価票(Eating Assessment Tool:EAT-10)は、2008年にアメリカで Belafsky らにより開発され、その信頼性と妥当性が検証されています。EAT-10 は、質問項目が少ないため、短時間でスクリーニングが可能であり、国外ではその使用が広がってきています。

EAT-10 の日本語版は、2008年に若林らにより作成され、信頼性と妥当性が検証されています。その後、国内における調査報告も散見されるようになってきております。EAT-10 は、自記式であり在宅にて嚥下に問題を抱えている高齢者の早期発見に寄与できる可能性があると考えられています。

EAT-10 は嚥下時の自覚症状や体重の減少などについて 10 項目の質問で構成されています。Belafsky らが、健常人と嚥下障害患者を対象として、EAT-10 の得点を検討した結果、EAT-10の合計得点が 3 点以上で「嚥下障害の疑いあり」と判断できると結論づけております。

さらに EAT-10 は、「さまざまな原因疾患により生じる嚥下障害に対して使用が可能であること」「質問項目が少ないこと」「質問時にかかる時間が 2 分未満で行えること」を特徴としています。

評価の目的

EAT-10 は嚥下機能を測定するための評価スケールになります。 10 個の質問に答えるだけで飲み込み機能を評価できるセルフチェック表となっております。言語聴覚士のような嚥下に関する専門職でなくても、嚥下に不安を感じるご本人や家族主体でも使用できることが特徴になります。

EAT-10 は質問紙票と呼ばれるタイプの評価スケールで、本人に聞き取り調査を行って、記入します。セルフチェック表でもありますので、ご本人、家族、スタッフ誰が記入しても問題ありません。注意点として、認知症などにより意思疎通が困難なケースや失語症を呈するケースでは、評価できない場合もあることが予想されます。

質問項目

10個の質問それぞれに対して、0点から4点のうち最も当てはまる項目を選択していってください。点数が小さいほど「問題がない状態」を点数が大きいほど「ひどく問題がある状態」を示しています。

  1. この3ヵ月の間に、飲み込みの問題が原因で、体重が減少しましたか?
    • 体重は減少していない:0点
    • よくわからない:1点
    • この3ヵ月間で、0~1kg体重が減少した:2点
    • この3ヵ月間で、1~3kg体重が減少した:3点
    • この3ヵ月で、3kg以上体重が減少した:4点
  2. この3ヵ月の間に、飲み込みの問題が原因で、自宅や病院/施設での食事以外は食べたくないと思ったことはありますか?
    • 全くそうは思わなかった:0点
    • めったにそうは思わなかった:1点
    • ときどきそう思うことがあった:2点
    • よくそう思った:3点
    • いつもそう思った:4点
  3. 液体を飲み込む時に、余分な努力が必要だ
    • 全くそうは感じないまたは、そういう問題はない:0点
    • めったにそうは思わなかった:1点
    • ときどきそう思うことがあった:2点
    • よくそう思った:3点
    • いつもそう思った:4点
  4. 固形物を飲み込む時に、余分な努力が必要だ
    • 全くそうは感じないまたは、そういう問題はない:0点
    • めったにそうは思わなかった:1点
    • ときどきそう思うことがあった:2点
    • よくそう思った:3点
    • いつもそう思った:4点
  5. 錠剤を飲み込む時に、余分な努力が必要だ
    • 全くそうは感じないまたは、そういう問題はない:0点
    • めったにそうは思わなかった:1点
    • ときどきそう思うことがあった:2点
    • よくそう思った:3点
    • いつもそう思った:4点
  6. 飲み込むことが苦痛だ
    • 全くそうは感じないまたは、そういう問題はない:0点
    • めったにそうは思わなかった:1点
    • ときどきそう思うことがあった:2点
    • よくそう思った:3点
    • いつもそう思った:4点
  7. 食べる喜びが飲み込みによって影響を受けている
    • 全くそうは感じないまたは、そういう問題はない:0点
    • めったにそうは思わなかった:1点
    • ときどきそう思うことがあった:2点
    • よくそう思った:3点
    • いつもそう思った:4点
  8. 飲み込む時に、食べ物がのどに引っかかる
    • 全くそうは感じないまたは、そういう問題はない:0点
    • めったにそうは思わなかった:1点
    • ときどきそう思うことがあった:2点
    • よくそう思った:3点
    • いつもそう思った:4点
  9. 食べる時に咳が出る
    • 全く出ない:0点
    • めったに出ない:1点
    • ときどき出ることがある:2点
    • よく出る:3点
    • いつも出る:4点
  10. 飲み込むことはストレスが多い
    • 全くそうは感じないまたは、そういう問題はない:0点
    • めったにそうは思わなかった:1点
    • ときどきそう思うことがあった:2点
    • よくそう思った:3点
    • いつもそう思った:4点

評価用紙

簡易嚥下状態評価票(Eating Assessment Tool:EAT-10)の評価用紙をダウンロードできるようにしておきました!評価用紙が必要な方はこちらからどうぞ

採点と判定

各質問の回答はそれぞれ、0点、1点、2点、3点、4点と計算され、10個の質問の合計を算出します。得点範囲は最小0点、最大40点となり得点が高い程、嚥下機能の低下が重度となります。

カットオフ値としては、合計点が3点以上であれば嚥下障害が疑われます。3点以上の場合は、医師へ相談することが推奨されます。

結果の解釈

簡易嚥下状態評価票(Eating Assessment Tool:EAT-10)はBelafsky らにより米国で開発された 質問紙となります。

Belafsky らは嚥下障害の専門家らと協同で質問紙の開発を行い、開始当初 35 項目あった質問から絞り込んで 10 項目を導出しました。

EAT-10 は、10 の質問項目について5 段階の評定尺度の多肢選択肢式で構成されており、評価尺度は 0〜4 点で数字が大きくなるほど各質問項目に対する自覚が高いことを表します。

Belafsky らは健常人 100 名の EAT-10の合計得点をもとに「嚥下障害の疑いあり」とされる者を、合計得点 3 点以上と位置づけました。

EAT-10は、様々な原因疾患により生じる嚥下障害に対して使用することができると考えられています。近年、脳血管疾患、廃用症候群、サルコペニアを呈する患者に摂食・嚥下障害を認める可能性が高いといわれているため、これらの疾患に対しても利用できることは利点となります。

EAT-10 使用上の注意点として、認知機能の低下を認める場合や失語症を認める場合には、うまく評価できない可能性を考慮する必要があります。

認知症などにより意思疎通が困難なケースや失語症を呈するケースでは、評価できない場合もあることが予想されます。そのため、EAT-10 を使用できる条件を 「HDS-R が実施でき、かつ HDS-R の得点が 30 点満点中 21 点以上」のように線引きをするような工夫もありだと考えます。

嚥下障害により引き起こされる誤嚥性肺炎を予防するためには、早期発見と早期治療介入が最も重要になります。

EAT-10 は、重度の嚥下障害を認める方に使用して嚥下障害の存在を明らかにすることもできますが、より有効な使用方法としては、症状が未だ露呈せず、潜在的に嚥下障害をもつ可能性のある対象者をスクリーニングすることになると考えます。

上記のような対象者を評価した結果、「嚥下障害の疑いあり」と判定された場合には、かかりつけ医に相談のもと、嚥下造影検査(VF)の実施や実際の食事摂取状況のモニタリングと合わせて検討し、嚥下体操、とろみ調整食品の添加や嚥下調整食の検討など、早期に対応策を講じることが可能になります。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「EAT-10」をキーワードに考えを述べさせていただきました。

こちらの記事で EAT-10 における理解を深め、摂食・嚥下障害のアセスメント方法の引き出しを増やすことに繋がれば幸いです!

参考文献

  1. 高橋浩平,高橋萌.嚥下機能に着目した在宅理学療法.PTジャーナル.2023,Vol.57,No.2,p171-178.
  2. 秋山理加,岩㟢正則,葭原明弘,濱嵜朋子,角田聡子,宮㟢秀夫,酒井理恵,邵仁浩,安細敏弘.在宅高齢者における簡易嚥下状態評価(EAT-10)と栄養状態との関連.口腔衛生会誌 J Dent Hlth.68,2018,p76–84.
  3. 渡邉光子,沖田啓子,佐藤新介,瀧本泰生,岡本隆嗣,栢下淳.嚥下スクリーニング質問紙 EAT-10 暫定版の有用性の検討.日摂食嚥下リハ会誌.18(1),2014,p30-36.
  4. 若林秀隆,栢下淳.摂食嚥下障害スクリーニング質問紙票EAT-10の日本語版作成と信頼性・妥当性の検証.静脈経腸栄養.29巻,3号,2014年,p871-876.
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