褥瘡の創傷治癒を早める栄養戦略|ONS・アルギニン・亜鉛の使い方

栄養・嚥下
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褥瘡治療と栄養:まず押さえる要点

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創傷治癒を加速させる栄養管理は、必要量の見える化 → 達成手段(食事・栄養補助食品= ONS ) → 1〜2 週ごとの再評価の流れで運用します。下表は成人(高齢者を含む)で褥瘡を有する患者を想定した“即見”の目安です。疾患や腎・心機能、体液制限の有無に応じて個別化してください。

とくに「創傷治癒 栄養」「褥瘡 創傷治癒 エネルギー」「褥瘡 創傷治癒 ビタミン」といったキーワードで悩む場面では、総エネルギー・たんぱく質・微量栄養素をセットで見ることが重要です。

成人・褥瘡患者の栄養目安(対象:成人/単位:体重あたり〈kg/日〉)
項目 推奨の目安 臨床メモ
エネルギー 30–35 kcal/kg/日 低栄養・重症例は上限寄りで設計。肥満は理想体重等で再計算。
たんぱく質 1.2–1.5 g/kg/日 創の重症度・滲出量が多いほど高めに。腎機能と電解質をモニタ。
水分 おおむね 30–40 mL/kg/日(または ≥ 1.5 L/日) 心不全・腎不全など体液制限は個別化。脱水は創治癒を遅延。
特別栄養( ONS ) アルギニン・亜鉛・ビタミン C 等を含む製品の併用を検討 Stage 3–4、低栄養/リスクで有用性が示唆。食事で充足不可分を補完。

なぜ栄養が創治癒を左右するのか

創傷治癒は炎症期→増殖期→成熟期をたどり、各相でエネルギーとアミノ酸、微量栄養素が必要です。たんぱく質不足は肉芽形成・コラーゲン合成を阻害し、亜鉛やビタミン C の不足は上皮化や架橋形成を遅らせます。必要量の と治癒過程に必要な を同時に狙う設計が基本です。

「褥瘡 栄養補助食品 おすすめ」「褥瘡 栄養補助食品 ゼリー」「褥瘡 栄養補助食品 メイバランス」などの製品選択は、こうした創傷治癒のステージと必要量を踏まえたうえで検討することが重要です。

実践フロー:評価 → 目標設定 → 介入 → 再評価

  1. スクリーニング:低栄養/リスクの把握( NRS-2002 / MST など)。
  2. 目標量の設定:上表(エネルギー・たんぱく質・水分)を基に個別化。
  3. 食事+ ONS で達成:食事強化(たんぱく質 20–30 g/食 を目安)に、不足分を ONS で補完。ドリンク・ゼリー形態など、アルギニン・亜鉛・ビタミン C 配合の製品を適応で検討。
  4. 1–2 週で再評価:摂取量、体重/浮腫、検査、創部所見(面積・深さ・滲出量)を確認。
    ※摂取ログは 1–2 週間だけでも記録すると調整が早いです。
  5. エスカレーション:嚥下障害・食欲低下・高度需要時は経管/静脈栄養を検討(創ケアと並走)。

運用の全体像は、チームで共有できるフローや記録シートを用意しておくとスムーズです。

現場の詰まりどころ(よくあるつまずき)

  • ① ONS を足しただけで安心してしまう:元の食事摂取量が少ないと、メイバランスなどの ONS を 1 本追加しても総エネルギー・たんぱく質が足りないことがあります。必ず 1 日トータルで「何 kcal・何 g になっているか」を確認します。
  • ② アルギニン入り=とりあえず投与、になっている:アルギニン・亜鉛配合製品は「褥瘡 栄養補助食品 アルギニン」として注目されますが、適応や投与期間を決めずに使うと、効果判定があいまいになります。創の重症度・低栄養リスクを踏まえて、目的と期間を明確にします。
  • ③ 水分制限と脱水リスクのバランスが難しい:心不全や腎不全で水分制限があると、「とにかく制限」が優先され、脱水で創傷治癒が遅れることがあります。入出量・体重・浮腫をセットで見て、チームで水分量を調整します。
  • ④ 摂取状況の記録が続かない:食事摂取量や ONS 内服状況の記録が 1〜2 日で途切れると、評価も調整も曖昧になります。短期間でもよいので「測る期間」を決めて記録を徹底し、その期間のデータで一度しっかり見直すと現実的です。
  • ⑤ 創傷ケアと栄養ケアが別々に議論される:ラウンドでは創部所見だけ、カンファレンスでは栄養だけ、という分断が起こりがちです。創面積・深さ・滲出量の変化と、エネルギー・たんぱく質摂取量を一緒に並べて見る場を作ると、方針が立てやすくなります。

これらの詰まりどころは、後述の FAQ と組み合わせてチェックすると、チーム内の認識合わせにも役立ちます。

よくある誤解と注意点

  • Alb が低い=必ず栄養不良?… ×。アルブミンは炎症・水分バランスの影響を強く受け、単独で栄養評価指標には不適です。体重変化や摂取量、スクリーニング結果を優先します。
  • ONS を飲めば必ず治る?… 一定条件では有効性が示されていますが、エビデンスは一貫しない報告もあります。総摂取量の確保と創ケアの質を土台に、適応を見極めましょう。
  • 水分は多いほど良い?… 過不足はどちらも不利。脱水は遅延、過剰は浮腫による治癒阻害に留意。心腎機能で個別最適化。

かんたん設計例(体重 50 kg)

  • エネルギー:30–35 kcal/kg → 1500–1750 kcal/日
  • たんぱく質:1.2–1.5 g/kg → 60–75 g/日
  • 水分:30–40 mL/kg → 1500–2000 mL/日(体液制限時は主治医指示に従う)

食事だけで不足する場合は、1 本あたり 200–400 kcal・たんぱく質 10–20 g 程度の ONS を用い、不足分を数値で埋める運用にします。「褥瘡 栄養補助食品 亜鉛」「褥瘡 栄養補助食品 メイバランス」など、製品ごとの栄養成分を比較しながら選択してください。

フォローアップの指標

  • 摂取量:目標に対する達成率(%)。
  • 身体指標:体重・周径(浮腫)、入出量。
  • 創治癒:面積の週次変化、深さ、滲出量、感染徴候。
  • スクリーニング再実施:2–4 週ごとに NRS-2002 や MST などを用いて見直し。
  • 褥瘡が発生する要因と危険因子(病態理解の整理)
  • 創傷治癒の過程と必要栄養(炎症期〜成熟期のイメージづくり)
  • 身体計測の重要性(身長・体重・筋肉量・皮下脂肪の評価)
  • 栄養・嚥下ハブ(栄養・嚥下関連記事の索引)

よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップすると閉じます。

Stage 2 の浅い褥瘡でも ONS は必要ですか?

まずは食事で目標量を満たせるかを確認します。低栄養またはそのリスクがあれば ONS 併用を検討します。飲める/続けられる製品選択と、1–2 週での再評価が重要です。

腎機能が悪い患者のたんぱく質目標は?

糸球体濾過量や電解質、浮腫の状況で個別化します。高窒素負荷が不利な状況では上限を抑え、創治癒・全身状態・腎臓内科の方針のバランスで決めます。

アルブミンが低いので、まずアルブミンを上げれば治りますか?

アルブミンは炎症・水分の影響を強く受け、治癒促進の直接目標ではありません。摂取量・体重・創所見など実態に即した指標で運用してください。

おわりに:創傷治癒と栄養を「セット」で見る

褥瘡の創傷治癒は、ポジショニングや除圧、ドレッシング選択などの局所ケアだけでは完結しません。エネルギー・たんぱく質・ビタミン・亜鉛などの栄養管理を並走させることで、ようやく治癒プロセスが前に進みます。栄養補助食品やメイバランス、ゼリータイプの ONS も、「どのくらい足りないのか」を見える化したうえで使うと、治療戦略の一部として機能します。

理学療法士・作業療法士としては、座位・立位の耐久性や ADL の変化、体重推移や浮腫など、リハビリで見えている情報を栄養チームと共有することが強みになります。創傷治癒と栄養、リハビリテーションが同じ方向を向くことで、患者さんと家族にとっても「回復の筋道」が見えやすくなります。面談準備や職場環境の見直しをしたい方は、マイナビコメディカルの面談準備チェック&職場評価シートもあわせて活用してみてください。

最終更新:2025-12-11

参考文献(外部は新規タブで開きます)

  1. European Pressure Ulcer Advisory Panel (EPUAP), National Pressure Injury Advisory Panel (NPIAP), Pan Pacific Pressure Injury Alliance (PPPIA). Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. 2019. Guideline overviewOnline guideline
  2. Cereda E, Klersy C, et al. A Nutritional Formula Enriched With Arginine, Zinc, and Antioxidants for the Healing of Pressure Ulcers: A Randomized Trial. Ann Intern Med. 2015;162(3):167–174. PubMedDOI:10.7326/M14-0696
  3. van Anholt RD, et al. Specific nutritional support accelerates pressure ulcer healing and reduces wound care intensity in non-malnourished patients. Clin Nutr. 2010;29(4):469–474. PubMed
  4. Volkert D, et al. ESPEN practical guideline: Clinical nutrition and hydration in geriatrics. 2022. PubMedPDF
  5. Keller U. Nutritional Laboratory Markers in Malnutrition. Ann Nutr Metab. 2019;74(4):313–322. PMC
  6. Langer G, et al. Nutritional interventions for preventing and treating pressure ulcers. Cochrane Database Syst Rev. 2024;(2):CD003216. PMC

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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