低栄養の原因を3区分で整理|見分け方・初期対応・記録シート

栄養・嚥下
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低栄養の原因は3区分で整理し、初期対応につなげます

成人の低栄養は、原因を飢餓関連低栄養、慢性疾患関連低栄養、急性疾患・外傷関連低栄養の3区分で整理すると、初期対応の優先順位を共有しやすくなります。悪液質は独立した3区分目ではなく、主に炎症を伴う慢性疾患関連低栄養の中で検討する病態です。

この記事では、低栄養が疑われる患者について、3質問による仮分類、GLIMとの違い、初期対応、PTが追う観察項目、再評価の記録までを実務順に整理します。正式な診断名を短時間で決めるのではなく、不足情報と次の行動をそろえるために活用してください。

先に成因別分類の全体像を確認する

低栄養の成因別分類と6特性を見る

結論:成人低栄養の成因は標準的な3区分で仮置きします

成因別分類では、炎症の有無・強さと疾患背景をもとに、飢餓関連、慢性疾患関連、急性疾患・外傷関連の3区分で整理します。分類は低栄養の確定診断そのものではなく、病態を共有し、追加評価と初期対応を決めるための枠組みです。

複数の原因が併存する場合は、無理に1つへ決め切りません。「現時点で最も影響が大きい成因」と、その判断根拠、不足している情報を記録し、病状や摂取状況が変化した時点で見直します。

低栄養の原因を飢餓関連低栄養、慢性疾患関連低栄養、急性疾患・外傷関連低栄養の3区分で整理した図版
成人低栄養の成因別3区分と、悪液質の位置づけ

最短の見分け方:3質問で成因を仮置きする

最初に確認するのは、摂取不足だけではありません。炎症が乏しい長期の摂取不足なのか、慢性疾患に伴う持続的な炎症なのか、急性疾患・外傷に伴う強い炎症なのかを分けます。

成人低栄養の成因を仮置きする3質問
質問 疑う区分 初動で確認すること
炎症が乏しく、長期の摂取不足が中心か 飢餓関連低栄養 摂取不足の期間と理由、体重減少、再栄養症候群のリスクを確認する
慢性疾患と持続する軽度〜中等度の炎症があるか 慢性疾患関連低栄養 疾患の活動性、摂取量、筋量・機能、増悪イベントを確認する
感染、大手術、外傷などに伴う急性で強い炎症があるか 急性疾患・外傷関連低栄養 全身状態と安全性を優先し、栄養・活動・リハ負荷を多職種で調整する

摂取不足はすべての区分で起こり得ます。「摂取量が少ないから飢餓関連」と即断せず、疾患負荷と炎症の経過を合わせて判断します。

早見表:3区分の手がかりと初期対応

分類後は、区分名を記録するだけで終わらせず、判断根拠と最初に確認する項目をセットで残します。栄養処方や疾患治療は、医師・管理栄養士などと共有して個別に決定します。

成人低栄養の成因別3区分と初期対応
区分 主な手がかり 判断の要点 初期対応 再評価の軸
飢餓関連低栄養 長期の摂取不足、食料・環境要因、摂食障害など 炎症が乏しく、摂取不足が病態の中心か 食べられない理由を分解し、摂取状況と再栄養症候群のリスクを共有する 摂取量、体重推移、電解質、症状、機能
慢性疾患関連低栄養 がん、COPD、心不全、CKDなどの慢性疾患と持続する炎症 疾患の活動性や増悪と体重・筋量・機能低下が連動しているか 疾患管理、栄養支援、安全範囲の運動・活動を同じ計画で検討する 疾患イベント、摂取量、体重・筋量、機能、症状
急性疾患・外傷関連低栄養 重症感染、大手術、外傷、熱傷、急性増悪など 急性で強い炎症と異化亢進が病態の中心か 全身状態と安全性を優先し、病期に合わせて栄養と活動負荷を更新する 全身状態、炎症経過、摂取・投与量、活動耐容能、機能低下の速度

悪液質は慢性疾患関連低栄養と重なる病態です。慢性疾患を背景に筋量・体重・機能が進行性に低下し、通常の栄養支援だけでは改善しにくい場合は、悪液質の可能性を含めて主治医・管理栄養士などと評価します。

GLIMとの違い:3区分は病態整理、GLIMは低栄養診断です

成因別3区分とGLIMは、同じ分類ではありません。成因別3区分は炎症の程度と疾患背景から病態を整理する枠組みです。一方、GLIMはスクリーニング後に表現型基準と病因基準を確認し、低栄養を診断する枠組みです。

GLIMの病因基準は、食事摂取量減少または消化吸収能低下と、疾患負荷または炎症の2項目です。詳しい診断手順と重症度判定は、GLIM基準の使い方で確認してください。

成因別分類からGLIM診断へ進む流れ
ステップ 行うこと 注意点 記録の型
1 検証済みの方法で栄養リスクをスクリーニングする スクリーニング陽性を低栄養の確定診断にしない 使用したツール、点数、判定日
2 表現型基準を確認する 体重減少、低BMI、筋量減少を評価する 測定値、測定方法、浮腫、測定条件
3 病因基準を確認する 摂取・吸収と、疾患負荷・炎症を分けて記録する 摂取期間、疾患名、発症・増悪時期、補助所見
4 低栄養の診断、重症度判定、介入計画へ進む 重症度は表現型基準で判定する 該当基準、重症度、介入、再評価日

PTがそろえる観察軸:摂取・体重・機能を同じ条件で追う

PTは低栄養の確定診断を単独で完結させるのではなく、摂取状況、体重推移、身体機能の変化を同じ条件で追い、多職種へ共有します。特に機能低下は、体重だけでは見えにくい変化を補うモニタリング指標になります。

ただし、歩行や立ち上がりなどの機能評価は、GLIMの「筋量減少」をそのまま置き換える項目ではありません。GLIM診断では筋量評価を別に確認し、機能は介入効果や活動耐容能を追う指標として位置づけます。

低栄養の原因評価でPTが共有する観察項目
項目 確認する内容 確認時期 記録の要点
摂取 摂取率、食形態、介助量、補助食品、摂取低下の理由 病状と施設運用に応じて日次〜週次 理由、実施した対策、反応をセットで残す
体重推移 同じ条件での体重変化、浮腫、輸液や水分出納の影響 病状に応じて設定 単発値ではなく、測定条件をそろえた推移で見る
機能 歩行、立ち上がり、握力、ADL、活動耐容能など 介入前後、病状変化時、定期再評価時 同じ指標と条件で比較し、症状や負荷量も併記する

低栄養の原因判定記録シート(A4 PDF)

原因の仮置き、摂取・体重・機能、再評価メモを1枚で整理すると、カンファレンス前の情報共有に活用できます。

現行PDFは2026年3月版で、「飢餓/侵襲・炎症/悪液質」の3つの観察欄を使用しています。これはAND/ASPENの正式な成因別3区分やGLIM診断を置き換えるものではありません。「悪液質」の欄は、慢性疾患関連低栄養の中で悪液質が疑われる患者を拾う補助メモとして使用してください。

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ケースで確認:区分が変わると最初に確認する項目も変わります

同じ体重減少や筋力低下でも、炎症の経過と疾患背景によって優先する評価が異なります。区分名だけで介入を決めず、不足している情報と安全上の確認事項を明確にします。

成人低栄養の成因別ケースと初動
区分 想定される状況 初動の焦点 再評価
飢餓関連低栄養 炎症所見が乏しく、食事環境や摂食上の問題による長期の摂取不足がある 摂取不足の期間と理由、体重減少、再栄養症候群リスクを確認する 摂取変更後の反応と体重・症状・機能を確認する
慢性疾患関連低栄養 COPD、心不全、CKD、がんなどを背景に、緩徐な体重・筋量・機能低下がある 疾患活動性、増悪歴、摂取量、筋量・機能を同じ経過表で共有する 増悪、治療変更、摂取変化などのイベント時にも見直す
急性疾患・外傷関連低栄養 感染、大手術、外傷、急性増悪に伴って全身状態と活動量が急速に変化する 安全性と病期を優先し、栄養・離床・運動負荷を多職種で更新する 急性期は日々の病状変化に合わせて評価間隔を調整する

現場の詰まりどころ:分類名より判断根拠を残します

成因別分類では、名称を当てることよりも、なぜその区分を疑ったのか、どの情報が不足しているのか、次に何を確認するのかを共有することが重要です。

よくある失敗

低栄養の原因評価で起こりやすい失敗と対策
よくある失敗 問題点 対策 記録ポイント
悪液質を正式な3区分の1つとして並べる 慢性疾患関連低栄養との関係が分かりにくくなる まず標準3区分で整理し、慢性疾患関連の中で悪液質を検討する 疾患、炎症経過、体重・筋量・機能低下を残す
体重だけで判断する 浮腫、輸液、水分出納によって解釈が変わる 摂取、体重条件、筋量、機能、症状を合わせて確認する 測定条件と浮腫の有無を併記する
AlbやCRPだけで区分を決める 単独の検査値では摂取状況や病態全体を表せない 疾患背景、発症・増悪時期、摂取、身体所見を統合する 検査値は補助所見として記録する
再評価を一律に週次で固定する 急性期の変化を見逃したり、安定期に過剰評価となったりする 急性期、安定期、治療・摂取変更時で評価間隔を変える 再評価日と、前倒しする条件を決める

迷ったときの立て直し手順

分類が止まった場合は、検査項目を増やす前に、疾患背景、炎症、摂取状況の順で情報を整理し直します。

低栄養の原因評価を立て直す3ステップ
順番 行うこと 記録に残す内容
1 疾患背景、炎症の経過、摂取不足の期間から成因を仮置きする 疑う区分、根拠、不足情報
2 GLIMの表現型基準と病因基準を別に確認する 該当項目、測定方法、判断根拠
3 初期対応と再評価条件を多職種で決める 担当、実施内容、再評価日、前倒し条件

よくある質問

各項目名をタップすると回答が開きます。

Q1. 3区分のどれか1つに決める必要がありますか?

A. いいえ。摂取不足と炎症が併存する患者は多いため、現時点で影響が大きい区分を仮置きし、併存する要因と不足情報を併記します。病状や摂取状況が変化したら分類を見直します。

Q2. 悪液質は3区分のどこに入りますか?

A. 悪液質は、主に炎症を伴う慢性疾患関連低栄養と重なる病態です。慢性疾患を背景とした進行性の筋量・体重・機能低下があり、通常の栄養支援だけで改善しにくい場合は、疾患別の基準を含めて多職種で評価します。

Q3. 成因別3区分とGLIMの病因基準は同じですか?

A. 同じではありません。成因別3区分は炎症の有無・強さと疾患背景から病態を整理する枠組みです。GLIMの病因基準は、食事摂取量減少または消化吸収能低下と、疾患負荷または炎症の2項目です。

Q4. AlbやCRPだけで原因を判断できますか?

A. 単独では判断できません。Albは炎症や体液状態の影響を受け、CRPも疾患背景や経過と合わせた解釈が必要です。摂取、体重・筋量、疾患イベント、身体所見、機能を統合します。

Q5. PTは何を記録すると多職種共有に役立ちますか?

A. 摂取状況、同じ条件で測定した体重推移、歩行・立ち上がり・握力・ADLなどの機能変化、症状、実施負荷を共有します。GLIMを使用する場合は、筋量の測定方法と結果も別に確認します。

次の一手

低栄養の原因を仮置きした後は、リハ栄養全体のケアプロセスへ戻るか、悪液質・サルコペニア・飢餓の違いを詳しく確認します。


参考文献

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著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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