- 褥瘡予防の基本フロー|評価 → 除圧 → 再評価で迷わない
- 迷ったらここ|所見から「次に直す1手」を決める
- ① 皮膚・軟部組織評価|発赤だけでなく色・温度・硬さ・痛みを見る
- ② リスク評価|スコアではなく「何を変えるか」まで決める
- ③ 除圧・体位変換|「頻度」と「除圧できているか」をセットで見る
- ④ ポジショニング|30°を目安に「骨突出へ当てない」
- ⑤ 条件調整|踵・支持面・湿潤・栄養も同時に確認する
- ⑥ 記録と共有|「体位名」だけで終わらせない
- 現場の詰まりどころ|「回数だけ」「角度だけ」で判断しない
- 症例で確認|背上げ後に仙骨部の発赤が出た場合
- Excel・PDF記録シート|5分フローをそのまま残す
- よくある質問(FAQ)
- 次の一手|ポジショニングと記録へ進む
- 参考文献
- 著者情報
褥瘡予防の基本フロー|評価 → 除圧 → 再評価で迷わない
褥瘡予防では、「何時間おきに体位変換するか」だけを先に決めるのではなく、皮膚・軟部組織にどのような変化があり、どこへ圧やずれ(剪断)が集中しているかを確認することが出発点です。そのうえで体位、支持面、踵免荷などを調整し、次の観察で反応を確かめます。
本記事では、PT・OT・看護師などが病棟や在宅で共有しやすいよう、皮膚・軟部組織評価 → 原因の切り分け → 1手修正 → 再評価 → 記録・共有の順に整理します。30°側臥位の具体的な作り方やBradenスコアの詳細ではなく、「いま何を直し、次に何を見るか」を決める全体フローに集中します。
臨床手技・プロトコル全体から確認したい方へ
迷ったらここ|所見から「次に直す1手」を決める
褥瘡予防で迷ったときは、全部を一度に変えるのではなく、皮膚・軟部組織の変化と負荷の原因を確認し、優先度の高い1手から修正します。体位変換の回数を増やす前に、「どこへ圧が集中しているか」「前滑りや擦れがないか」「踵が支持面へ接触していないか」を確認すると、次の行動を決めやすくなります。
※スマートフォンでは表を横スクロールできます。
| 所見・状況 | まず考えること | 次の1手 |
|---|---|---|
| 持続する発赤・色調変化 | 圧による早期の皮膚・組織変化 | その部位への圧を外し、皮膚・軟部組織を再評価する |
| 背上げ後の前滑り・擦れ | ずれ(剪断) | 姿勢と支持を調整し、ずれを減らす |
| 踵が支持面へ接触している | 踵への持続的な荷重 | 下腿を支持し、踵を支持面から浮かせる |
| 自力で体位を変えられない | 同じ部位への荷重が長時間続く可能性 | 支持面と全身状態を含めて体位変換計画を個別化する |
| 湿潤・摂取低下・全身状態悪化 | 組織耐容性の低下 | 除圧だけでなく湿潤・栄養・全身管理も共有する |

① 皮膚・軟部組織評価|発赤だけでなく色・温度・硬さ・痛みを見る
褥瘡予防の起点は、皮膚と軟部組織の評価です。単に「赤いか」「何分で消えたか」だけで判断せず、色調変化、圧迫したときの退色、温度、硬さ・軟らかさ、浮腫、局所痛などを組み合わせて確認します。
色調変化がある場合は、皮膚を軽く圧迫した際に色が一時的に薄くなるかも確認します。圧迫しても色調変化が残る場合や、周囲と比べて熱感・冷感、硬さ、痛みなどを認める場合は、その部位への圧を外し、より詳しい評価や多職種共有につなげます。
皮膚色によっては発赤や退色の変化が分かりにくいため、見た目だけに頼らず、周囲との色の違い+触診+疼痛で評価することが重要です。
| 確認すること | 考え方 | 次の行動 |
|---|---|---|
| 持続する色調変化 | 早期の圧損傷を疑う所見 | 可能な限りその部位への荷重を避け、再評価・共有する |
| 局所の熱感・冷感 | 皮膚・組織の変化を示す可能性 | 周囲組織と比較し、他の所見と合わせて判断する |
| 硬さ・軟らかさ・浮腫 | 皮下組織の変化を疑う | 圧を外し、詳細評価につなげる |
| 骨突出部の局所痛 | 早期変化の可能性 | 圧のかかり方を確認し、除圧する |
| 擦れ・前滑り | ずれ(剪断)が加わっている | 移動方法、背上げ、支持方法を見直す |
② リスク評価|スコアではなく「何を変えるか」まで決める
褥瘡リスク評価は、点数を記録して終わりではありません。なぜ圧損傷が起こりやすいのかを分解し、予防策へつなげることが目的です。
最低限、①自力で動けるか、②皮膚・軟部組織に変化がないか、③圧やずれが集中する姿勢になっていないか、④適切な支持面を使用しているか、⑤湿潤、栄養・水分、全身状態に問題がないかを確認します。
Bradenスコアを使用している施設では、合計点だけでなく、どの領域が低下しているかを介入へ変換します。スコア別の考え方はBradenスコア別の褥瘡予防バンドルで詳しく整理しています。
③ 除圧・体位変換|「頻度」と「除圧できているか」をセットで見る
体位変換は褥瘡予防の重要な介入ですが、全員へ同じ間隔を機械的に当てはめるのではなく、可動性、皮膚・組織の耐容性、全身状態、安楽性、睡眠、使用している支持面などを含めて個別化します。
International Guideline第4版では、適切な体圧分散支持面を使用している褥瘡リスクのある多くの人について、2時間または3時間間隔の体位変換が選択肢として提案されています。ただし、これは条件付き推奨でエビデンスの確実性は非常に低く、個別評価による調整が前提です。
したがって実務では、「2時間か3時間か」だけでなく、その体位で骨突出部を除圧できているか、ずれが生じていないか、皮膚・組織に新しい変化がないかを再評価します。体圧分散マットレスを使用していても、体位変換や自発的な体動の評価が不要になるわけではありません。
| 確認項目 | 見直す場面 | 対応 |
|---|---|---|
| 皮膚・組織 | 持続する色調変化、熱感、硬さ、痛みなどが出た | 損傷が疑われる部位を除圧し、頻度・方法を再評価する |
| 可動性 | 自力体動が減った | 介助による体位変換や小さな体位調整の必要性を再検討する |
| 支持面 | 骨突出部への当たりが残る | 支持面とポジショニングを再検討する |
| 全身状態・安楽性 | 循環不安定、疼痛、終末期など | 安全性・治療目標・本人の希望を含めて個別化する |
④ ポジショニング|30°を目安に「骨突出へ当てない」
側臥位では、30°前後を起点として仙骨・尾骨部と大転子への局所圧を避け、安定した姿勢を作ります。重要なのは30°ぴったりに合わせることではなく、実際に仙骨や大転子を除圧できているかを確認することです。
International Guideline第4版では、褥瘡リスクがある人に30°側臥位を使用することが提案されています。一方、90°側臥位は局所圧を高めやすいため、褥瘡予防を目的とした通常の姿勢としては避けることが推奨されています。
ただし、体格や拘縮、疼痛によって30°では十分な除圧ができない場合があります。角度を守ること自体を目的にせず、仙骨・大転子への当たり、姿勢保持、ずれの有無を確認しながら個別に調整します。具体的なクッション配置や踵免荷は、記事末のポジショニング記事で詳しく確認できます。
| 確認 | 目的 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 骨突出部 | 局所圧を避ける | 仙骨・大転子などへ直接荷重が集中していない |
| ずれ(剪断) | 組織への負担を減らす | 前滑りや引きずりが少ない |
| 姿勢保持 | 除圧状態を維持する | 時間経過で支持がつぶれたり身体が元の位置へ戻ったりしない |
⑤ 条件調整|踵・支持面・湿潤・栄養も同時に確認する
体位を変えるだけでは褥瘡リスクを十分に下げられないことがあります。特に踵、支持面、湿潤、栄養・水分、全身状態は、体位変換と並行して確認します。
踵は褥瘡の好発部位です。リスクがある場合は、下腿全体で荷重を受けるように支持し、踵を支持面から浮かせます。枕やクッション、踵除圧用具を使用したあとは、踵の下へ手を入れるなどして支持面へ接触していないことを確認し、時間経過による位置ずれも再評価します。
| 条件 | 確認すること | 次の対応 |
|---|---|---|
| 踵 | 支持面へ接触していないか、除圧が崩れていないか | 下腿支持や踵除圧用具を再調整する |
| 支持面 | 沈み込み、包み込み、骨突出部への当たり | 身体状況に合う支持面か再評価する |
| 湿潤 | 失禁、汗、浸軟 | スキンケアと失禁・湿潤管理を見直す |
| 栄養・水分 | 摂取低下、体重変化など | 必要に応じて栄養評価・多職種共有へつなげる |
⑥ 記録と共有|「体位名」だけで終わらせない
褥瘡予防は、多職種で同じ条件を再現できて初めて継続しやすくなります。記録は「30°側臥位」などの体位名だけではなく、皮膚・軟部組織の所見、どこを除圧したか、何を修正したか、次に何を確認するかまで残します。
最小セットは、所見 → 原因 → 修正 → 除圧状態 → 次回確認です。詳細な文章を書くより、次の担当者が同じ観点で再評価できる形にそろえることを優先します。
| 項目 | 記録例 |
|---|---|
| 皮膚・組織所見 | 仙骨部に持続する発赤あり、熱感なし |
| 原因 | 背上げ後の前滑りによるずれを疑う |
| 修正 | 骨盤・体幹支持を再調整 |
| 除圧状態 | 右30°側臥位、仙骨・大転子への直接荷重なし |
| 次回確認 | 次回体位変換時に皮膚所見と前滑りを再確認 |
現場の詰まりどころ|「回数だけ」「角度だけ」で判断しない
褥瘡予防で起こりやすい失敗は、体位変換の回数やポジショニングの角度を守ること自体が目的になり、実際に圧・ずれが減ったかを確認しないことです。決めた体位や頻度が正しいかではなく、介入後の皮膚・組織と除圧状態を再評価して判断します。
よくある失敗|NGからOKへ変える
| 場面 | NG | OK |
|---|---|---|
| 体位変換 | 時間だけ守る | 頻度と皮膚・組織反応、支持面をセットで再評価する |
| 30°側臥位 | 角度だけ合わせる | 仙骨・大転子への直接荷重がないか確認する |
| 背上げ | 前滑りを放置する | 姿勢・支持・移動方法を調整してずれを減らす |
| 踵 | 見た目だけで浮いていると判断する | 踵の下へ手を入れ、支持面へ接触していないか確認する |
| 記録 | 「30°側臥位」のみ | 皮膚所見・原因・修正・除圧状態・次回確認を残す |
5分で回す最短ループ|観察 → 1手修正 → 再評価
迷ったときは、次の5ステップで整理します。複数の条件を一度に変えるより、優先する原因を絞り、介入後の反応を確認する方が次の判断につながります。
- 皮膚・軟部組織を見る:色調、退色、温度、硬さ、痛み、ずれを確認する
- 原因を1つ決める:圧、ずれ、踵接触、可動性低下、支持面などから優先因子を決める
- 1手修正する:体位、支持、踵免荷、移動方法などを変更する
- 最小記録を残す:所見、原因、修正、次回確認を書く
- 再評価する:次の観察で皮膚・組織所見と除圧状態を確認する
症例で確認|背上げ後に仙骨部の発赤が出た場合
例:頭側挙上後に仙骨部の発赤と前滑りを認めた場合
- 観察:色調、圧迫による退色、熱感、硬さ、痛み、前滑りを確認する
- 原因:背上げに伴う仙骨部への圧とずれを疑う
- 修正:必要な頭側挙上角度を保ちながら、骨盤・体幹の支持と姿勢を再調整する
- 除圧:仙骨部へ直接荷重しない体位へ変更する
- 記録:皮膚所見、前滑り、実施した修正、次回の確認点を残す
- 再評価:次回観察で皮膚・軟部組織の変化とずれの再発を確認する
呼吸や嚥下などの理由で頭側挙上が必要な場合は、褥瘡予防だけを理由に必要な角度を下げるのではなく、医学的必要性を優先したうえで、その条件下でずれと局所圧をできるだけ減らします。
Excel・PDF記録シート|5分フローをそのまま残す
この記事の「皮膚・軟部組織評価 → 原因を1つ決める → 1手修正 → 最小記録 → 再評価」を、そのまま記録できるA4シートを用意しています。
Excel版は施設内で必要に応じて編集しやすい原本として、PDF版はそのまま閲覧・印刷したい場合に使えます。記事本文と同じ順番で確認できるため、申し送りや再評価の観点をそろえたいときにも活用できます。
褥瘡予防 5分フロー記録シート v2
PDFプレビューを見る
よくある質問(FAQ)
褥瘡予防で特に迷いやすい、体位変換頻度、30°側臥位、90°側臥位、頭側挙上について整理します。
Q1.体位変換は2時間おきにすればよいですか?
A.2時間が唯一の正解ではありません。International Guideline第4版では、適切な体圧分散支持面を使用している褥瘡リスクのある多くの人について、2時間または3時間間隔が選択肢として提案されています。ただし個別化が前提です。可動性、皮膚・組織の状態、全身状態、安楽性、支持面などを合わせて計画し、施設の手順にも従ってください。
Q2.30°側臥位にすれば褥瘡を予防できますか?
A.30°側臥位は有用な選択肢ですが、角度だけで褥瘡を予防できるわけではありません。仙骨・大転子へ直接荷重していないか、身体が崩れていないか、ずれが生じていないかを確認し、体格や拘縮などに合わせて調整します。
Q3.90°側臥位でもよいですか?
A.褥瘡予防を目的とする場合、90°側臥位は大転子部などへの局所圧が高くなりやすいため、通常は避けます。医学的・機能的な理由で必要な場合は、荷重部位と皮膚・組織を確認しながら個別に対応します。
Q4.頭側挙上が必要な患者ではどうしますか?
A.褥瘡予防だけを優先して、呼吸や嚥下などに必要な頭側挙上を中止するわけではありません。医学的必要性を踏まえて角度を決め、その条件下で前滑り、ずれ、仙骨部への局所圧を減らすポジショニングを行います。
次の一手|ポジショニングと記録へ進む
このページで全体フローを確認したら、次は「具体的にどう除圧するか」または「多職種でどう記録をそろえるか」へ進みます。
- 具体的な除圧方法を確認する:褥瘡予防のポジショニング|30°側臥位・ずれ・踵免荷
- 多職種で記録をそろえる:褥瘡の診療計画書の書き方
参考文献
- 日本褥瘡学会. 褥瘡予防・管理ガイドライン. 第5版. 東京: 照林社; 2022. 2023年補訂. 日本褥瘡学会
- National Pressure Injury Advisory Panel, European Pressure Ulcer Advisory Panel, Pan Pacific Pressure Injury Alliance. Repositioning for Pressure Injury Prevention. In: Haesler E, ed. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. 4th ed. 2025. International Guideline
- National Pressure Injury Advisory Panel, European Pressure Ulcer Advisory Panel, Pan Pacific Pressure Injury Alliance. Skin and Tissue Assessment. In: Haesler E, ed. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. 4th ed. 2026. International Guideline
- National Pressure Injury Advisory Panel, European Pressure Ulcer Advisory Panel, Pan Pacific Pressure Injury Alliance. Preventing Heel Pressure Injuries. In: Haesler E, ed. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. 4th ed. 2025. International Guideline
- Moore ZEH, Patton D. Risk assessment tools for the prevention of pressure ulcers. Cochrane Database Syst Rev. 2019;1(1):CD006471. doi:10.1002/14651858.CD006471.pub4 / PubMed:30702158
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

