褥瘡予防の基本|評価→除圧→再評価と記録シート

臨床手技・プロトコル
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褥瘡予防の基本フロー|評価 → 除圧 → 再評価で迷わない

褥瘡予防で止まりやすいのは、「何時間おきに変えるか」から考えてしまうことです。先に決めるべきは、どこに当たりが残り、どこでずれ(剪断)が増え、何を 1 つ直すかです。本記事は、 PT が病棟・在宅で共通して回しやすいように、評価 → 除圧 → 再評価の順番を 1 本に固定します。

読むと決まるのは、①発赤・前滑り・踵の所見から最初の 1 手を選ぶこと、②体位変換を固定ルールではなく個別化で回すこと、③申し送りに残す最小セットです。配置の細部、 Braden 運用、書類の埋め方は子記事へ分け、このページでは「全体フローのハンドル」を握ることに集中します。

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迷ったらここ|所見から「次に直す 1 手」を決める

全部を一度に完璧にしようとすると止まりやすいです。まずはいま見えている所見から 1 つだけ修正すると、改善が速くなります。親記事の役割は、ここで「入り口」を間違えないことです。

※スマホでは表を横スクロールできます。

所見別の入口:次に直す 1 手(褥瘡予防の実務)
いま困っている所見 まず疑う軸 次に読む(深掘り) 読むと決まること
仙骨部が赤い/背上げで悪化 ずれ(剪断)+前滑り ポジショニング(圧・ずれ・踵骨) ずれを減らす観察ポイントと、体位の狙い
何時間おき?が決められない 固定間隔より皮膚反応で個別化 Braden スコア別バンドル 評価後に「最優先 1 手」を決める型
踵がやられそう/接地が外れない 踵骨免荷(下腿支持)が不十分 ポジショニング(踵骨の外し方) 踵を「確実に浮かせる」チェック方法
低栄養が疑わしい/治りが悪い 回復力(栄養・水分)不足 褥瘡の栄養と除圧(実務) 低栄養が絡む時の失敗パターンと立て直し
褥瘡予防の 5 分フローをまとめた図版
褥瘡予防は「皮膚観察 → 原因の切り分け → 1 手修正 → 記録 → 再評価」の順でそろえると、現場で回しやすくなります。

① 皮膚観察|発赤の「消退」と「ずれ(剪断)」を見る

褥瘡予防の起点は皮膚観察です。ポイントは「赤いかどうか」ではなく、どの条件で赤くなり、どのくらいで消えるかです。消退が遅いほど、圧の集中やずれ(剪断)が残っている可能性が高くなります。

観察の質が上がると、体位変換の頻度や支持面の見直しが根拠つきで決まり、申し送りも揃いやすくなります。特に仙骨・尾骨・踵では、見た目だけでなく熱感、硬さ、擦れ、前滑りを合わせて確認します。

皮膚観察で押さえるポイント(予防の判断材料)
見ること 示唆 次の一手 記録の一言例
発赤の消退が遅い 圧集中/ずれが残存 当たりを外す体位へ変更し、次回も消退時間を確認 仙骨部発赤、消退遅延。体位・支持を再調整
尾骨付近が擦れる 前滑り=剪断リスク 背抜き/摩擦低減/支持の再配置 背上げで前滑りあり。背抜き実施
踵の熱感・違和感 踵骨リスク上昇 下腿支持で踵免荷し、手で浮遊を確認 踵骨免荷を実施、手で浮遊を確認
局所の硬さ・痛み 一点集中 接触面積を増やして分散 骨突出の圧痛あり。支持面を分散へ変更

② リスク評価|スコアを「打ち手」に変える

同じ体位でも、リスクの中身が違えば打ち手は変わります。リスク評価は点数化で終わらせず、何が足りないかを特定して介入に翻訳するのがコツです。

理学療法の視点では、動けない理由(筋力・疼痛・不穏・呼吸循環)と、ずれを作りやすい条件(前滑り・拘縮・姿勢崩れ)をセットで見ると、予防策が安定します。

aSSKINg(SSKIN+2)で回す:褥瘡予防チェック 7 点(病棟版)
チェック項目(7 点) ここで見る/決めること(最小セット) 頻度の目安 記録の一言例(短く)
① Assess risk(リスク評価) 主因が「動けない」「ずれ(剪断)」「栄養」「湿潤」のどれかを特定し、優先順位を決める 入院時+状態変化時+定期 主因:前滑り+自動体動なし。ずれ対策を優先
② Skin(皮膚・軟部組織) 発赤の消退、熱感、硬さ、痛み、骨突出部の当たり/ずれ所見を確認 毎シフト(最低でも毎日) 仙骨発赤、消退遅延。前滑り所見あり
③ Surface(支持面) 分散できているか、ずれが増えていないか、保持できるかを確認 毎日+介入後 支持面調整で当たり軽減。保持は可
④ Keep moving(体位変換・動く) 頻度より先に「当たりを外す」「ずれを減らす」。観察 → 1 修正 → 再評価で回す 計画に沿って反復 背抜き+支持再配置。次回変換で再確認
⑤ Incontinence / Moisture(湿潤) 失禁・汗・浸軟の有無、皮膚保護、交換・スキンケアの抜けを確認 毎シフト 陰部湿潤あり。保護材+交換頻度を調整
⑥ Nutrition / Hydration(栄養・水分) 摂取不良/体重減少の兆候を拾い、早期に共有して並走する 週単位+変化時 摂取低下あり。栄養面の確認を依頼
⑦ Give information(説明・共有) 患者・家族・スタッフ間で「優先事項/やらないこと/次に見ること」を同じ言葉で揃える 開始時+更新時 目標:仙骨のずれ対策。背上げ時は背抜きを統一

③ 除圧・体位変換|頻度を決める前に「当たり」と「ずれ」を直す

体位変換は回数が目的ではなく、皮膚負担を下げる条件を作るのが目的です。頻度を増やしても、当たり(圧集中)やずれ(剪断)が残っていれば発赤は繰り返します。

実務では、発赤の消退、前滑り、疼痛、保持のしやすさを見て、体位設計と頻度をセットで更新すると安定します。

体位変換を個別化する判断基準(頻度の前に見ること)
状況 示唆 優先する調整 観察ポイント
発赤がすぐ消える 負担が管理できている 現状維持+再現性の共有 消退時間、ずれ所見の有無
発赤が残りやすい 当たり or ずれが残る 当たりを外す/ずれ対策を強化 仙骨・尾骨、前滑り、摩擦
疼痛で保持できない 安楽性が不足 段階調整(安楽性優先) NRS、耐えられる肢位
介助者でやり方がぶれる 共有不足 やることを 1 行で統一し、写真や記録で再現性を上げる 体位名だけでなく免荷・ずれ所見まで揃っているか

④ ポジショニング|圧・ずれ(剪断)・踵骨を外す

ポジショニングで外せないのは、①圧を分散する、②ずれ(剪断)を減らす、③踵骨などの高リスク部位を確実に浮かせる、の 3 点です。角度や型を追いすぎるより、当たりが消えたかで判断する方が再現性は上がります。

この親記事では狙いだけを整理します。クッション配置、崩れ修正、踵の作り方は、記事末の「次の一手」から各論へ進めば十分です。

体位の狙い(褥瘡予防):仰臥位・ 30° 側臥位・ 90° 側臥位
体位 狙い 守る骨突出(例) 注意点
仰臥位 全身の圧を分散 仙骨、踵骨、後頭部 頭側挙上でずれが増えやすい
30° 側臥位 大転子の圧集中を回避しやすい 大転子、腓骨頭、外果 当たりが残る場合は個別化が必要
90° 側臥位 目的がある時に選択 大転子 大転子の圧集中に注意

⑤ 条件調整|支持面・離床・栄養をまとめて見直す

褥瘡予防は体位だけで決まりません。当たりを外しても発赤が残る、座位で崩れる、摂取が落ちている、湿潤が続くといった条件があれば、そこを同時に直さないと再発しやすくなります。

親記事では、どの条件を追加で見直すかを決めるところまで押さえます。深掘りの実務は子記事へ分ける方が、検索意図も整理しやすいです。

支持面・離床・栄養の見直しポイント(褥瘡予防)
場面 何を見るか まず変えること 記録の一言例
支持面 当たりを外しても発赤が残る/痛みで保持できない 分散の再評価、沈み込みとずれの出方を見直す 体位調整も発赤残存。支持面を再検討
離床・座位 坐骨部の当たり、骨盤後傾、崩れるまでの時間 座位時間を刻み、支持を追加して崩れ方を変える 座位 10 分で後傾増強。支持追加で再確認
栄養・水分 摂取低下、体重減少、治りにくさ 早期共有し、栄養面と並走する 摂取不良あり。栄養面の確認を依頼
湿潤 失禁、汗、浸軟、交換の遅れ 保護材、交換頻度、皮膚ケアを先に揃える 陰部湿潤あり。保護材と交換頻度を調整

⑥ 記録と共有|「体位名」だけで終わらせない

褥瘡予防は、多職種で再現できて初めて効果が安定します。記録は「仰臥位/ 30° 側臥位」だけでなく、免荷・ずれ・皮膚反応・次回の調整点まで残すのがコツです。

ここが揃うと、誰が入っても「次に何を確認するか」がズレにくくなります。体位名だけの共有で止めないことが、現場では最も効きます。

再現性が上がる記録テンプレ(最低限)
書く項目 なぜ必要か 例(短く)
体位 共有の土台 30° 側臥位(右)
免荷 踵骨などの確認 踵骨免荷、手で浮遊を確認
ずれ(剪断) 仙骨トラブルの核心 背抜き実施、前滑り軽減
皮膚反応 個別化の根拠 仙骨発赤、消退まで時間を要す
次回の調整点 再評価につながる 支持面を分散、挙上角度を調整

現場の詰まりどころ|よくある失敗と「回避の型」

褥瘡予防が止まる原因は、「知識不足」よりずれ(剪断)と一点集中の見逃しであることが多いです。まず原因の当たりをつけてから直すと、手戻りが減ります。

よくある失敗: OK / NG で潰す(原因 → 対策 → 記録)

同じ「体位名」でも、 OK / NG の差は当たりずれ(剪断)、そして再評価の有無で決まります。

褥瘡予防の失敗を潰す: OK / NG 早見(実務)
場面 NG(止まりやすい) OK(回る) 記録ポイント
体位変換の頻度 回数だけ増やす(当たり・ずれは未修正) 当たりとずれを 1 つだけ修正 → 次回で消退を再確認 消退時間/前滑りの有無/次回の調整点
30° 側臥位 角度だけ守って当たりが残る 「当たりが消えたか」で支持を作り直す 当たり部位/支持の配置/保持の可否
背上げ時 前滑りが出ても放置 背抜き+摩擦低減+支持の再配置でずれを減らす 挙上角度/前滑り/背抜きの実施
踵骨 「たぶん浮いている」で運用 下腿支持で踵免荷し、手で浮遊を確認 踵骨免荷(手で確認)/崩れやすさ
共有 体位名だけ共有する 体位+免荷+ずれ所見+皮膚反応を最小セットで統一する 最小セットが揃っているか

回避の手順チェック| 5 分で回す「最短ループ」

迷ったら、次の順で 1 回だけ回してください。「頻度を増やす」より先に、当たりとずれを消すのが最優先です。

褥瘡予防の 5 分フロー:観察 → 1 修正 → 再評価
手順 ここで見ること やること 残す一言
1. 皮膚観察 発赤の消退時間、前滑り、擦れ、熱感 問題が起きている部位を 1 つに絞る 仙骨発赤、背上げ後に前滑りあり
2. 原因の切り分け 当たり(圧集中)か、ずれ(剪断)か、両方か 原因を 1 行で言語化する 主因は前滑りによるずれ
3. 1 手だけ修正 背抜き、下腿支持、支持の再配置、角度調整 一度に複数変えすぎない 背抜き+骨盤周囲の支持を調整
4. 最小記録 体位、免荷、ずれ所見、皮膚反応 次回も同じ観点で見られる形にする 踵骨免荷、前滑り軽減、消退を再確認
5. 再評価 次の体位変換時に消退が短くなったか 効いた修正を残し、効かなければ別の 1 手へ 前回より消退短縮、継続可

ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、書き方や手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。評価・記録・報告の「型」をまとめて整理したい方は、PT キャリアガイドも参考になります。

評価・記録・報告の型をまとめて整理したい方へ

PT キャリアガイドを見る

症例で確認| 5 分で回す「最短ループ」

例:背上げで仙骨発赤が悪化する

  1. 観察:背上げ後に前滑り、尾骨付近の擦れを確認する
  2. 仮説:ずれ(剪断)が主因で、頻度の問題ではないと考える
  3. 介入:背抜き+摩擦低減+支持の再配置を行う
  4. 記録:背上げ角度、前滑りの有無、発赤の消退、次回の調整点を残す
  5. 再評価:消退時間が短縮すれば、ずれ対策が効いていると判断する

PDF 記録シートを使う| 5 分フローをそのまま残せる

褥瘡予防は、観察 → 1 修正 → 再評価の順番を毎回そろえると回りやすくなります。紙で運用したい場合は、下の PDF 記録シートを使うと、所見・修正内容・再評価ポイントを 1 枚で残しやすくなります。

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プレビューが表示されない場合は、PDF を開く(ダウンロード)をご利用ください。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q 1.体位変換は「 2 時間おき」が基本ですか?

A.ルールを固定するより、皮膚反応(発赤の消退)と、ずれ(剪断)・支持面の条件を見て個別化する方が実務では安定します。発赤が残る場合は、頻度より先に当たりとずれの見直しが優先です。

Q 2.30° 側臥位は必ず行うべきですか?

A.30° 側臥位は大転子の圧集中を避けやすい選択肢ですが、体型や拘縮、疼痛で当たりは変わります。角度の正確さより、骨突出を当てないこと、ずれ(剪断)を作らないこと、踵骨を浮かせることが重要です。

Q 3.頭側挙上が必要な時はどう考えればいいですか?

A.頭側挙上が大きいほど前滑りが増え、仙骨部のずれ(剪断)が起きやすくなります。嚥下・呼吸などで角度が必要な場合は、背抜き、摩擦低減、支持の再配置でずれを最小化しながら運用します。

Q 4.Braden スコアはどう使えば「打ち手」に変わりますか?

A.点数の高低だけで終わらせず、「どの項目が弱いか(動けない/湿潤/栄養など)」を拾って優先順位を決めるのがコツです。スコア帯ごとの最優先 1 手は Braden スコア別バンドル にまとめています。

次の一手(深掘りと横展開)


参考文献

  1. European Pressure Ulcer Advisory Panel, National Pressure Injury Advisory Panel, Pan Pacific Pressure Injury Alliance. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. 2019. Official site
  2. 日本皮膚科学会. 創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン( 2023 )― 2 褥瘡診療ガイドライン(第 3 版). 日皮会誌. 2023;133(12):2735-2797. 公式 PDF
  3. Moore ZEH, Patton D. Risk assessment tools for the prevention of pressure ulcers. Cochrane Database Syst Rev. 2019;1(1):CD006471. DOI:10.1002/14651858.CD006471.pub4PubMed:30702158
  4. Gillespie BM, Walker RM, Latimer SL, Thalib L, Whitty JA, McInnes E, Chaboyer W. Repositioning for pressure injury prevention in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2020;6(6):CD009958. DOI:10.1002/14651858.CD009958.pub3PubMed:32484259
  5. Young T. The 30 degree tilt position vs the 90 degree lateral and supine positions in reducing the incidence of non-blanching erythema in a hospital inpatient population: a randomised controlled trial. J Tissue Viability. 2004;14(3):88-96. DOI:10.1016/S0965-206X(04)43004-6PubMed:15709355
  6. Coleman S, Gorecki C, Nelson EA, Closs SJ, Defloor T, Halfens R, Farrin A, Brown J, Schoonhoven L, Nixon J. Patient risk factors for pressure ulcer development: systematic review. Int J Nurs Stud. 2013;50(7):974-1003. DOI:10.1016/j.ijnurstu.2012.11.019PubMed:23375662

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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