EERとPALは「PALを選び、対応するEERを参照する」
栄養評価の全体像を確認する
食事摂取基準2025のEER(推定エネルギー必要量)を使うときは、年齢・性別・身体活動レベル(PAL)を選び、対応するEERを表から参照します。表のEERにはPALが反映されているため、EERへPALをもう一度掛ける必要はありません。
この記事では、PALの選び方、EER表の読み方、入院患者へ適用するときの注意点、再評価項目を整理します。EER表は参照体位を基にした値であり、個人の栄養処方をそのまま確定するものではありません。病態や体重変化を確認し、初期値として使った後に経過から見直すことが重要です。
最初に確認:EERとPALを二重計算しない
食事摂取基準のEER表を使う場合は、PAL区分を選び、対応するEERを参照します。すでにPALが反映されたEERへ、PALを再度掛けないようにしてください。

EERとPALを決める4ステップ
基本手順は、前提を確認する → PALを選ぶ → 対応するEERを参照する → 経過を確認するです。数値だけでなく、PALの選択根拠と次回の見直し条件まで記録します。
- 前提を確認する:年齢、性別、体格、病期、発熱・炎症、浮腫、輸液、体重変化、実際の食事摂取量を確認します。
- PALを選ぶ:リハ実施時だけでなく、24時間の座位・立位・移動・家事・就労・余暇活動を含めて判断します。
- EERを参照する:食事摂取基準2025の年齢区分・性別・PAL区分に対応するEERを確認します。表の値へPALを再度掛けません。
- 経過を確認する:体重・BMI、実摂取量、活動量、浮腫、病態の変化を確認し、必要に応じて管理目標を見直します。
記録には、参照した資料、選択したPAL、その根拠、EER、適用上の注意点、次回確認日を残します。担当者が変わっても同じ条件で再評価できる形にすることが重要です。
PALは24時間の活動像から選ぶ
PALは、1日の総エネルギー消費量を基礎代謝量で除した指標です。訓練中の歩行量だけでなく、訓練以外の時間、休日、退院後の生活を含めて判断します。
食事摂取基準2025では、成人のPAL基準値が年齢区分別に示されています。75歳以上では「高い」の基準値が設定されていない点にも注意してください。
| 年齢 | 低い | ふつう | 高い |
|---|---|---|---|
| 18〜64歳 | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
| 65〜74歳 | 1.50 | 1.70 | 1.90 |
| 75歳以上 | 1.40 | 1.70 | 設定なし |
- 低い:生活の大部分が座位で、静的な活動が中心
- ふつう:座位中心でも、移動、立位作業、通勤、買い物、家事、軽い運動などを含む
- 高い:移動や立位の多い仕事、または活発な運動習慣がある
これらは健康な人の生活を基にした代表的な活動像です。入院患者の「ベッド上中心」「リハ時のみ離床」と公式のPAL区分を機械的に対応させず、適用の妥当性を検討します。
PALを決めたら対応するEERを表から参照する
PALを選んだ後は、食事摂取基準2025のEER表から、年齢・性別・PALに対応する値を確認します。ここで行うのは、PALに対応したEERの選択であり、EERとPALの再計算ではありません。
| 順序 | 確認項目 | 記録する内容 |
|---|---|---|
| 1 | 年齢区分 | 該当する年齢区分 |
| 2 | 性別 | 参照した性別区分 |
| 3 | PAL | 区分と選択根拠 |
| 4 | EER | 表から参照したkcal/日 |
| 5 | 適用上の注意 | 参照体位との差、病態、浮腫、体重変化など |
EER表の値は、各年齢・性別の参照体位を基に算定されています。実際の身長や体重が参照体位と大きく異なる場合は、表の値を個人の必要量としてそのまま使用しないようにします。
基礎代謝量から総エネルギー消費量を推定する方法では、PALを係数として使う考え方があります。しかし、その方法と、食事摂取基準のEER表から値を選ぶ方法を混在させないことが重要です。
EER表だけで目標量を決めにくいケース
食事摂取基準は健康な個人・集団を主な対象としており、病態別の栄養処方を直接決めるものではありません。次のケースでは、表から参照したEERを固定目標にせず、個別評価を優先します。
- 急性期、発熱、炎症、感染などで代謝状態が変化している
- 浮腫、脱水、輸液などにより体重を評価しにくい
- 短期間に体重や食事摂取量が変化している
- 高度の低栄養、肥満、臓器障害などがある
- 実際の体格が参照体位と大きく異なる
- 活動量が日によって大きく変化する
- 体重の維持ではなく、増量または減量を目標としている
これらに該当する場合は、疾患別の推奨、実摂取量、体重・体組成の変化、治療内容を確認し、管理栄養士や医師と目標を共有します。
再評価では体重だけでなく変化の理由を見る
個人のエネルギー摂取量が適切かどうかは、推定値だけでは確定できません。体重やBMI、実摂取量、活動量、病態の変化を組み合わせて評価します。
| 確認項目 | 見る内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 体重・BMI | 同じ条件で測定した推移 | 浮腫、脱水、輸液の影響を区別する |
| 実摂取量 | 実際に摂取できたエネルギー量 | 間食、補助食品、経管栄養、輸液も確認する |
| 活動量 | 離床、移動、ADL、訓練、休日の変化 | リハ実施時間だけで判断しない |
| 病態 | 炎症、発熱、呼吸状態、創傷、臓器機能 | 変化があれば推定方法自体を見直す |
| 身体所見 | 浮腫、倦怠感、食欲、身体機能など | 単独の所見だけで過不足を断定しない |
再評価時期や調整幅は、病態、栄養リスク、測定可能な指標、自施設の栄養管理計画によって異なります。「全例で1〜2週」「一律に5〜10%」と固定せず、次回確認日と見直し条件を症例ごとに決めてください。
EER・PAL運用記録シートPDF
初回設定時の前提、PALの選択根拠、参照したEER、再評価項目を共有するための記録シートです。公式様式ではなく、確認事項の抜けを防ぐための補助用紙として使用してください。
PDFを使用するときの注意
PDF内の「EER × PAL」は、EERへPALを再度掛ける意味ではありません。また、「1〜2週で再評価」「5〜10%補正」は一律の公式基準ではなく、運用例です。症例の病態と自施設の栄養管理計画を優先してください。
EERとPALで起こりやすい間違い
最も避けたいのは、EER表に反映されているPALをもう一度掛けることです。計算方法、PALの選択根拠、適用限界、再評価条件を一緒に記録します。
| 間違い | 起こる問題 | 修正方法 |
|---|---|---|
| EER表の値へPALを掛ける | 身体活動の影響を二重に計上する | PALを選び、対応するEERを表から参照する |
| リハ実施時だけでPALを決める | 1日全体の活動量を過大評価しやすい | 病棟生活、休日、家事、就労、余暇を含める |
| 病棟ADLを公式PALへ機械的に対応させる | 健康な人の活動像と入院生活を混同する | 適用限界を記録し、別の推定方法も検討する |
| EERを固定目標にする | 病態や実摂取量の変化を反映できない | 体重・BMI、摂取量、活動量、病態から再評価する |
よくある質問
各質問をタップすると回答が開きます。
EERにPALを掛けて計算しますか?
食事摂取基準2025のEER表から値を選ぶ場合は、掛けません。年齢・性別・PAL区分に対応するEERを参照します。基礎代謝量から総エネルギー消費量を推定する方法とは区別してください。
ベッド上中心の入院患者はPALの「低い」でよいですか?
活動像は「低い」に近い場合がありますが、公式のPALは健康な人の24時間の活動を基にした区分です。入院患者へ機械的に当てはめず、病態、体格、実摂取量、体重変化を含めて適用の妥当性を確認します。
75歳以上で活動量が高い場合はどうしますか?
食事摂取基準2025では、75歳以上の「高い」に該当するPAL基準値は設定されていません。65〜74歳や若年成人の値を機械的に代用せず、活動量、体格、体重変化、実摂取量から個別に評価します。
浮腫があるときは体重で過不足を判断できますか?
体重増加がエネルギー収支によるものか、体液量の変化によるものかを区別する必要があります。実摂取量、浮腫、輸液、尿量、病態、身体計測などを合わせ、体重単独で必要量の過不足を断定しません。
次に確認する記事
本記事は、食事摂取基準2025のPALを選び、対応するEERを参照する手順に限定しています。必要量の推定方法全体と低栄養リスクの評価は、次の記事で確認できます。
- 必要エネルギー量の基本:IC、kcal/kg、基礎代謝量、AF・SFなどを含めて整理する
- GNRIの運用プロトコル:必要量の設定とは別に低栄養リスクを層別化する
参考文献
- 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書. 2024(2025年3月25日正誤表反映). Web / エネルギーPDF
- Westerterp KR. Physical activity and physical activity induced energy expenditure in humans: measurement, determinants, and effects. Front Physiol. 2013;4:90. doi: 10.3389/fphys.2013.00090 / PubMed
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

