GNRI の IBW(理想体重)は「 1 つに固定」が最重要
GNRI の計算で最もブレやすいのは IBW( Ideal Body Weight:理想体重 )です。ここが混在すると、同じ患者でも「前回より悪化/改善」の判断がズレます。本記事では BMI 22 法とLorentz 法の違いを整理し、現場で迷いを消す固定ルールを示します。
結論はシンプルです。院内で IBW の方式を 1 つに統一し、記録に “方式名” まで残す。この 1 点で経時比較の再現性が上がります。
IBW の 2 方式: BMI 22 法 と Lorentz 法
GNRI で使われる IBW は、主に ① BMI 22 法と② Lorentz 法の 2 パターンです。大事なのは「どちらが絶対に正しいか」より、同じ方式で継続比較できることです。
まず「院内標準はどちらか」を確認し、未統一なら NST/病棟カンファで 1 つ決め、カルテとテンプレートへ固定してください。
| 方式 | 計算に必要な情報 | 強み | 注意点 | おすすめ場面 |
|---|---|---|---|---|
| BMI 22 法 | 身長 | 計算が単純/説明しやすい/運用が広い | 身長誤差がそのまま IBW に反映される | 病棟ルーチン運用/多職種で統一したい場面 |
| Lorentz 法 | 身長・性別 | 原法準拠として説明しやすい | 低身長で IBW が過大になりやすい報告/式の取り違えに注意 | 院内標準がすでに Lorentz の施設 |
BMI 22 法での IBW(理想体重)の出し方
BMI 22 法は、IBW = 22 × 身長( m )× 身長( m )で求めます。再現性が高く、テンプレート化しやすいのが利点です。
実務では「身長の採用ルール」を先に決めるのが重要です。臥位や円背で実測が難しい症例では推定値を使うことがあるため、どの身長値を採用したかを 1 行で残してください。
Lorentz 法を採用する場合の注意点
Lorentz 法は GNRI の説明で引用されることが多い方式です。代表式は、男性:身長( cm )− 100 −[(身長 − 150 )/ 4 ]、女性:身長( cm )− 100 −[(身長 − 150 )/ 2.5 ]です。
運用上の失敗は「式の取り違え」と「低身長でのズレ」。採用する場合は、院内マニュアルに式を 1 つだけ明記し、計算シート(紙/Excel)も同式で統一しましょう。
運用のコツ:記録欄に “IBW 方式” まで固定する
IBW の運用で効果が大きいのは計算テクニックより記録の固定です。方式名が残っていれば、担当変更時も経時比較が崩れません。
例:「 IBW:52.4 kg( BMI 22 法、身長 1.54 m )」。方式・身長値・単位をセットで記録するだけで、次回の解釈コストが大きく下がります。
施設導入用:IBW 方式固定チェックリスト(簡易)
GNRI のブレを減らす最短ルートは、計算式そのものより「運用を固定する順番」を揃えることです。以下は、病棟・在宅どちらでも使える最小構成の導入チェックリストです。
会議体(NST/病棟カンファ)で一度決めたら、記録様式・計算シート・申し送り文言を同時に更新し、担当者が変わっても同じ条件で回る状態を作ります。
| 項目 | 確認内容 | 判定 | 担当 | 期限 |
|---|---|---|---|---|
| 1. 方式を決定した | BMI 22 法 / Lorentz 法のどちらか 1 つを院内標準として決定 | □ 済 □ 未 | □ NST □ 病棟責任者 □ リハ責任者 | ____ / ____ / ____ |
| 2. 身長ルールを統一した | 実測困難時の推定法を含め「採用身長の決め方」を 1 つに固定 | □ 済 □ 未 | □ 看護 □ リハ □ 栄養 | ____ / ____ / ____ |
| 3. 計算シートを統一した | 紙 / Excel の式を標準方式へ統一(旧版の使用停止を周知) | □ 済 □ 未 | □ リハ □ 栄養 □ 事務 | ____ / ____ / ____ |
| 4. 記録欄を追加した | カルテに「IBW 方式」「採用身長」「計算日」を記載できる欄を追加 | □ 済 □ 未 | □ 情報管理 □ 各職種代表 | ____ / ____ / ____ |
| 5. 解釈保留ルールを決めた | 浮腫・脱水・炎症高値時は所見併記で解釈保留 / 再評価時期を明記 | □ 済 □ 未 | □ 医師 □ 看護 □ 栄養 □ リハ | ____ / ____ / ____ |
| 6. 申し送り文言を統一した | 例:「IBW は BMI 22 法、身長 1.54 m 採用」で全員同じ言い回しに統一 | □ 済 □ 未 | □ 病棟責任者 □ 教育担当 | ____ / ____ / ____ |
| 7. 監査日を設定した | 導入 1 か月後に 5 症例監査(方式混在・身長根拠漏れ・旧式使用を確認) | □ 済 □ 未 | □ NST □ 監査担当 | ____ / ____ / ____ |
現場の詰まりどころ/よくある失敗( IBW 編 )
GNRI は「計算できる」より「同条件で回せる」ことが成果に直結します。以下は現場で頻発する詰まりどころです。
回避手順は 運用のコツ:記録欄に “IBW 方式” まで固定する、失敗パターンは ミスと対策表 を先に共有してください。関連する運用全体は GNRI の運用フローと判定のコツ で確認できます。
| よくあるミス | なぜ起きる? | 臨床リスク | 対策(その場) | 再発防止(仕組み) |
|---|---|---|---|---|
| BMI 22 と Lorentz が混在 | テンプレ不在/担当者ごとの慣れで選択 | 経時比較がズレる/改善・悪化判断が不安定 | 今回から方式を明記し統一 | 記録欄に “IBW 方式” 固定/計算シート配布 |
| 身長が曖昧(推定値が毎回違う) | 測定法が統一されていない | IBW 変動で GNRI がぶれる | 採用身長と根拠を 1 行記録 | 施設で “身長の決め方” を 1 つに固定 |
| 浮腫・脱水時の体重をそのまま使用 | 所見確認前に計算を進める | 栄養リスクを過小/過大評価 | 浮腫・脱水所見と炎症を確認し解釈保留 | 計算前チェック欄をテンプレに追加 |
よくある質問( FAQ )
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Q1. 施設で迷ったら、BMI 22 法に統一してよいですか?
A. 多職種運用では、計算が単純で説明が揃いやすい BMI 22 法は有力です。重要なのは「同方式で追跡できること」です。方式変更時は、切替時点を必ず記録してください。
Q2. Lorentz 法を採用する場合の最重要ポイントは?
A. 式の取り違え防止です。院内マニュアルに採用式を 1 つだけ明記し、紙・Excel の計算シートも同式に統一すると運用事故が減ります。
Q3. 「体重 / IBW が 1 を超えたら 1」とする理由は?
A. 体重が IBW を上回る症例で比が過大になり、GNRI が必要以上に高く出ることを避けるためです。上限を 1 に固定する扱いが一般的に用いられます。
Q4. 身長が測れない(臥位・円背)場合は?
A. 施設で採用する推定法を 1 つ決め、同じ方法で継続してください。少なくとも採用身長と算出根拠を記録に残すと、再評価時のブレを抑えられます。
次の一手(関連)
参考文献
- Bouillanne O, Morineau G, Dupont C, et al. Geriatric Nutritional Risk Index: a new index for evaluating at-risk elderly medical patients. Am J Clin Nutr. 2005;82(4):777-783. DOI: 10.1093/ajcn/82.4.777
- Kitabayashi K, et al. A Comparison of the Lorentz Formula and Body Mass Index of 22 kg/m2 for Ideal Body Weight in GNRI Calculation. Tohoku J Exp Med. 2024;262(4):221-228. DOI: 10.1620/tjem.2024.J001
- Tokunaga K, Matsuzawa Y, Kotani K, et al. Ideal body weight estimated from the body mass index with the lowest morbidity. Int J Obes. 1991;15:1-5. PubMed: 2010254
- Cereda E, Pusani C, Limonta D, Vanotti A. The ability of the Geriatric Nutritional Risk Index to assess the nutritional status and predict the outcome of home-care resident elderly: a comparison with the Mini Nutritional Assessment. Br J Nutr. 2009;102(4):563-570. DOI: 10.1017/S0007114509222677
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


