長期臥床の影響とは?何日で何が起きるか

臨床手技・プロトコル
記事内に広告が含まれています。

長期臥床の影響は「何日で何が起きるか」を先に押さえる

理学療法士のキャリアガイドを見る

長期臥床が続くと、全身は「デコンディショニング(廃用症候群)」に傾きます。筋力・持久性の低下、起立性低血圧、呼吸の不利、褥瘡リスク、睡眠の断片化、意欲低下などが重なり、 ADL の自立度が落ちやすくなります。臥床は“静”ではなく、“変化が進む状態”として捉えるのがポイントです。

予防の軸は ① 早期離床(座位時間の確保)② 体位変換と除圧 ③ 循環・呼吸のチェック(ふらつき、呼吸数、 SpO₂ など)④ 水分・栄養の確保 ⑤ 疼痛・睡眠の整備です。できるだけ「小さく動かす」「こまめに姿勢を変える」「安全に立ち上がる」をチームの日課にします。

最短でわかる:何日で何が起きる?どう防ぐ?

下表は「何日で何が起きる?」の見取り図です。疾患・年齢・栄養・薬剤・ ICU 滞在の有無で前後するため、あくまで臨床での“早期気づき”に使ってください。

長期臥床で起こりやすい変化の目安(成人・一般的な傾向)
期間の目安 起こりやすい変化 現場のチェック 最初の一手
数日 筋出力の低下、易疲労、座位でのふらつきが出やすい 立位前後の血圧・脈拍、めまい、悪心、 SpO₂ 短時間の座位を複数回+下肢の軽い収縮(ポンプ)
1 週前後 筋萎縮が目立ち始め、全身持久性が落ちる。代謝(インスリン抵抗性)も不利に 立ち上がり回数、歩数・距離、息切れ、倦怠感 低強度・短時間・高頻度の離床を“計画化”
2 週以降 拘縮、褥瘡、誤嚥性肺炎、尿路感染などの合併症リスクが積み上がる 皮膚(仙骨・踵)、便通、痰、発熱、意識の揺れ 除圧と保清、栄養・水分、口腔・呼吸ケアを強化

廃用症候群の機序(デコンディショニング)

活動量の低下は、筋タンパク合成の抑制と分解の亢進を招き、特に下肢の萎縮が進みやすくなります。循環では下肢静脈還流の低下と血漿量減少により、姿勢変換時の血圧維持が難しくなり、起立耐性が落ちます。呼吸では下肺野の換気不均等や分泌物貯留が起こりやすく、せき・排痰が弱い人ほど不利です。

さらに、疼痛、睡眠の断片化、自律神経の不均衡、抑うつ・不安、食思不振と栄養不足が絡み、回復にブレーキがかかります。つまり「動けないから動けない」が固定化する前に、早期・小刻みな刺激を入れることが鍵です。廃用症候群の全体像と評価の流れは、廃用症候群の評価とリハビリの実践にまとめています。

影響の全体像:筋骨格/循環/呼吸/皮膚/自律神経・認知/代謝

  • 筋骨格:下肢優位の筋力低下、関節可動域制限、体幹・バランス低下
  • 循環:起立性低血圧、易疲労、静脈うっ滞、血栓リスク
  • 呼吸:浅表呼吸、無気肺リスク、排痰困難
  • 皮膚:仙骨・踵など骨突出部への持続圧で褥瘡、医療関連機器圧迫損傷( MDRPI )リスク
  • 自律神経・認知:不眠、せん妄、意欲低下
  • 代謝:インスリン抵抗性、便秘、尿路感染の素地

これらは単独ではなく“同時並行”で進みます。評価は「バイタル・体位反応」「筋力と持久性」「皮膚」「栄養・水分」「嚥下・呼吸」をセットで見て、日ごとの変化を記録します。

レッドフラッグとハイリスク群

レッドフラッグ:胸痛、強い息切れ、 SpO₂ の明らかな低下、発熱と意識変化、黒色便や血痰、急な麻痺・失語、下肢の強い腫脹と疼痛(深部静脈血栓疑い)などは、直ちに医療評価が必要です。

ハイリスク群:高齢、低栄養・脱水、認知症・せん妄既往、ステロイド使用、糖尿病・末梢神経障害、褥瘡既往、嚥下障害、長期 ICU 滞在など。刺激は「低強度・短時間・高頻度」で開始し、反応(血圧、症状、表情、疲労)を見ながら段階的に引き上げます。

予防の実践:早期離床・体位変換・栄養・循環対策

現場で迷いにくいように「 5 分フロー」で整理します。ポイントは“安全域を確認しながら、座位時間と立ち上がり回数を増やす”ことです。

  1. 安全確認:疼痛、呼吸苦、 SpO₂ 、血圧、意識レベル、発熱の有無を確認します。
  2. 体位管理:除圧と皮膚観察(仙骨・踵・機器接触部)をセットで行います。
  3. 座位 → 端座位:短時間 × 複数回で開始し、ふらつき・悪心・顔面蒼白がないかを見ます。
  4. 立位・移乗:立位前後の血圧変動と症状(めまい、吐き気)を必ず確認します。
  5. 栄養・水分:摂取状況(食事量、飲水量)と便通を確認し、チームで整えます。

家族/介護者向けポイント(在宅での工夫)

  • まずは「起きる時間」を作り、座位(背上げ)を短時間から増やします。
  • 踵と仙骨の“赤み”はサインです。触って熱い、色が戻りにくい場合は早めに相談します。
  • ふらつきが強い日は、立位を急がず「足首の動き」「膝伸ばし」などの軽い運動から始めます。

現場の詰まりどころ(よくある失敗と対策)

長期臥床の予防で起こりやすい失敗と対策(病棟・在宅共通)
よくある失敗(NG) 何が起きる? 対策(OK) 記録ポイント
いきなり長時間の座位・立位にする 起立性症状、疲労の蓄積で翌日さらに動けない 短時間 × 複数回で耐久を作る(小刻みな離床) 座位時間、立位前後の血圧、症状の有無
除圧と皮膚観察が後回し 仙骨・踵の持続圧で褥瘡リスクが上がる 体位変換と皮膚チェックをセット化する 発赤部位、熱感、圧痕、体位変換の頻度
栄養・水分が整わないまま負荷を上げる 疲労、筋量低下が進みやすい 摂取量と便通を見ながら、離床量を“同時に”調整 食事摂取量、飲水量、体重変動、便通

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 何日くらいから筋力低下は目立ちますか?

個人差はありますが、数日でも「立ち上がりが重い」「すぐ疲れる」といった変化が出ることがあります。見た目の筋萎縮がはっきりする前に、座位耐久や立ち上がり回数、歩数などの“動けた量”が落ちていないかを先に確認すると、早期に気づきやすいです。

Q2. ふらつきが強い日は、離床を中止すべきですか?

症状が強い場合は無理に進めず、血圧変動や SpO₂ を確認しながら段階を下げます。たとえば「座位は短時間」「下肢の軽い運動」「体位調整」を優先し、翌日の反応も含めて安全に積み上げるほうが結果的に離床が進みやすいです。

Q3. 在宅でもできる一番シンプルな予防は何ですか?

「起きる時間を作る(背上げ・座位)」「踵と仙骨の除圧」「水分と食事の確保」の 3 点をまず固定します。できれば短時間でも立ち上がりを追加し、翌日の疲労が増えない範囲で回数を増やしていきます。

おわりに

長期臥床の対応は「安全の確保 → 小刻みな離床 → 皮膚と循環の観察 → 栄養・睡眠の整備 → 記録と再評価」のリズムで回すほど、合併症を減らしやすくなります。面談準備チェックと職場評価シートを使って、今の現場で“離床を回す仕組み”を整える視点も持てるので、必要なら マイナビコメディカルの無料ダウンロードも活用してみてください。

参考文献

  1. Kortebein P, Ferrando A, Lombeida J, Wolfe R, Evans WJ. Effect of 10 days of bed rest on skeletal muscle in healthy older adults. JAMA. 2007;297(16):1772-1774. doi: 10.1001/jama.297.16.1772-b / PubMed: PMID: 17456818
  2. Kortebein P, Symons TB, Ferrando A, et al. Functional impact of 10 days of bed rest in healthy older adults. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2008;63(10):1076-1081. PubMed: PMID: 18948558
  3. Perhonen MA, Franco F, Lane LD, et al. Cardiac atrophy after bed rest and spaceflight. J Appl Physiol (1985). 2001;91(2):645-653. doi: 10.1152/jappl.2001.91.2.645 / PubMed: PMID: 11457776
  4. Dirks ML, Wall BT, van de Valk B, et al. One week of bed rest leads to substantial muscle atrophy and induces whole-body insulin resistance in the absence of skeletal muscle lipid accumulation. Diabetes. 2016;65(10):2862-2875. doi: 10.2337/db15-1661 / PubMed: PMID: 27450786
  5. Schweickert WD, Pohlman MC, Pohlman AS, et al. Early physical and occupational therapy in mechanically ventilated, critically ill patients: a randomised controlled trial. Lancet. 2009;373(9678):1874-1882. doi: 10.1016/S0140-6736(09)60658-9 / PubMed: PMID: 19446324

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

運営者について編集・引用ポリシーお問い合わせ

タイトルとURLをコピーしました