- 褥瘡予防のポジショニング|まず「今かかっている負荷」を外す
- 最初の5分|所見から「最初の1手」を決める
- ポジショニング前の評価|体位名より「負荷が集まる場所」をみる
- 30°側臥位の使い方|「30°ぴったり」より仙骨・大転子の除圧
- ずれ(剪断)対策|背上げでは角度と前滑りをセットで確認する
- 踵骨免荷|踵を「完全に浮かせる」まで確認する
- 体位変換の頻度|2時間固定でも、長時間への一律延長でもない
- うまくいかないとき|体位名ではなく「残っている負荷」を探す
- 記録と共有|「30°側臥位」だけで終わらせない
- 配布物|褥瘡予防ポジショニング確認・記録シート
- よくある質問(FAQ)
- 次の一手|全体像と30°側臥位の実装へ
- 参考文献
- 著者情報
褥瘡予防のポジショニング|まず「今かかっている負荷」を外す
褥瘡予防のポジショニングでは、30°側臥位という形を作ることより、いま圧が集中している部位を外し、踵を免荷し、摩擦・ずれ(剪断)を減らしたうえで皮膚・組織の反応を再評価することが重要です。消退しない発赤や既存の褥瘡がある部位では、可能な限り直接荷重を続けないようにします。
この記事では、ベッド上で褥瘡予防に関わるPT・OT・看護師などの医療従事者向けに、所見 → 最初の1手 → 再評価 → 記録・共有までを整理します。30°側臥位の詳しい作り方、支持面の選定、栄養管理、車椅子シーティングなどは別記事へ分け、本記事では「目の前の患者で何を先に直すか」に絞ります。
この記事で確認する4点

最初の5分|所見から「最初の1手」を決める
最初に決めたいのは、クッションの数や体位名ではなく、どの部位に危険な負荷が残っているかです。体位変換やポジショニングでは、圧点が十分に除圧されているかを確認し、消退しない発赤や既存の褥瘡がある部位への直接荷重を可能な限り避けます。
下の順番はガイドライン上の公式順位ではなく、ベッドサイドで確認漏れを減らすためのrehabilikun独自の実務フローです。患者ごとに危険度の高い所見から対応してください。
※スマホでは表を横スクロールできます。
| 所見 | 最初の1手 | 修正後に確認すること |
|---|---|---|
| 消退しない発赤・既存褥瘡がある | 可能な範囲で、その部位への直接荷重を外す | 同じ部位へ再荷重していないか |
| 踵が支持面へ接地している | 下腿を広く支持して踵を完全に浮かせる | 踵の下に手が入り、再接地していないか |
| 背上げ後に前滑り・皮膚の引きつれがある | ずれを解除し、背上げ条件と支持位置を再調整する | 仙骨部のずれ・しわ・前滑りが減ったか |
| 仙骨・大転子・外果などが強く当たる | 体位角度と支持位置を変えて荷重を分散する | 骨突出部への直圧が減ったか |
| 疼痛が強い・体位を保持できない | 安楽性と臨床上の必要性を確認して体位を変更する | 疼痛・姿勢保持・皮膚反応が改善したか |
重要:「踵を最初に見る」「30°側臥位から始める」といった固定順位ではありません。すでに消退しない発赤や褥瘡がある場合は、その部位への負荷を外すことを優先します。
ポジショニング前の評価|体位名より「負荷が集まる場所」をみる
ポジショニング前には、体型、骨突出、拘縮、疼痛、自力体動、背上げの必要性、現在の皮膚・組織状態を確認します。同じ30°側臥位でも、体型や変形によって仙骨や大転子への荷重は変わるためです。
特に、すでに皮膚・組織障害が疑われる部位がある場合は、きれいな姿勢を作ることより、その部位から負荷を外せているかを優先します。
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| 評価所見 | 考える問題 | 介入の方向性 |
|---|---|---|
| 仙骨部の発赤+前滑り | 圧に加えてずれが残っている | 直接荷重を外し、背上げ条件と支持を見直す |
| やせ・骨突出が強い | 局所へ荷重が集中しやすい | 骨突出への直圧を避け、広い面で支持する |
| 拘縮・変形 | 標準的な体位では別部位へ圧が移る | 無理に角度を合わせず、身体形状に合わせて支持する |
| 疼痛・不穏 | 体位保持が難しく、ずれが繰り返される | 疼痛・安楽性を評価し、保持可能な条件へ調整する |
| 自力体動が少ない | 同一部位への負荷時間が長くなる | 体位変換計画と支持面を含めて再評価する |
30°側臥位の使い方|「30°ぴったり」より仙骨・大転子の除圧
30°側臥位は褥瘡リスクのある患者に対する選択肢の1つですが、30°という数値そのものを達成することが目的ではありません。International Guidelineでは、褥瘡リスクのある患者に30°側臥位を用いることが条件付きで推奨されていますが、エビデンスの確実性は非常に低いと評価されています。
重要なのは、仙骨と大転子の両方を十分に除圧できる角度へ個別化することです。体型などによって30°では仙骨を十分に外せない場合は、より大きな傾斜へ調整する必要があります。
一方、90°に近い側臥位は大転子などへの圧が集中しやすいため、褥瘡予防を目的とする場合は避けます。角度だけで判断せず、実際にどの骨突出が支持面へ当たっているかを触れて確認します。
30°側臥位の具体的な支持位置や作り方は、30°側臥位ポジショニングの作り方と記録で詳しく整理しています。
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| 体位・条件 | 考え方 | 確認する場所 |
|---|---|---|
| 仰臥位 | 仙骨・踵・後頭部への持続圧を確認する | 仙骨、踵、後頭部 |
| 30°前後の側臥位 | 仙骨と大転子の両方への直圧を避けられる角度へ調整する | 仙骨、大転子、膝、外果、踵 |
| 90°に近い側臥位 | 大転子などへ荷重が集中しやすいため、褥瘡予防目的では避ける | 大転子、肩峰、外果 |
ずれ(剪断)対策|背上げでは角度と前滑りをセットで確認する
頭側挙上では、仙骨・尾骨周囲への圧だけでなく、身体が下方へ滑ることでずれ(剪断)が加わります。International Guidelineでは、褥瘡予防の観点から可能であれば頭側挙上を30°以下に保つことが条件付きで推奨されています。
ただし、誤嚥予防、呼吸管理、経管栄養などの臨床上の理由で、30°を超える頭側挙上が必要になる場合があります。そのため、褥瘡予防だけを理由に必要な頭側挙上を下げるのではなく、全身状態と治療上の必要性を優先したうえで、前滑りとずれをできるだけ減らすことが重要です。
- 頭側挙上の必要性と現在の角度を確認する
- 身体を引きずらず、摩擦・ずれを減らす移動方法を使う
- 皮膚や寝衣の引きつれ、シーツのしわを解除する
- ベッドの膝上げ機能などを利用し、大腿部を支持して前滑りを減らす
- 調整後に仙骨部へ荷重が戻っていないか再確認する
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| 確認 | 修正 | 再評価 |
|---|---|---|
| 頭側挙上角度 | 臨床上可能な範囲で角度を見直す | 前滑りが減ったか |
| 皮膚・寝衣の引きつれ | 引きつれとしわを解除する | 皮膚への持続的な引っ張りがないか |
| 大腿部の支持 | 膝上げなどを利用して下方への滑りを抑える | 骨盤位置を保持できるか |
| 仙骨・尾骨周囲 | 支持位置を再調整する | 発赤・疼痛・圧集中がないか |
踵骨免荷|踵を「完全に浮かせる」まで確認する
踵は褥瘡が生じやすい部位であり、褥瘡リスクがある場合は支持面から完全に浮かせることが重要です。International GuidelineのHeel章では、下腿・ふくらはぎへ荷重を分散し、踵を支持面から完全に離すことがGood Practice Statementとして示されています。
踵の直下だけへ枕やタオルを入れるのではなく、下腿のできるだけ広い範囲を支持します。その際、アキレス腱、膝窩、腓骨頭周囲などへ新たな局所圧を作らないよう注意します。
- 下腿を広い面で支持し、踵を支持面から完全に浮かせる
- 膝関節の過伸展を避け、患者の状態に合わせて調整する
- 足部の過度な外旋を避け、踵が再接地しないようにする
- 体位変換後に踵の下へ手を入れ、非接地を確認する
- 浮腫、皮膚状態、循環、疼痛、装具・デバイスによる圧迫も確認する
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| チェック | 目標 | よくある失敗 |
|---|---|---|
| 踵の接地 | 踵の下に手が入り、支持面へ接触していない | 枕がずれて踵が再接地する |
| 下腿支持 | 下腿へ広く荷重を分散する | 一点支持で別の圧迫部位を作る |
| 膝窩・アキレス腱 | 局所的に強く圧迫しない | 支持具の端が局所へ当たる |
| 足部の向き | 過度な外旋を避けて保持する | 外旋して踵が再び支持面へ当たる |
体位変換の頻度|2時間固定でも、長時間への一律延長でもない
体位変換は、全員を機械的に同じ間隔へ固定するのではなく、皮膚・組織の耐久性、自力体動、臨床状態、疼痛・安楽性、睡眠、ケア目標、使用している体圧分散支持面などから個別化します。
International Guidelineでは、適切な体圧分散支持面を使用している多くの褥瘡リスク患者では、2時間または3時間間隔の体位変換を実施できると条件付きで推奨されています。一方で、4〜6時間間隔への一律の延長は推奨されていません。
重要なのは、「何時間おきか」だけで褥瘡予防を判断しないことです。各体位変換時に皮膚・組織状態と除圧の成否を確認し、早期の皮膚・組織障害がみられる場合は、体位、頻度、支持面などを再検討します。
- 自力で有効な体位変換ができるか
- 現在の体圧分散支持面が適切か
- 発赤、疼痛、熱感、硬さなどの変化がないか
- 前滑り・ずれが繰り返されていないか
- 体位変換による疼痛・不快感・睡眠への影響がないか
うまくいかないとき|体位名ではなく「残っている負荷」を探す
ポジショニング後も発赤や疼痛が繰り返される場合は、「30°になっているか」だけを見直すのではなく、どの部位へ圧・摩擦・ずれが残っているかを確認します。
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| 困りごと | 確認すること | 修正する1手 |
|---|---|---|
| 30°側臥位でも仙骨が当たる | 30°という角度だけを合わせていないか | 仙骨と大転子の両方が外れる角度・支持位置へ調整する |
| 踵が途中で再接地する | 下腿支持の長さ・高さ・ずれ | 下腿全体で支持し、再度手を入れて確認する |
| 背上げで仙骨・尾骨が赤くなる | 頭側挙上、前滑り、皮膚の引きつれ | 臨床上可能な範囲で挙上条件と支持を見直す |
| 疼痛で体位を保持できない | 骨突出への圧集中、拘縮、疼痛 | 安楽性を優先し、保持可能な体位へ変更する |
修正後は「除圧・ずれ・皮膚反応」を再確認する
ポジショニングは、クッションを配置した時点では終わりません。修正後は次の3点を確認します。
- 除圧:問題となっていた骨突出部への持続圧が外れているか
- ずれ:前滑り、皮膚の引きつれ、寝具のしわが残っていないか
- 皮膚・組織反応:発赤、疼痛、熱感、硬さなどがどう変化したか
消退しない発赤、暗赤色・紫色の変化、水疱、表皮剝離などがみられる場合は、単なるポジショニング調整だけで終わらせず、褥瘡や他の皮膚障害として評価し、施設の手順に沿って医師・看護師などへ共有します。
記録と共有|「30°側臥位」だけで終わらせない
体位名だけでは、次の担当者が同じポジショニングを再現できません。体位変換を行った時刻や頻度、採用した体位、皮膚・組織の評価結果、修正した条件などを残します。
最低限、次の情報をセットで記録すると共有しやすくなります。
- 体位とおおよその角度
- 支持位置と使用した物品
- 踵骨が完全免荷できているか
- 頭側挙上角度と前滑りの有無
- 皮膚・組織所見
- 疼痛・安楽性
- 再確認する時刻・項目
- 次回変更する条件
記録例:30°前後の右側臥位へ調整。仙骨・右大転子への直圧なし。下腿支持で両踵を免荷し、手で非接地を確認。頭側挙上20°、前滑りなし。仙骨部発赤は除圧後に消退傾向。次回は外果の接触と踵免荷を再確認する。
配布物|褥瘡予防ポジショニング確認・記録シート
この記事の内容をベッドサイドで使いやすい形にまとめた、A4縦1ページの「褥瘡予防ポジショニング確認・記録シート v2」を用意しました。
固定した順位で確認するのではなく、実施前の条件 → 所見から最初の1手 → ガイドライン要点 → 今回の体位・条件 → 再評価・共有までを1枚で整理できます。消退しない発赤や既存褥瘡など、危険度の高い所見がある場合はそちらを優先して対応します。
PDF版はそのまま印刷・院内配布したい場合、Excel原本は施設名や記録欄などを調整して運用したい場合に使用できます。
- PDF版:A4縦1ページ。印刷してそのまま確認・記録に使用できます。
- Excel原本:確認・記録シートの編集用データです。施設内の運用に合わせた調整にも使用できます。
シート利用時の注意:シート内の並びは、ガイドラインが定める公式の優先順位ではありません。患者に消退しない発赤や既存の褥瘡などがある場合は、その部位への負荷を外すことを優先してください。
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よくある質問(FAQ)
Q1.30°側臥位にすれば褥瘡を予防できますか?
A.30°側臥位は褥瘡リスク患者に対する選択肢の1つですが、角度だけでは判断できません。仙骨と大転子への直圧が十分に外れているかを確認し、体型や変形に応じて角度と支持位置を調整します。30°で十分に除圧できない場合は、より大きな傾斜が必要になることもあります。
Q2.90°側臥位は使ってはいけませんか?
A.褥瘡予防を目的とする場合、90°に近い側臥位は大転子などへ圧が集中しやすいため避けます。ただし、実際の体位は患者の病態、治療上の必要性、安全性、安楽性を含めて決定します。
Q3.踵骨免荷はどう確認しますか?
A.下腿を広く支持して踵を支持面から完全に浮かせます。設定後に踵の下へ手を入れ、接地していないことを確認します。膝窩やアキレス腱などへ新たな局所圧を作らないことも重要です。
Q4.体位変換は2時間おきと3時間おきのどちらですか?
A.International Guidelineでは、適切な体圧分散支持面を使用している多くの褥瘡リスク患者について、2時間または3時間間隔が条件付きで推奨されています。ただし、皮膚・組織反応、自力体動、臨床状態、安楽性、睡眠、ケア目標などから個別化します。
Q5.頭側挙上は必ず30°以下にするべきですか?
A.いいえ。褥瘡予防の観点では可能な範囲で30°以下が推奨されますが、誤嚥予防や呼吸管理などでより高い頭側挙上が必要な場合があります。臨床上の必要性を優先したうえで、前滑り、ずれ、仙骨部への圧集中を減らします。
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参考文献
- National Pressure Injury Advisory Panel, European Pressure Ulcer Advisory Panel, Pan Pacific Pressure Injury Alliance. Repositioning and Mobilization. In: Haesler E, ed. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. The International Guideline. Fourth Edition. 公式ページ
- National Pressure Injury Advisory Panel, European Pressure Ulcer Advisory Panel, Pan Pacific Pressure Injury Alliance. Preventing Heel Pressure Injuries. In: Haesler E, ed. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. The International Guideline. Fourth Edition. 公式ページ
- 日本褥瘡学会. 褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版. 東京: 照林社; 2022.
- 日本褥瘡学会. 褥瘡の予防について. 公式ページ
- Gillespie BM, Walker RM, Latimer SL, Thalib L, Whitty JA, McInnes E, et al. Repositioning for pressure injury prevention in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2020;6(6):CD009958. doi: 10.1002/14651858.CD009958.pub3
- Greenwood C, Nelson EA, Nixon J, Vargas-Palacios A, McGinnis E. Comparative effectiveness of heel-specific medical devices for the prevention of heel pressure ulcers: A systematic review. J Tissue Viability. 2022;31(4):579-592. doi: 10.1016/j.jtv.2022.09.009
- Barakat-Johnson M, Lai M, Stephenson J, Buhr H, Campbell J, Dolton A, et al. Efficacy of a heel offloading boot in reducing heel pressure injuries in patients in Australian intensive care units: A single-blinded randomised controlled trial. Intensive Crit Care Nurs. 2022;70:103205. doi: 10.1016/j.iccn.2022.103205
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

