褥瘡予防のスキンケア|皮膚状態で選ぶ手順と記録【PDF】

臨床手技・プロトコル
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褥瘡予防のスキンケアは「観察して必要なケアを選ぶ」

褥瘡予防のスキンケアでは、全員に「洗浄 → 保湿 → バリア」を同じ順番で行うのではなく、まず皮膚を観察し、汚染があればやさしく洗浄し、乾燥があれば保湿、尿・便への曝露があれば皮膚保護を選ぶことが基本です。圧・ずれや医療機器の当たりが疑われる場合は、スキンケアだけで終わらせず、除圧や固定方法も見直します。

このページでは、褥瘡リスクがある人に対して、いつ皮膚を確認し、保清・保湿・保護をどう使い分け、何を記録するかを実務向けに整理します。褥瘡予防全体やIADとの詳しい鑑別は別記事へ分け、ここでは毎日のスキンケアとA4記録シートの使い方に絞ります。

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まず確認する:褥瘡スキンケアの基本フロー

迷ったときの出発点は、製品を選ぶことではなく皮膚を観察することです。皮膚所見と刺激源を確認し、「洗浄が必要か」「保湿か皮膚保護か」「圧・ずれや医療機器への対応が必要か」を分けて考えます。

褥瘡予防のスキンケアを皮膚観察、汚染の有無、皮膚状態による分岐、再評価と記録の4段階で示した基本フロー
図:褥瘡予防のスキンケアは、まず皮膚を観察し、状態に応じて必要なケアを選択して再評価につなげます。

図のポイントは、保湿やバリア製剤を全員へ一律に追加しないことです。乾燥・落屑があれば保湿、尿・便への曝露があれば皮膚保護、圧・ずれが疑われれば除圧や体位・支持面の見直し、医療機器の当たりがあれば固定や適合の見直しへ進みます。

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褥瘡予防のスキンケア:場面別の最小フロー
場面 最初に見ること 基本対応 次に確認すること
清拭・入浴時 乾燥、発赤、浸軟、表皮損傷、痛み 必要な範囲をやさしく洗浄 → 余分な水分を除去 → 乾燥部位は保湿 皮膚色、乾燥、刺激症状の変化
尿・便による汚染時 曝露範囲、浸軟、発赤、びらん 汚染をやさしく除去 → 余分な水分を除去 → 必要に応じて皮膚保護 再汚染、皮膚障害、保護状態
体位変換・ケア時 骨突出部の色調、温度、硬さ・軟らかさ、疼痛 異常があれば圧・ずれ・体位・支持面を確認 除圧後の皮膚・組織反応
医療機器・固定材使用時 接触部の圧迫、湿潤、色調変化、表皮損傷 機器の適合・固定方法を見直し、必要な皮膚保護を行う 同じ部位へ負荷が集中していないか

2026年版では「皮膚評価+構造化したスキンケア」が基本

褥瘡予防では、スキンケアだけで圧迫損傷を防ぐのではなく、皮膚・軟部組織を定期的に評価し、その結果に応じてスキンケア、除圧、ずれ対策、支持面などを組み合わせることが重要です。

International Guideline Fourth Editionでは、皮膚を定期的に評価し、構造化したスキンケアを実施することがGood Practiceとされています。一方、褥瘡予防のみを目的として、保湿剤やバリア製剤などのleave-on topical skin productsを全員へroutineに使用することについては、根拠の確実性が非常に低く、推奨は示されていません。

ここを混同しない:「推奨がない」は「保湿剤やバリア製剤を使ってはいけない」という意味ではありません。褥瘡リスクがあるという理由だけで一律使用するのではなく、乾燥や尿・便曝露など、皮膚状態と目的に応じて選ぶという整理が実務上は重要です。

また、皮膚表面の過剰な湿潤だけでなく、乾燥も皮膚・組織変化と関連する可能性があります。本記事でいう「水分を除去する」とは、洗浄後などに残った余分な水分をこすらず取り除くことであり、皮膚そのものを乾燥させることではありません。

保清は「必要な汚染を落とす」|こすらず、洗い過ぎない

保清の目的は、尿・便・汗・汚れなどの刺激源を取り除きながら、皮膚への追加ダメージを避けることです。汚れを落とすために強くこする、必要以上に繰り返し洗うといった方法は避けます。

  1. 皮膚を観察する:色調変化、乾燥、浸軟、表皮損傷、疼痛などを確認します。
  2. 必要な範囲を洗浄する:皮膚への刺激を抑え、強くこすらず汚染を除去します。
  3. 洗浄剤を適切に扱う:洗い流す製品では、製品の使用方法に従って残留を避けます。
  4. 余分な水分を除去する:タオルなどでこすらず、押さえるように水分を取ります。
  5. 次のケアを選ぶ:乾燥があれば保湿、尿・便曝露が続く場合は皮膚保護を検討します。

特に失禁ケアでは、汚染を除去するたびに強い清拭を繰り返すと機械的刺激が増えます。使用している洗浄剤・清拭材・皮膚保護製品の使用方法も確認し、必要な洗浄と、必要以上の洗浄を分けることがポイントです。

保湿・皮膚保護・圧対策は「何を減らしたいか」で使い分ける

スキンケア資材は製品名から選ぶのではなく、「いま皮膚に何が起きているか」「何から守りたいか」を先に整理します。乾燥、尿・便曝露、圧・ずれ、医療機器では必要な対応が異なります。

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皮膚状態・原因から考えるスキンケアと対応
皮膚・場面 主な対応 目的 注意点
乾燥・落屑がある 保湿剤 皮膚の水分保持を補う 塗布量や頻度を一律に決めず、使用製品の用法に従う
尿・便へ繰り返し曝露する 皮膚保護・バリア製剤 刺激源と皮膚の接触を減らす 皮膚状態と製品特性を確認し、必要な範囲で使用する
骨突出部に圧・ずれが疑われる 除圧・体位・支持面の見直し 機械的負荷を減らす 保湿・バリアだけで対応を終えない
テープ・医療機器の当たりがある 固定・適合・接触部の見直し 圧迫や粘着による皮膚障害を減らす 皮膚保護だけでなく、サイズ・固定・剥離方法も確認する

皮膚観察は「赤いか」だけでなく、色調・温度・硬さ・痛みまで見る

褥瘡の早期変化を拾うには、視診だけでなく触診も組み合わせます。特に骨突出部や医療機器の接触部では、周囲皮膚との色調差、温度差、組織の硬さ・軟らかさ、局所痛を確認します。

皮膚色によっては「発赤」だけでは変化を捉えにくいため、本人の通常の皮膚色や周囲の皮膚と比較し、暗くなった、明るくなったなどの色調変化として捉えることも重要です。

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スキンケア時に確認する皮膚・軟部組織の所見
項目 確認すること 異常時に追加確認すること
皮膚色 通常の皮膚色や周囲と比較した色調変化 骨突出部との一致、圧迫・医療機器の有無
湿潤・乾燥 浸軟、失禁曝露、発汗、乾燥、落屑 曝露状況、排泄状況、現在のスキンケア
温度 周囲と比べて温かい・冷たい 圧迫歴、炎症や循環状態
硬さ・軟らかさ 周囲と異なる硬結や軟らかさ 圧集中、浮腫、深部組織変化の可能性
疼痛・違和感 局所痛、ヒリヒリ感、圧迫感 圧・ずれ、皮膚炎、医療機器の影響
表皮損傷 びらん、水疱、表皮剥離など IAD、褥瘡、MARSIなどを含め原因を再評価する

よくあるNG|「全員に同じケア」をやめる

褥瘡予防のスキンケアで避けたいのは、皮膚状態を確認せずに同じ手順を繰り返すことです。観察 → 原因の整理 → 必要なケアへ置き換えると、過不足を減らしやすくなります。

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褥瘡スキンケアのNGと修正方法
NG 問題 置き換え
強くこすって汚れを落とす 皮膚へ摩擦を加えやすい 汚染をやさしく除去し、押さえて水分を取る
汚染がない部位も繰り返し洗う 必要のない刺激が増える 洗浄の必要性を先に判断する
褥瘡リスクがある人全員へ同じ保湿剤を塗る 目的と皮膚所見が一致しない 乾燥・落屑など保湿が必要な所見を確認する
バリア製剤を毎回すべて除去して塗り直す 製品によっては不要な摩擦につながる 製品の使用方法、汚染状況、皮膚状態から再塗布を判断する
保湿・バリアをしたので褥瘡対策は十分と考える 圧・ずれが残る可能性がある 骨突出部の負荷、体位、支持面も同時に確認する
発赤だけを観察する 早期変化を拾いきれない 色調、温度、硬さ・軟らかさ、疼痛も確認する

最小記録7項目|観察 → ケア → 再評価を比較できる形で残す

記録は「保湿実施」「バリア塗布」だけでは、次の判断につながりません。どこに、何があり、何が原因として考えられ、何を行い、どう変わったかを比較できる形にします。

本記事では、チーム内で最低限そろえやすい実務上の記録項目として、次の7点に整理します。

褥瘡予防スキンケアの最小記録7項目
項目 記録すること 短い記録例
1. 部位 解剖学的位置 仙骨部、右踵部
2. 皮膚・組織所見 色調、乾燥、浸軟、表皮損傷、温度、硬さ、痛み 殿部に浸軟軽度、びらんなし
3. 曝露・刺激 尿、便、汗、テープ、医療機器など 軟便失禁あり
4. 機械的負荷 圧、ずれ、骨突出、医療機器の当たり 仙骨部に圧集中あり
5. 実施したケア 洗浄、保湿、皮膚保護、体位・固定方法の変更など 汚染除去後に皮膚保護、体位調整
6. 反応 改善、不変、悪化など前回との変化 浸軟は前回より軽減
7. 次回確認 いつ、何を再評価するか 次回排泄ケア時に浸軟と色調を再確認

記録例

仙骨〜殿部に軽度浸軟あり、表皮損傷なし。軟便失禁あり。仙骨部は骨突出への圧もあり。汚染をやさしく除去して皮膚保護を実施し、体位を調整。次回排泄ケア時に浸軟・色調と仙骨部の皮膚反応を再評価する。

褥瘡スキンケア記録シートPDF|A4で観察・介入・再評価を残す

院内で皮膚観察や記録方法をそろえたい場合は、印刷用のA4記録シートを利用できます。皮膚所見だけでなく、原因、実施したケア、再評価まで同じ型で確認する用途を想定しています。

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スキンケアだけで様子を見ない所見|圧・ずれ評価と共有へ進む

スキンケアを続けるだけでは不十分な皮膚・組織変化があります。骨突出部や医療機器接触部に持続する色調変化がある、周囲と比べて温度や組織の硬さ・軟らかさが明らかに異なる、局所痛がある、水疱や表皮損傷が生じている場合は、スキンケアの追加だけで対応せず、圧・ずれや医療機器による負荷を再評価します。

異常所見がみられた場合は、体位・支持面・医療機器・排泄状況などを確認し、必要に応じて褥瘡予防計画を見直してチームで共有します。尿・便曝露がある部位ではIADと褥瘡が併存する場合もあるため、刺激源への対策と圧・ずれ対策を並行して考えます。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。

Q1.褥瘡リスクがある人には、全員に保湿剤を塗った方がよいですか?

一律に塗布するのではなく、乾燥や落屑など皮膚状態を確認して選びます。構造化したスキンケアは重要ですが、褥瘡予防のみを目的として保湿剤などの外用製品を全員へroutineに使用することについては、2026年版International Guidelineでは推奨を示せる十分な根拠がないとされています。

Q2.失禁後は、バリア製剤を毎回すべて塗り直しますか?

排泄後は汚染をやさしく除去し、皮膚状態を確認することが基本です。バリア製剤を毎回すべて除去して塗り直す必要があるかは製品によって異なるため、使用方法、汚染状況、皮膚への残存状態を確認して再塗布を判断します。

Q3.IADと褥瘡のどちらか分からない場合はどうしますか?

見た目だけで決めず、尿・便への曝露と、骨突出部・医療機器による圧やずれを分けて確認します。判断できない段階でも、刺激源への対策と圧・ずれ対策を並行し、介入後の皮膚変化を再評価します。

Q4.保湿剤やバリア製剤を使っていれば、除圧は不要ですか?

不要にはなりません。保湿や皮膚保護は乾燥や湿潤などへの対策であり、褥瘡に関係する機械的負荷そのものを取り除くものではありません。骨突出部への圧、ずれ、体位、支持面も同時に評価します。

Q5.皮膚観察では発赤だけ見ればよいですか?

発赤だけでは不十分です。本人の通常の皮膚色や周囲皮膚との色調差、温度、組織の硬さ・軟らかさ、局所痛、表皮損傷なども確認します。皮膚色によっては赤みが明瞭でない場合もあるため、周囲や左右との違いを比較します。

次の一手|褥瘡予防全体とIAD鑑別へつなぐ

皮膚ケアだけでなく褥瘡予防全体を組み立てる場合は基本フローへ、尿・便による皮膚障害との区別に迷う場合はIADの鑑別へ進みます。


参考文献

  1. National Pressure Injury Advisory Panel, European Pressure Ulcer Advisory Panel, Pan Pacific Pressure Injury Alliance. Preventive Skin Care. In: Haesler E, ed. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. The International Guideline. 4th ed. 2026. 公式ページ.
  2. National Pressure Injury Advisory Panel, European Pressure Ulcer Advisory Panel, Pan Pacific Pressure Injury Alliance. Skin and Tissue Assessment. In: Haesler E, ed. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. The International Guideline. 4th ed. 2026. 公式ページ.
  3. 日本褥瘡学会編. 褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版. 東京: 照林社; 2022. 日本褥瘡学会.
  4. Beeckman D, Van Lancker A, Van Hecke A, Verhaeghe S. A systematic review and meta-analysis of incontinence-associated dermatitis, incontinence, and moisture as risk factors for pressure ulcer development. Res Nurs Health. 2014;37(3):204-218. DOIPubMed.
  5. Ryan H, Mitchell BG, Gumuskaya O, Hutton A, Tehan P. Moisturizers, Emollients, or Barrier Preparations for the Prevention of Pressure Injury: A Systematic Review and Meta-Analysis. Adv Wound Care (New Rochelle). 2023. DOIPubMed.
  6. Clinical Excellence Commission. Incontinence Associated Dermatitis (IAD) Best Practice Principles. 2021. PDF.
  7. Barton A, Broadhurst D, Hitchcock J, Lund C, McNichol L, Ratliff CR, et al. Medical Adhesive-Related Skin Injury at 10 Years: An Updated Consensus. J Wound Ostomy Continence Nurs. 2024;51(5S Suppl 5):S2-S8. DOIPubMed.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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