MFES の評価方法|転倒恐怖感を 0〜140 点で把握

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MFES( Modified Falls Efficacy Scale )とは?(転倒恐怖感=自己効力感を 0〜140 点で見える化)

評価 → 介入 → 再評価の臨床フローを見る( PT キャリアガイド #flow )

MFES( Modified Falls Efficacy Scale )は、日常活動に対して「転倒せずにできる自信」を 0〜10 点で自己評価し、14 項目の合計( 0〜140 点 )で転倒恐怖感( fear of falling )の強さを整理する心理尺度です。点が高いほど自己効力感が高く、転倒への不安が小さい状態を示します。

機能テスト( TUG 、 BBS 、歩行速度など)だけでは拾いにくい「自信のなさ」「行動の萎縮」を見える化できるため、病棟・外来・訪問リハでアプローチ設計に直結しやすいのが特徴です。関連:老年症候群ハブ

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MFES を使うと何が嬉しい?(「できる力」と「やる自信」のズレを拾う)

転倒恐怖感が強いと、身体機能が保たれていても屋外活動や難度の高い動作を避けやすくなります。MFES を入れておくと、機能( can )行動( do )のズレが把握しやすくなり、段階練習・環境調整・教育の優先順位が立てやすくなります。

また、合計点だけでなく「どの活動で自信が落ちているか」を特定できるため、訪問リハのゴール設定(買い物・横断・段差など)にそのまま落とし込めます。

転倒恐怖感(自己効力感)系スケールの使い分け(成人・臨床運用の目安)
尺度 回答 点数レンジ 得点が高いほど 向いている場面
FES(原版) 活動に対する自信 版により異なる 自信が高い 屋内中心の簡便な把握
FES-I 転倒への不安( 1〜4 ) 16〜64 不安が強い 不安の強さを「不安尺度」として追う( Short 版あり)
MFES 活動に対する自信( 0〜10 ) 0〜140 自信が高い 面接で具体化しながら、項目ごとに介入へ直結させたい

関連:転倒への不安を「不安尺度」として整理したい場合は FES-I のやり方とポイント もあわせて確認すると、評価設計がスムーズです。

実施の前提( 3 ステップ )

  1. 説明の統一:「 0=まったく自信がない/10=完全に自信がある。最近の生活を思い浮かべて答えてください。」を最初に共有します。
  2. 回答ルール:各項目を 0〜10 の整数で自己評価します。未経験・該当なしは空欄のままにし、備考に理由を残します。
  3. 合計と比較:合計は 0〜140。再評価は同条件(説明・環境・同伴状況など)をそろえ、個人内の変化を中心に見ます。

項目テーマ(言い換え例:臨床での“活動の切り出し”)

MFES は「活動に対する自信」を問うため、面接ではいつもの環境・いつもの条件を具体化して聴取するとブレが減ります。下の表は、臨床での説明や記録をしやすくするための「活動テーマ」例です( 1〜14 の番号に対応させて運用してください)。

MFES 活動テーマの言い換え例(成人・臨床運用のメモ)
No. 活動テーマ(例) 想定シーンのヒント
1屋内の移動(短距離歩行)方向転換・家具回避・急がない条件
2椅子の立ち座り座面高さ・ひじ掛けの有無は普段どおり
3ベッド上の起居・移乗寝返り → 端座位 → 立位の一連
4トイレ動作便座移乗・立位保持・後始末の場面
5入浴・シャワー段差・浴槽縁・濡れた床を想定
6更衣(特に下衣)片脚立位になる瞬間・手すりの有無
7整容・洗面洗面台前の前傾・片手作業
8上方リーチ(高い所の物を取る)戸棚上段・姿勢変化・足元の安定
9簡単な調理・配膳台所内の回遊・鍋や食器の運搬
10来客・電話などで玄関へ向かう急いで移動・開閉操作を含む
11屋外の平地歩行歩道の段差・路面状況・視線移動
12買い物(軽い荷物の持ち運び)店内歩行・レジ待ち・片手荷物
13道路の横断信号の時間・注意配分・スピード調整
14公共交通や段差のある環境手すり使用・段差昇降・混雑の想定

採点をブレさせない“アンカリング”( 0・5・10 を先に共有)

  • 0 点:転倒せずに行える自信がまったくない(強い不安・回避)。
  • 5 点:条件がそろえばできそう(迷いがある/状況次第)。
  • 10 点:普段どおり確実に行える自信がある。

最初にこの 3 点を共有してから各項目に入ると、日によるブレが減り、再評価の比較もしやすくなります。「普段の靴・普段の補助具・普段の手すり」で想像してもらうのがコツです。

採点のコツ(面接フレーズ付き)

  • 最近の実感で:「ここ 1〜2 週間の感じでお答えください。」
  • 状況を具体化:「いつもの靴・いつもの階段を想像してください。」
  • 点数の意味を固定:「点が高い・低いに良い悪いはありません。今の“正直な自信”で大丈夫です。」
  • 欠測の扱い:未経験・該当なしは空欄のまま。備考に「未実施」「環境なし」などを記録します。
  • 代理回答の注意:家族の補助は可ですが、本人の主観を優先して確認します。

結果の読み方(合計点+「屋外系」の偏りをセットで見る)

MFES は一律の基準点よりも、個人内の変化項目の偏りが臨床で効きます。合計点の変化に加えて、屋外系( No.11〜14 )が伸びているかを見ると、生活圏の広がりや行動の回復を捉えやすくなります。

MFES の解釈の型(臨床運用の目安)
パターン 見立て 次の打ち手(例)
機能は良いが MFES が低い 自信・注意配分・環境要因が主に効いている可能性 段階的な屋外課題、成功体験のログ、環境の微調整
屋内は高いが屋外が低い 生活圏の拡大にブレーキ(不安の源が屋外に集中) 荷物・横断・段差など「不安の源」を 1 つずつ分解して練習
合計点が上がっている 自己効力感の改善(介入の方向性が合っているサイン) 同条件で継続し、次の難度へ段階化

屋外系のミニ事例(介入へつなげるイメージ)

  • 平地歩行:家の周囲 100〜200 m を週 3 回。最初は同伴・歩行補助具あり → 単独へ段階化し、「今日はどこまで行けたか」を記録します。
  • 買い物:カゴの重さ 1〜2 kg から開始。レジ待ち(静止立位)を短 → 長へ段階化し、片手荷物の条件でも「転倒せずにできた」を積み上げます。
  • 道路横断:横断前停止 → 左右確認 → 一気に横断のリハーサル。信号の残秒表示や横断距離を固定し、成功条件を明確にします。
  • 段差・公共交通:手すりあり・ 1 段ずつから開始。段差の高さ・段数をログ化し、「この条件ならできる」を共有します。

現場のワークフロー( 5 分版 )

  1. 説明(アンカー共有)→ 記録シートを手元に。
  2. 14 項目を 0〜10 で聴取(活動テーマで具体化)。
  3. 合計を確認し、低スコアの項目から「次回までの改善策」を 1 つ決める。
  4. 必要に応じて、歩行速度・ TUG ・バランスなどの機能評価を追加し、ズレを整理する。
  5. 次回の目標と再評価日を記録(同条件で再評価)。

現場の詰まりどころ(よくあるつまずきポイント)

MFES 運用で起きやすい詰まりどころと対策(臨床の時短ポイント)
つまずき 起きること 対策 記録のコツ
一度きりで終わる 入退院時だけで変化が追えない 2〜4 週(訪問・外来)/病期の区切り(入院)で再評価 「次回予定日」と「同条件」を備考に残す
アンカー説明があいまい 日によって点が大きくブレる 最初の 1〜2 分を 0・5・10 のすり合わせに使う 説明スクリプトを固定してチーム共有
「できる/できない」と混同 遂行能力と自信が混ざる 「できるか」ではなく「転倒せずにできる自信」を繰り返す 低得点項目は「不安の源」を 1 行でメモ
項目の具体化が不足 本人の想像がバラつき、点に反映されにくい 靴・補助具・手すり・時間帯など「普段」を固定して聴取 「普段の条件:杖あり/手すりあり」などを併記
チーム共有が弱い 屋外や入浴などの不安がケアに反映されにくい 低得点上位 2 項目だけでもカンファで共有 「低得点=注意点」ではなく「次の課題」として共有

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※いずれもスコア記録・実施メモ用です(設問の原文は含みません)。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

所要時間と準備は?

目安は 3〜5 分です。説明スクリプト( 0・5・10 のアンカー )を共有し、記録シート(紙または電子)を用意します。時間が限られる場面では、合計点よりも「低得点の項目がどれか」を先に拾うと、次の介入が決めやすくなります。

支援機器(杖・手すり)がある場合はどうしますか?

普段どおりの条件を前提に回答してもらいます。補助具や手すりを使った状態での「自信」を評価することで、実際の生活に近い状態が把握できます。備考に「普段の条件(杖あり等)」を残すと再評価の比較が安定します。

点数はどこを見ればいいですか?

合計点に加えて、屋外系( No.11〜14 )や段差・荷物などの「不安が集中している項目」を重視します。低得点の上位 1〜2 項目を「次回までの課題」として具体化し、段階練習や環境調整へつなげると運用が回りやすくなります。

再評価の間隔はどのくらいが良いですか?

訪問・外来では 2〜4 週、入院では病期の区切りや退院前後が目安です。再評価では「説明」「環境」「同伴状況」などの条件をそろえて、個人内の変化を追うのがポイントです。

おわりに

MFES は、スクリプトの統一 → アンカー共有 → 14 項目の聴取 → 低得点項目の具体化 → 段階的な行動練習 → 同条件で再評価、という流れで回すと、転倒恐怖感をアプローチへ直結させやすくなります。機能評価だけでは見えにくい「自信のボトルネック」を拾い、生活範囲の拡大を現場で実装するための 1 枚として活用してみてください。

評価やアプローチを継続して回すには、時間設計やチーム連携の整え方も効いてきます。「面談準備チェック」と「職場評価シート」をまとめて見直したいときは /mynavi-medical/#download も参考になります。

参考文献

  1. Hill KD, Schwarz JA, Kalogeropoulos AJ, Gibson SJ. Fear of Falling Revisited. Arch Phys Med Rehabil. 1996;77(10):1025–1029. PubMed
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  3. Powell LE, Myers AM. The Activities-specific Balance Confidence (ABC) Scale. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 1995;50A(1):M28–M34. doi:10.1093/gerona/50a.1.m28. PubMed
  4. Yardley L, Beyer N, Hauer K, Kempen G, Piot-Ziegler C, Todd C. Development and initial validation of the Falls Efficacy Scale-International (FES-I). Age Ageing. 2005;34(6):614–619. doi:10.1093/ageing/afi196. PubMed
  5. Soh SLH, Lane J, Xu T, Gleeson N, Tan CW. Falls efficacy instruments for community-dwelling older adults: a COSMIN-based systematic review. BMC Geriatr. 2021;21(1):21. doi:10.1186/s12877-020-01960-7. PubMed
  6. Lavedán A, Viladrosa M, Jürschik P, et al. Fear of falling in community-dwelling older adults: A cause of falls, a consequence, or both? PLoS ONE. 2018;13(3):e0194967. doi:10.1371/journal.pone.0194967. PubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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