【筋力と筋肉量の評価方法】ポイントを解説【四肢周径と筋力検査】

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基礎的評価
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リハビリくん
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記事の内容
  1. この記事は「筋力と筋肉量の評価方法」をキーワードに内容を構成しています
  2. 筋力と筋肉量の評価は、身体機能や ADL 能力の把握、リハビリ目標の設定、効果判定において重要となります
  3. 筋力は徒手筋力テスト(MMT)や握力測定、等速性筋力測定機器などで評価され、筋肉量は体組成計や超音波、CT・MRI などで測定されます
  4. これらの評価によりサルコペニアやフレイルの早期発見が可能となり、適切な介入を行うことができます
  5. また、高齢者や慢性疾患患者の転倒リスクの予測、栄養指導との連携にも活用され、全身の健康管理やQOL向上に寄与する有効な手段となります
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理学療法士として以下の経験と実績を持つリハビリくんが解説します♪

リハビリくんの実績
  1. rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設
  2. 2025 年 6 月時点:178 記事公開(月間 3 万 PV)
  3. 実務経験(医療機関、療養型施設、デイケア、訪問)
  4. 講師活動(診療報酬、褥瘡等をテーマに 4 回実施)
  5. 脳卒中 認定理学療法士
  6. 褥瘡 創傷ケア 認定理学療法士
  7. 3 学会合同呼吸療法認定士
  8. 福祉住環境コーディネーター 2 級
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筋肉量の評価方法

「筋肉量が増える」=「力が強くなる」とイメージする方が多いかもしれませんが、実は筋肉量は力だけに関係しているのではなく、さまざまな方面に好影響を与える因子となります。

筋肉は「代謝を上げるエンジン」とも呼ばれ、筋肉量が多いほど基礎代謝が高くなります。基礎代謝が高くなる以外にも、筋肉量が増えることで以下のような効果があることが報告されています。

  • 太りにくい体質になる
  • 骨の強さを保つ
  • 姿勢が改善する
  • 血糖値の上昇を抑える
  • 精神の安定やメンタル面が強化される
  • 肌や美容に良い影響を与える

筋肉量は栄養管理においても重要な項目となります。低栄養診断基準となる GLIM 基準にも筋肉量の評価項目が含まれています。

GLIM 基準では、筋肉量減少の判定方法として以下の方法を用いることを推奨しています。

  • 生体電気インピーダンス法(BIA)
  • 二重エネルギー X 線吸収測定法(DXA)
  • CT や MRI、超音波装置などの測定装置

また、すべての医療機関や施設などで上記の測定を行うことは設備面の問題で困難ということもあるため、代理指標として下腿周囲長や上腕筋囲長などの身体計測があげられています。

臨床でよく使われている「生体電気インピーダンス法(BIA)」と「四肢周径測定」について詳しく解説させていただきます。

生体電気インピーダンス法(BIA)

生体電気インピーダンス法(BIA 法)では、生体に微弱電流を通し組織の電気抵抗の違いを利用することで、体組成(骨格筋や脂肪、水分など)を推定することができます。

BIA 法によって四肢の筋肉量を算出し、この四肢の筋肉量を身長(m)² で補正した値を骨格筋指数(SMI)と呼びます。

骨格筋指数(SMI)= 四肢筋肉量 ÷ 身長(m)²

AWGS 2019 によるサルコペニアの診断基準では、骨格筋指数(SMI)が男性 7.0 kg/m² 未満、女性 5.7 kg/m² 未満で筋肉量低下と定められています。

四肢周径測定

生体電気インピーダンス法(BIA 法)は特別な機器が必要になることが最大の欠点になりますが、今度は巻尺さえあれば測定することができる「四肢周径測定」について解説していきます。

上腕周径、上腕筋囲、大腿周径、下腿周径などの測定は、筋肉量の評価として簡便な方法となります。

これらの指標は栄養状態のほか、筋力トレーニングの効果や廃用症候群の症状の評価としても有効となります。

しかし、欠点として測定技術が必要なことがあげられ、検者内および検者間誤差が生じやすい測定(評価)となります。

また、測定方法についても完全に統一されているわけではなく、それぞれの研究や報告によって若干異なる部分もあります。臨床で重要になることは、同一患者に対して統一した方法で測定するように心掛ける必要があります。

一般的な測定方法とポイントについて以下に解説します。

上腕周径、上腕筋囲

上腕周径(arm circumference)は略称で AC とも呼ばれています。

【上腕周径の測定方法】

  • 利き腕と反対側の上腕(上肢に麻痺がある場合は非麻痺側の上腕)を屈曲させ、肩峰と尺骨肘頭の中間地点の周径を計測する

上腕筋囲(arm muscle circumference)は略称で AMC とも呼ばれています。上腕筋囲(AMC)は、上腕周径(AC)と上腕三頭筋皮下脂肪厚(TSF)から推定式を用いて算出します。

【上腕筋囲の推定式】

AMC(cm)= 上腕周囲径(cm)- 上腕三頭筋皮下脂肪厚(mm)× 0.314

大腿周径

大腿部の筋肉量は身体機能と関連し、栄養状態の評価や筋の肥大や萎縮の程度を判定することができます。

大腿周径については計測部位によって数値が大きく変わるため、正確なランドマークで計測することが重要になります。大腿周径の計測部位としては一般的に以下の箇所が用いられています。

  • 膝蓋骨直上
  • 膝蓋骨上縁
  • 膝蓋骨上縁より 5 cm 上
  • 膝蓋骨上縁より 10 cm 上
  • 膝蓋骨上縁より 15 cm 上
  • 膝蓋骨上縁より 20 cm 上

大腿周径の計測部位は上記のようにいくつかありますが、計測部位によって反映するものが異なると考えられています。

先行研究から例をあげると、膝蓋骨直上は関節腫脹の程度、膝蓋骨上縁より 5 ~ 10 cm 上は内側広筋と外側広筋の大きさ、膝蓋骨上縁より 15 cm 以上上では大腿全体の筋群の大きさを反映していると報告されています。

これらのことから大腿周径では、計測する目的に応じて計測部位を選択する必要があります。また、大腿周径では筋肉量だけではなく皮下脂肪も反映することに留意する必要があります。

下腿周径

下腿周径は骨格筋指数(SMI)と相関することが報告されており、四肢周径の中でも特に重要な指標となります。

サルコペニアや低栄養、嚥下障害のカットオフ値を決定する目的などで、最近の研究でも多く使用されています。

下腿周径の計測部位は基本的にふくらはぎの最も太い部分とします。右下腿、左下腿、あるいは両側面を計測してもよいと考えられますが、片麻痺の場合は非麻痺側での計測が推奨されています。

計測肢位は座位または立位となっていますが、臥位姿勢で計測する場合もあるため、安楽な姿勢で計測できればよいと考えられます。

下腿は浮腫の症状が現れやすいため、浮腫の評価も併せて行うことができます。先行研究によると、浮腫を認める場合には男性 2.0 cm 程度、女性 1.6 cm 程度、下腿周径が増加するの報告もなされています。

AWGS 2019 によるサルコペニアの診断基準では、下腿周径が男性 34 cm 未満、女性 33 cm 未満でサルコペニアの疑いがあるとされています。

筋力の評価方法

続いて筋力の評価方法について解説します。読者の皆様もご存知の通り、筋力評価はリハビリテーションに欠かすことができない重要なアウトカムになります。

筋力は身体機能や起居動作能力、活動・参加にも強く相関しますが、栄養状態の変化を鋭敏に反映する指標にもなります。

例をあげると、栄養状態が改善(もしくは悪化)すると、体重や筋肉量より先に、握力が増加(もしくは減少)することが報告されています。そのため、筋力評価は栄養状態のモニタリングとしても重視されています。

筋力の評価方法には握力測定の他にもいくつか種類があるため、項目ごとに解説していきます。

握力

握力は全身の筋力評価の代用となり、栄養状態とも相関することが報告されています。

上図のような一般的に使用されているタイプの握力計をスメドレー式と呼びますが、スメドレー式の場合は、立位あるいは座位で上肢を下垂させた肘伸展位で測定を行います。

握力計の握り方は、示指の PIP 関節屈曲 90 °位を目安に調整します。この状態で最大の力で握り、約 5 秒間維持するように指示して計測します。

左右 2 ~ 3 回程度測定し、最大値を記録します。1 回ごとに 15 秒以上の休憩を入れるものとします。

AWGS 2019 によるサルコペニアの診断基準では、握力が男性 28 kg 未満、女性 18 kg 未満で筋力低下と定められています。

MMT (徒手筋力検査)

MMT(Manual Muscle Testing)とは、徒手と重力の抵抗を利用した筋力の評価方法であり、日本語では徒手筋力検査とも呼ばれ、臨床で広く使用されています。

MMT では、検査者が徒手抵抗と重力に抵抗した動きを基準に、筋力を 0 ~ 5 の 6 段階で評価します。MMT 0 は筋肉の収縮が認められず最も筋力が弱い状態、MMT 5 が最も筋力が強い状態を示します。

  1. Normal:患者が自動運動で全可動域を重力に抗して動かすことができ、検者による最大抵抗に対抗してその肢位を保持できる
  2. Good:患者が自動運動で全可動域を重力に抗して動かすことができ、検者による強度ないし中等度の抵抗に対抗してその肢位を保持できる
  3. Fair:患者が自動運動で全可動域を重力に抗して動かすことができるが、徒手抵抗が加わるとその肢位を保持できない
  4. Poor:重力の影響を除いた肢位で自動運動で全可動域を動かすことができる
  5. Trace:関節運動は起こらないが、筋収縮が触知できる
  6. Zero:触知できる筋収縮がない

徒手抵抗を加える「4:Fair」と「5:Normal」の判定には、主観が含まれるため検者間でばらつきが生じることが欠点となり、MMT の評価の難しさでもあります。

HHD(ハンドヘルドダイナモメーター)

HHD は、より客観的な筋力測定を実現させるための機器になります。機器は小型で軽量であるため持ち運びやすく、数値で筋肉の力を評価できるため、筋力検査にありがちな主観的な判断を減らすことができます。

機器の操作は簡単であるため誰でも使用できますが、筋力を測定したい筋肉に対して、ダイナモメーターを正確に当てて計測する必要があるため、正しい測定方法でないと誤差が生じやすいというデメリットがあります。

検者が徒手で固定する測定方法では誤差が生じやすいため、専用の固定ベルトを使用すると測定の再現性、妥当性が向上すると報告されています。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

こちらの記事では「筋力と筋肉量の評価方法」をキーワードに内容を構成させて頂きました。

こちらの記事を読むことで筋肉量や筋力の評価方法についての理解が深まり、臨床に欠かすことができない筋力評価および効果判定の一助へとなれば幸いです。

参考文献

  1. 筋肉量・筋力.臨床栄養.143(3),p276-280,2023.
  2. 永野雄介.今さら聞けない基本の理学療法 ~機器を使用した筋力評価~.高知県理学療法 .31,p17-18,2024.
  3. 下平雅規,長谷川一幾,池田義明,三井憲,水上佳樹,堀米直人.NST 介入時の上腕筋囲長は年齢・性別・炎症とは独立して CONUT 値と相関する.JSPEN.Vol.1(3),2019,p128-133.

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