ジェントルスティムの使い方|禁忌・設定と記録シートPDF

臨床手技・プロトコル
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ジェントルスティムは禁忌・目的・中止条件を決めてから使用します

嚥下リハで使用する場合も、最初に添付文書、施設手順、医師・歯科医師の指示を確認します。

栄養・嚥下ハブで全体像を確認する

ジェントルスティムを安全に使用するには、電極を貼る前に禁忌、使用目的、観察項目、中止条件を固定することが重要です。本記事では、嚥下リハで使用する医療従事者に向けて、開始前確認から通電、終了後の観察・記録までを順番に整理します。

なお、添付文書上の使用目的は、経皮的な鎮痛および筋萎縮改善のための神経・筋刺激です。嚥下障害への干渉電流刺激は複数の臨床研究で検討されていますが、添付文書に記載された使用目的とは区別して考える必要があります。実施時は、最新の添付文書と取扱説明書、施設の運用基準を優先してください。

開始前に確認する4項目

開始前には、適応判断、禁忌、電極を貼る部位、観察方法の4項目を確認します。前回問題なく実施できた患者でも、体調、皮膚状態、医療機器の使用状況は変わるため、毎回確認します。

  1. 使用目的:今回の実施で、何を観察するのかを1つ決めます。
  2. 禁忌・慎重適用:植込み型電子医療機器、妊娠、急性疾患などの該当を確認します。
  3. 貼付部と機器:皮膚、電極、コード、本体に異常がないか確認します。
  4. 中止条件:患者の不快、皮膚反応、全身状態の変化が生じた場合の対応を決めます。
ジェントルスティム実施前後の安全確認フロー。使用目的、禁忌、皮膚・電極・機器、通電中の観察、終了後の記録を順番に示す図版
ジェントルスティム実施前後の安全確認フロー

ジェントルスティムとは

ジェントルスティムは、周波数の異なる2つの電流を交差させる干渉電流型低周波治療器です。添付文書では、経皮的に鎮痛および筋萎縮改善を目的として神経・筋刺激を行う機器に分類されています。

一方、嚥下障害を対象とした研究では、頸部への干渉電流経皮的感覚刺激として、感覚閾値付近の刺激が検討されています。筋収縮を目的とする神経筋電気刺激とは、想定される刺激方法と目的が異なります。

添付文書上の使用目的と嚥下リハでの研究的応用
区分 内容 確認先
添付文書上の使用目的 経皮的な鎮痛および筋萎縮改善のための神経・筋刺激 添付文書、取扱説明書
嚥下リハでの応用 頸部への干渉電流経皮的感覚刺激として、嚥下頻度、咳反射、経口摂取などへの影響が研究されています 原著論文、施設手順、医師・歯科医師の指示
本記事で扱う範囲 禁忌、開始前確認、通電中の観察、終了後の記録 本記事と記録シート

禁忌・禁止と慎重適用

禁忌・禁止に該当する場合は実施せず、慎重適用に該当する場合は医師の判断を確認します。以下は添付文書をもとに整理していますが、実際には最新版の添付文書と取扱説明書を確認してください。

ジェントルスティムの禁忌・禁止・慎重適用
区分 主な該当条件 実務上の対応
使用しない患者 妊産婦 安全性が確認されていないため使用しません
介護者なしで使用しない患者 12歳以下の子ども、意思表示ができない患者 患者本人だけで操作・装着させません
併用禁忌 ペースメーカー、植込み型除細動器などの植込み型電子医療機器、電気メス 併用しません
慎重適用 悪性腫瘍、感染症、血圧異常、急性疾患、極度の衰弱、有熱性疾患、結核性疾患、不整脈など 医師の判断に従い、実施可否と観察条件を決めます
医師判断が必要 伝染性疾患、不整脈、頸動脈洞反射に対する感受性がある患者など 自己判断で開始しません

電極を貼らない部位

  • 胸部周辺、胸郭と背中上部を挟む配置
  • 頭部を交差させる配置
  • 目、口
  • 頸動脈洞反射に対する感受性が確認されている患者の頸部前面
  • 皮膚病変、損傷、炎症がある部位
  • 急性損傷や炎症のある部位
  • 静脈や動脈の血栓症、血栓性静脈炎が疑われる部位とその周囲
  • 陰部

嚥下リハでは頸部へ電極を貼付する報告がありますが、貼付位置を自己流で決めるのではなく、取扱説明書、施設手順、研修で確認した方法に従ってください。

通電を止めて確認する条件

電極や機器の異常、強い不快感、皮膚反応、全身状態の変化があれば、一度通電を止めて原因を確認します。出力を下げるだけで継続せず、患者・皮膚・電極・機器を順番に確認します。

添付文書・取扱上の注意から確認すること

  • 電極コード、ACアダプター、本体に断線や損傷がある
  • 電極が劣化している、均一に密着していない
  • 電極を貼った部位に傷、かぶれ、異常が生じた
  • 通電中に電極位置を変更する必要が生じた
  • 機器が正常に作動しない、異常表示がある
  • 患者が刺激を不快または苦痛と訴える

施設の安全管理基準として決めておくこと

  • 全身症状:悪心、めまい、顔色不良、冷汗、呼吸苦、意識・覚醒状態の変化
  • 循環・呼吸:施設基準を超える血圧、脈拍、呼吸数、SpO₂の変化
  • 行動反応:強い不穏、拒否、電極を外そうとする動作
  • 嚥下関連:咳込み、湿性嗄声、分泌物増加、呼吸状態悪化など、継続が不適切と判断される変化

バイタルの具体的な中止値は、本機器固有の数値として一律に決めず、患者の疾患、安静時値、医師指示、施設のリハビリ中止基準に従います。

使い方の基本フロー

実施は「目的決定→禁忌確認→皮膚・機器確認→貼付・設定→観察→終了後記録」の順にそろえます。電極位置や出力を毎回変更すると比較できなくなるため、条件を記録して再現できるようにします。

  1. 目的を1つ決める
    咳反射、唾液嚥下、嚥下頻度、食前後の状態など、今回確認する項目を決めます。
  2. 禁忌と体調を確認する
    植込み型医療機器、急性疾患、発熱、循環・呼吸状態、意思表示の可否などを確認します。
  3. 皮膚・電極・コードを確認する
    傷、発赤、発汗、体毛、電極の劣化、コードの断線、接続不良を確認します。
  4. 電極を貼付して設定する
    電極位置は取扱説明書と施設手順に従います。通電中に電極位置を変更しません。
  5. 通電中の反応を観察する
    表情、訴え、皮膚、呼吸、咳、嚥下、声質、バイタルなど、事前に決めた項目を確認します。
  6. 終了後に再確認して記録する
    電極を外して皮膚を確認し、実施条件、反応、中止の有無、次回の条件を記録します。

時間・強度・頻度の考え方

機器の設定可能範囲と、研究で使用された条件を分けて考えます。研究の条件は特定の対象者と研究計画に基づくものであり、そのまま全患者に適用する推奨値ではありません。

ジェントルスティムの設定と研究報告の例
項目 確認できる内容 注意点
機器のタイマー 5分、10分、15分、20分、25分、30分 設定可能範囲であり、推奨実施時間を意味しません
刺激強度 研究では、軽い振動・くすぐったさを感じ、筋収縮を認めない感覚閾値付近が使用されています 患者の感覚、皮膚状態、機器の表示値を確認します
RCTの一例 15分/回、1日2回、週5日、3週間 嚥下障害患者を対象とした研究条件です
COPD研究の一例 30分/回、1日2回、10日間 安定期COPD患者10名を対象とした予備的研究です

時間や出力を決める際は、機器の上限まで使用するのではなく、目的、患者の反応、疲労、皮膚状態、施設手順を基準にします。

通電中と終了後に観察すること

通電の有無だけでなく、刺激条件と同じ観察項目をセットで記録します。その場の変化と、一定期間後の変化を分けると、継続の判断がしやすくなります。

観察項目と記録方法
時点 観察する項目 記録例
開始前 覚醒、呼吸、咳、声質、嚥下、皮膚、バイタル 安静時SpO₂、湿性嗄声の有無、空嚥下の回数など
通電中 刺激感、不快感、表情、咳、嚥下、呼吸、皮膚 感覚の訴え、咳の出現、空嚥下の変化など
終了直後 皮膚、全身状態、咳、声質、嚥下 発赤・疼痛なし、実施前後の変化など
一定期間後 症例の目的に対応する同一指標 RSST、FOIS、EAT-10、摂取状況などから必要なものを選択

RSST、FOIS、EAT-10などをすべて使用する必要はありません。患者の課題と今回の目的に対応し、同じ条件で再評価できる指標を選びます。

記録例

目的:食前の唾液嚥下と咳反応を確認。禁忌該当なし。皮膚・電極異常なし。施設手順に従い頸部へ貼付し15分実施。刺激中の疼痛・不快なし。終了後に皮膚発赤なし。空嚥下回数と咳反応を記録し、次回も同条件で再評価する。

記録には、少なくとも目的、貼付部、実施時間、刺激条件、不快感、皮膚状態、観察結果、次回条件を残します。

よくある失敗と回避策

反応が弱いときに、すぐ出力や電極位置を変更しないことが重要です。まず、目的、体位、電極の密着、患者の感覚、観察方法を見直します。

ジェントルスティムのよくある失敗
失敗 問題点 回避策
前回と同じ患者なので禁忌確認を省く 体調や使用機器が変わっている可能性があります 開始前チェックを毎回実施します
反応が弱いため出力を上げ続ける 皮膚刺激や不快感が増え、目的から外れる可能性があります 電極の密着、位置、目的、評価方法を先に確認します
通電中に電極を動かす 痛みや皮膚トラブルにつながる可能性があります 電源を切ってから状態を確認し、必要に応じて再装着します
「15分実施」とだけ記録する 効果判定や次回条件の比較ができません 刺激条件、患者反応、皮膚状態、次回条件を併記します
研究条件を全患者に当てはめる 対象疾患や安全条件が異なります 研究条件は参考情報とし、個別判断と施設手順を優先します

ジェントルスティム記録シートPDF

記録シートでは、禁忌確認、実施条件、通電中の反応、終了後の皮膚状態、次回条件を1枚で整理できます。施設の手順書や医師指示の代わりではなく、確認・申し送りを補助する目的で使用してください。

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FAQ

各項目名をタップすると回答が開きます。

ジェントルスティムは1回何分実施しますか?

機器のタイマーは5〜30分に設定できますが、これは推奨時間ではなく設定可能範囲です。研究では15分または30分の条件が使用されていますが、対象者や研究計画が異なります。施設手順、目的、患者の反応、医師指示を優先してください。

反応が弱い場合は出力を上げてもよいですか?

すぐに出力を上げるのではなく、電極の密着、貼付位置、体位、患者の感覚、観察方法を確認します。嚥下障害を対象とした研究では、筋収縮を生じない感覚閾値付近の刺激が使用されています。

ペースメーカーやICDを使用している患者に使えますか?

ペースメーカー、植込み型除細動器などの植込み型電子医療機器との併用は禁忌です。使用しないでください。

不整脈がある患者に使えますか?

不整脈がある患者は、添付文書上、医師の判断に従い慎重に適用する対象です。自己判断で開始せず、医師指示と施設手順を確認します。

嚥下障害に対する使用は承認された使用目的ですか?

添付文書上の使用目的は、経皮的な鎮痛および筋萎縮改善のための神経・筋刺激です。嚥下障害に対する頸部干渉電流刺激は臨床研究で検討されていますが、添付文書上の使用目的とは区別して判断する必要があります。

次の一手


参考文献

  1. 株式会社フードケア.ジェントルスティム.
  2. 株式会社フードケア.ジェントルスティム添付文書.第4版.2021年9月21日.
  3. Maeda K, Koga T, Akagi J. Interferential current sensory stimulation, through the neck skin, improves airway defense and oral nutrition intake in patients with dysphagia: a double-blind randomized controlled trial. Clin Interv Aging. 2017;12:1879-1886. doi: 10.2147/CIA.S140746.
  4. Hara Y, Nakane A, Tohara H, et al. Cervical interferential current transcutaneous electrical sensory stimulation for patients with dysphagia and dementia in nursing homes. Clin Interv Aging. 2021;15:2431-2437. doi: 10.2147/CIA.S274968.
  5. Yoshimatsu Y, Tobino K, Nishizawa S, Yoshimine K, Oku Y. Interferential current stimulation for swallowing disorders in chronic obstructive pulmonary disease: a preliminary study. Prog Rehabil Med. 2022;7:20220007. doi: 10.2490/prm.20220007.

著者情報

rehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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