家屋調査チェックリスト【PDF付】PTが見る項目・採寸・理由書

制度・実務
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家屋調査は「動作を見る→採寸する→理由書へ落とす」の順で進める

家屋調査では、住宅の各場所を眺めるだけでなく、困っている動作を再現し、提案に必要な数値を測り、理由書に使える所見まで残すことが重要です。本記事では、退院前訪問や住宅改修に関わるPT向けに、玄関・トイレ・浴室・寝室で見る動作、採寸項目、写真・図面の残し方、理由書の型を整理します。現地で使えるA4記録シートPDFもダウンロードできます。

この記事の範囲:現地で何を見るか、何を測るか、所見をどう理由書へつなげるかを扱います。訪問前の調整、参加職種、持ち物、訪問後の連携まで含む全体像は親記事で確認してください。

退院前訪問の全体像を見る

家屋調査の現場フローは5ステップで固定する

家屋調査では、最初に本人・家族が困っている動作を1つ選び、その動作が崩れる場面から確認します。場所を順番に見るだけでは、採寸値と提案内容が結びつかないことがあるためです。

家屋調査の5ステップと持ち帰る記録
ステップ 現地で確認すること 残す記録
① 目的を決める 本人・家族が最も困っている動作と、今回確認する代表動作を一致させる 「今回の焦点:〇〇動作」と一文で残す
② 動作を見る 普段の方法で動作してもらい、手が離れる、足が止まる、姿勢が崩れる瞬間を特定する 失敗した位置、動作相、介助内容を残す
③ 数値を取る 提案に必要な高さ、幅、段差、奥行、扉干渉、把持点候補を測る 数値と測定位置・条件をセットで残す
④ 代替方法を試す 配置変更、動作手順、福祉用具、介助位置の変更で改善するか確認する 「何を変えたら、何が改善したか」を残す
⑤ 理由書へ落とす 困難、評価所見、環境要因、提案、期待効果の順で整理する 理由書に使用できる一文を現地で下書きする
家屋調査で動作観察、必要な採寸、理由書への落とし込みをつなげる方法
場所を一律に測るのではなく、困っている動作を確認し、その動作の提案に必要な数値を採寸して理由書へつなげます。図中の数値は考え方を示す例であり、実際の住環境を測定して記録してください。
現地で迷ったときの戻り方

確認範囲を広げるのではなく、失敗場面を1つに絞る→提案に必要な数値を残す→理由書の一文を作るの順に戻します。

家屋調査記録シートPDFをダウンロードする

現地で記録の順番をそろえられるよう、A4・1枚完結の家屋調査記録シートを用意しました。代表動作、場所別所見、採寸値、提案内容、理由書の下書きを1枚にまとめられます。

家屋調査 記録シートPDFを開く

端末へ保存するか、印刷して現地で記入してください。

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場所別チェックでは代表動作と必要な数値をセットで確認する

玄関、トイレ、浴室、寝室を確認するときは、設備の有無だけでなく、その場所で行う一連の動作を見ます。同じトイレでも、立ち上がり、方向転換、衣服操作、着座では、必要な支持物や介助位置が異なります。

場所別に見る動作・採寸値・判断ポイント
場所 まず見る動作 残す数値 判断ポイント
玄関 段差の上り下り、履物の着脱、屋内外への方向転換 段差高、踏み面、上がり框の高さ、把持点までの距離 下肢を上げられないのか、支持物へ手が届かないのか、履物操作で姿勢が崩れるのかを分ける
トイレ 進入、方向転換、衣服操作、立ち座り、退出 便座高、扉の有効幅、便器周囲の幅、手すり候補位置 立ち上がりだけでなく、衣服操作で片手支持になる場面と介助者の立ち位置を見る
浴室 出入り、洗い場の移動、浴槽またぎ、洗体時の姿勢保持 出入口段差、洗い場の幅・奥行、浴槽縁高、把持点候補位置 乾いた環境だけでなく、濡れた床や入浴後の疲労を想定して判断する
寝室 起き上がり、端座位、立ち上がり、ベッド周囲の方向転換 ベッド高、ベッド周囲の空き、最狭部、手が届く範囲 改修前に、ベッドの向きや配置変更だけで改善できないか確認する
廊下・居室 主動線の通過、方向転換、扉操作、補助具を使用した移動 最狭部、有効幅、段差、家具・敷物・コードの位置 一度通れるかではなく、夜間や疲労時にも安全に繰り返せるかを見る

採寸は提案と理由書に使う数値へ絞る

家屋内のすべてを細かく測る必要はありません。採寸値は、動作困難の説明、用具や改修方法の検討、施工者との共有、施工後の再評価に使えるものへ絞ります。

数値だけを記録すると、後から測定場所が分からなくなることがあります。「トイレ幅700mm」ではなく、どの位置の有効幅を、扉をどの状態で測ったかまで残してください。

家屋調査で残す採寸値の最小セット
項目 測る理由 記録例
段差高 足を上げる量、踏み替え、またぎ動作の難しさを具体化する 玄関上がり框:______ mm
踏み面・奥行 足底を置ける範囲と、動作を分割できるか確認する 踏み面:______ mm
有効幅 身体、杖、歩行器、車いす、介助者が通過できるか確認する 扉全開時の有効幅:______ mm
便座・座面・ベッド高 立ち上がり時の下肢負担と、足底接地の条件を確認する 床面から座面上端:______ mm
把持点候補 動作中に手が届き、力を加えやすい位置か確認する 床からの高さ:______ mm/基準点からの距離:______ mm
旋回スペース 方向転換、補助具操作、介助者の回り込みが可能か確認する 幅:______ mm/奥行:______ mm
扉の干渉 開閉時に本人、補助具、介助者の立ち位置が妨げられないか確認する 開閉方向:______/干渉箇所:______
固定条件 手すりなどの提案が施工可能かを専門職へ確認するため 下地:有/無/未確認

下地や施工可否は、PTだけで確定せず、施工事業者などの専門職による確認につなげてください。

住宅改修を決める前に配置・用具・介助方法を試す

家屋調査では、動作が難しいからといって直ちに工事へ結びつけるのではなく、配置変更、動作手順、福祉用具、介助者の立ち位置で改善するかも確認します。

  • 家具やベッドの位置を変える
  • 動作方向や立ち位置を変える
  • 既存の支持物を安全に使用できるか確認する
  • 福祉用具を仮に設置して動作を確認する
  • 介助者の位置や介助方法を変える

試した方法と変化は、「配置変更後は方向転換時の接触がなくなった」のように記録します。改修と福祉用具のどちらを優先するか迷う場合は、住宅改修と福祉用具の使い分けで判断軸を確認してください。

写真・図面は動作と採寸位置が分かる形で残す

写真は住宅の全景を残すだけでなく、どの動作の、どの瞬間に、どこで問題が生じたかを共有できるように撮影します。施工前後の比較や再評価に使用する場合は、同じ位置と向きから撮ることが重要です。

  1. 全景写真で本人の進行方向と設備の位置関係を残す
  2. 段差、足元、把持点候補を近接写真で残す
  3. 扉を開閉した状態で、有効幅と干渉箇所を残す
  4. 介助が必要な場合は、介助者の立ち位置と回り込みを残す
  5. 写真または図面に採寸位置と数値を書き込む
  6. 施工後は可能な範囲で同一アングルから撮影する
写真を撮る前に確認すること

本人・家族へ撮影目的と共有範囲を説明し、同意を得ます。氏名、郵便物、家族写真など、評価に不要な個人情報が写り込まないようにしてください。

理由書は「困難→所見→環境要因→提案→期待効果」で整理する

住宅改修が必要な理由は、抽象的な危険性だけでなく、対象動作、観察した事実、住環境との関係が分かるように整理します。「転倒リスクが高い」だけで終わらせず、どの場面で何が起きたかを示してください。

家屋調査の所見を理由書へ変換する型
要素 記載する内容 文章の骨組み
対象動作の困難 本人が困っている生活動作と必要な介助 「〇〇動作では、△△のため介助を要している」
評価所見 動作中に観察した具体的な事実 「□□の場面で手が離れ、足が止まり、姿勢が後方へ崩れた」
環境要因 動作を妨げている段差、幅、配置、把持点など 「把持できる位置に支持物がなく、段差高〇mmへの対応が難しい」
提案内容 環境要因と対応した改修・調整内容 「〇〇の位置へ△△を設置し、動作中の支持を確保する」
期待効果 安全性、介助量、動作の継続性への効果 「支持を確保することで、転倒リスクと介助量の軽減が見込まれる」
再評価 施工後に確認する動作と条件 「施工後は同一動作を再評価し、介助量と動作の安定性を確認する」

この表は、そのまま転記する完成文ではありません。本人の身体状況、実際に観察した動作、住環境、提案内容に合わせて具体化してください。

家屋調査で起こりやすい5つの失敗

家屋調査の提案がずれる原因は、工事方法よりも、その前段階にある動作評価や記録の不足であることがあります。特に、場所だけを見て動作を見ない、採寸値の用途が決まっていない、介助者や夜間条件を確認していない場合は注意が必要です。

家屋調査で起こりやすい失敗と修正方法
失敗 問題点 修正方法 記録例
場所だけを確認する 設備の有無は分かっても、動作が崩れる原因を特定できない その場所で最も困る代表動作を再現する 「焦点:浴室出入口での一歩目」
数値を多く測りすぎる 提案や理由書に使う数値が埋もれる 動作困難と提案に関係する数値へ絞る 「便座高と右側把持点までの距離を記録」
本人だけを評価する 介助者の足場、姿勢、回り込みが提案へ反映されない 普段の介助方法と介助者の立ち位置を確認する 「後方へ回り込む空間が不足」
日中の良好な条件だけで判断する 夜間、疲労時、濡れた床などで動作が崩れる可能性が残る 普段失敗しやすい時間帯や条件を聴取する 「夜間は照明操作後の方向転換でふらつく」
工事案を先に決める 配置変更や福祉用具で対応できる可能性を確認できない 可逆的な方法を試し、残った問題へ改修を検討する 「配置変更では改善せず、固定支持物が必要」

施工後は同じ動作と条件で再評価する

住宅改修は、施工が完了した時点ではなく、本人が実際に使用し、安全性と介助量が改善したことを確認して一区切りとなります。施工前に確認した代表動作を、可能な限り同じ条件で再評価してください。

  • 代表動作を最後まで行えるか
  • 手が離れる、足が止まる、姿勢が崩れる場面が変化したか
  • 必要な介助量と介助者の姿勢が変化したか
  • 手すりや支持物へ無理なく手が届くか
  • 扉、補助具、家具との新たな干渉がないか
  • 本人・家族が実際の生活で使用できているか
  • 追加の指導、用具調整、再検討が必要か

家屋調査チェックリストのよくある質問

質問をタップすると回答が開きます。

家屋調査では最初にどこを見ればよいですか?

場所ではなく、本人・家族が最も困っている動作から確認します。トイレの立ち上がり、浴室への出入り、玄関段差など、転倒や介助量に直結する代表動作を1つ選ぶと、その後の採寸と提案をつなげやすくなります。

家屋調査で最低限測る項目は何ですか?

代表動作に関係する段差高、有効幅、座面・便座・ベッドの高さ、把持点候補、旋回スペースを優先します。必要に応じて踏み面、扉干渉、浴槽縁高も測ります。数値だけでなく、測定位置と扉の開閉状態などの条件も残してください。

家屋調査では本人が不在でも評価できますか?

採寸や設備確認はできますが、実際の動作、介助量、手の届く範囲、補助具との干渉は十分に確認できません。本人が同行できない場合は、病院などで確認した動作能力と住環境情報を照合し、未確認事項を明確に残します。

住宅改修の理由書はどの順番で書けばよいですか?

「対象動作の困難→評価所見→環境要因→提案内容→期待効果」の順に整理します。「危険」「困難」だけで終わらず、どこで手が離れたか、どの段差で足が止まったかなど、観察した事実を示します。

住宅改修と福祉用具はどちらを先に検討しますか?

配置変更、動作手順、福祉用具などの可逆的な方法で改善するかを確認し、問題が残る部分について改修を検討する方法があります。ただし、重大な事故へ直結する環境では、関係職種と早めに固定的な対策を検討してください。

次の一手

家屋調査の結果を住宅改修へつなげる場合は、対象となる工事、必要書類、申請時期、自治体ごとの確認事項を整理します。


参考資料

  1. 厚生労働省老健局. 福祉用具・住宅改修. 社会保障審議会介護給付費分科会(第220回)資料7. 2023. PDF
  2. 厚生労働省. 福祉用具・住宅改修の概要. PDF
  3. 国土交通省. 建築物におけるバリアフリーについて. Web
  4. 国土交通省. 地域で自立して居住することを目指して―障害者の居住にも対応した住宅の設計ハンドブック. Web

著者情報

rehabilikunのプロフィール画像

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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