Lawton IADLの退院支援|合計点のあとに決めること

評価
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Lawton IADLは合計点ではなく、低下した項目から退院支援を決めます

Lawton IADLを退院支援に活用するときは、合計点だけで自立度や必要な介護量を決めません。重要なのは、どの下位項目で生活が止まり、安全上の問題が起こるのかを確認し、支援方法・担当者・再評価項目まで決めることです。

この記事は、評価後の対応が曖昧になりやすいPT・OTなどの医療従事者を対象に、Lawton IADLの結果を退院前カンファレンス、家族説明、多職種連携へ落とす手順を整理します。採点方法や1点となる境界ではなく、採点後の支援設計に焦点を当てます。

ADL・IADL評価の全体像から確認する

ADL・IADL評価ハブを見る

Lawton IADLには複数の採点方法や様式があります。原版では歴史的な生活役割を反映し、女性は8領域、男性は5領域を合計する方法が示されています。施設で採用している様式を確認し、異なる採点範囲の合計点を直接比較しないことが重要です。

最初に決めるのは「低得点の項目」ではなく「退院後に問題となる場面」です

同じ0点または要支援の項目でも、退院後に生じる問題の大きさは異なります。まず、尺度上の判定を実際の生活場面へ置き換えます。

Lawton IADLの8領域から確認する生活上の問題
領域 確認する生活場面 退院後に考えられる問題
電話の使用 必要な相手を選び、自分から発信できるか 受診予約や緊急連絡ができない
買い物 必要品の選択、移動、会計まで行えるか 食料や日用品を確保できない
食事の準備 献立、準備、加熱、片付けを安全に行えるか 低栄養、火傷、火災につながる
家事 生活に必要な清掃や整理を継続できるか 生活環境が乱れ、転倒や衛生上の問題が生じる
洗濯 洗濯物の準備から収納まで完了できるか 衣類や寝具の管理が滞る
移動手段 通院や買い物に必要な移動手段を使えるか 受診中断や閉じこもりにつながる
服薬管理 薬の種類、時刻、用量を守って服用できるか 飲み忘れ、重複服用、治療中断が起こる
金銭管理 日常の支払いと重要な手続きを管理できるか 滞納、過払い、詐欺被害につながる

たとえば「服薬管理が0点」だけでは、支援内容を決められません。「薬を取り出せない」「服用時刻を忘れる」「飲んだことを忘れて再度服用する」では、必要な支援が異なるためです。

自己申告だけで支援を決めず、実際の遂行状況を確認します

Lawton IADLは、本人または家族からの情報で把握しやすい一方、回答だけでは能力を過大評価または過小評価する可能性があります。退院支援では、可能な範囲で実際の動作、模擬課題、家族情報を組み合わせます。

尺度結果と併せて確認したい情報
確認項目 具体的な確認内容
普段の実施状況 入院前に本人が実際に担当していたか
失敗の頻度 毎回、週数回、特定の時間帯など、いつ失敗するか
支援条件 声かけ、準備、同行、道具の設置があれば行えるか
実動作 服薬、電話、買い物、調理などを模擬または実場面で確認できるか
背景要因 運動機能、感覚、視覚、認知、疲労、住環境のどこが影響しているか

「能力としてできる」と「日常生活で安定して実行している」は分けて記録します。採点方法や判定条件を確認したい場合は、Lawton IADLの評価方法と解釈を参照してください。

Lawton IADLを退院支援へ変える5段階

評価後は、次の順序で整理すると、点数が支援計画へつながります。これはLawton IADLの公式判定基準ではなく、退院支援へ落とすための実務上の整理方法です。

Lawton IADLを退院支援へつなげる5ステップ。問題となる下位項目を選び、実際に失敗する工程と生活上のリスクを整理し、対策と担当者、再評価項目を決める流れ
Lawton IADLの結果を、生活場面・リスク・対策・担当者・再評価へつなげる5ステップ
  1. 問題となる下位項目を選ぶ:低得点の項目すべてではなく、安全、治療継続、生活維持に影響する項目を優先します。
  2. 失敗する工程を特定する:何ができないかではなく、どの工程で止まるかを確認します。
  3. 生活上のリスクを整理する:事故、治療中断、生活の停止、家族負担など、放置した場合の影響を明確にします。
  4. 対策と担当者を決める:代償手段、環境調整、練習・教育、人的支援を組み合わせ、誰が何を担うかを決めます。
  5. 再評価項目を決める:いつ、誰が、何を確認し、うまくいかなければどう変更するかを決めます。

支援計画の基本形

下位項目 → 実際の失敗場面 → 生活上のリスク → 対策 → 担当者 → 再評価項目

優先順位は合計点ではなく、事故・治療中断・生活停止の可能性で決めます

Lawton IADLの合計点だけから、必要な介護量や退院可否を一律に決めることはできません。優先順位は、低下した項目の数より、その項目が生活へ与える影響で判断します。

退院支援で優先しやすい問題
優先度 確認する問題
高い 生命、安全、治療継続に直接影響する 重複服用、火の消し忘れ、単独外出時の迷子
中等度 放置すると生活の維持が難しくなる 食料不足、受診手段の欠如、公共料金の滞納
個別判断 本人の役割や家族構成によって影響が変わる 洗濯、清掃、日常の買い物

同じ合計点でも、一人暮らしか同居家族がいるか、家族が継続して支援できるか、利用できるサービスがあるかによって、必要な対応は変わります。

下位項目ごとに代償・環境・教育・人的支援を組み合わせます

道具を導入するだけでは、退院後に使われないことがあります。対策は、本人の能力、使用環境、支援者の役割まで含めて組み立てます。

Lawton IADLの下位項目から考える支援例
領域 対策例 再確認する内容
電話の使用 短縮ダイヤル、連絡先カード、通話手順の練習 必要時に自分から発信できたか
買い物 写真付きリスト、店舗の固定、宅配、同行支援 必要品を不足なく購入できたか
食事の準備 配食、電子レンジ調理、器具の限定、見守り 安全に食事を準備し、必要量を確保できたか
家事 作業範囲の限定、道具の定位置化、家事援助 生活に必要な清潔を維持できたか
洗濯 曜日の固定、工程の簡略化、乾燥機、家族支援 洗濯から収納まで完了できたか
移動手段 送迎、同行、デマンド交通、利用経路の固定 受診や買い物へ安全に移動できたか
服薬管理 一包化、服薬カレンダー、アラーム、残薬確認 飲み忘れや重複服用がなかったか
金銭管理 固定費の自動化、家族確認、支払い範囲の限定 滞納や不適切な支払いがなかったか

服薬方法の変更は、医師、看護師、薬剤師などと相談して決めます。金銭管理では、本人の意思と権利に配慮し、必要以上に管理範囲を取り上げないことも重要です。

「誰が確認するか」まで決めて初めて支援計画になります

「家族に依頼する」「サービスを検討する」だけでは、担当が曖昧なままです。退院前に、実施者、確認者、問題発生時の連絡先を分けて決めます。

役割分担で確認する項目
役割 決める内容
本人 自分で行う工程と、支援を求めるタイミング
家族 確認する項目、頻度、対応できない場合の連絡先
医療職 医学的な注意点、実施方法、再評価する所見
介護・地域支援者 訪問時に確認する内容と、変化の報告先

記録は「点数・失敗場面・対策・担当・再評価」を一続きで残します

記録では、尺度得点だけでなく、判断根拠と退院後の確認方法を残します。

服薬管理に課題がある場合の記録例
項目 記録例
尺度結果 Lawton IADLの服薬管理で支援を要する
失敗場面 朝食後薬を自分で準備できるが、服用したことを忘れて再度取り出すことがある
リスク 重複服用により有害事象が生じる可能性がある
対策 一包化と服薬カレンダーを使用し、服用後の袋を所定の箱へ移す
担当 本人が服用し、家族が夕方に残薬と空袋を確認する
再評価 退院後早期に、飲み忘れ、重複服用、支援者の負担を確認する

再評価時期は、一律に点数で決めません。服薬や火気など安全への影響が大きい問題、退院直後に新しい方法を導入した場合、家族支援が不安定な場合は、早期に確認できる体制を組みます。

多職種への連携文例

例|ケアマネジャーへの情報提供
Lawton IADLでは、服薬管理と金銭管理に支援を要します。服薬は、朝食後薬を服用したことを忘れて再度取り出すことがあり、重複服用が問題です。一包化と服薬カレンダーを導入し、本人が服用後の空袋を所定の箱へ移し、家族が夕方に確認する方法を試しています。金銭管理は、固定費を自動支払いへ変更し、その他の支払いを家族と確認する予定です。退院後は、飲み忘れ・重複服用の有無、支払いの遅れ、本人と家族の負担を確認してください。

Lawton IADLを退院支援で使うときのよくある失敗

よくある失敗と修正方法
よくある失敗 問題点 修正方法
合計点だけで支援量を決める 同じ点数でも生活上の危険や支援環境が異なる 下位項目と実際の失敗場面を確認する
自己申告だけで判断する 能力を過大または過小評価する可能性がある 家族情報、模擬課題、実動作を組み合わせる
道具を渡して終了する 置き場所、使い方、確認者が決まっていない 環境、教育、役割分担まで決める
再評価日だけを決める 何を確認するかが曖昧になる 成功条件と変更条件を先に決める

よくある質問

Lawton IADLの合計点だけで退院後の自立度を判断できますか?

合計点だけでは判断できません。低下した下位項目、実際の失敗場面、同居者、利用できるサービス、住環境を併せて確認します。

再評価はいつ行えばよいですか?

一律の期間ではなく、問題の危険性と支援内容で決めます。服薬や火気など安全への影響が大きい場合、新しい代償手段を導入した場合、支援体制が不安定な場合は、退院後早期に確認できるよう調整します。

男性0~5点、女性0~8点の扱いはどうすればよいですか?

使用している様式と採点範囲を記録し、異なる版の合計点を直接比較しないことが重要です。経時比較では、同じ様式、同じ情報源、できるだけ同じ条件をそろえます。

まとめ

Lawton IADLを退院支援へ活用するときは、合計点だけで支援量を決めません。下位項目、実際の失敗場面、生活上のリスク、対策、担当者、再評価項目の順に整理します。

尺度上は同じ判定でも、本人が担当していた役割、家族構成、住環境、利用できるサービスによって対応は変わります。自己申告だけに頼らず、可能な範囲で家族情報や実動作を組み合わせ、退院後に再現できる支援へ落とし込みましょう。

次の一手

Lawton IADLとFAIのどちらを使うか迷っている場合は、目的、評価する期間、活動の頻度という違いから整理します。


参考文献

  1. Lawton MP, Brody EM. Assessment of older people: self-maintaining and instrumental activities of daily living. Gerontologist. 1969;9(3 Part 1):179-186. DOI: 10.1093/geront/9.3_Part_1.179. PubMed: 5349366.
  2. Graf C. The Lawton Instrumental Activities of Daily Living Scale. Am J Nurs. 2008;108(4):52-62. 資料を確認する.
  3. 日本老年医学会. 手段的日常生活動作(IADL)尺度. 公式PDF.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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