MWSTとWSTの違い|3mL・30mLの使い分けと記録

栄養・嚥下
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MWST と WST の違いは「3 mL」と「30 mL」で整理します

結論として、MWST(改訂水飲みテスト)は冷水 3 mL を用いる少量の嚥下スクリーニングWST(水飲みテスト)は常温水 30 mL を飲んだときの状態をみるスクリーニングです。どちらが上位という関係ではなく、対象者の状態と「何を確認したいか」で使い分けます。

本記事では、MWST と WST の違い、どちらを選ぶか、水による評価をどこで止めるか、陰性でも嚥下障害や誤嚥の疑いが残る場合の次の一手まで整理します。3 oz や 100 mL など別プロトコルの水飲みテストは混同せず、別記事へ役割を分けます。

MWSTとWSTの違いを3mLと30mLで比較した図版
MWST は冷水 3 mL、WST は常温水 30 mL。検査目的と患者状態に応じて選択し、異常や臨床的な疑いがあれば次の評価へつなげます。

MWST・WSTだけでなく、嚥下評価全体の順序を確認したい方はこちら。

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MWST と WST の違い|まず 3 mL と 30 mL を区別します

最初に押さえたいのは、MWST と WST は水量だけでなく、実施方法と評価方法が異なる別のスクリーニングだという点です。MWST は冷水 3 mL、ここでいう WST は常温水 30 mL を用います。

なお、3 oz Water Swallow Test や 100 mL Water Swallow Test も水を使った嚥下スクリーニングですが、30 mL の WST とは使用量・手順・判定方法が異なります。詳しい違いは3 oz・30 mL・100 mL・TWST の比較で整理しています。

MWST と WST の違い
比較項目 MWST WST
名称 Modified Water Swallowing Test
改訂水飲みテスト
Water Swallowing Test
水飲みテスト
使用する水 冷水 3 mL 常温水 30 mL
基本的な方法 口腔底へ冷水 3 mL を入れ、嚥下を指示して反応を観察する コップの常温水 30 mL を飲んでもらい、飲み方やむせなどを観察する
主に確認すること 少量水に対する嚥下、むせ、呼吸状態、湿性嗄声など 30 mL の飲み方、むせ、全量を飲めるかなど
評価 所定の評点で判定する 飲み方とむせなどから所定のプロフィールで判定する
実務上の特徴 少量の水から嚥下反応を確認できる 30 mL を飲んだときの状態を確認できる

重要:「3 mL と 30 mL」という違いは、MWST を行ったら必ず WST へ進むという意味ではありません。患者の状態、検査目的、施設の手順を踏まえ、水を使った評価を続けてよいかをその都度判断します。

MWST と WST のどちらを選ぶかは「目的」と「負荷」で決めます

実務では「どちらを必ず先に行うか」と固定するより、水による評価を実施できる状態か、少量から確認したいのか、30 mL を飲んだ状態まで確認する必要があるのかで考えると整理しやすくなります。

MWST と WST の選び方
判断したいこと 選択肢 判断ポイント
まず少量の水で嚥下反応を確認したい MWST 冷水 3 mL で嚥下、むせ、呼吸状態、湿性嗄声などを確認する
30 mL を飲んだときの状態を確認したい WST 常温水 30 mL を飲んだ際の飲み方、むせ、全量摂取の状態などを確認する
水を用いた評価自体に不安がある 実施・追加を見送る 覚醒、呼吸、全身状態、指示理解などを再確認し、必要に応じて別の臨床評価や VE / VFSS を検討する
結果が良好でも誤嚥を疑う ベッドサイドだけで完結しない 不顕性誤嚥を含め、臨床像に応じて VE / VFSS などの追加評価を検討する

誤嚥リスクが高いと考えられる症例で水による評価が可能と判断した場合には、3 mL の MWST のように少量から情報を得る方法を選択できます。ただし、「MWST が正常なら WST へ進む」という一律のアルゴリズムではありません。異常所見や全身状態への懸念があれば、その時点で追加の水負荷を止める判断が必要です。

水を使う前に「実施してよい状態か」を確認します

MWST と WST の使い分けより先に確認したいのが、そもそも水によるスクリーニングを実施してよい状態かです。検査を最後まで成立させることより、安全に評価できる条件を整えることを優先します。

実施前に確認したい項目
確認項目 確認する内容 対応
覚醒・指示理解 嚥下の指示や検査中止の指示に対応できるか 成立が難しい場合は検査方法を再検討する
呼吸・全身状態 呼吸困難、著しい頻呼吸、全身状態の不安定さがないか 不安定な場合は水による負荷を急がない
姿勢 予定した評価姿勢を安全に保持できるか 条件を整えてから実施し、姿勢も記録する
開始前の声・分泌物 湿性嗄声や分泌物貯留などが開始前からないか 開始前所見と飲水後の変化を区別する

検査中に強いむせ、明らかな呼吸状態の悪化、嚥下が成立しない状態などがみられた場合は、そのまま負荷を増やさず中止します。SpO2 は全身状態を把握する補助情報にはなりますが、SpO2 の変化だけを誤嚥の有無の判定基準にはしません。

結果だけで経口摂取の安全性を決めないことが重要です

MWST と WST はいずれもベッドサイドで行うスクリーニングであり、結果だけで誤嚥の有無や経口摂取の安全性を確定する検査ではありません。特に、誤嚥しても咳が出ない不顕性誤嚥は、ベッドサイドの水飲みテストだけでは見逃す可能性があります。

したがって、「むせなかったから安全」とはせず、疾患、肺炎歴、咳嗽力、呼吸状態、声の変化、分泌物、食事中・食後の臨床所見などを合わせて判断します。ベッドサイド所見と臨床経過が一致しない場合や、不顕性誤嚥を疑う場合は VE / VFSS などの機器評価を検討します。

MWST・WST A4 記録シート PDF

MWST と WST を同じ記録の中で混同しないよう、実施前の確認、MWST、必要時の WST、判定整理、共有事項を 1 枚にまとめた A4 記録シートです。再評価では、水量、姿勢、実施条件をそろえて記録すると変化を追いやすくなります。

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記録は「検査名・水量・条件・所見」を分けて残します

MWST と WST を比較するときに重要なのは、どの条件で、どの水量を使ったときに所見が出たかを後から追えることです。「水飲みテスト問題なし」だけでは、MWST なのか WST なのか、どの段階まで評価したのかが分かりません。

記録で残したい 4 項目
項目 記録する内容
検査名 MWST / WST を明記する
条件 姿勢、水量、水温など実施条件を記録する
所見 嚥下、むせ、声、呼吸、飲み方など検査に応じた観察所見を記録する
次の判断 追加評価を行うか、水による評価を止めるか、VE / VFSS を検討するかを記録する

記録例:「座位。MWST 冷水 3 mL 実施。嚥下あり、むせなし、飲水後の湿性嗄声なし。呼吸状態に明らかな変化なし。ベッドサイド所見のみで安全性を確定せず、食事場面の所見と合わせて再評価する。」のように、検査名、条件、観察所見、次の判断を分けると共有しやすくなります。

MWST・WST それぞれの具体的な実施方法や評価方法は、MWST・WST の手順|やり方・評価・中止判断で整理しています。

結果が良好でも「まだ怪しい」ときは臨床像を見直します

水飲みテストで明らかな異常がなくても、反復する肺炎、食事後の声や痰の変化、咳嗽力の低下などから嚥下障害や誤嚥を疑うことがあります。ここでは、スクリーニング結果を安全証明として扱わないことが重要です。

MWST・WST で迷いやすい場面
迷いやすい判断 避けたい考え方 次に確認すること
むせがなかった 誤嚥なしと断定する 不顕性誤嚥の可能性を含め、背景と食事場面を確認する
MWST の結果が良好だった 必ず WST へ進む 30 mL で追加評価する目的と必要性があるか確認する
SpO2 が下がらなかった 誤嚥なしと判断する むせ、声、呼吸状態、臨床経過などを総合する
水飲みテストと臨床像が合わない テスト結果だけを優先する VE / VFSS を含む追加評価が必要か検討する

よくある質問(FAQ)

MWST と WST の使い分けで特に迷いやすいポイントを整理します。

Q1. MWST と WST はどちらを先に行いますか?

一律に順番が決まっていると考えるより、患者の状態と評価目的で選びます。少量の水から嚥下反応を確認したい場合は冷水 3 mL の MWST を選択しやすく、常温水 30 mL を飲んだ際の状態を確認する目的があれば WST を検討します。異常や安全面への懸念があれば、次の水負荷へ機械的に進みません。

Q2. WST は 30 mL・3 oz・100 mL の総称ですか?

本記事で扱う WST は、常温水 30 mL を用いる水飲みテストです。3 oz Water Swallow Test や 100 mL を用いる方法は、水を用いた嚥下スクリーニングという共通点はありますが、使用量、手順、判定方法が異なる別プロトコルとして区別します。

Q3. SpO2 が低下しなければ誤嚥は否定できますか?

否定できません。SpO2 は全身状態をみる補助情報として利用できますが、酸素飽和度の変化だけで誤嚥の有無を判断することはできません。水飲みテストの所見や臨床経過を合わせて判断します。

Q4. MWST や WST の結果が良好なら VE / VFSS は不要ですか?

結果が良好という理由だけで不要とは判断できません。不顕性誤嚥が疑われる場合や、水飲みテストの結果と肺炎歴、呼吸状態、食事場面の所見などが一致しない場合は、VE / VFSS などによる追加評価を検討します。

次の一手

MWST と WST の違いを確認したら、次はベッドサイド所見をどの段階で VE / VFSS へつなぐかを整理しておくと、評価全体の流れがそろいます。


参考文献

  1. Tohara H, Saitoh E, Mays KA, Kuhlemeier K, Palmer JB. Three tests for predicting aspiration without videofluorography. Dysphagia. 2003;18(2):126-134. PubMed / DOI:10.1007/s00455-002-0095-y
  2. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会. 摂食嚥下障害の評価(スクリーニングテスト). eラーニング. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
  3. Osawa A, Maeshima S, Tanahashi N. Water-swallowing test: screening for aspiration in stroke patients. Cerebrovasc Dis. 2013;35(3):276-281. PubMed / DOI:10.1159/000348683
  4. Suiter DM, Leder SB. Clinical utility of the 3-ounce water swallow test. Dysphagia. 2008;23(3):244-250. PubMed / DOI:10.1007/s00455-007-9127-y
  5. 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会編. 嚥下障害診療ガイドライン2024年版. 東京: 金原出版; 2024. 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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