てんかん発作の観察と記録|10項目・記載例・PDF付き

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結論:発作観察は「10項目+時間軸」で記録します

てんかん発作を目撃したら、発作型を推測するよりも、開始時刻、体位、眼・頭位、運動、発声・反応、呼吸・皮膚色、介入、回復経過を時間順に記録することが重要です。本稿では、PT・OT・ST・看護職などの医療専門職向けに、成人の入院・通所・介護施設で使いやすい観察10項目と、記録で迷いやすい「なし・不明・未観察」の分け方、記載例、A4記録シートをまとめます。

この記事で扱う範囲:発作時に何を観察し、どの順番で、どう記録するか。

別記事へ分ける範囲:発作時の一次対応、119番・院内緊急連絡の判断、失神・PNESとの鑑別、発作後の訓練再開。

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発作時に優先して観察する10項目

観察項目は、個別の所見をばらばらに書くのではなく、開始 → 発作中 → 終了・介入 → 回復 → 発作後の順に並べると、あとから発作の経過を再構成しやすくなります。

  1. 開始時刻・終了時刻・持続時間
  2. 開始時の体位・転倒・外傷
  3. 眼球偏倚:右/左/なし/不明
  4. 頭位回旋:右/左/なし/不明
  5. 運動:強直、間代、ミオクロニー、脱力、自動症、左右差
  6. 発声・反応:うめき、叫び、発語、呼名や指示への反応
  7. 呼吸・皮膚色:呼吸の変化、蒼白、チアノーゼ、発汗など
  8. 実施した対応と時刻
  9. 回復のタイムライン:開眼、応答、会話、指示理解など
  10. 発作後の神経所見:新たな麻痺、言語症状、理解の変化など
てんかん発作の観察・記録フロー。開始・発見、発作中、終了・介入、回復・発作後、記録・共有の順に観察ポイントを整理した図
図:てんかん発作は「開始・発見 → 発作中 → 終了・介入 → 回復・発作後 → 記録・共有」の順で整理すると、経過を共有しやすくなります。

発作中の反応は、安全に確認できた範囲で残します。呼名への反応、簡単な指示への反応、発語の有無など、実際に観察できた事実を記録してください。反応を確認するために安全確保を遅らせたり、刺激を繰り返したりする必要はありません。

重要なのは、その場で発作型を決めることではなく、何が、いつ、どの順番で起きたかを観察語で残すことです。

「なし・不明・未観察」を分けて記録します

発作記録で迷いやすいのは、見えなかった所見を「なし」と書いてよいかという点です。確認できていない所見を「なし」と推測せず、不明または未観察として残すと、あとから記録を読み返したときの誤解を減らせます。

※表は横にスクロールできます(スマホ表示)。

発作観察で迷いやすい記録の境界
状況 記録例 ポイント
観察して所見がなかった 眼球偏倚なし 確認できた事実として「なし」と記録する
確認したが判断できなかった 頭位回旋:不明 曖昧な情報を断定しない
その場面を見ていなかった 発作開始時体位:未観察 「なし」と区別する
開始そのものを見ていない 10:12発見、開始時刻不明 発見時刻と開始時刻を混同しない

とくに開始時刻、介入時刻、回復時刻は、あとから推定値を確定値のように書かないことが重要です。「約2分」「10:12頃」「開始時刻不明」など、分かっている範囲をそのまま残します。

A4記録シートをダウンロードできます

観察項目を書き漏らしやすい場合は、A4 1枚の記録シートを使うと、発作前の確認から発作観察10項目、発作後所見、申し送りまで同じ順番で残せます。紙での記録だけでなく、電子カルテへ要約するときの下書きとしても使用できます。

▶ PDFを開く(ダウンロード)

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本文で確認する発作観察テンプレ

PDFを開けない環境では、次の表を確認してください。10項目に加え、発作前の状況、発作後の意識・神経所見、連絡内容まで補足すると、申し送りや経時比較がしやすくなります。

※表は横にスクロールできます(スマホ表示)。

てんかん発作の観察・記録テンプレ
観察項目 記録する内容
発作開始日時 開始時刻/発見時刻/終了時刻/持続時間。開始を見ていなければ発見時刻と区別する。
観察者 氏名または職種など、自施設の記録方法に沿って残す。
場所 病室、廊下、浴室、訓練室など。
発作前の状況 本人から確認できた前兆、発熱、睡眠状況、活動内容など、確認できた事実を記録する。
開始時体位 臥位/座位/立位/歩行中など。開始を見ていなければ未観察とする。
眼球偏倚 右/左/なし/不明/未観察。
頭位回旋 右/左/なし/不明/未観察。
運動 強直、間代、ミオクロニー、脱力、自動症、開始部位、左右差、広がる順番など。
発声・反応 うめき、叫び、発語の有無。安全に確認できた範囲で呼名や簡単な指示への反応も記録する。
呼吸・皮膚所見 呼吸の変化、蒼白、チアノーゼ、発汗など。
転倒・外傷 転倒、頭部打撲、その他の外傷、舌咬傷など、確認できた所見。
失禁 有/無/不明/未観察。
介入 実際に行った対応と実施時刻。施設手順や個別指示に沿った対応を事実として記録する。
救急・院内連絡 実施した連絡、時刻、共有した内容を記録する。
発作後意識 開眼、呼名への反応、会話、指示理解などを時間順に残す。
発作後神経所見 新たな麻痺、感覚障害、言語症状、理解の変化など。
回復経過 普段の反応・会話・活動へ戻るまでを時間順に記録する。
主治医への連絡 連絡の有無、時刻、共有した経過。
備考 既往の発作との違い、目撃者から得た情報など、必要な補足を記録する。

編集用テンプレのダウンロード(Excel / CSV)

施設独自の書式へ取り込みたい場合は、編集用のExcel版とCSV版も使用できます。まずは観察項目をそろえ、自施設の連絡手順や記録様式に合わせて調整してください。

▶ Excel観察テンプレ(.xlsx)
▶ CSV版(.csv)

発作後の麻痺は「Todd麻痺と決めず」に時系列で共有します

Todd麻痺は、発作後にみられる一過性の局所的な筋力低下・麻痺などを指します。ただし、発作後に新たな片麻痺や言語症状を認めたからといって、その場でTodd麻痺と断定することはできません。

記録するときは、症状名を推測するより「いつから・どちら側に・何が起き・どう変化したか」を残します。「10:17開眼、10:20右上肢挙上困難、10:30会話可能」のように時間軸で共有すると、診療側が経過を判断しやすくなります。

新たな片麻痺、失語、視野症状などがみられた場合は、既往の発作後症状と似ている場合でも自己判断でTodd麻痺として処理せず、施設の急変対応や脳卒中対応の手順に沿って速やかに共有してください。

記載例は「開始→変化→終了→回復」で書きます

カルテや申し送りでは、すべてを長文にするより、時刻と観察した事実を並べる方が経過を追いやすくなります。発作型の診断名を推測して書くのではなく、実際に確認した所見を記載します。

記載例

10:12、椅子座位中に発作開始。眼球右方偏倚、頭位右回旋あり。両上肢の強直後に律動的な四肢の間代運動を認め、右上肢で目立つ。呼名への反応は確認できず。周囲の危険物を除去し頭部を保護。10:14運動停止、呼吸あり。10:17開眼、呼名に反応。10:22簡単な指示に従える。10:30会話可能。右上肢挙上が基準時より困難であり、看護師・主治医へ経過を報告。

開始そのものを見ていない場合は、「10:12発見、開始時刻不明」のように書きます。目撃していない時間を推測して発作持続時間へ含めず、確認できたことと確認できなかったことを分けるのがポイントです。

記録が抜けやすいのは「時刻・介入・回復」です

発作対応中は安全確保が優先されるため、すべての観察項目を同時に確認できるとは限りません。そのなかでも後から補いにくいのが、開始・終了の時刻、介入した内容と時刻、回復までのタイムラインです。

  • 開始:いつ始まったか。見ていなければ発見時刻を残す
  • 介入:何を、いつ行ったか
  • 回復:開眼、応答、会話などがいつ戻ったか

一人で対応していて観察できない項目があっても、推測で埋める必要はありません。分からないものを分からないまま正確に残すことも、記録の質を保つうえで重要です。

FAQ|発作の観察・記録で迷いやすい点

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。

発作の開始を見ていない場合、開始時刻はどう書きますか?

推定した時刻を確定値として書かず、「10:12発見、開始時刻不明」のように、確認できた発見時刻と不明な開始時刻を分けて記録します。目撃者から情報が得られた場合は、その情報源が分かる形で追記します。

左右が分からなかった場合は空欄でよいですか?

空欄では「異常なし」なのか「確認していない」のか判別できません。判断できなかった場合は「不明」、その場面を観察していなかった場合は「未観察」など、自施設で表記を統一すると後から解釈しやすくなります。

一人で対応していて全部を観察できない場合は何を優先しますか?

観察のために安全確保を遅らせないことが前提です。記録としては、まず開始・発見時刻を確認し、その後に安全を確保しながら目に入った運動、左右差、呼吸・皮膚色、終了時刻、回復経過を残します。確認できなかった項目は推測せず、不明または未観察とします。

発作型の名前までカルテに書いた方がよいですか?

診断・分類が確認されていない場面では、観察者が発作型を推測して断定するよりも、眼球、頭位、運動、反応、左右差、持続時間などの客観的所見を時間順に記録することを優先します。すでに医師から個別の発作型が示されている場合は、施設の記録ルールに従って併記してください。

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参考文献

  1. Beniczky S, Trinka E, Wirrell E, et al. Updated classification of epileptic seizures: Position paper of the International League Against Epilepsy. Epilepsia. 2025. doi:10.1111/epi.18338. DOI
  2. Fisher RS, Acevedo C, Arzimanoglou A, et al. A practical clinical definition of epilepsy. Epilepsia. 2014;55(4):475-482. DOI
  3. Fisher RS, Cross JH, French JA, et al. Operational classification of seizure types by the International League Against Epilepsy. Epilepsia. 2017;58(4):522-530. DOI
  4. Xu SY, Li ZX, Wu XW, Li L, Li CX. Frequency and pathophysiology of post-seizure Todd’s paralysis. Med Sci Monit. 2020;26:e920751.
  5. Rolak LA, Rutecki P, Ashizawa T, Harati Y. Clinical features of Todd’s post-epileptic paralysis. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1992;55(1):63-64. DOI

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者が実務で使いやすい情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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